2夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『女系家族』 第1夜[解][字]…のネタバレ解析まとめ

出典:EPGの番組情報

2夜連続ドラマスペシャル 山崎豊子『女系家族』 第1夜[解][字]

宮沢りえ×寺島しのぶ…日本を代表する実力派女優が初共演にしてW主演!嫉妬、欲望、愛憎…数々の人間の業を描いてきた山崎豊子の遺産相続ドラマの傑作が令和の世に甦る!

◇番組内容
大阪・船場で老舗木綿問屋を営む矢島家の四代目当主・嘉蔵(役所広司)が、総額数十億円の遺産を遺して亡くなる。長女で総領娘の矢島藤代(寺島しのぶ)、次女の千寿(水川あさみ)、三女の雛子(山本美月)らが見守る中、明かされた遺言状の中身ーーなんとそこには、嘉蔵の愛人である浜田文乃(宮沢りえ)の存在と、文乃への遺産分配が記されていた。遺産相続をめぐる、人間の欲望と嫉妬にまみれた骨肉の愛憎劇が幕を開ける…!
◇出演者
宮沢りえ、寺島しのぶ/水川あさみ、山本美月、長谷川朝晴、山村紅葉・伊藤英明、余貴美子・渡辺えり、役所広司(特別出演)、奥田瑛二
◇原作
山崎豊子『女系家族』(新潮文庫刊)
◇監督・脚本
鶴橋康夫
◇音楽
羽岡佳
◇スタッフ
【チーフプロデューサー】五十嵐文郎
【プロデューサー】船津浩一、浜田壮瑛、山形亮介(角川大映スタジオ)
◇おしらせ
☆番組ホームページ
 https://www.tv-asahi.co.jp/nyokeikazoku/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

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キーワード出現数ベスト20

  1. 宇市
  2. 芳子
  3. 良吉
  4. 嘉蔵
  5. 千寿
  6. 雛子
  7. お父さん
  8. 遺言状
  9. 大番頭
  10. 藤代
  11. 相続
  12. 旦那
  13. 本宅
  14. 昨日
  15. 今日
  16. 小森
  17. 雪彗
  18. 相続分
  19. 矢島商店
  20. 自分

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

   ごあんない

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〈激しい戦いが幕を開ける〉

♬~

(矢島雛子)
もうちょっと見てたかったのに。

(矢島千寿)雛ちゃん
ほら 急がな。 なっ?

(矢島藤代)
雛ちゃん 早う行こ。 なっ。

♬~

どっか抜け道は
ありませんのんか?

親の死に目に会えなんだら
えらい事ですわ。

ほんまや。 あとあとの事も
聞かにゃならんし。

ああっ… そこ 左 曲がって!

(タイヤのスキール音)

(浜田文乃)
《助けて… あの人を助けて》

♬~

♬~

(大野宇市)〈男には

自分の手には負えんと
わかっていながら

それでも失いたくない女がいる〉

〈嘉蔵旦那も
文乃という若い女の

真っすぐな眼差しから
逃れられへんかった〉

♬~

(宇市)あっ… どうぞ。

(宇市)早う…
早う来ておくれやす。

(鳥が飛び立つ音)

(心電図モニターの音)

(宇市)おいでになりました。

♬~

(矢島嘉蔵)文乃…。

♬~

寝たままで…
長い事 行かれへんかった…。

♬~

体は どうや?

くれぐれも大切にな…。

♬~

あとの事は心配ない。

みんな
あんじょう できてるさかい…。

♬~

お前を もっと抱きたかった…。

♬~

はい…。

♬~

(物音)

♬~

皆さん お帰りだす。

見つかったらあかん。 早う去にぃ。

♬~

おおきに。
(雛子)おおきに。

どうや?
(政子)間に合いました。

(矢島良吉)おかえり。
(千寿)どうなん?

どうなってんの?
(良吉)今は落ち着いてるけど…。

(足音)

♬~

(嘉蔵)宇市つぁん
ほな そのように

あれの事 よろしゅう頼むで…。

あれの事…?

それから…。
お待ちだす。

(宇市)早う入っておくれやす。

ただいま お父さん。

お父さん!

(千寿)あっ… お父さん!

遅なってしもて…。

雛子です。
私もいてるよ お父さん。

踊りの会 どうやった…?

そんな事 どうでもよろし!

私らは 一体
どないしたらよろしいんです?

家の始末やら あとあとの事…。

宇市に言うてある。

宇市にて…
宇市つぁんは番頭だす!

私らに言うてください!

えっ?

えっ…? なんです?

家の事は…

宇市に ちゃんと言うてある…。

宇市つぁんが…。

みんな 宇市に言うてあるって
どんな…!?

私らにも言うてください!

お父さん?
(松井)嘉蔵さん…。

お父さん!?
宇市つぁん 頼んますわ…。

(嘉蔵)ああ…。

(嘉蔵)頼んますわ…。

お父さん!
(雛子)お父さん…。

(鈴)

〈老舗の木綿問屋 矢島商店の

格式 体面を守り抜いた
嘉蔵旦那は

残る家族に どんな楽園を
用意していったのか?〉

(読経)

〈長女の藤代は

婿養子になった父親を
田舎者だと疎んじ

こんな家から逃げ出してやると
啖呵を切って嫁に行ったが

たったの3年で出戻ってきた〉

〈この総領娘
わがままがむき出しになると

突然の危険人物になる〉

〈次女の千寿は
じっとやり過ごせば

無事な朝が来ると
思っているような

控えめな性格だったのが

入り婿を迎え
奥内を仕切るようになると

この子も
取り扱い注意人物になった〉

♬~

〈花嫁修業中の三女の雛子は

お雛様のような かわいい顔で
甘ったれを演じているが

どんな毒を隠し持っているかは
誰にもわからない〉

〈その雛子を
猫っかわいがりしているのが

彼女たちの叔母の芳子だ〉

〈この人 大店の一族とは思えない
世渡り術を身に付けていて

何かというと
『ボレロ』を踊り出すのも厄介だ〉

(鐘)

♬~

ああ…。

♬~

あっ…。

♬~

♬~

(矢島芳子)いやあ~!

(芳子)結構やった 結構やったで!

あんたらの白無垢姿
ほんまに きれいやった!

3人そろうての白無垢姿
その背中に黒抜きの家紋や。

矢島家の娘としての
品と華やかさがあって… なあ。

それはそうと この後始末
どないするつもりや?

お父さん
宇市つぁんに任せてあるって…。

ふ~ん。

でも なんぼ 宇市つぁんが
頼りになるいうても

あんたら差し置いて
おかしいやないの。

なんぞ 思い当たる事でも
ありますのんか?

別に これいう…。

♬~

ひゃっ…!
(芳子)ああっ!

えっ…?

(ため息)

精進揚げのお膳で
皆さん お待ちです。

本日は ご葬儀が
済みましたとこですさかいに

後始末の件につきましては

ご親族の方にお集まり頂いて
後日 改めて…。

なんぞ 親族会を
開かなならんような事が

ありますのんか?
(宇市)それは 皆さんに

集まって頂いたほうが
よろしいかと…。

(チャイム)

今日は もう
お見え頂けないのかと…。

夜分 すんません。

ご親族のお帰りが
遅なってしもうて…。

それでも やっぱり 今日中に
ごあいさつに伺うたほうが…。

ええ…。

どうぞ 拝んであげてください。

樒をあげてくださいな。

どうぞ。

お水で口を湿してあげてください。

♬~

♬~

おおきに。

仏さんを拝んでくれはった
たったお一人のお弔い客が

大番頭さんです。

♬~

「どうぞ
昨日に逆戻りしてください」…。

♬~

「昨日 いらっしってください」。

「昨日への道は
ご存じのはずです」。

「昨日の中で
どうどう廻りなさいませ」…。

♬~

嘉蔵さんの好きやった

室生犀星の
『昨日いらっしって下さい』です。

♬~

千寿ちゃん!
はあっ…!

それ うちの婚礼衣装やないの。

なんのつもりで
そんなもん着てはるん?

衣装の整理に来て

せっかくやから 姉さんのも
見せてもろてましてん。

なんのために?

今度 姉さんが嫁ぎはる時

どんなええお衣装に
しはるんやろな思うて。

うちが また嫁入り…?
なんでや!

うちは行かんと

この家で婿とりするかも
わからへんやないか。

雛ちゃんかて そうやし。

こいさんも!?
そうや。

あんた 小さい時
言うてたやないか。

「うちらは みんな
お婿さんをとんねん」。

「ほんで ずーっとずーっと
姉妹 楽しい暮らすねん」って。

それは ちっちゃい頃の話で…。

あんた 断りもなしに
人の衣装 調べたり

人の嫁入りの事
考えてる暇があったら

自分の子供でも作ったらどやの!

子宝千両と言うやろが!

(ため息)

(襖の開閉音)

出戻りの穀潰しのくせに…!

うちに子供ができへん事を
いい事に…!

ううっ!

ああっ…!

♬~「かごめ かごめ」

♬~「かごのなかのとりは」

♬~「いついつでやる」

♬~「よあけのばんに」

♬~「つるとかめとすべった」

♬~「うしろのしょうめん だーれ」

あんたには 絶対 負けられへん!

(良吉)どこ行ってたん?

義姉さん 店にまで
あんたを捜しに来てたで。

どないしたん?
泣きべそなんてかいて。

姉さんの衣装を調べてましてん。
(良吉)なんで?

うちの婚礼の衣装と

姉さんのたんすに収まってる
衣装を引き合わせてみましてん。

ほんなら
ざっと見積もって2000万。

質も数も 比べもんにならへんほど
姉さんのほうが上物やったわ。

はあ~ 2000万も。

許せまへんねん!

うちに婿とり押しつけて

結婚したと思ったら
たったの3年で戻ってきて

大きな顔して総領娘に納まってる。

うちは いっつも 姉さんのために
貧乏くじばっかりや!

姉さん この家で
婿とりしはるかもわからへん。

えっ? 義姉さんが婿とりを!?

この家で?
そうや。

さっき 姉さんの口から
はっきり聞いたわ。

雛ちゃんかて そうやて。
(良吉)こいさんも!?

なんでや?

この家で 家付き娘3人と婿3人が
一緒に住むちゅう事か?

まさか…。

いや… そうやわ。

(ため息)

男同士の義兄弟は

その駆け引きも陰にこもって
えげつないもんになるやろ。

周りは周りで
勝手に忖度しはるから

転がるだけ転がって
みんな自滅していく…。

婿養子の口も いろいろあるけど

まさか こんなおもろい家へ

婿入りさしてもらうとは
思いもせんかったわ。

(千寿)そや!
(良吉)何!?

宇市つぁんの姿が
見当たらへんけど

どこ行ったんやろ?

ああ… ええっ?

そんで いざとなったら
皆 大番頭を捜す…。

あのカワウソじじいを…。

〈嘉蔵旦那の片腕として

矢島商店を切り盛りしてきた
わしは

表向きは何食わぬ顔をしているが
心中 穏やかではない〉

〈勝手に伐採して売り払った

あの はげ山の事がバレたら
おしまいや〉

〈わしの足元は
急速に揺らぎ始めてる〉

雛ちゃん

あんたの一生に関わる遺産分けの
大事な親族会の日や。

ちゃ~んと
聞いてなあきまへんのやで。

そんなん うち ようわからへんし。

そやから 叔母さんが

相談役で ついててあげよう
言うてますのや。

両親が亡うなったら

姉妹同士でも
女同士は油断できまへんのやで。

一番上の藤代さんは出戻りやのに

婿の良吉さん 差し置いて
筆頭喪主を務めるようなお人や。

中の千寿さんは
おとなしに見えるけど

後ろについてる良吉さんが
なかなか抜け目のない人や。

先々の事まで
ちゃんと考えてはるわ。

そうなると 一番損するんは
雛ちゃん あんたや!

この家に居座って

取るもん ちゃ~んと取らな
あきまへんのやで。

♬~『ボレロ』

(政子)こいさーん。

お時間です。
(芳子)はいはい。

おはよう。
(雛子)おはようさん。

おはようさん。
(芳子)おはようさん。

わざわざ ご苦労さんです。

(千寿)おはようございます。

為之助さん ビールでも
持ってこさせまひょか?

(矢島為之助)おおきに おおきに。

(芳子)佐平さん どうだす?

フフフ… 遠慮せんでも…。

♬~

では 四代目当主
故 矢島嘉蔵さんの遺言により

遺産分配と相続につき

ご親族お立ち会いのもと
ご披露させて頂きます。

えー 出すぎとは存じますが
いやあ たまたま 私

旦那さんの臨終の席で
遺言を賜りましたので

今席 進め役を
務めさせて頂きます。

(遺言状の封を切る音)

(宇市のせき払い)

(宇市)「遺言状」

「私 矢島嘉蔵は

病 重くなるに及んで
万一のことを考え

矢島家代々の所持する
家屋敷 商い方 有金 家財一式を

残らず勘定 遺産の仕分けを
致したく

次の通り遺言する」

「一つ

遺産のうち
矢島商店として使用中の

土地 並びに 建物 及び
暖簾営業権を分割することなく

次女・千寿に相続させる」

「夫・良吉は

二代目から商い名としている
矢島嘉蔵を襲名」

「商いに従うこと」

「但し 良吉の襲名 商い継承の
負担として

月々の純益の五割分は

長女・藤代 次女・千寿
三女・雛子に

それぞれ 三分の一ずつを
取得させなければならない」

「二つ

大阪市西区北堀江六丁目所在の
貸家 十五軒 及び

大阪市都島区東野田町七丁目
所在の貸家 十軒の建物と土地は

長女・藤代が相続すること」

「貸家の売却 もしくは 賃貸など
一切 藤代の自由なること」

「三つ

株券 三万二千株のすべて 及び
道具蔵に所蔵する当家の骨董類は

三女・雛子が相続すること」

「四つ

右以外の遺産は
共同相続財産とし

相続人全員で協議の上
分割すること」

「五つ

ご親族様の長年の私へのご厚情に
いささかの謝意を表したく

各位様へ
金五百万円ずつを差し上げること」

(宇市)「六つ

遺言状の保管 並びに 執行は
大番頭・大野宇市に委ね

その執行は 宇市つぁんと相談の上
ことを運ばれたし」

「上記の如く認めた上は

姉妹互いに相譲って 相続を成し

商売繁盛と家風の厳しさを
乱さぬように」

「そのほか 何事もあんじょうに
くれぐれも よろしく頼みます」

「お世話になりました」

「いつか また きっと」

「さようなら」

えー… 以上でございます。
ご確認のほどを…。

死んだ人の遺言状は
絶対守らんならんもんですか?

そうだす。

ほんなら

法律では 姉妹3等分の分け方を
定めてあるのに

遺言状が3人に不平等な割合でも

そのとおりに
せんならんのでおますか?

(宇市)ものの本によりますと

平等 不平等いうもんは
その人その人の立場で違います。

まあ そやよって

死に臨んだ人の心情は
正しく 善と解釈され

法律よりも重うに
受け止められるんやそうです。

大旦那が
公平に3等分なさろうと

十分に配慮をされたものと
お察ししますが…。

もし 調べて足らへんかったら

多いとこから
割り戻してもらえますのんか?

(宇市)ああ… それは まあ…
もし そういう事であれば。

あっ どうぞ これ。

相続人さんたちで
よう話し合われて。

財産目録は
法律上 誰が作りますねん?

えっ? あの 財産の… なんだす?

「共同相続財産の目録作りは
誰がしますねん?」と

聞いてるんだす。

(宇市)ああ…!
いや まあ それはですね

やはり 遺言状にご指定のある
遺言執行人

つまり
私が作らさせて頂きます…。

あんたが…。

(芳子)そうでっか!

何から何まで

大番頭の宇市つぁんが
取り仕切ると そういう事ですか?

ほな 矢島の血を分けた叔母の私や
入り婿の良吉さんは

なんもせんと気楽にしてたら
よろし という事ですか?

遺言に異議は…?

へっ!?
私に異議がおます!

これでは 総領娘としての
私の立場がなさすぎます!

(芳子)そうでっせ!
えっ?

昔は 跡取り娘は
えらい権利があって

藤代さん一人が
遺産の全部をもらわはった。

それが 戦後
コロッと変わってしもうて…。

あんた えらい損しはったなあ。

その代わり
昔の跡取りは 廃嫡いうて

相続人である事を放棄せな

よその家へ
嫁に行ったりできひんかった。

なあ? あんたみたいに

ほいっとお嫁に行って
ほいっと帰ってきなはって

ちゃんと
遺産をもらえるんやさかい

ありがたいと思わな
なりまへんのや!

法律の上では そうでも
総領娘は総領娘でおまっしゃろ!

ともかく 私は とっくりと考えて
返事さしてもらいますわ。

中ぁんさんは?

えっ…?

あっ… 姉さんが
そない言わはるんやったら

うちも 良吉さんと
よう相談さしてもろて…。

こいさんは?

うち 相続の仕組み
ようわからへん。

株券とか骨董とか言われても…。

(宇市)それでは 日を改めて

相続方の分配を致したいと
思いますが…。

ええ~…
いつが よろしおまっしゃろか?

1カ月あとに。
(千寿)1カ月も!?

1カ月…。

(宇市)5月9日…
よろしゅうおますか?

私は 結構や。

…うちも。
うちも…。

皆様 ご多用とは思いますし
遠方の方もございます。

次の親族会議は

今橋のご寮人はんご夫妻に
親族代表として出席願い

みんな決まったところで
今日のように集まって頂く

という事で
よろしおまっしゃろか?

(為之助)そやそや。
そうしてもろたほうが… なあ?

ほな そないさせて頂きます。

ほな そろそろ
お膳でも呼ばれまひょか。

ちょ…
ちょっと待っておくれやす。

実は
もう一通 遺言状がございます。

えっ?
(藤代・千寿・雛子)もう一通!?

それでは…。

(宇市)「遺言状」

「重ねて遺言申しあげる」

「私儀
矢島商店の四代目婿養子として

商い一筋に励み

いささかの繁盛を
残しておりましたが

煩悩と不徳の致すところから
七年前より…」

(せき払い)

「七年前より 私が面倒をみ
世話をして 今日に至ります

影の女が御座候」

(宇市)「まことに憚りながら
私の没後

この女にも 何分かのものを
つかわされたく…」

(宇市のせき払い)

「女の住所 姓名は

大阪市住吉区住吉三丁目
十四番五号に住まう

浜田文乃」

「三十七歳なる者につき…」

37…!?

(宇市)「なにとぞ よしなに
お取り計らいをお願い致したく候」

(芳子)なんちゅうこっちゃ!

急に 「候 候 御座候」などと…。

堅い婿養子を通しながら

私ら分家の者には
あいさつもなんもなしに

隠し女に
何分の事をやってくれとは…!

宇市つぁん

お父さんの臨終の日に
ここに忍び込み

葬儀の日には
葬礼屋の男衆みたいに

樒の数まで数えてた女が
このおなごなんやな!

「三十七歳なる者にて」…。

娘の私と父親の愛人が同い年で

7年前 私が嫁いだ その年に

父親が 娘と同じ年の女を
囲わはったというわけですか!

ああ いやらしい!!

一体 どこの どんな素性の
おなごだす!?

宇市つぁん… あんた
それ知ってはったんやろ!

(芳子)やめなはれ! やめなはれ!

そんな事
宇市つぁんに聞きただすより

そのおなごを ここに呼んで

直接 素性や嘉蔵はんとの関係を
聞いたらよろしいねん!

良吉さん 千寿ちゃん
皆さんを ご案内して。

雛ちゃん お膳にしまひょ!

(良吉)では 皆さん
奥にご用意してますよって…。

(千寿)あちらです。
(良吉)こちらです。 どうぞ…。

♬~

大旦那はんが

ここに
「よしなにお取り計らいを」と

書き残さはったわけですから

あんさんも
取れる分だけは取らはって…。

いいえ。

私 そんな
ぎょうさん頂こうやなんて

少しも思うてません。

これから先の日々の暮らしにさえ
不自由せんかったら

それで十分で…。

ああ…。

あの…

あんたさんの事は何事も
私に任して頂いて…。

あの… 近日中に一度

本宅のほうへ
お越し願いとうおますが…。

ご本宅へ…!?

えっ… ええ まあ。 ハハハハ…。

大した事じゃありません。

お会いした事のない人に
遺産分けをするわけにもいかずと

まあ そんなとこで… ハハハ…。

♬~

それでは 至りませんが

ご本宅への ごあいさつは

いつでも伺わせてもらう
という事に。

(チャイム)

どなたさんやろ? こんな夜分に。

〈余分な金はいらないと
文乃は言った〉

〈スッと懐に手を差し込まれた
気分になった〉

〈遺言をのぞき込む白いうなじも
なまめかしかった〉

〈こんな女を
男が放っておくはずがない〉

(ドアの開く音)

旦那さんが 表具屋へ預けておいた
お軸ができてきましてん。

大番頭さんも見てくださいな。
えっ?

♬~

これは 去年 旦那さんが
本宅から持ってきはって

えらい傷んできたからと
近くの表具屋へ出さはった

雪彗とかいう画家の『滝山水』です。

♬~

それが
やっと出来上がってきたのに

亡うなってしもうて…。

♬~

ちょうどよかった!

大番頭さんから
ご本宅へ お返ししてくださいな。

えっ… 返さはる?

いや これは あんさんが
おもらいになったものでっしゃろ。

さあ どないですやろ…。

預かりもんみたいなもんや
ないでしょうか。

ああ…。

まあ しばらくは
ここに置いとってください。

♬~

(嘉蔵の声)
「昨日 いらっしってください」

(嘉蔵)「昨日の今頃
いらっしってください」

「そして
昨日の顔に お会いください」

(嘉蔵)「私は
いつも 昨日の中にいますから」

「昨日の今頃なら

あなたは なんでも
おできになったはずです」

「けれども
行き止まりになった今日も

明日も あさっても

あなたには もう
何も用意してはございません」

フフ…。

はあ…。

俺は生きるで!

はい!
ほっ!

はい!
ほっ!

ほれ! あっ…。

ああっ… アハハハ…!

♬~

(小林君枝)あんた…
すぐ お風呂にします?

ちょうど
湯加減 見てたとこですわ。

(君枝)はいはい はい…。

ちょい…。
(君枝)何?

フフフ…。

いやあ…。
(君枝)フフフ…。

気持ちええなあ…。
(君枝)嫌やわ もう。

何してんのよ…。
(宇市)ええやんけ。

フフフ… もう…。

フフフフ…。

あんたの事は なんて
書き置きしてくれはったん?

…ない!

ええっ?

わしの事は ひと言も
なんも書いてあらへんかった。

(君枝)ハハ… アハハ…。

なあ おい…。
(君枝)ん?

待っとり。 なっ。

わいはな
嘉さんみたいに簡単には死なん。

フフフ…。

お前にもな
料理屋の仲居なんぞ やめさせて

小唄の師匠にでもして
気楽に暮らさしたるさかいな。

(君枝)ほんまに? フフフ…。

〈使われる側から
使う側になっても

わしは そのどっちにも入れず

若い衆の出て行った
阿倍野の店の寮に

今でも 一人で住んでいる〉

♬~

〈矢島家には 返しきれない恩を
背負ってはいるが

家付き娘のわがままに見下ろされ

二言目には「暖簾の」 「老舗の」と
口走る誰彼に

平身低頭の番頭など

おっても
おらんのと同じ存在なんやろう〉

〈大旦那の遺言状に

わしへの贈与分は
一行も書かれていなかった〉

〈それぞれに なりわいやら
自分の生きる道を得てしまえば

兄弟姉妹とて 赤の他人〉

〈血の繋がりなど
なんの足しにもならない〉

〈千寿には 良吉
雛子には 叔母がいるが

出戻りの藤代は

誰を
相談相手にしているのやろうか〉

おおきに。
(小森常次)どうも。

(梅村芳三郎)ああ この人
小森不動産の小森常次さん。

僕に代わって
小まめに走り回ってくれますねん。

(小森)矢島はんの
嬢さんでっか?

この度は えらいご不幸な事で…。

まあ お宅のようなご大家ほど
あとの始末が難しいもんで…。

まあ なんなりと気安うに
私に言うたってください。

おおきに。

嬢さん さっき見せてくれた
登記事項証明書

常やんにも見せたって。

お願いします。

16の2…。

あっちやな。 行きましょか。

♬~

(小森)ああ…。

あそこから 向こう15軒の裏表が
矢島さんの物件ですわ。

(小森)ここでんな。
まいど!

まいど!
(店員)まいど!

(店員)まいど!
(小森)あとでな。

常やん ちょっと見せて。
こっちも見てって。

まいど。
どうですか?

あっ…。
(店員)いらっしゃい!

♬~

ん…?

この物件の大きさ 何平米だす?

土地が97平米。

建物が171平米やな。
(小森)そない あります?

(梅村)おかしかったら
測ったらええねん。

そこ…。
(梅村)ここで?

(小森)一戸当たりの敷地が…。

あっ おかしいな…。
97平米あらへんなあ。

(梅村)えっ?

86平米 ちょっと切れますわ。

ほな 店の中 見てくれるか。
(小森)せやな。

(小森)すいません…。
(梅村)嬢さん!

(小森)すんまへん。
(店員)えっ?

ちょっとね
店を測らせてもらいたいんですわ。

すぐ… すぐ終わります。
アホな…。

アホな!
あかん あかん! あかん あかん!

こんな お前 ペテン師みたいな
土地ブローカーがやな

何を
つべこべ抜かしてけつかんねん!

えらい申し訳ありません。

実は 僕ら 南本町の矢島商店から
参りましてん。

えっ?
あちらが

今度 この辺りの貸家を相続しはる
嬢さんですわ。

ああ…
なんや そういう事ですかいな。

えらい すんまへん。
ああ…。

ヘヘヘ… どうも まいど。

で あれ どないなりました?

えっ… 何が?

いや 何がって この間

お宅のところの大番頭さんが
見に来はって…。

えっ… うちの宇市が?

ああ そうですわ。

毎月 家賃 集めに来はる
あの大番頭が

なんや えらい珍しい事に

家の中まで上がり込んで
丹念に見て帰りはりましたで。

そこへ重ねて お嬢さんまで…!

余程 念入りに修理してくれはる
いう事でっか? えっ?

ヘヘヘ… ありがとうございます。

あっ…。

嬢さん!

嬢さん!

一つ ケヤキ材 松蒔絵掛硯
615万。

一つ 高麗青磁…。

(足音)

嬢さんが お帰りになりました。

なんも慌てる事あらへん。

おかえりなさい。
今日は えらい早かったんやね。

芳子叔母さん

私にひと言もなく こんな道具調べ
やめてもらえますか!

まあ 藤代さん なんですの?
人様の前で 大きな声出して…。

蔵の骨董類は
こいさんの相続分でっせ。

だから 私…。
芳子叔母さんに

道具調べをしはる権利が
あるんですか?

(雛子)宇市つぁんの蔵調べに
不満はないけど

もし 偽物なんかがあったら
えらい損や…。

偽物…?
(雛子)そうやわ。

なんぼ 宇市つぁんかて

骨董の偽物の目利きは
できませんやろ。

それでも ここには
私の道具もあるはずやし…。

うちの留守を狙うて
こないな事しはるやなんて…。

衣装を勝手に調べる
中ぁんさんが ねそ泥なら

雛ちゃんと叔母さんは こそ泥や!

そら なんちゅう言い草や!

姪に道具調べを頼まれた
叔母に言うお言葉か!

ほんだら…

ここにある野点用のお茶道具は
どないしはるつもりです?

叔母さんかて
よう知ってはるやないの…。

これは 亡うなったお母さんが
大事に使うてはったんを

うちがお嫁入りする時に
持たせてくれはったもんで…。

そんなもん 私の相続分やなんて
少しも言うてません!

参考に
値入れをしてもろてるだけや。

それを泥棒呼ばわりするやなんて
ほんま 失礼やわ!

人のもんに値入れするやなんて…。

みんなして うちに
損させる事ばっかし考えて!

(芳子)自分がそうやから
人もそうやと思わはるんやな。

一体 どこまで
うぬぼれてんのか…。

「悪うございました」と
謝ってもらいたいわ!

(たたく音)

政子さん!
(政子)はい…。

ここにある野点用のお茶道具
私の部屋に運んでちょうだい!

(政子)はい…。

♬~

〈ええ気味のような

かわいそうなような…〉

〈自分も一緒になって
泣きたくなるような

遺産相続争いが始まった〉

〈そういう わしも

リベートの集金に
回っているのだが…〉

(山徳)ハハハハ… あっ…。

駅前の小料理屋へでも行って
一杯いきまっか?

頂きますわ。 その前に…。

ハハハハハ…!

(山徳)ハハハハハ…。
どうぞ どうぞ!

まあまあ 一服 どうでっか?

うちで織り上げた
生機木綿のリベート

仕入れ値の1分で
少ないようやったら

1分5厘まで
頑張らしてもらいますけど

どないでっしゃろ?

アハッ…
ほな もうひと気張り!

今月から 1疋につき
2分のリベートっちゅう事で

どないでっしゃろ?

2分… ああ…。

2分…。

できるだけ
お宅へ回さしてもらいますわ。

(良吉)おはようございます。
(千寿)おはようさん。

(良吉)おはようございます。

おはようさん。

(芳子)まあ 藤代さん
改まったお衣装やこと。

縫い取りの紋までついてて…。

(芳子)せやけど
今日は 親族会いうても

内輪だけの集まりでっさかいな
どうぞ 皆さん お気楽に…。

(宇市)ええ… 本日は
今橋のご分家さんに

ご親族の代表を務めて頂き

お三方の相続分についての
ご協議をお願いします。

それでは ご長女の嬢さん
相続分についてのご意見を…。

私の意見の前に

まず 中ぁんさんの相続分が
どれくらいになるか

説明してほしおます。

えっ… うちの?
そうだす。

あんたの相続分の
矢島商店の土地建物

暖簾営業権が
どれくらいの評価になるか

それを聞かせてもらわんと
先には進めまへん。

うち そんな 評価やなんて…。

差し出がましい事ですが

私が代わって
説明させてもらいます。

まずは 自社工場の評価額ですが
これは2億5900万。

矢島商店の土地が95坪で
坪380万円なので 3億6100万。

合わせて6億2000万になります。

また 営業権
つまり 暖簾代の評価ですが

これは 年間の営業利益の3年分と
換算するのが普通でおますから

矢島商店の暖簾代は
1億8000万の3年分として

5億4000万という事になります。

5億4000万!?

打ち手の小槌が
たったのそれだけでおますか?

腕を振るいさえすれば

間違いのう商いが広がる
結構な小槌でっせ。

せめて
5年分で評価してほしいわ。

それとも 矢島の暖簾は

それっぽっちの値打ちもない
軽いもんやと言わはるんですか?

矢島の店は
立派な老舗に違いおまへん!

そやけど 周りは
みんな 高層ビルに変わって

個人商店なんて 見渡したとこ
どこにもありません!

うちだけです!

周りからは

ガラパゴス島のイグアナみたいや
言われていますのや。

ガラパゴス…。
(宇市)イグアナ…!

そんなん
うちの知った事やおまへん。

月々の純益の5割は
3人で分けますのや。

それが どれくらいになるか
わからんかったら

一歩も先には進めまへん
言うてるんだす!

1カ月5億円の水揚げのうち
粗利益が1割

諸経費を差し引いての
純益3分やとして

月1500万になります…。

それは表向きで
隠し利益というのがあるやないの。

帳面 見てもろたら わかります!

ずるい!

宇市つぁん

あんたは
仕入れを一人で取り仕切ってて

なんもかんも
よう知ってるはずや。

間違いのないとこ
聞かしてもらいまひょか。

(宇市)そうでおますな。
わしも見ましたけども…

いや
若旦那のおっしゃるとおりで。

えっ…?
(良吉)そこで

締めて 11億6000万が
千寿の相続分ですわ。

雛ちゃんのほうは?

うちのんは…

株券3万2000株で 6億1400万。

骨董類は86点で 4億8230万。

締めて 10億9630万円。

中ぁんさんより
6370万円も少ないわ。

芳子叔母さんに
見てもろただけあって

上手に見積もらはったな。

何が上手なんよ…。

株券は 名義書換をする時に
偽名で少なめに分散できるやろ。

3万2000株は

倍の6万株ぐらいの値打ちが
あるんとちゃうか?

骨董かてそうや…
値は あってないようなもんや。

実際は もっと取り分があるに
決まってます!

だから?

藤代さん そんな詮索するんなら

こいさんの取り分で抜けてる
雪彗の『滝山水』の軸の行方でも

探ったらどやねん!

あれは 室町時代に
雪彗唯継が描いたもんで

矢島家の十本の指にでも入る
骨董の一つや。

2000万はしますやろ。

宇市つぁん
あれが抜けてるっていうのは

どないしましたの?

私?
(芳子)うん。

ああ… あれは 先日
お道具調べ 外されてました…。

そやけど 蔵の鍵は
あんたが持ってはんのやろ?

ああ… 全く気ぃつかん事で。

(芳子)どこのどなたの手に
隠されてんのか…

なくなったら えらい事ですな。

ともかく 雪彗のお軸の行方が
はっきりせん事には

こいさんの相続は
承知できしまへんで。

(雛子)人の事ばっかし
文句をつけて

藤代姉さんの相続分は
どないなん?

うちの分は 北堀江の貸家と
東野田の分を合わせて

10億800万や。

2人の言い値に比べても
何千万どころか億も足らへんわ。

おまけに 相続税を考えたら
半分にもならへん。

この足らず分は
どないしてくれんの?

相続税は 皆 一緒やないの!

(雛子)そうやわ!
違う!

うちんとこの土地家屋は 何平米か
正確に登記簿に記載されていて

偽物やの この商売は難しいやの
言うて ごまかせんのや。

総領娘が一番損な相続やなんて
うち 納得でけへん!

少ない分 2人から
割り戻してもらいますさかい!

そんなん へりくつや!

姉さんが嫁かはった時の分を

お父さん
ちゃんと見てはったやないの!

「見てはった」?
どこ押して あんた…。

(千寿)持参金が3000万
お衣装代かて何千万や。

それも 相続分に繰り入れて
勘定するのが

法律の建前やないんですか!?

衣装代って どう値踏みできんの?
あんた…。

あっ! また たんす開けて
調べたんか!

「また」?

なんやの ついこの間まで
仲良うしてた姉妹やのに…。

藤代姉さんの
野点用のお茶道具一式

あれ 300万円らしいわ。

それも ちゃんと 差引勘定の中に
入れといてもらわんと!

雛ちゃん あんたは黙っとき!

(矢島米治郎)宇市つぁん

この他に まだ
どんな問題が残ってますのや?

(宇市)へえ…
共同相続財産の分配でおます。

その目録ちゅうのん
見せてくれるか?

(宇市)ええ…。

(せき払い)

「共同財産目録」

「一 不動産 イ 土地・建物」

「大阪府大阪市中央区南本町五丁目
十六番二号所在…」

「ロ 山」

「三重県熊野市金山町
六百五十八番地 七十万平米」

「奈良県吉野郡東吉野村鷲家
三百四十六番地 四十万平米」

「岡山県津山市大谷…」

(宇市)「…二十五万平米」

「奈良県吉野郡吉野町吉野山…」

「…十一番地 五十二万平米」

(せき払い)

(宇市)以上が 私がお調べした
共同相続財産の目録でおます。

どうぞ ご確認を。

(米治郎)もう
他に大事な事はおまへんのか?

ああ… もう一つ 大事な問題が。

お三方の遺言状とは別に
ええ…

もう一通の方の始末がおます。

(芳子)おなごにやる
仕分けの事でっか?

どんな おなごでした?

(芳子)宇市つぁんは
遺言状を伝えに

そのおなごの家に
行かはったんやさかいな。

(宇市)《何を偉そうに…》

《こんな時は 泣くか笑うか…
いや 少し踊ってみるか》

(宇市)おきれいで

慎ましゅうて

情の深い

ええおなごはんでおました…。

(芳子)「情の深い」って

一回ぐらい会うただけで
わかりますのん?

(宇市)へえ。

わてが お訪ねした時は

嘉蔵旦那の写真の前で

ご存命中のものであろう お茶碗
お箸 お酒のお膳をお供えして

涙で枯れ果てた顔をして
お給仕をなさっておられました。

私が 遺言状をお見せすると

「何も分けるものが
書いてあらへんのに

私にまで 書き物を
残してくだはった」言うて

お泣きやして…。

きれいや言うて
お姉ちゃんに比べて どうやのん?

えっ! 嬢さんと比べるなど

いやあ めっそうもありまへん!
へえ…。

寂しいという事は
人を引きつけますなあ。

(宇市)まして

大事にしていたお方が死なはった
という おなごはんには

なんや 境界線を漂うような
儚さがあって

男心を強烈に… 揺さぶります!

「慎ましい」って どんな?

(宇市)へえ。 大旦那の遺言では

「何分 よしなに」と
書いてあるのに

私が 「嬢さん方は
お心の温かい人ですさかいに

きっと
あんさんの身の立つように

お計らいになって
くださるでしょう」と言うと

「私の事で 本宅様に

ご迷惑をかけるような事は
できしまへん」とおっしゃって

まあ そういう
気の使いはるお方で…。

で そのおなごには

どれくらいの事をしてやったら
ええんですか?

いくらでも…
嬢さん方のお心次第でおます。

そやかて
うちらの体面もあるし…。

体面なんか どうでもええやん。
うちらの取り分から

お父さんの愛人に
お金を渡すやなんて

まったく馬鹿馬鹿しい話やわ。

(芳子)利口そうな おなごやな。

そのおなごの仕分けとは別に

早急に そのおなごを
ここに呼び寄せる事だすな。

嘉蔵さんが なんぼなんぼ
やってくれと言わんかったんは

案外 生きているうちに
してやってて

また してやってくれという
虫のええ話かもわからへんしな。

そのおなごを呼びつけたら

案外 雪彗のお軸の行方も
わかるかもしれへんしな…。

あんたらの相続も
その上の事にする事だすな。

♬~ (上戸)大人になってハグキが下がると
根元が無防備に…

実は ここが…ムシ歯リスク3倍!

だからハミガキは「オレンジのクリニカ」

《歯の根元まで しっかりコーティング》

《フッ素がムシ歯を防ぐ!》
♬~「オレンジのクリニカ」

矢島商店の宇市です。

大番頭さん…。

どうぞ お入りください。

(ドアの開く音)

(ドアの閉まる音)

(宇市)失礼します。

どこか お具合でも…?

風邪でも引いたんか

表のお掃除をしてたら
急に気分が悪うなりまして

ちょっと 横に…。

あっ…。
あっ。

ご本宅様は
お変わりものう お過ごしで?

ああ… いやあ 今日もまだ
姉妹で話し合いですわ。

いやあ 世間でいう
「遺産争い」というんですかね。

フフフフ…。

3人で数十億という
財産の分配でありながら

いやあ たとえ
1000円 髪の毛一本でも

譲り合わんという

生臭い競争心が
呼び起こされましたようで…。

それも 四代も女系を重ねた
血の濃さからくるものかと思うと

なんや ぞっとしますわ…。

雪彗のお軸一本の行方にさえ
疑心暗鬼になったりして…。

まあ… 雪彗なら
ここに お預かりしていますのに。

あっ いやいやいや…。

それは 旦那さんが
本宅に内緒で

ここの座敷に
飾らはったものですさかいに

今さら ええ…。

そうなったら困るから

すぐに お軸はお返ししたいと
言いましたのに…。

あっ! ああ… いや…。

こうなった以上

大旦那にも あんさんにも
ご迷惑がかかりませんように

時期を見計らって 本宅のほうへは
ご返却に伺いますので。

ここは一つ

私に お預かりさせて
頂けませんでしょうか?

大番頭さんに?

へえ。 本宅が 事前のお調べに
お見えになる時の用心…。

「親譲りの無鉄砲で
子供の時から損ばかりしている」。

「おれは何が嫌だといって

人に隠れて自分だけ得をする程
嫌なことはない」。

嘉蔵さんが読んではった
『坊っちゃん』です。

ぼ… 『坊っちゃん』?

知らぬ存ぜぬで通すのも
気後れしそうですし

大番頭さんに
お預けしたほうが…。

♬~

あっ…。
どうぞ。

お改めください。
結構です。

雪彗の『滝山水』
確かに お預かりさせて頂きます。

あの… この22日 本宅のほうへ
お運び願えますやろか?

どうだす?

とうとうですか…。

けど 難しいしきたりや作法が
あるんやったら

私 それが…。

いや あの この当節ですから
ええ…。

旦那さんに お世話になった事を

丁重に申し上げて… ええ。

ああ それと…

雪彗の軸の事 聞かれましたら

知らぬ存ぜぬで通してください。

まあ そんなとこでございます。

じゃあ 預からさせて頂きます。

♬~

当日は お着物で
お越し頂けますでしょうか?

お着物?

へえ。 まだ 昭和のまんまの人が
いてますさかいに。 フフフ…。

あんさんなら きっと
お似合いになりますでしょうし。

♬~

(風の音)

はあ… 気持ちいい!

♬~

ごめんください。

♬~

お宅が

うちの山守をしてくれはってると
お聞きしまして。

(戸塚太郎吉)そや。

うちの山を
案内してほしいんですわ。

さよか。

こちらは
お近づきの問屋の若さん。

うちが
「新緑の山に行きたい」言うたら

「ついてったる」言わはって。

これ 嬢さんからの手土産です。

ああ 僕 ボディーガードですねん。

そら えろうすんまへん。
せやけど…。

今日 ここに来る事
大番頭さんは ご存じなんでっか?

山を見るのに

宇市に断らなあかん訳でも
ありますのん?

いや… な~んもあらしまへん。

これ 最近
ホームセンターで買うたんや。

使うか?

(太郎吉)そこも ここも
お宅の山ですわ。

この木のしるしは なんです?

(太郎吉)
これは 持ち山のしるしです。

「矢島嘉蔵
所有林

平成二十四年三月改」って
書いてますやろ。

「改」いうんは…?

(太郎吉)ああ…
それは この年月に

山守のわてが見回りに来て
境界を改めたいう意味ですわ。

(梅村)嬢さん 山の争いは
この境界で起きますねん。

普通 少しは間を空けんのに

こずるい奴は
他人の境界にまで植林をして

その鞘稼ぎをしますねん。

なあ? 山守さん。

あんた えらい 山に詳しいねんな。

ハハッ… 好きやねん 山が。

♬~

ここで どれくらいの広さです?

(太郎吉)ああ… せやな…
ざっと二十町歩。

おかしいわ…。

宇市は 鷲家の山
四十町歩ほどはある言うてたのに。

あっ?

ああ… それは あれや
もう一つの山を入れてですやろ。

もうひと山?

それは どこです?
連れていってもらえますか?

そら 無理や。
山道で8キロもありまんねんで。

それに あれ 見なはれ。

向こうの峰に 霧が出てますやろ。

行きます。 案内して。

あかんて。
日が暮れたら どないもならんど。

行きます!

(ため息)

(鳥の鳴き声)

こっちや。

(遠雷)

(風の音)

おおきに。

山守さん!

(梅村)これ以上 女連れで無理や。

すぐに元来た道に…。

(雷鳴)
若さん 怖い!

(雷鳴)

(雷鳴)
ああっ!

(梅村)嬢さん! 嬢さん!

い… 痛い…。

どこ? どこが痛むんです?
足が…。

痛っ! 痛い!
足が…! 足首が…。

(太郎吉)
足首 捻挫させはったんやな。

ハハハハ…。

お茶やお花を楽しんでるお方に
山見は無理や。 ええ?

山は お座敷のように
畳が敷いてないよってな。

ヘヘッ!
ああ…。

足が治ったら もう一遍 来ます!

(雷鳴)

どうです? 痛みは。
少しは楽になりましたか?

こうしたら 忘れまっしゃろ。

若 痛い…。

足を… 足が…。

なあ 嬢さん。

乗馬クラブの合宿で

京都に泊まる言うて
出てきはったんやろ?

ほな ここに泊まろう。

えっ…?

あっ!

馬から下りる時に
足をくじいた言うたらええねん。

足が…。

♬~

なあ 嬢さん…。

そない頑張って

相続する何億もの金を

一体 何に使わはるつもりです?

使うとこまでは…。

神ノ木のおなごや妹らの胸の内も
はっきりわからへんし…。

ほんまに
私の手に入るかどうかも…。

♬~

僕 捨てられた保名のように

思い乱れたりは ようせんけど

だまさはったら
そのままではおきまへんで…。

あんた 遺産相続が済んだら

どこぞの若旦那と

遊び回るんと違いまっか?

何 言うてんの!

若さんこそ
私を こないにしてしもて

どないするつもりです…。

♬~

あっ…!
こうするだけや。

おおきに。

嘉蔵さんには
手に負えへんおなごや。

(芳子)それでも
失いとうなかった…。

お呼び越しの浜田文乃さんです。

(時計の時報)

神ノ木の文乃でございます。

この度は 思いがけないご不幸で

陰ながら
お悔やみ申し上げておりました。

旦那様のご存命中には
何かとお世話になりながら

ご本宅へのお伺いが遅れ

不調法な事でございました。

ご苦労さん。

まあ お掛けやす。

本日は この人たちの叔母の私が
ごあいさつを承ります。

この子たちは
本宅伺いなどという下世話な事は

何一つ 知りまへんのでな

妙な気苦労をさせたら
かわいそうでおますさかいな。

それで お体のほうは お達者で?

はい おかげさまで…。

そうでっか。

お顔の色が
もう一つ冴えまへんよって

具合でも悪いのかと思いましてな。

(カラスの鳴き声)

それで お身内は どちらで?

丹波ですけど

両親も たった一人の姉も
先立ってしもうて

独り身でございます。

独り身…。

嘉蔵さんとの お出会いは?

白浜で
芸者に出ておりました時に…。

(芳子)ああ 温泉芸者はんで。

(芳子)そいで 嘉蔵さんとは
何年ほどでおます?

丸7年で…。

(芳子)すると 姉の松子が
まだ生きてる時からですなあ。

浜田さん。

嘉蔵さんが
ご自分の万一の事を考えて

あんたに どんな仕分けを
してくれはったんや?

何も…。

私は ご相続人と違い…。

これからの事やありまへん。

お父さんが あんたに
どんな事をしておかはったか

それを聞いてるんだす。

今 住まわせてもらってる家は
ちょうだいしております。

ありがとうさんにございます。

それだけですか?

はい。

他には?

あんたを受け取り名義にした
特約付き金銭信託とか保険とか…。

つまり 生前贈与というもんは
なかったんですか?

♬~

なるほど。

藤代さんの言わはるように

生前贈与という仕分けが
ございましたなあ。

旦那さんは
婿養子のご身分をお考えになり

私の生活費も

「自分で算段したお金やさかい
始末して使うてくれ」と

口癖のように おっしゃって…。

神ノ木の家以外には
お金のかかる事は 何一つ…。

(千寿)ほんまかしら…。

あの 気の細かい

石橋をたたいても渡らへん
用心深いお父さんが

3カ月も寝込んでる間に

あんたに なんの仕分けも
してなかったなんて

考えられへん。

(雛子)そうやわ。

遺言状にも
あんたの事 よろしゅう頼むって

書いてあったし…。

(宇市)浜田さんの生前贈与が
問題のようでおますが

私が 今日まで
お調べしたところによりますと

なんもございませんでした。

(芳子)
えらい手回しのええ事ですな。

(宇市)えっ? なんでおますか?
(芳子)聞こえまへんか?

えっ?
(芳子)文乃さんの事

よく先手を打って 調べましたな
って言うてますのや!

ああ… 遺言執行人に
指名されておりますさかいに

当然だす。

あんたんとこに
雪彗のお軸が行ってますやろ!

せっかくでございますが
拝見した事も…。

(芳子)そうでっか?

てっきり 嘉蔵さんが

あんたんとこに運んだと
思うてましたんや。

(芳子)養子のくせに

姉の目をかすめて
隠し女をこさえてるような

抜け目のない人でっさかいな。

もし そのような事があっても
決して そのまま

私に お与えになるような事は
なさりません。

♬~

他に お申し付けの事が
ございませんでしたら

私 これで失礼を…。

(芳子)文乃さん。

お仏壇に参ってから お帰りやす。

えっ…!

拝ましてもろうても
よろしいんですか?

あんたは
ただのお人やおまへんさかいな。

おおきに…。
ありがとうございます!

お待ちやす!

(帯をたたく音)

お仏壇を拝みはる時は
その羽織を脱がな!

えっ…?

昔は お妾さんの本宅伺いには
羽織は許されず

羽織ってきたとしても

玄関で脱いで入ってくるのが
作法でおました。

羽織は カーディガンみたいな
もんですさかいな。

嘘…。

あんさんは そんな行儀作法など
わからへんと思うたから

そのまま
通ってもらいましたけれども

先祖代々を祀った
お仏壇の前でだけは

脱いでもらわなあきまへん!

♬~

どないしました?

そんなに脱ぐのが嫌でおますか?

あっ…!

おやめください…
おやめください…!

あっ…!

(芳子)おなかのややは
何カ月でおます?

♬~

5カ月のかかりに…。

誰の子だす!?

えっ…!?

亡くなられた旦那さんのお子です。

(遠雷)

(芳子)へえ~…。

嘉蔵さんは
亡くなる3カ月前から患うていて

半年前から あんたとは
交渉がなかったはずや。

(芳子)妊娠5カ月というのは

ちょっと おかしいやおまへんか?

旦那さんは
ご本宅でお伏せになってからも

週に一度の病院通いの帰り道には

必ずお寄りになってくれはって…。

(芳子)へえ~…!

(芳子)肝臓の長患いの病人が
あの事だけは死ぬまで達者!

その証しが おなかのやややと
言いますのか?

(芳子)
とんだ生前贈与でおますなあ。

嘉蔵さんの子やという
なんぞ証拠でもありますのんか?

生まれたら わかる事です!

ほな 産むつもり?

はい。

旦那さんも お喜びでしたので…。

産む…!?

その子を
だしにするつもりやったから

今まで
物欲しそうな顔一つ見せずに

きれい事ですましてきたんやな!

一体 なんぼ仕分けが欲しいねや?

別に 子供をだしになど…。

ほな なんで おなか隠してたん?

隠してたんやありません!

本日は 旦那さん生前の…。

(雷鳴)

(雨の音)

夏雨でおますな。

宇市つぁん。

あんた ほんまに こちらのややに
気がつきまへんでしたのか?

私は すぐに わかりましたで。

(宇市)鈍な事で…
そこんとこは 男やさかい…。

いやあ 羽織がカーディガンとは
知りもしませんでした。

フフフフ…。

文乃さん。

お父さんの子に間違いないという
証拠でもない限り

せっかく
えらい目して産まはっても

そのかいおまへんやろ。

いっその事 堕ろさはったほうが

あんさんのためになるんと
違いまっか?

おなかの子を育てる母の私が
決める事です。

いくら お世話になった旦那さんの
嬢さんのお言葉でも…!

なんちゅう しぶとい女や!

生まれてくるややは

嬢さん方の弟か妹になる子供です。

♬~

なんで そんな無慈悲な事を…。

やめてんか!

矢島家は 代々 家付き娘が
入り婿をとってきた家だす!

赤の他人のあんたの血を受けた
子供と一緒になんか…!

きょうだい呼ばわりなぞ
口の端にもせんといてんか!

帰っておくれやす!

♬~

♬~

♬~

♬~

どないしょう?
いや 僕に聞かれても…。

(芳子)終わりの始まりでっせ。

雛ちゃん…。

♬~

しっかりせな!

♬~

堕ろさはったらええやん。

吉報やないの。

どないしても産む言わはったら?

汚らし…。
どっちにしたかて…。

♬~

〈壮絶な遺産争いは

衝撃の結末へ!〉

(芳子)妊娠高血圧症候群?

(宇市)母子ともに
危険になる場合がある…。

そんなに私に ややが生まれるのが
ご迷惑なんですか?

ええ!

(良吉)
和解という2文字はないんや!

(芳子)
グルになってるんやないかいな!

(宇市)名誉毀損で訴えますが
よろしゅうおますか?

どないしはるおつもりです?

裁判所に持ち込んでと思うてます。

〈『女系家族』完結編〉