【連続テレビ小説】エール 総集編(前編)[解][字]…のネタバレ解析まとめ
出典:EPGの番組情報
【連続テレビ小説】エール 総集編(前編)[解][字]
「エール」の感動をもう一度! 裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)、二人が音楽と出会い、運命に導かれるように結婚し、ともに歩み始めるまでを一挙に見せます!
番組内容
福島で呉服屋の長男として生まれた裕一(石田星空)は、父三郎(唐沢寿明)のレコードを聴いて西洋音楽を好きになる。豊橋では双浦環(柴咲コウ)の歌を聴いた音(清水香帆)が歌手を夢見る。裕一は作曲の才能を藤堂先生(森山直太朗)に見いだされる。裕一(窪田正孝)は銀行に就職するが、国際コンクールで裕一の曲が受賞したことがきっかけで音(二階堂ふみ)と文通が始まる。そして出会った二人は…
出演者
【出演】窪田正孝,二階堂ふみ,中村蒼,山崎育三郎,森山直太朗,松井玲奈,佐久本宝,森七菜,仲里依紗,野間口徹,野田洋次郎,三浦貴大,柴咲コウ,古田新太,菊池桃子,光石研,三田和代,志村けんほか
原作・脚本
【脚本】清水友佳子,嶋田うれ葉,吉田照幸
音楽
【音楽】瀬川英史ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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♬~
♬「泣いて 生まれて 響く命」
♬「きっと嬉しくて
笑っているんだ」
♬「僕らはきっと 出逢うでしょう」
♬「手を引き 背を押し 出逢うでしょう」
♬「きっといつか今日の日も
意味を持って ほら」
♬「耳をすませば」
♬「星の見えない日々を 超えるたびに」
♬「互い照らすその意味を
知るのでしょう」
♬「愛する人よ」
♬「親愛なる友よ」
♬「遠くまで 響くはエール」
♬「朝も昼も夜もずっと そこにある」
♬「暗闇にほら響け 一番星」
♬「愛する人よ 親愛なる友よ」
♬「星影に
響くはエール」
昔から 絹産業の盛んな福島。
その県下有数の呉服屋 喜多一に
この日
待望の跡取り 古山裕一が生まれました。
もう無理かなって諦めかけてたのに…。
アハハハハ!
子宝に恵まれず
諦めかけていた時にできた子ども 裕一。
おかげで ご両親の愛情をたっぷり受け…。
いや いささか 受け過ぎたのか
ちょっぴり心もとない
子どもに育ったようです。
(笑い声)
とにかく 運動は からっきし。
そして 何より…。
(裕一)に… に… 庭の…。
緊張すると 言葉がうまく出ません。
(笑い声)
(史郎)おなごか おめえ。
(太郎)おめえんち
すげえ でっけえ呉服屋らしいな。
町一番の金持ちだって自慢してっぺ。
でも おめえに文句があるやつ いっぞ。
(とみ)うぢの店の方が金持ちだわ。
それに あんたんどごは
父っちゃんの代になって落ち目だっぺ。
そこでだ どっちが金持ちか
けんかで決着つけっぺ。
(史郎)乃木大将が審判すっから。
んっ…。
ん~…。
やっ!
(鉄男)おめえの負けでいいな?
やめろ その笑い。
悔しいことを笑ってごまかすな。
この づぐだれが。
「づぐだれ」というのは
「意気地なし」という意味です。
あと もう少し…。
(けん玉をする音)
できたね~!
人生いろいろある。
なかなか 思いどおりにはなんねえ。
だから 何でもいい 夢中になるもん探せ。
なっ?
それがあれば 生きていけっから。
お… お父さんは?
えっ?
お… お父さんは 何?
今は おめえの話だよ。
あるか? 何か。
そして この日
初めて 古山家に西洋音楽が流れました。
≪♬~(「威風堂々」)
♬~
裕一。
その音色は
裕一の心に 深く響き渡ったのです。
運動会が近づいた ある日のことでした。
(新田)おい 何やってんだ!
まだ始まってもいねえ。
こいつが駄目なんです。
いっつも すぐ崩れる。
古山!
そんなことだから どもってんだ。
さ… さっき… 人が…。
人のせいにすんな。 歯 食いしばれ。
(藤堂)よしましょうよ 先生。
言葉の詰まりは
本人の気合いの問題じゃない。
まあ いいわ。 とにかく気合い入れろ。
君 名前は?
こ… こ こ こ…。
落ち着きなさい。
ところで 君は 何が得意だ?
えっ? な… 何も… 何もないです。
何もないか。 まっ そのうち見つかるさ。
(声援)
西洋では 競技と競技の間に
音楽とか演奏するんだ。
「ハーモニカ部 ここにあり」って
驚かしてやろう。
(新田)よ~い…。
(笛の音)
(声援)
ぎばっと速ぐ! ぎばっと! 頑張れ!
うっ…。 裕一!?
立て! 頑張れ 裕一!
あっ…。
(笑い声)
♬~
頑張れ!
頑張れ!
頑張れ 裕一!
頑張れ!
裕一!
もうちっとだ 頑張れ!
頑張れ!
頑張れ!
行け!
頑張れ!
(拍手と歓声)
よく頑張ったな!
それは 生まれて初めて聞く
自分へ向けられたエールでした。
(藤堂)北原白秋の詩だ。
みんな この詩に曲をつけてみよう。
浮かばなければ ハーモニカでも
ここのオルガンを使ってもいい。
とにかく 音を出して 曲をつけてみろ。
楽しいぞ。
(久志)どうする? その宿題。
うわっ!
き… き き… 曲作るなんて
で… できないよね。
ハーモニカだって まだ習いたてだし。
簡単だよ。 うち ピアノあるから。
君の家だって 蓄音機あるじゃない。
何 聴いてるの?
ろ… 浪曲とか民謡が多いよ。
たまに 西洋音楽。
へえ~。 君も聴いているんだろ?
特に 西洋音楽 聴いているなら
作曲は簡単だ。 やってみたらいい。
で… でも…。
できるよ きっと。
ありがとう!
♬「なぐさめ たまわん」
♬~
出来た!
古山?
これは…。
♬~
ともかく ご両親に伝えたくて。
裕一君の才能についてです。
才能?
裕一君には
類いまれな音楽の才能があります。
ただいま! おっ お帰り。
お帰り。
あっ あれ? せ… 先生 どうしたの?
古山 前に聞いたよな?
得意なものは何かって。
はい。
見つかったんじゃないか?
えっ? 人より ほんの少し
努力するのがつらくなくて
ほんの少し簡単にできること。
それが見つかれば しがみつけ。
必ず 道は開く。
はい!
♬「ながるるみづは いっしんに」
裕一の才能は 学校中のうわさとなり
放課後には 自分の詩に曲をつけてくれと
生徒が集まるようになりました。
調子に乗った…
いや 気分の乗った裕一は
藤堂先生の勧めで
ハーモニカ部にも入りました。
♬~
君… いつも突然いるね。
存在感はあるのに
気配を消すのは得意なんだ。
≪ふざけんじゃねえ!
(殴る音)
この前 おめえから買った魚 腐ってたぞ!
すいません。
父っつぁんに よ~く言っとけ。
今度 あんなもん売りやがったら
ただじゃおかねえって!
あれ?
それは 鉄男が落とした和歌の本でした。
た… 確か… この辺…。
≪(善治)ふざけんなよ!
(殴る音)
(善治)親に口答えなんか 100年早えわ!
(富紀子)やめて あんた!
(善治)
おめえは魚屋だ。 色気出すんでねえ!
何してんだ。
ご… ごめんなさい!
悪かった。
これ。
すまねえ。
昔の歌とか詩が好きなんだ。
しょ… 将来は 詩人だね。
あ… あの詩 すごかったもん。
そ… 「空にかかれし 満月の」ってやつ。
親父が許さねえ。
でも 詩を書ぐのは得意なんでしょ?
藤堂先生 言ってた。
しがみつけば 必ず道は開ぐって。
大将 詩人になれるよ!
バカ言うな。
いや 絶対なれる!
うるせえ。
母ちゃんや弟の面倒も見なきゃなんねえ。
おめえとは違うんだ。
あの詩…。
あ… あの詩に曲をつけっから。 いい?
つけたら 持ってくね。
しかし 鉄男の一家は
あちこちから借金をし
夜逃げをしてしまったのです。
大将 出来たよ。 聴いで。
♬「空にかかれし 満月の」
♬「地上に落ちて はかなくも」
♬「光里包みて 紅燈の」
(藤堂)
頼ることは恥ずかしいことじゃない。
自分の才能から逃げるな。
一生 後悔するぞ。
そのころ 愛知県豊橋市でも
一人の少女が
音楽と 運命の出会いを果たしていました。
そこにいたのは
世界的なオペラ歌手
双浦 環でした。
♬~
(外国語)
(安隆)あの~ あの~…。
(環)はい?
これは うちの娘で 音です。
音ちゃん。 すてきなお名前ね。
(音)感動しました!
ここに… ここに 届きました!
私みたいになりたい?
はい!
だったら 目の前のことに
全力を尽くしなさい。 分かった?
はい!
よかったら 聴いて。
あたし… 歌 習いたい。
歌?
うん。 歌 歌いたい!
年月は流れ 商業学校へ進学した裕一。
しかし 音楽に夢中で留年していました。
それは そろばんの玉がね?
(せきばらい)
♬~
次の公演では 独自作を1曲
演目に入れようと決めた。
君は 作曲が得意だと聞いた。
やる気はあるか?
あっ… はい!
曲目は 全員の投票で決める。
はい!
小学生で西洋音楽に出会って以来
裕一は ずっと 音楽の勉強を
独学で続けてきました。
音楽家になりてえのか?
お… 小山田先生のような…
西洋音楽を作曲する音楽家になる。
おっきな夢だな。
と… 父さんも… 無理だって思ってんの?
おめえは長男だ。
家を継ぐことは考えたことはねえのか?
お… 音楽家になれって…。
好きなこと… 好きなこと 得意なことに
力 尽くせって言ってくれたじゃない。
成長すっと変わる場合もあんだろ。
変わんない… 逆に 日々 募ってる。
おめえ 今日 何時ごろ 帰んだ?
ふだんどおりだけど。
裕一は?
僕 遅くなる。 今日 決選投票なんだ。
投票って何の?
うん? 言ってなかったっけ?
ハーモニカ倶楽部の 今度の公演で
自分の曲 1曲演奏すんだ。
もし 僕の曲が選ばれたら
みんな 見に来て。
おう! もちろんだ!
最後の一枚です。
(及川)旦那 大変です。
(吉野)連帯保証人 お願いします。
私を信頼しておくれやす!
ああ…。
(三郎)今度ばかりは
あんたしか喜多一を助けらんねえ!
恥を忍んで このとおりです!
どっちかを養子に出せ。
融資の条件は それだけだ。
そんな中 公演が始まりました。
♬~
(三郎)おめえ 音楽好きか?
何?
好きなもんが
あるっつうのは幸せなことだ。
俺… やっちまったんだ。
選ばれたのは 裕一の曲でした。
♬~
僕が養子に行くことが…
一番いいんだよね?
ここ ふんばれば
また新しい可能性も見えてくる。
どんな?
♬~
分がった。 今度の公演で最後にする。
こんなこと言うのも 何だけど…
諦めんなよ。
残酷だよ… 父さん。
♬~
(拍手)
裕一は 音楽の道を諦め
茂兵衛伯父さんの経営する銀行で
働くことになりました。
みんな並んで 大げさ。
父さん… 俺 もう大丈夫だから。
つれえことあったら
いつでも帰ってこいよ。
ありがとう。 行ってきます。
(大河原)行ってらっしゃい… 坊ちゃん
風邪ひかねえようにね。
仕事を覚え 一人前と認められたら
養子になることが決まっていたのです。
はい はい はい…。
何やってる?
ぼ… 僕…。
俺だ。 鉄男だ。
うん? の… 乃木大将?
この づぐだれが。
ああっ!
なあ… 何で 音楽やめた?
か… 家族のためだ。 しかたない。
お前の家の事情は よく分かんねえ。
ただ 昔 俺が「弟 食わせるために
働かなきゃなんねえ
詩なんか書いてらんねえ」って言ったら
お前 言ったよな?
しがみつけば 必ず道は開ぐって。
大将 詩人になれるよ!
俺は お前の言葉信じて
まだ詩を書いてる。
なぜだと思う?
子どもの頃
唯一 励まされた言葉だったからだ。
俺が詩を書き お前が曲を作る。
その歌がレコードになり みんなが聴く。
そんな夢を描いてたけど…
それもまた夢だな。
フフ…。
鉄男の懸命な説得と
国際作曲コンクールの知らせが
舞い込んできたことで
裕一の心は揺れましたが
再び 作曲することにしたのです。
(秒針の音)
音楽から離れたブランクは…
長すぎました。
♬~(歌声)
一方 豊橋に住む音は
歌手になる夢をかなえるため
海外から帰国した 歌の先生を
訪ねていました。
(拍手)
(御手洗)マーベラス! ファンタスティック!
あなたね 見込みがあるわ。
私の教室に通いなさい。
先生!
「先生」はやめて。 私とあなたは フレンズよ。
御手洗さあ…。
シャラップ!
ミュージック ティーチャーと呼びなさい。
ミュージック チーチャー?
違う。 こう 「ティー」 分かる?
ティ…。 ティ…。
ティ…。 ティ…。
「竹取物語」?
そう!
お前が音楽に戻ってくれてよかったよ。
これを区切りにする。
音楽に別れ告げるための儀式なんだ。
♬~
出来た…。
1か月後 初めての交響曲
「竹取物語」が完成しました。
それから しばらくして 裕一のもとに
イギリスから手紙が届きました。
や… やった!
それは 国際作曲コンクール
入賞の知らせでした。
(三郎)乾杯。
乾杯。
おっ! いいね。
あ~ しかし すげえ賞 取ったな。
おめでとう。
怒ってっかと思った。
浩二は カンカンだ。
母さんは不安がってる。
俺も あの人にどやされた。
これは どういうことだ!?
ごめん… どうすっか決めてから
報告するつもりだったのに。
いや~ いいんだ いいんだ。
しかし あれだな 賞金あんだべ?
いぐらだ?
400ポンド。 うん。
日本円で 4, 000円ぐれえかな。
(せきこみ)
大丈夫?
ビッグニュース ビッグニュース…
ビッグニュース… ビッグニュースだ!
史上最年少だよ!
私と2歳しか違わんのに…
紛れもない天才だわ!
この喜びを伝えたい。 ファンレターだわ!
「古山裕一様
私は 豊橋に住む 関内 音と申します。
あなたのような天才が同年代にいることに
勇気づけられますとともに
自分に焦りも覚えます。
あなたの魂を 私は歌で伝える。
そんな夢のような日を
思い描いています」。
「たくさんの手紙の中で 音さんの言葉が
特別に私の心に響きました。
そして何より あなたが
歌手を目指しているということに
興味を引かれました。
あなたの好きな詩と
音域を教えて頂けたら
あなたのために曲を作りたいと
望んでいます」。
やった~! やった やった
やった やった! すごい!
(梅)うるさいわ~!
それからも 2人は
手紙を交わし続けました。
好きな音楽のこと 家族や友人
将来の夢 不安。
何でも手紙につづりました。
そうだわ!
留学させればいいんだよ。
英語もうまくなるし 人脈も広がる。
独学の青年が一流になれるほど
甘い世界じゃない。
うちひしがれて帰ってくるよ。
もし成功したら?
万に一つもないね。
ええ~っ!?
ええ~っ!? ほ ほ ほ… 本当ですか?
ものにならなかったら帰ってこい。
急転直下 裕一の留学が認められたのです。
「私の留学は決定しました。
必ず 世界を代表する作曲家になります」。
(梅)どうすんの?
現実 受け止めんと。
お姉ちゃんと その人には
大きな差があるの。
じゃあ ロンドンに行ったら
どうなると思う?
一流の音楽家とか
歌い手さんたちと出会って
彼の心が 遠く離れた国の文通相手に
あり続けると思う?
分かってる… 分かってる…。
分かって… ないな あたし。
(机をたたく音)
わっ!
て て… 手紙が…
手紙が来ない理由は何ですか?
(鈴木)いや… それは…。
ああ~! 嫌われたんだ~!
もう生きてけない~!
「ご留学の件 おめでとうございます。
お手紙を返さなかった理由は
私が あなたの勉学の足かせになるのが
嫌だからです。
どうか 私のことは忘れ
作曲にいそしんで下さい。
さようなら」。
裕一は 豊橋へ向かいました。
先生が 東京帝国音楽学校に
推薦状 書いてくれるって。
(光子)試験は?
実技があるけど 君ならオーケーだって。
(吟)お母さん 私は? どうしたらいい?
お姉ちゃんって いっつも人頼りだよね。
私は あんたが気落ちしとるの
心配して 一緒に東京行くのよ。
あんた まだ
文通相手のこと諦めきれとらんでしょ。
そんなことない!
ある。
行き遅れ!
あ~!
≪(吟)やめて!
ガハハハハ! アジフライ 取ったり~!
いかん 音!
あっ!
お お… 音さん…。
裕一さん?
今日は 何の用事で こちらに?
しばらく置いて頂けませんか?
えっ!?
彼のためよ。 つらくても ちゃんとね。
母 光子から 裕一と別れるよう
念を押された音。
(歓声)
(拍手)
あ~ ここにも手筒花火あったんだ!
気付かなかった。
そうなの。
裕一… お か え り。
あの… お世話になりながら
ちゃんと言えてなかったんですが
音さんは すばらしい女性です。
お嫁に下さい!
どういうこと?
私も 今 初めて。
僕には あなたが必要です。
僕の音楽には あなたが必要なんです!
どうか 僕の申し出を受け入れて下さい。
裕一さん…。
おいおいおい!
(腹をくだす音)
どうして? 急に。
分がんない。
本気?
ほ… 本気。
いいの?
何が?
私で。
音さん 音さん ちょっと こっち来て。
僕には 君しかいない。
私にも あなたしかいない。
裕一さん。
はい。
結婚しても 歌手になる道は諦めない。
それでもいい?
うん。 僕も望んでる。
2人で頑張ろう。
お互いに エール送り合って
音楽の道 極めよう。
もう一度 言います。
僕と 結婚して下さい。
はい。
♬~
あ~!
あちっ! あちちっ! あちあち…。
あっ!
あちあち…。
裕一さん。
は… はい はい! あっ… はい?
確かに あなたは未来を嘱望される
作曲家かもしれんけど
私に言わせれば
まだ一曲しか認められてない ひよっこよ。
おい!
それでも あなたに託すの。
何でだと思う?
せ… 接吻したからですか?
バカ! 違う!
あんたっていう人間を信じとるの。
頭は 駄目と言っとるけど
心が 行けって叫ぶの!
だから… しょうがない。
許す! 私は。
ありがとうございます!
三郎さん 古山家の許しを頼みます。
何だか分かんねえが… 俺に任せとけ!
♬「過ぎし日はせつな」
2人は結婚の約束をし
音は音楽学校の入学準備で東京へ
裕一は福島へと戻ることになりました。
♬「こころに灯して」
しかし…。
母さん 聞いてますよね?
なぜ反対なんですか?
あなたの幸せを考えてのことよ。
僕の望みは結婚です。
お許し下さい。
まさ 俺からも頼む。 このとおりだ。
あなたは 外国に何をしに行くの?
音楽の勉強です。
そこに結婚は必要?
必要です。
彼女がいないと曲が書けません。
じゃあ もし 彼女の心が変わって
あなたの目の前から いなくなったら
あなたは どうすんの!?
音さんは そんな人じゃない!
人の心は分かんないわ。
音さんは信頼できる唯一の人なんだ!
プッ… ククク…。
アハハハハ…!
兄さんさ 自分がどれだけ恵まれてっか
分がってる?
みんな 兄さんの心配してんだよ。
確かに兄さんは
音楽諦めて 養子に行ったよ。
けど 結局 また戻ってきて
勝手に留学決めて
それをみんな 何にも言わずに
応援しようって言ってんのに
女にうつつ抜かして 結婚するだなんて
どうかしてるよ。
周りの愛を当たり前だと思うなよ!
もっと感謝しろよ!
これまで ずっと我慢してきたけど…
兄さんが嫌いだ。
更に 追い打ちをかける事態が。
裕一の留学は取り消しになりました。
(泣き声)
≪(物音)
裕一!
もう終わり… 全部終わり。
(三郎)
「裕一の留学が取り消しになりました。
世界的な不況による
経済状況の悪化が原因です。
裕一は打ちのめされています」。
音は 裕一のために
何かできることはないか
考えを巡らすのですが…。
ねえ あさって 空けときんよ。
覚えとる?
えっ?
音は 歌手志望なんです! ゆくゆくは
レコードを出すのが夢なんです。
レコードじゃなくて 舞台に立つこと。
間違わんでよ。
(智彦)
あっ… そうですか。 残念ですな~。
興味があったらコロンブスレコードで働く
叔父を紹介したのですが。
それだ!
国際作曲コンクールで二等ですよ!
最新の楽譜もあります。
どうです? すごいでしょう。
すごいね~。
ありがとうございます。
うちは要らないな。
はあ?
金になんないもん。
もっと分かりやすくないと。
そんな時
廿日市を呼び寄せた人物がいました。
(小山田)忙しいのを 悪かったね。
いえ…。
先生のご用事ならば
いつだって はせ参じます。
どうした? 汗かいて。 暑いか? うん?
君… 君 この男を知ってるか?
(廿日市)この男が何か?
君のところでな 契約してほしいんだよ。
こちらから連絡させて頂こうと
思っていた次第です。
1年で 3, 500円。
ひとつきに2曲以上書いて頂く
ということで いかがでございましょう?
コロンブスレコードが
契約してくれるって。
裕一さん 認められたんだよ!
ありがとう。
じゃあ…。
それだけで…。
音さんは… 音さんの人生 歩んで下さい。
(鉄男)おめえ 何言ってんだ!?
おい! おめえ どうした?
何で そんなに ひねくれてんだ!
せっかく この人が見つけてくれた契約
何で断んだ?
東京に行け… なっ?
俺も行く! 作詞する!
お前は曲作る!
何で みんな… みんな
僕のこと ほっといてくれないんだ。
救われたからよ!
励まされたからよ!
みんな
あなたに幸せになってもらいたいの。
自分の人生を歩んでほしいの!
僕は この家を出ます。
裕一 本気なの!? あなたには無理!
ここにいて… そばにいて!
母さんは 僕の幸せ 願って
「無理」って言ってくれてんだよね。
音さんはね 僕の幸せ 願って
「やれる 大丈夫だ」って言ってくれる。
幸せ願ってくれる思い 一緒だ。
だったら… 僕は音さんに賭けます。
ごめん。
父さん…。
俺… 家族 捨ててきた。
おめえが捨てたって
俺は おめえを捨てねえ。 安心しろ。
父さん…。
ありがとう。
♬~
音さん。
裕一さん…。
♬~
頂きます。
頂きます。
ねえ 裕一さん。
うん?
私のことは 音でいいよ。
呼んでみて。
えっ? 今?
早く。
お… 音。
キャ~!
な~に? あなた。
(笑い声)
お~!
あっ 廿日市さん!
今日から お世話になります。
おはよう。
もう一人 来てるはずなんだけどな~。
あっ!
彼が 君と同期の作曲家 木枯君だ。
どうも。
どうも。
作曲家の皆さんの部屋は ここね。
古山君…。
はい!
いきなりで申し訳ないんだが
この歌詞に曲つけてくれないか?
えっ? ちょ… ちょちょ… あの あの…
「ちょいちょい」って
これ どういう意味ですか?
知らないよ。
僕が作ったんじゃないんだもん。
じゃあ 頑張って。 いい曲つけてね。
は… はい…。
あ~ 牛島先生 どうも!
21曲 連続不採用。
こっちも 19曲連続。
契約金は… いっぱい残ってっから
当面は。
はあ?
あの契約金 印税の前払い金だぞ。
売れなかったら 全額返さなきゃいけない。
もし返済請求されたら
家族 養えなくなるぞ。
うそだろ~…。
そんなこととは知らない音。
夢いっぱいの
音楽学校生活が始まりました。
「ドン・ジョヴァンニ」は
モーツァルトの歌劇中
最大の作品であると認められています。
ドン・ジョヴァンニの
恋の遍歴と悲劇的な末路。 そして…。
そして 人々を翻弄する
愛という名の魔物。
キャ~!
(潔子)えっ… プリンス?
プリンス?
(和子)うちの学校のスターよ。 今 3年生。
頭脳明晰 眉目秀麗 神が与えし美しい声!
それは ちょっと褒め過ぎじゃないかな?
あっ…。
でも ありがとう。 うれしいよ。
(恵)止めて。
あっ 忘れてた。
(保)どうしたの? 裕一君。
いや…。
裕一さん…。
ユウイチ…。
古山…?
うん?
古山? いや 僕だよ… 佐藤久志。
存在感はあるのに
気配を消すのは得意なんだ。
ああっ… 久志!
アハハハ!
久志! えっ!?
うわ~!
この再会が やがて
裕一の運命を大きく変えていくのです。
アハハハハ!
失礼します。
来期の契約料…。
はい。
1, 700円でいいかな?
い… 今の半額ですか?
君はさ~ この一年
レコード 一枚も出せてないわけよ。
本来 会社は
その金 返せって言える権利あるのよね。
っていうか 普通 クビだよ。
はあ!?
いや 本当に ごめんなさい!
何で 裕一さんが謝っとるの?
だって これも ひとえに
僕が ふがいないせいだから!
違うよ! 私は会社に怒っとるの。
えっ?
今から 行ってくる。
ちょちょ… 音 音! が… 学校は?
私には あなたの音楽家としての
価値を守る義務があるの。
なぜ 契約金の減額なんて話に
なるんでしょう?
(廿日市)赤レーベルは流行歌。
青レーベルは西洋音楽。
古山君は 赤レーベルの作曲家です。
この赤レーベルは居酒屋のおじさんたちに
聴かせる音楽なんです。
彼は そこんところが
分かってないんじゃないかな~?
どういうことでしょう?
普通に盛り上がるメロディーを
作ればいいんです。
それを西洋音楽の
こざかしい知識をひけらかし
音楽を台なしにしている!
分かりました! その点につきましては
ご要望に お応えできるようにします。
ですから…。
やっぱり 向いてないんじゃないかな~?
小山田先生は
どうして 彼なんかを推薦したんだろう?
君のところでな 契約してほしいんだよ。
ということは つまり…
廿日市さんは 小山田先生を 随分と
軽く見ていらっしゃるってことですよね?
はあ!?
だって そうじゃないですか。
先生のご紹介で専属契約した主人を
こんな ぞんざいに扱うなんて。
いやいや ぞんざいって…。
そうだ。
いっそ 先生に直接お願いした方が
話は早いかもしれませんね。
ちょちょ… ちょっと待った!
というわけで 無事 去年と同じ
3, 500円で交渉成立しました。
お… お… 音!
へえ… あの巨匠に
目をかけてもらったのか。
見てくれとる人は
ちゃんと見てくれとるんですね。
でも 音さんもすごいな。
会社に直談判しに行くなんて。
大した行動力だよ。
じっとしとれんタチで。
その行動力
自分のためにも使ってみたら?
えっ?
鷹ノ塚記念公演の選考会
募集始まるみたいだよ。
えっ? 音さん 本当に応募したの?
うん。 受けてみることにした。
プリマドンナか… 憧れちゃう。
裕一さん 全然寝とらんよね?
少し休んだら?
そんな時間ない。 早く結果出さないと。
小山田先生の顔に
泥を塗るわけにいかない。
そうか… あいつも
袋小路に迷い込んでるんだな。
早く世間に認めてもらいたいって
焦ってるんです。
なんとかしてあげたいけど
どうしたらいいのか…。
ごめんなさい。 もう行かんと。
分かった。 僕に任せて。
(田中)失礼します!
えっ? あっ あっ… ちょっ…。
うん? な… 何?
えっ? おお おお おお…。
うん? うん? うん? うん? うん?
この度は 我が応援部の
新しか応援歌 作曲ば お引き受け頂き
ありがとうございます!
えっ 何の話?
応援歌か… 裕一さん やるかな~?
あいつ このままじゃ駄目になるよ。
というわけなの。
久志が…。
それは 早稲田大学の応援歌
「紺碧の空」の歌詞でした。
わ… 分かりました。
あの… や や… やります。
(歓声)
先生~!
慶應の「若き血」ば 超えて下さい!
必ず!
はい…。
困ってるね~。 書けないの?
あ~… 応援歌って ほら
ある一定の形 あるじゃないですか。
どうしても それに引っ張られて
ありきたりになっちまうんです。
ありきたりじゃ まずいの?
そりゃ どうせ 作んなら
違うもん作りたいじゃないですか。
裕一君が書けないのはさ 自分の音楽を
作ろうとしてるからじゃないかな?
僕が コーヒーをブレンドする時に
考えるのは お客さんの顔なわけ。
廿日市さんも言ってた。 裕一さんの音楽は
西洋音楽に こだわっとるって。
そ… そりゃ… そりゃ 僕 西洋音楽で
音楽 学んだんだもん しかたない。
そうなんだけど… 作ってくる曲が…。
何?
「鼻につく」って。
普通に盛り上がればいいメロディーも
何か…
こざかしい知識をひけらかして
曲を台なしにしとるって。
一年間 一枚も
レコードになっとらんのは事実だし
何か変えんと まずいと思う。
自分の音楽は捨てないよ。
捨てたら意味ないよ!
(せきばらい)
出来た… 最高傑作かもしれない。
裕一が書き上げたのは
応援歌ではなく
西洋音楽でした。
(貧乏揺すりの音)
ん~… うお~!
曲は まだね!? あと5日ったい!
(小熊)団長! もう
ほかの作曲家を手配しましょう!
こ~りゃ~!
お前… それでも応援部とね!?
人ば信じられんで なにが応援ね!
俺は信じとう… あいつば 信じとう!
はい…。
…で?
(楽譜を投げ捨てる音)
(泣き叫ぶ声)
音…。
うん。
(すすり泣き)
俺は… 九州の片田舎で生まれました。
中学時代は 野球ば やっとって
甲子園行けるかって期待されとりました。
そん原動力が… 清水誠二でした。
俺たちは 公園で…
キャッチボールば しておりました。
遠くに… フライば投げたとです。
清水は そん球ば捕ろうとして
足に… 深い傷ば負ってしまいました。
清水は 手術ば耐えました。
ばってん… 足は元どおりにならんで…
学校も やめました。
しばらくして 清水に会いました。
「俺に何かできることなかね?」と聞くと
「強いて言うなら
早稲田ば勝たしてくれや。
それが一番の楽しみやけん」って。
(ラジオ)「ランナーは 二塁から三塁…」。
(田中)俺は そん時 気付いたとです。
野球ば頑張っとる人のラジオば聞いて
頑張れる人がおる。
頑張ることは… つながるんやって。
なのに… 全く勝てん。
清水に申し訳のうて…。
何で 僕なんですか?
あっ…。
俺は… 器用なやつは好かん。
先生は… 不器用やけん。
先生… 書いて下さい。
清水のために。
明日までだね?
はい!
(鳥の鳴き声)
団長。
うん?
書けました。
先生…。
うん?
「紺碧」の「碧」が「壁」になっとります。
ご… ごめん。
早稲田 ここにあり~!
そ~れ かっ飛ばせ! はい!
かっ飛ばせ!
(ラジオ)「さあ 最終回
早稲田 このまま勝利を収めるか!?
ピッチャー 投げた!
三振! ゲームセット。
5対4で早稲田 勝利」。
♬「紺碧の空 仰ぐ日輪」
♬「光輝あまねき 伝統のもと」
♬「すぐりし精鋭 闘志は燃えて」
♬「理想の王座を 占むる者われ等」
♬「早稲田 早稲田」
♬「覇者 覇者 早稲田」
今日は 特別講師をお招きしました。
双浦 環先生です!
えっ!?
双浦先生には
記念公演の審査もして頂きます。
環先生。
私 子どもの時 先生に
お会いしたことがあるんです 教会で。
教会?
その時 レコードを頂きました。
(環)よかったら 聴いて。
あの時の!
えっ… 覚えてて下さったんですか?
(環)あなた この学校に入ったのね。
はい。
音さん 双浦先生と知り合いなの?
あなた 夏目千鶴子さんよね?
(千鶴子)はい。
去年のソロリサイタル 拝見しました。
えっ… 本当ですか!?
みずみずしくて とってもすてきだった。
いい刺激になったわ。
光栄です。 ありがとうございます。
早稲田の応援歌 作ったんだって?
いや~ 大したもんだ~。
あ あ… ありがとうございます。
うちじゃ 一枚もレコード出せてないのに
いい度胸だよね~。
すいません…。
よそで張り切るのもいいけどさ
そろそろ うちでも利益出せない?
はい。
でね… 地方小唄 作ろうと思ってさ。
はやってるでしょ? 今。
地方小唄 要するに ご当地ソングです。
曲 作んない?
ぼ… えっ 僕でいいんですか!?
こ~れ 大抜擢だよ~!
ぼ… 僕 頑張ります!
あ… ありがとうございます!
うん。
はい… 頑張ります!
♬~
最終選考に進むのは…
夏目千鶴子さん そして…
古山 音さんの お二人です。
ありがとうございました。
古山さんは 審査の基準を
十分に満たしていたわ。
ただ… 最終選考で勝つのは
難しいでしょうね。
えっ?
あなたは 何を伝えたいの?
何も伝わらなかったの…
あなたの歌からは。
何? これ。
うん? 地方小唄の歌詞。
これに どんな気持ちで曲つけていいのか
分かんない。
音は? どう?
頑張って読んどるけど
役に立っとるかどうか…。
そうか 分かった!
えっ 何?
本を読むより 実践で学ばんと。
じ… 実践?
男女の社交場といえば カフェーでしょう。
「椿姫」のヴィオレッタも
社交場の華だった。
初めまして 新人の音江です。
ありがとう。 元気出てきた!
おっ!
音江ちゃん!
俺の話も聞いてよ~。
どうしたの? フクさんは。
そのまま?
そのまま。 割らなくて…?
音江ちゃ~ん。 こっちも来て 音江ちゃん。
ちょっと フクちゃん 終わってからね。
あっ フクちゃんって言っちゃった…。
指名も ひっきりなしだった。
うわ~ 指名も ひっきりなし…。
頑張れ。
え~? じゃあね。
木枯君! 悪いんだけどさ
今日も 様子見に行ってきてよ。
やだよ 自分で行けよ。
何で… お願いだ。 友達だろう?
自分の嫁だろ?
何で… 友達でしょ…。
木枯君!
お待たせしました~。
鉄男さん!
お~ 本当に女給さんになってる。
どうして? いつから東京に?
さっき 着いたとこ。
休暇の間 泊めてもらおうと思って
裕一のとこ行ったら
音さんのこと
あんまりにも心配してるもんだから
代わりに様子見に来た。
ありがとう。
(希穂子)いらっしゃいませ。
希穂子…。
ずっと捜してたんだ。
何で 急にいなくなった?
お話しすることはありません。
お… おい… ちょっと待てよ。
やめて下さい!
出よう… ここじゃ 話できねえ。 なっ?
やめて!
鉄男さん 乱暴はやめて。
大丈夫だから…。
お客様…。 いや あの…。
村野さんとは 少しだけ
おつきあいをしてたの。
私が仲居をしてた料亭で知り合って…。
希穂子。
うん?
(希穂子)でも… 彼が
会社の社長さんと店にいらした時…。
≪(堂林)村野君
君は仁美をどう思ってんのかね?
(仁美)やめて お父様。
村野さん 困ってらっしゃるじゃない。
(堂林)ハハハハ…。 僕はね
うちの会社を ゆくゆくは
君に任せたいと思ってんだよ。
縁談が進んどったってこと?
縁談なんてもんじゃねえ
一方的な話なんだ。
折を見て 断るつもりだった。
東京さ 行ったらしいと聞いて
ずっと捜してた。
貧しい家に育って
今も 病気の親 抱えて苦労してんのに
けなげで 明るくて。
彼女といっと ねじくれた気持ちが
す~っと消えて 素直になれる。
希穂子と一緒になりてえんだ。
≪(物音)
≪(鉄男)ああ~!
俺が グズグズしてっから
希穂子に見限られたんだ!
大将…。
俺は どうしようもねえバカだ!
大将…。
ああ~ 希穂子~!
音さん 今日も眠そうね。
また カフェーの仕事で夜更かし?
ううん。 昨日は
主人の友達が泊まりに来てて
酔って暴れて 大変だったの。
主人?
今 主人って言った?
いいもんだね ふるさとの友達と飲むのは。
うん!
実は… 書いてみたんだ。
えっ?
歌詞書いたの!? えっ?
み み… 見せて 見せて! えっ?
「福島行進曲」。
俺なりの福島を書いてみた。
す… すごくいいよ これ! ねっ?
ああ いいよ!
恋の歌だな。
ああ。
僕ね… 福島捨てて ここに来たんだ。
でも… 忘れたことは一度もない!
大将が思い乗せた この歌詞で
もう一度… もう一度
ちゃんと福島と向かい合いたい!
大将… 僕に… この詩で…
この詩に曲をつけさせてくれ!
分がった。 いい曲つけてくれよ!
ありがとう! ありがとう…。
(廿日市)「福島行進曲」。
私は とてもいい曲だと思います。
あっ そう…
じゃあ これで作ってみようか。
えっ?
こうして 裕一の初めてのレコードが
吹き込まれることになりました。
♬~
上京して2年 ついに裕一は
プロの作曲家デビューを果たしたのです。
まあまあ まあまあ…。
はい… あ~ ありがとう。
(一同)乾杯!
おめでとう。
おめでとう。
ありがとうございます。
希穂子さん。
この度は おめでとうございます。
これ 皆さんで。
あっ ご丁寧に ありがとうございます。
せっかく いらしたんです。 ここは
みんなで「福島行進曲」聴きませんか?
♬~
♬「胸の火燃ゆる宵闇に」
(鉄男)この詩 書けたのは…
希穂子のおかげだ。
俺 やっぱし… 希穂子じゃなきゃ駄目だ。
俺… ずっと自分の生い立ち 恨んでた。
「何で俺ばっかし」って ひねくれて
世の中恨んで 人妬んで。
君のおかげで
世の中 捨てたもんじゃねえって
やっと思えるようになったんだ。
君が 時々 うそつくことも知ってる。
でも それは自分のためじゃねえ
いつだって 人のためだ。
でも… もう一人で頑張んなくていい。
俺と一緒に生きてくれねえか?
それでは 「椿姫」の最終審査を始めます。
♬~
私… 結婚が決まったんです。
彼は…
私のこと とっても大事にしてくれて
父の医療費のことも任せなさいって。
とってもいい人で…。
だから もう
ご心配頂かなくて大丈夫ですから。
希穂子…。
さようなら。
♬~
音の歌声は聴く人の心を圧倒。
見事 ヴィオレッタ役を勝ち取りました。
(笑い声)
あっ 裕一 こっち。
こちら 高梨一太郎さん。
「船頭可愛いや」。
ああ…。
「船頭可愛いや」。
はい!
何? これ 歌詞 高梨一太郎なの!?
あっ はい。
採用。 えっ?
すばらしいと思います。
は… はあ。
今さ 芸者に歌わせるの
はやってるじゃない?
これも 芸者でいこう。
芸者さん?
いいなと思う人 こっちで探しとくから。
お… お願いします。 はい。
古山君。 はい。
これ 最後のチャンスだから。
うん?
もし売れなかったら 君もう要らないから。
えっ?
契約金も返済してね。
はあ~…。
どうして ため息なんかつくんだよ。
採用されたんだろ?
うん…。 めでたいことだろう。
もし売れなかったら
今度こそ 本当におしまいなんだよ。
だから 何で
売れなかった時のこと考えんだ。
それよりも売れた時の幸せを
想像してみたらどうだい?
本当に君は前向きだね~ 羨ましいな。
お褒めの言葉 ありがとう。 鉄男君だって
上京して早々に仕事決まったみたいだし。
何事も気の持ちよう。
何の仕事なの?
飲食業って言ってた。
ふ~ん。
この辺のはずなんだが…。
はい…。
うん? えっ?
じゃあ 乾杯しよう。
うん。
鉄男君の再出発と…。
よっ!
裕一のレコード発売 第2弾を祝って…。
ありがとう。
乾杯!
また出すのか? うん… なんとか。
じゃあ…。
どんな曲なんだ!? 「船頭可愛いや」って曲。
高梨一太郎さんの詞で
芸者さんに歌ってもらうことになった。
(2人)芸者!?
何?
どこの芸者だ? 向島か?
向島?
新橋か?
もう会ったのか? 会ってないよ!
そして レコーディング当日。
えっ? ちょ… えっ?
あっ どうも。 な… 何でいんの!?
取材だよ。
今日 大事な日だから… ちょっと…。
すげえ いい…。
いい歌なんだけどさ…。
歌い手さん いらっしゃいました。
どうも 沼田松子です。
…じゃなかった。
藤丸さんです。
藤丸です。 よろしく どうぞ。
あっ 作曲の古山です。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
お疲れ~。 あ~ 松子さん よろしくね。
よろしくお願いしま~す。
今日 お店は? 大丈夫なの?
(藤丸)はい 弟に店番 頼みましたんで。
弟?
店番?
じゃあ 準備しようか。 はい。
廿日市さん あの
藤丸さんって芸者さんですよね?
いや 下駄屋の娘。
げ げ… 下駄屋!?
♬「夢もぬれましょ」
♬「潮風夜風」
えっ?
すごいよね!? うん!
すげえ…。
♬「船頭可愛いや」
♬「エー 船頭可愛い」
そんなに売れとらんの?
もっと
みんなに聴いてほしいんだけどな~。
いい曲なのにね。
うん…。
「船頭可愛いや」。
環先生 もしよかったら
聴いて頂けませんか?
♬「夢もぬれましょ」
♬「潮風夜風」
♬「船頭可愛いや」
この曲…
私が歌ってもいいかしら?
ええっ!? あの双浦 環が!?
双浦 環が歌謡曲を歌う。
発売前から大きな話題となりました。
♬「夢もぬれましょ」
♬「潮風夜風」
♬「船頭可愛いや」
双浦 環版の「船頭可愛いや」は
発売されるやいなや 大ヒット。
相乗効果で 藤丸版も売れ行きを伸ばし
裕一のメロディーが 街じゅうに
流れるようになったのです。 そして…。
ええ~っ!?
本当!? ぼ… 僕らの赤ちゃん!? 本当!?
うん。
ぼ… 僕… 僕 父親になんの?
父親になんの?
うん。
えっ どうしよう? えっ えっ?
えっ 信じられない!
(黒崎)えっ!? 妊娠?
はい。
えっ? よかったね。
決して皆さんには
ご迷惑をおかけしませんので
引き続き どうぞ よろしくお願いします。
一つ 確認してもいいかしら?
はい。
プロってね…
たとえ
子どもが死にそうになっていても
舞台に立つ人間のことを言うの。
あなた 当然 その覚悟はあるのよね?
音 鉄男が おでんくれたよ。
≪♬~(歌声)
(息切れしながら歌う声)
ここにいたんだ。
今から 僕は作曲家として
声楽家の君に伝えたいこと言う。
君は舞台に出るべきじゃない。
息が続かないのは致命的だ。
美しいメロディーも表現できないし
聴く人 不安にさせる。
そんな歌しか歌えないんじゃ
お客さんにも失礼だ。
分かっとる… 分かっとる…。
子どもができたのは うれしい。
でも…
環先生に…
子どもが死んでも舞台に立つのがプロだ
って言われた時
すごく怖くなった。
うん。
この子に会いたい… 歌も諦めたくない。
(すすり泣き)
音… その夢…
その夢 僕に預けてくんないか?
君が もう一度… もう一度
夢に向き合える日が ちゃんと来るまで
僕が その夢 預かって 大事に育てるから。
そのかわり…
君にも いつか 僕の夢をかなえてほしい。
裕一さんの夢?
僕の作った曲で
君が おっきな… おっきな舞台で歌う!
音は… 何一つ 諦める必要ないから。
そのために 僕 いんだから!
ありがとう。
うん?
うん? よし 片づけっかな。
うっ! 来た…。
今? ちょっ…。
来た!
来た? ちょちょ…。
来た! ゆ… ゆっくりね。
ああ~!
あっ あっ…。
(産婆)あっ 出てきた!
(叫び声)
おめでとう。 女の子ですよ。
よろしくね。
娘の華が生まれて
はや4か月がたちました。
お帰りなさ~い。
ただいま。
これ 裕一さん。
うん? ありがとう。
華ちゃんは どうして そんなに…。
母さん…。
(まさ)「裕一へ 無沙汰をしています。
お変わりありませんか?
藤堂先生から 裕一が
小学校の校歌を作曲したと聞きました。
どうぞ この機会に
福島に来てはいかがですか?
皆さんに会えるのを心待ちにしています」。
裕一さん。
うん…。
大丈夫。 みんな 待っとってくれとるって。
か… 帰ろう。
ほら~!
いやいや… じゃ じゃあさ…
音 先 行ってよ。
何言ってるの 今更!
いやいや 音 先 行った方がいいよ。
ちょっと…。 (泣き声)
ほら もう~!
ごめん ごめん…。
(泣き声)
赤ちゃんの泣き声が聞こえたから
もしかしてと思って。
母さん…。 た… ただいま。
娘の華です。
華ちゃん。 なんつう かわいらしい。
誰だ 誰だ… いっ!
いて~っ! いてえ! 足がいてえ!
父さん 父さん…。
裕一! 音さん!
あっ… 来るなら来るって
言ってくれりゃあ…。
実はね 驚かせようと思って
お父さんには ないしょにしてたの。
あっ…。
入れ入れ。
ああっ! いてっ! いててて…。
気ぃ付けて。
いてえ 足が。 いてえ…。
えっ? 店 どうしたの?
あ~ もう やってねえんだ。
えっ!? ちょ… 店 閉めたの?
いろいろあってね…。
それ… 僕のせいだよね?
おめえには関係ねえ。 ほら 入れ。
ほれ… よいしょ。
召し上がって下さい。
めでたい!
ハハハ…。
お義父さん 私やりますよ。
あちぃ~! あちっ! あちあち…。
あちぃぞ おい。
あちぃぞ あちぃぞ あちぃぞ…。
うっ!
大丈夫ですか?
ちっと… 飲み過ぎたな。
うん! 大丈夫だ うん。 ハハハ…。
飲み過ぎた。
あっ 私 やっておきますから。
あっ すまねえな。
お~ 浩二 みんな 集まってんぞ。
何だよ これ。
こっち来い。
父さん また酒飲んでんのか?
いいじゃねえか!
今夜はな 裕一のお祝いだ。
いぐねえって。
いやいや まあまあ まあまあ…。
浩二さん ほら グッと一杯! ねえ。
いや…。
こ… 浩二… 久しぶり。
よく ヘラヘラと帰ってこれたな。
もういい。 明日も早えから もう寝る。
親父も 明日診察だろ。
先生に叱られても知んねえからな。
母さん… これ。
もうしばらく ここにいさせてもらうから
食費に使って。
…じゃないと ほら
居づらいからさ。
母さん 今日…。
そんなもの受け取んなくていいからね。
いや… 違うんだって 浩二!
これ 滞在費だから。
余ったら 父さんたちに
うまい酒でも飲ませてやって。
浩二。
待てって… なあ ちょっと これ…。
なにが うまい酒だよ。
な… 何があったんだよ 本当に。
関係ねえべな。
ちょっと 浩二 浩二!
頼むから…
お… お願いだから 教えてくれよ!
何なんだよ!?
父さん もう長くねえんだ。
胃がんだって。
いや… うそでしょ?
だって あんな… 元気そうだったのに。
父さんの前で そんな顔 絶対にすんなよ。
おめえに
承諾してもらいてえことがあんだ。
浩二…。
うん?
俺が死んだら… 喪主は おめえだ。
喜多一を継いだやつが
この家の主だ。
喜多一の土地と家
全部 浩二に譲らせてくれ!
もちろんだよ 父さん。
父さんの好きにして。
本当か!?
ちゃんと承諾取ったから。
母さんのこと… 頼んだぞ。
口約束ばっかし…。
だから だまされんだよ。
おめえは だまさねえ。
長生きしてくれ。
生きてくれ…。
(浩二の泣き声)
おめえらのおかげで… いい人生だった。
ありがとな。
父さん…。
♬~(ハーモニカ)
その夜
三郎は安らかに息を引き取りました。
どちらさんでしょうか?
古山先生でいらっしゃいますか?
はい。
僕を弟子にしてくれねえでしょうか!?
うん?
お願いします!
えっ?
弟子!?