岸辺露伴は動かない(2)「くしゃがら」[解][字]…のネタバレ解析まとめ
出典:EPGの番組情報
岸辺露伴は動かない(2)「くしゃがら」[解][字]
荒木飛呂彦・原作の大ヒット漫画「ジョジョの奇妙な冒険」からスピンオフした短編を初映像化!高橋一生演じる漫画家・岸辺露伴の活躍を描くミステリードラマ!
番組内容
露伴(高橋一生)は同僚の漫画家・志士十五(森山未來)から奇妙な相談を受ける。担当の編集者から「くしゃがら」という言葉は使用禁止だと言われたのだ。しかしネットにもどんな辞書にも意味は載っていない。使うなと言われると使いたい。だが意味を知らないと使えない。何かにとりつかれたようになった十五を露伴がヘブンズ・ドアーで「本」にすると、そこにはうごめく何かが存在していた。
出演者
【出演】高橋一生,飯豊まりえ,森山未來,諏訪太朗,佐々木睦,竹口龍茶,吉田亮,中村倫也,【声】櫻井孝宏
原作・脚本
【原作】荒木飛呂彦,北國ばらっど,【脚本】小林靖子
監督・演出
【演出】渡辺一貴
音楽
【音楽】菊地成孔ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)
解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気の配信サービスで見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?
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≪(物音)
≪(大学教授)うわあああああ~ッ!
ああ…。
違う違う
違う違う違う違う違~う! ああ~ッ!
「くしゃがら」ぁぁあああああ…。
(扉が開く音)
(守衛)誰か いるんですか?
大丈夫ですか?
(守衛)どうしたんですか!?
大丈夫ですか?
ハァ ハァ ハァ
ハァ…。
うおッ…。
あっ… うわ… うわあッ!
い… いや… いやあああ~ッ!
うわあああッ! ハァ ハァ ハァ…。
いやああああ~ッ!
(ラジオの声)「研究室で発見された
男性の死因について
警察は 遺体の状態から 事件性はなく
餓死の可能性が高いと見て
捜査を進めています。
大学関係者や家族の話では この男性は
1か月ほど前から 自宅に戻っておらず
大学に泊まり込みで
研究を続けていたとのことですが…」。
(岸辺露伴)
ふぅ~ん…。
(ラジオの声)「食事をとっていたかどうかは
分かっていません」。
研究に夢中になって 飢え死にねェ…。
面白い。
漫画のネタになりそうだ。
死んでしまったのは 残念だなァ。
その男 読んでみたかった。
♬~
(ノック)
(泉 京香)露伴先生ー 泉でーす。
集明社の。 こんにちはー。
(ノック)
こんにちはー。 入りますねー。
(扉が開く音)
お邪魔しまーす。
返事ぐらいしてくれても いいのに。
勝手に上がっても怒るし 帰っても怒るし。
ハァ… もう。
先生 やっぱり書斎にもインターホンを…。
えっ?
うん…? あれっ?
先生 いない?
(店員)いらっしゃいませ。
お一人様ですか?
(志士十五)うん 1人。
え~っとね… ああ いいや。
よっ 露伴センセ。 偶然ッ。
あ 俺 ジンジャーエールね。
辛口? 甘口?
(店員)辛口でございます。
うん オッケー。
(ため息)
…席 空いてるだろう?
空いてるよ?
じゃあ なんで わざわざ相席するんだ。
いや だってよォ~
外歩いてたら あれっ? 俺
スッゲー 喉渇いてねえ? と思ったら
目の前にカフェだろ? んで
入ろっかなーって見てたら仕事仲間だろ?
そりゃあ ここは「相席」だろ。 ヘヘッ。
まったく理解できないな。
というか… 「仕事仲間」だって?
仕事仲間だろ。 そうだろ?
同じ出版社で働く
漫画家同士じゃあねーかよ。
あれ? 分かった。 俺のことを忘れたな?
俺ね 志士十五。
四四 十六じゃねーんだよ。
1 足りねーんだ。 なんか1個
足んねーんだよ。 おもしれェだろ?
エッヘヘヘ。 ああ 覚えてる。 パーティーで
一度だけ会った程度には。
パーティー… パーティー
集明社の忘年会な。
アハハ あれ 盛り上がったよなぁ。
盛り上がったっけなぁ?
どうだったっけ?
ていうか あん時 途中から
いなくなったよね? 帰った? なんで?
義理で顔を出しただけだ。
とにかく 同じ雑誌で
漫画を描いてるからといって
仲間ということはないだろ。
むしろ 商売敵と言ったほうが
いいんじゃあないか?
水くせーこと言うなよ センセェ~。
漫画家なんてよォ たまに担当編集と
話す以外は もう孤独だぜェ~?
話せるやつ 見つけたら 話しとかねーと
喋り方 忘れちまうじゃねえかよォ。
君の場合
少しは忘れたほうがいいと思うね。
で 今日は なに?
「漫画のネタ」でも練りに来たの?
そう思うなら ひとりで
ゆっくり考えさせてくれないかな?
奇遇ッ! 実は俺もだ。
ハッハハハハ…。
少しは会話をしろッ!
独り言なら 別の席でやれッ。
ひとりで ブツブツやってたら
おかしいだろォ? なっ?
独り言 言うにもよォ
ヘンなやつだって思われねーように
向かいに
誰かが座ってたほうがいいんだぜ。
じゃあ カカシ相手にでも
やってりゃあいいだろ。
カカシ…? カカシ。
おお それ ちょっと次 試してみるわ。
まあ でも 今日はいいじゃねーかよ。
ここは俺が奢るから… な?
この岸辺露伴が
たかだか一杯の紅茶を奢られて
デレデレ喜ぶとでも思ってるのかッ!?
フルネームは出しちゃあいけねーよ
センセ。 ヘヘッ。
お互い 有名人なんだからよォ。
そこら辺のガキに見つかって
サインでも ねだられてみ?
それこそ
ネタ練るどころじゃあ なくなるだろ。
あれ?
それとも ガキは好き? 嫌いだ。
奇遇ッ! 俺も。 アッハハハ!
ここは やっぱ同席だな。 ハッ。
お待たせいたしました。
(舌打ち)
いや でもよォ なんつーか うん…
分かるよ? 分かる分かる。
オープンテラスの席でよォ
爽やかな風の中でよォ
町の生きてる音を聴きながら ネタ作ると
スゲー捗るんだよな。
まあ ひとりで部屋の中でってのも
集中できていいけど
それだけじゃあ やっぱダメなんだよ。
うん。
「表現」ってのは
生きてるエネルギーが必要だからな。
そういう 「生きてるエネルギー」の中で
作るっていうのが大事なんだよ。
だから 町の空気は良い…。
溢れてる「生活」が BGMになる。
「リアリティ」とか 生々しさってのはよォ
やっぱり内側からは出てこねーし
部屋の中にも転がってねーんだよ。
やっぱり 外に溢れてるものを
捕まえてこねーとな。 うん。
いや だから めんどくせーけど
ヒゲとか剃って 俺 外に出てるんだぜ。
多少は
漫画家らしいことも言うんだな。
先生も同じタイプだよな。
漫画読んで すぐ分かったよ。
同じレベル扱いするな。
…で 先生の次回作は どんな感じ?
漫画家にとって ネタは命以上だぞ。
茶飲み話にできるかッ。
俺は聞いてほしいけどなぁ。
やっぱよォ
自分で面白いと思ったネタでも
「客観的な視点」ってやつが必要だろ?
それは
自分に自信がない漫画家が言うことだ。
それによォ 俺 今度初めて 「ホラー」って
やつに挑戦してみようと思ってよ。
君 勧善懲悪な少年漫画ばっかり
描いてるんじゃあなかったのか。
できるのか? ホラー漫画なんか。
(志士)でもなぁ…
俺 ユーレイとか
全然 ヘーキなほうだからよ…。
いや それよりもさ 例えば身近なものって
ケッコー怖いと思うんだよ。
で 俺の場合だったら
それじゃあ何が怖いかって考えた時に…
サイコーに怖いのが あった。
トイレの怪談だ。
「何度 補充しても
なぜかカラになる
トイレットペーパー」。
そんで 「なんかこう
ねっとりしてる トイレットペーパー」。
かなり ビビったよ。
チビりそうだ。 最高。
よし ボツだな。
分かりやすくって助かる。
そんなことは 担当に相談しろよ。
そう その担当ッ!
あいつ 先週 急に辞めちまってよォ。
まあ 軽く行方不明っつーか。
行方不明?
いや あいつ マジで有能でさ。
いや ちょっと真面目すぎるってとこは
あったんだけど
ポテチと映画の趣味も一緒だし
マジ いいやつだったんだよ。
だから
何とかして 連絡取りてーんだけど
編集のほうから 連絡しても
出ねーらしいんだよな。
仕事が嫌になったんだろう。
引き止める意味はない。
引き止めるんじゃねーよ。
いや ちょっと気になることが…。
ちょっと
これ 見てくれよ。 見なくていい。
最後に会った時に 渡してきたんだよ。
「つまらないだろうけど
よく読んでおいてくれ」ってな。
「禁止用語リスト」ォ?
そう。 つまりよォ
漫画とか出版物の中で使っちゃあいけねー
単語のリストなんだよ。
本気で つまんないもん もらったなァ~!
そういう声 出ちゃうよねー。 だろォ?
表紙だけでも ウンザリなのに
中身は もっとなんだよ。
まあ… 内容は納得いくものも多いな。
「商品」として出版する以上は
僕の作品でも避ける表現だが…。
ん?
なんだ これ…。
これは ちょっと
ヒドいんじゃないか? だよなァ~!
これとか これとかよォ
ちょっと前に なんか 起こった
変死事件に対する
「配慮」だっつーんだよ。
知るかッ! ボゲッ!
って言わないけどね うん。 俺 大人だから
そこは納得したフリしたよ。
これもダメか。
ちょっと ヒドいんじゃあないか?
そりゃな 漫画家ってのは「絵」で勝負だよ。
でもよォ
「話」がなけりゃあ 漫画じゃねーんだよ。
言葉は ぜってー大事なんだよ。
さし障りのねー言葉に変えたり
プロットを差し替えたりってのは
できるけどよォ
「リアリティ」がねーじゃねーかよ。
「リアリティ」のねー話なんか
俺は ぜってー作りたくねーんだよなぁ。
そうだな。 そこは僕も…。
でも まあ プロだからな。 うん。
納得いかねーんだが
ルールなら しょうがねー。 うん。
不愉快に感じる読者がいるってことも
分かるしな うん。
そこは いいんだよ。 うん。
いや でもよォ
なんで この言葉が禁止なんだってのが
さっぱり分かんねーやつが
あるんだよなぁ。
これだよ。 これこれ。
「くしゃがら」?
この単語 知ってる?
♬~
何かの方言か?
それがよォ~…
分からねぇんだよ。 さっぱりだ。
だろうな。 この僕が知らないことを
君が知っているわけはないと思った。
ゼンゼン 分からねーんだよ。
いや もう これだけ意味書いてねーしな。
担当には聞かなかったのか?
(志士)いや もちろん聞いたよ。
でも
「使っちゃいけねえ」って言うだけでよォ
もういっぺん 聞きてえなと思ったら
いなくなってたってわけだ。
辞書とか ネットとかでも
あさってみたけど
なーんにも 出てこねーんだよな。
お手上げじゃあないか。
そうなんだよ。
けど これってよォ まあ 何のために
使われるか分からねー ボタンでも
「押すな」って書いておけば安全だっていう
そういう理屈だろ?
ああ そりゃ 確かにそうだよ。
注意書きさえしてあれば
そんなボタン 押さねーよ。
善良な一般市民ならな。
うん 理屈は分かるよ。
だが 気に食わない。
話が分かるゥ~ッ! マジ スムースッ!
えっとね え~とね…
長年 コンビを組んできた コメディアンみてーに
欲しい言葉をくれるッ!
誰が コメディアンだってェ?
いや 露伴先生の言うとおり
気に食わねーんだよッ。
いや 別にな この言葉を
使いてーわけじゃあねーんだよ。
ただよォ…。
ああ 使わないことは簡単だ。
しかし 「なぜ」を知るのは重要だ。
「なぜ」ダメなのか 「なぜ」禁止なのか…。
それを知ったうえで あえて使わないのと
ただ使わないのとでは
作品に出る「厚み」が違う。
そうなんだよ。
話が マジで早くて助かるぜ センセェ。
えっとね 「ロウを塗った引き戸」みてーに
こう スムースだ。
さっきから失礼なんだよッ!
もう 例えるのをやめろ!
ハッキリ言うが
そういうの ヘタクソだぞッ!
いや まあ 先生が知らねーんじゃあ
他の漫画家に聞いても 無駄だろうな。
当然だ。
いや しかし…
話してたら ますます気になってきたぜ。
「くしゃがら」…。
「くしゃがら」…
「そばがら」とか。
そばがらが なんで
禁止になるんだよ。
だよなあ。 ヘッ。
まあ 先生 分かったら
また なんか連絡くれよ。
ここは奢っとくからよ。
おい…。
こんな小さい貸し 作らせるな。 おいッ。
(志士)「くしゃがら」 ねえ…。
まったく…。
(志士)くしゃ… くしゃ… しゃが…。
先生 やっぱり ここだった。
今の 志士十五先生ですよね。
一緒だったんですか?
たまたま会っただけだ。
ふーん。
カフェオレ お願いします。
おい なんで注文する。
打ち合わせしたいんですよー。
この間の短編 好評だったんで
編集長が シリーズにしないかって。
「ピンクダーク」のほうは どうするんだ。
そっちは本誌で
新シリーズは別冊だそうです。
月刊だから 大丈夫ですよね。
君 漫画は ボタンを押したら
自動で出てくるものじゃないんだぞ。
アッハハハ 分かってますよー。
で ネタなんですけどー。
今は 短編の気分じゃない。
帰る。
いや でも まだカフェオレが。
それは 十五センセーからの奢りだッ。
いや… いや
ちょっ ちょっ ちょっと待って。
お待たせいたしました。
あ… どうも。
あっつ! ゴホッ…。
(志士)
「くしゃがら」 「くしゃがら」…。
がら… がら。 しゃが… しゃがら。
しゃが… しゃがら。
うう~ん…。
「くしゃがら」。
くしゃ…。
くしゃが…。
あああああ もうッ!
うん。 やめた… やめたッ!
ホラーだ ホラー。 ホラー描こう。
ハァ ハァ ハァ… 露伴先生!
ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ ハァ…。
露伴先生! ハァ フゥ ハァ ハァ…。
ハァ ハァ ハァ…。
一緒に歩くなら
恥ずかしいから 拭いてくれ。
えっ?
(鐘の音)
あ…。
(鐘の音)
禁止用語のリスト?
編集部で配ったんだろ。
僕のところには来てないが。
えー?
いや そんなの あったかなぁ?
いや あったとしても
作家さんに渡しませんよ。
こっちで
チェックすればいいんですから。
それはそうだが
志士十五は もらってたぞ。 あー。
じゃあ 担当が
個人的に やったんじゃないですかねー。
今 連絡取れなくなっちゃって
ちょっと困ってるんですけど。
急に辞めたんだろ?
そうなんですよー。
実家のほうでも 分からないって。
あっ そっか!
十五先生が 何回も編集部に
問い合わせてきてるのって そのリストかぁ。
「あしがら」とか何とか…。
「くしゃがら」だッ。
そうそうそう 「くしゃがら」だ。
でも 全然 意味分かんないですよー。
(息をのむ音)
あっ!
それって 絶対 タイプミスですよ。
タイプ ミス…?
ミス。
フッ… なるほどな。 フフッ。
それなら 説明はつく。
単純ですよー。 思いつきませんでしたー?
あの志士十五のペースに
巻き込まれたせいだ。
あいつとは 徹底的に合わない。
ふーん。
先生 出かける時は
鍵かけたほうがいいですよー。
今は 原稿とか
ネットで売られちゃう時代ですから。
違う。
ホントですって。
タイプミスなんかじゃあない。
十五は 担当に意味を聞いたんだ。
答えはなかったが 「くしゃがら」は
「くしゃがら」で合っているということだ。
でも そんな変な言葉 ありませんよ。
だから
十五は 気になっているというわけだ。
♬~
え… 先生まで調べ始めるんですか?
その くしゃとか何とかっていう。
妙に引っ掛かる言葉だからな。
そうですかぁ?
う~ん。
まあ 何がネタになるか分かりませんし
手伝います。
もう インターネットは
十五が調べ尽くしてるよ。
でも 新しい情報があるかもしれませんよ。
ネットは リアルタイムで
更新されますから。
キリがないとも言える。
デマと真実が 大量に
しかも 無表情に並んでいるからな。
こっちに情報が何もない場合
それを見分けるのは
僕でも 意外と時間がかかる。
その点 本はいい。
装丁 顔である表紙 フォント 手触り。
情報が リアルな五感で感じ取れる。
へー。 でも 先生も
時々 ネット検索してますよね。
だから 調べるものによるんだ。
全否定はしてないッ!
♬~
≪(猫の鳴き声)
(志士)ああ~… うう~ん…。
うう~
無理無理無理無理 無理無理無理無理。
寝よ。 あ~ よし…。
ハァ…。
クソッ! ああ…。
く く く く…。
くしゃ…。
太郎君。
また調べてたんだ。 なんか見つかった?
(平井太郎)見つかりすぎて
逆に分からなくなってきた。
「写真家 平井太郎」。
ネットに いくらでも落ちてる。
太郎君 有名だったから。
でも なんか…
ケースに入った標本みたいだ。
ねえ 太郎君 ちょっと
ネットから離れてみたら どうかな。
自分の足で探す みたいな。
何ていうの?
リアルな 生きた情報?
まあ 露伴先生の受け売りなんだけど
一理あるかなー なんて。
そうだね…。
自分の足で… か。
(店主)いらっしゃい 露伴先生。
今週も あんたの漫画を
売りに来たやつは いませんよ。 当然だ。
ここは 大学教授が よく来るだろう。
民俗学や言語学
特に 方言学で いいのはないか。
は? アンタもですかぁ?
なんだ 漫画家の間で
そういうの はやってんのかなぁ。
ん?
いやねぇ
ここんとこ 毎日の…。
(志士)おぉ~い。
ほら来た!
(志士)オヤジィ!
なんか いい本あったか? え?
誰か なんか 売りに来たんじゃねーのか
おい。 そうだろォ? え?
(店主)そんな 昨日の今日で
出るわけないでしょう。
なあ 頼むよォ~。 店に出してねー
在庫とかあるんじゃねーのか? ええ?
ないのかなァ~。
なあ 何でもいいんだよ。 これだけ
お願いをしてるんだぜェ。 なあ。
(店主)しつこいよ 先生!
ないって言ってんだろ!
(志士)クソッ…。
く~ッ! ハァ… おお うん うん
じゃあ いいや。 うん。
じゃあよォ
アンタは どうなんだよ。 何が?
「くしゃがら」について 知ってんのかって
聞いてんだよ ボゲェーッ!
何の話だ。 知らないよ そんなもん!
何でもいいんだよ。
耳に挟んだこととかよォ やめてくれ!
怖い怖い!
噂話でもいいしよォ
その辺のガキが話してたこととか
なんか あるだろ。 あるだろォ!?
何だよ。
あるよな?
ないよ。 知らない! あるだろ。
あるって言えよォ!
あるって言えよォ!
ああ~! あるってェ~ッ!
ああ…。
何すんだッ!?
岸辺露伴…。
僕の顔が分かるぐらいには
正気みたいだな。
うう…。
邪魔したよ。
(店主)もう来させないでくださいよッ!
ハァ… 冗談じゃねェ まったく…。
ああ…。
ったく 何やってんだ。
面倒を起こすなら
僕の見えないところで やってくれ。
あ ああ…
うん すまねえな。 うん。
君 あれから ずっと調べてたのか?
「くしゃがら」を…。
ああ そうだよ。
俺 もう 気になってしょうがなくてよォ。
入れ込みすぎじゃあないのか?
何も食べてないって感じだぜ。
あんたに会ったあとに
食ったのが最後だから
もう3日ほど 食べてねぇかもな。
は?
僕に会ったのは 1週間前だぞッ!?
そうか? ハッ…。
もうよォ なんか俺 人生で
これ以上ねーってぐらい 辞書を読んだぜ。
小説も 図鑑も 絵本だって読んだ。
警察にまで行ったんだぜ。
なのに やっぱり ねーんだ…。
「答え」は どこにもない。
まあ あれから僕も気になって
少しは調べてたが…。
あったのかッ!?
落ち着けッ!
探したが なかったよ。 さっぱりだ。
だよな…。
クソーッ! さすが
「禁止用語」ってだけのことはあるぜ。
やっぱ
使っちゃあいけねー単語っていうのは
やっぱ むやみに使わねーもんなんだよ。
だから 簡単に出てくるわけがねー。
んなこたぁ 分かってる。
んなこたぁ 分かっちゃあいるんだ。
分かっちゃあいるんだがよォ。
どれだけ古い文献を調べても ダメだった。
「禁止」されてるから
使えないってことなら
この単語は 相当 根深い理由で
そうされてるんだろうな。
お手上げかよッ! 納得いかねーよッ!
諦めらんねーよッ!
なんで 「くしゃがら」は禁止なんですか。
それを 俺は知りてーだけだっつーのに!
ああッ…。
なあ。
僕は これから
らしくないことを言うぞ。
もう
「気にしない」っていうのは どうかな?
えっ… え な なに…?
え? あはっ…
あれっ 聞き間違いかなァ~…。
「気にしない」って言ったか? えっ?
まさかとは思うが…。
ああ 自分でも びっくりするぐらい
らしくない。
もし 僕が君なら
やっぱり 徹底的に調べるだろうからな。
だが 僕の勘は やめろと言ってる。
君は ヤバいところに踏み込む。
いや 踏み込んでるね もう。
だから 引き返せ。
そんなこと…。
無理に決まってんだろ
このビチグソ野郎がァーッ!
ううッ! うう… ううッ。
う… はぁ… えっ?
あ… あれっ? え?
アッハハハ えっ?
親切で
言ってるんだぜ。
関わる必要もない お前ごときにだ。
このッ… 岸辺露伴がッ!
ああ… うっ すまなかった。 悪かった。
今のは 「勢い」ってことで許してやる。
だが これ以上
ナメてかかるようだったら…。 ああ…。
ホントに ホントに ホントに…
アハハハハ!
あ お お… ホントに ごめんな。 うん。
ハハハハハハハ… いや…
マジで 俺も よく分かんねーんだよ。
頭ん中が
「くしゃがら」で いっぱいでよォ
もう どうしていいのか
もう全然 分からねーんだよ…。
もういい 帰れ。
ハァ ハァ ハァ ハァ…。
♬~
うう… 「くしゃがら」だ…。
ハァ ハァ ハァッ… ハァ…。
「くしゃがら」さえ 分かればなァ…。
まったく…。
この恩は 高く買い取ってもらうぞ。
まあ…。
うっ…。
ここまで追い込まれた リアルな
人間の顔を見れたのは 良しだが。
♬~
ハァ~… おいおいおい おいおいおい。
すごい散らかりようだな。 ハァ…。
掃除してないのか。
この本 まだ調べてなかったな。
きっと載ってる… はずだぜ…
「くしゃがら」がよォ。
もう 僕は帰るからな。
忠告はしたぞ。 いいな。
大丈夫だよ。 俺は ただ「くしゃがら」を
「くしゃがら」知りてーだけだからよォ。
♬~
[ 心の声 ]
今 なんか おかしくなかったか…?
[ 回想 ] 俺は ただ 「くしゃがら」を
「くしゃがら」知りてーだけだからよォ。
≪(足音)
おいッ。 おい 君。
はい。
後で あそこの305号室に
ピザ 届けてやってくれないか。
適当でいいから。
あ はい。
♬~
「くしゃがら」… 「くしゃがら」ぁああ…。
何なんだよォ
クソッ…。
何なんだよォーッ
クソッ!
(ノック)
≪こんにちはー。 泉でーす。
えー?
なんで露伴先生が 十五先生に ピザを?
君たち もう少し 漫画家に
気を配ったほうがいいんじゃあないの?
一応 志士十五は人気作家だろう。
いつまでも 担当をつけないのは
どうかと思うね。
編集部でも
問題になってるんですよねー。
ハァ…。
でも 十五先生は
絶対 新しい担当を認めないみたいで
しょっちゅう
前の担当のことで電話してくるし
はっきり言って
かなり迷惑がられちゃってます。
見つからないんだろ 前の担当は。
それがー 分かったんですよー!
その報告しに来たんです。
ホントか?
実家に電話しても 分からないって
言われてたんですけどー
一応 行ってみたんですよー。
ほら 私
露伴先生が
打ち合わせしてくれないから
ヒマじゃないですかー。
アハハハハハハ。
で?
実は その 実家から ちょっと
離れた所に倉庫があって
そこ 電話もテレビもないし 携帯も
つながらない 最悪なとこなんですけど
そこに 引きこもってたんですよー。
ご両親も
誰とも連絡取るなって言われてて。
でも やっぱ 心配だから
教えてくれたんですけどね。
会いに行ったんだろうな?
そりゃ 一応 お土産も
持っていきましたし ちょっとだけ。
で 例の「禁止用語リスト」のことは?
それが…
その話をしたら 怒られちゃって。
「せっかく
考えないようになってきたのに」って。
(編集部員)
あれは 絶対 タブーだ。 ハハハ…。
知ろうとしたら ダメなんだ。
でも
十五先生なら きっと突き止めてくれる。
アハハハハハ…。
だから 引き受けてもらって 安心した!
「引き受けてもらって」?
ご両親は
「つきものが落ちたみたいだ」って。
う~ん… でも そんなに気になりますか?
その くしゃってやつ。
君 興味がないと
ホントに流しまくるやつだなァ。
まあ…
だが 君に初めて感心したよ。
いやー 露伴先生が
自分の足でって言ったんで。 フフフフ。
えっ? 「初めて」?
(ぶつかる音)
うわあ~ッ! ハァッ ハァッ…!
志士 十五…。
え…。
十五先生?
露伴センセーよォ…
ようやく見つけたぜ…。
「くしゃがら」の手がかりをよォ。
なに?
あ… はっ!
これ これ これ 見てくれよ。
なんと 「くしゃがら」ピザだッ!
ハッハハハハハハ…!
あ…?
スゲー! スゲーよ! こんなところに
ヒントが隠されてるとはよォ。
想像もしねーぜッ!
お前 何 言ってるんだ。
それ クアトロフォルマッジですよね?
私も好きです。
あぁ? わけ分かんねーこと
「くしゃがら」ってんじゃねーぞ この野郎。
これは ようやく見つけた
「くしゃがら」ピザだッ!
「くしゃがら」間違いねェッ!
おい 待て おかしいぞ。
先生 ちょっと落ち着いてください。
なんで そんな 「くしゃがら」ばっかり…。
あ? お前 今 「くしゃがら」って言ったな。
言ったよなぁ。
「くしゃがら」ぁああああッ!
何 隠してんだよッ!
知ってることを 俺に 「くしゃがら」
ってんじゃねーぞ この野郎ッ!
おい 待て!
待てねーんだよォッ!
俺は 「くしゃがら」知りてーんだよッ!
今すぐッ! ただちにッ! NOWだッ!
分かるよなァッ!
落ち着け!
何だッ! ああッ。
ぐちゃぐちゃ言ってんじゃねーぞ この…
「くしゃがら」がァーッ!
うううッ…。
ハァ…。
くしゃがら くしゃがら くしゃがら。
ああ~…。
こいつ…
完全に イっちまってる。
僕が落ち着かせるから
少しの間 外に出てるんだッ。
いや でも…。
一対一のほうがいい。 早くッ!
はいッ!
うう… ううッ! あああああッ!
うう… ううッ。 ううッ!
ううッ… 離せ この野郎!
ヘブンズ・ドアーッ!
ハァ…。
まったく…。
ハァ…
使いたくはなかったが しょうがない。
さてと…。
さっきのアレは 何なんだ?
「志士十五。 本名 西 桂太郎」。 普通だな。
「父親が漫画好き。
高校在学中に投稿作品が受賞し
それをきっかけに 漫画家デビュー。
そのころから つきあっていた彼女とは
2年前に別れたが
今年の初めに 結婚式に招待され
出席した…」。
ブフッ…。
いや… 今
興味があるのは
別に
そういうことじゃあない。
「くしゃがら」への異常な執着
さっきの黒い塊…。
ヘブンズ・ドアーなら 十五自身が
気付いていないことも読めるはず…。
なに…?
これは…。
「袋とじ」か…?
馬鹿な。
これまで ヘブンズ・ドアーで
こんなものが現れたことはなかった。
ヤバい…。
何だか分からないが
こいつは ヤバい…!
どうする…。
袋を破って 中を見るか
それとも 引きちぎって 捨てるか。
だが そんなことをしたら
どうなるか予想もつかない。
十五自身への影響も…。
くしゃがら。
中に 何かいる。
くしゃがら くしゃがら くしゃがら
くしゃがら くしゃがら くしゃがら…。
ウソだろ。 出てくるのかッ…?
くしゃがら くしゃがら くしゃがら…。
くしゃがら くしゃがら…。
こいつは… 絶対にヤバいッ!
くしゃがら くしゃがら。
(書きこむ音)
なにッ。
(書きこむ音)
書きこめない…。
まさかッ! 「禁止用語」だからか…!?
「禁止されてるから 使えない」。
それも テレビや漫画の自主規制とは
レベルが違う。
これは…
言ってみれば この世の「禁止用語」。
だから書けないし 言ってはいけないッ!
くしゃがら くしゃがら くしゃがら…
くしゃがら くしゃがら。
くしゃがら…。
もし 言ってしまったら
聞いてしまったら 調べてしまったら…。
(編集部員)だから 引き受けてもらって
安心した! ハハハハハ…!
くしゃがら くしゃがら
こいつは…。 くしゃがら くしゃがら。
くしゃがら
恐らく 言葉そのものッ! くしゃがら…。
くしゃがら くしゃがら
言葉本来の姿だ。 くしゃがら。
くしゃがら
くしゃがら。
そして こいつは今
「くしゃがら」を知りたがった 僕に…。
くしゃがら
くしゃがら。 伝染しようとしているッ。
くしゃがら くしゃがら
くしゃがら くしゃがら。
くしゃがら くしゃがら
くしゃがら くしゃがら。
くしゃがら くしゃがら
くしゃがら くしゃがら。
ウオォォォォォォォォォーッ!
くしゃがら くしゃがら くしゃがら。
くしゃがら くしゃがら。
くしゃがら くしゃがら…。 ぐっ…。
(書きこむ音)
くしゃがら くしゃがら
くしゃがら くしゃがら くしゃが…。
静かだけど 何やってんだろ。
≪(足音)
(扉が開く音)
先生 大丈夫でした?
ああ。 別に 大したことじゃないよ。
えっ?
えっ? あれッ?
あれェッ…?
ん… 何してんだ? 俺。
あれェ? 露伴先生。
えっ な… えっ なんで ここにいんの?
僕の家なんだから 当然だろう。
えっ? う… うっそォ。
え? 俺 先生んとこ 遊びに来てんの?
なんで? いつ? えっ…
覚えてないんですか?
ぜんっぜん。
え… だって さっき…。
本当に忘れたのか。 僕のところに
新作の相談をしにきたんだろう?
話に熱中してるうちに
ナチュラルハイにでも なったのか。
家に帰って 頭を冷やせ。
うう~ん…
いや ぜんっぜん 覚えてねーけど
なんか迷惑かけたんなら 悪かったな。
お~ それにしても なんか分かんねーけど
スッゲー スッキリしてるわ。
ええっ? なんつーの?
あ~…
1か月ぶりに もう 服もパンツも替えて
あっつい風呂に入って
こう ヒゲも剃って
で 真新しいシーツで寝て 起きて
そんで…。
もういいから 帰れ。
そうか。 あぁ。
いや~ それにしても新鮮な気分だから
うん…。 うん。
なんか いいネタ作れそうって
感じがするぜ。 うん。
そんじゃ またな 露伴先生。
出て 左。
スゲー家だな。 へへ…。
行け。 しばらく会わなくていい。
え… どういうことですか?
あんなに興奮してたのに。
何したんですか?
別に。
以前 簡単な催眠術のようなものを
教わったことがあってね。
人を リラックスさせる効果がある。
「一ヶ月の記憶を 全て忘れる」。
まあ 多少の不便はあるだろうが
あの性格なら 大した問題でもないだろう。
でも 最近の十五先生とは
随分 変わっちゃいましたよ。
あんなに
「禁止用語リスト」に こだわってたのに。
さっきだって くしゃ…。
やめとけ。
言霊って言うだろう。
人間 必要以上にこだわると
ああやって 取りつかれたようになるんだ。
君のように
スルーするぐらいが ちょうどいいよ。
でも なんか 口の中に
見えてませんでした? いや。
見えてましたよ
なんか黒いの。 ピザ 食べてたからだろ。
いや そうですけど…。
(ため息)
ってか簡単な催眠って
どういうのですか? 教えてくださいよー。
君ッ しつっこいぞッ!
いいから帰れッ!
♬~
うわっ!
もー!
フゥ…。
♬~
催眠…?
催眠かぁ!
♬~
あ…?
何だ これ。 きったねーッ!
掃除してなかったっけ?
げェー…。
♬~
よしッ!
何だ これ。 くだらねー。
♬~
(ページをめくる音)
(店主)これでもない これでもない
これでもない これでもない…。
ああ… あ… 分かんねェ…
分かんないなァーッ。
ハァハァ ハァハァ… あっ…?
ああッ!
先生 ちょうどよかったァ…。
この間 十五先生が来て
ちょっと あったでしょ?
それでね
妙に気になって 調べてるんですけど
全然 分かんなくて…。
ほら… あの…
く… くしゃ… くしゃが…。
ヘブンズ・ドアー。
♬~
(書きこむ音)
♬~
[ 心の声 ] まったく…。
考えてみれば 十五は どれだけ
あの言葉をバラまいたんだ…。
意味のない単語として聞き流せば
問題ない。 大抵の人間は そうだろう。
だが 興味を持ってしまったら…。
僕自身 あれ以上 深入りしたら
どうなっていたか分からない。
いや 既に あの「袋とじ」が
できている可能性すらある。
[ 心の声 ] あの「袋とじ」の中のもの…。
細菌や ウイルスのように
「好奇心」に寄生するのだとしたら…。
♬~
不用意な言葉は 使わないに限るな。
(扉を開ける音)
♬~
誰かに もらわれて
どっか別のところで