太平洋戦争80年・特集ドラマ 倫敦(ロンドン)ノ山本五十六[解][字]…のネタバレ解析まとめ
出典:EPGの番組情報
太平洋戦争80年・特集ドラマ 倫敦(ロンドン)ノ山本五十六[解][字]
香取慎吾の新境地!“知られざる山本五十六”。戦争の足音近づく日本。海軍提督・山本五十六は国家の命運背負い、英米との軍縮交渉に挑む。葛藤の末に下した決断とは!?
番組内容
香取慎吾が挑む新境地!海軍軍人・山本五十六の「知られざる真実」を描く実録ドラマ。後に真珠湾攻撃を立案し太平洋戦争を始めた山本は実はその7年前、戦争を回避すべくロンドンでアメリカ・イギリスと対峙(じ)していた。決裂すれば戦争につながりかねない軍縮交渉。山本はぎりぎりの交渉を続けるが軍上層部からは「結論ありき」の交渉を命じられ…。優先するべきは国民の命か国家の誇りか。苦悩の末に山本が下した決断とは!?
出演者
【出演】香取慎吾,高良健吾,片岡愛之助,渡辺いっけい,嶋田久作,中村育二,市原隼人,平岩紙,景井ひな,伊武雅刀,山本學,國村隼
原作・脚本
【作】古川健ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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今から80年前
昭和16年 1941年12月8日 未明
日本海軍航空隊が
ハワイ 真珠湾に停泊する
アメリカ太平洋艦隊を奇襲攻撃した。
この作戦を指揮したのは
山本五十六連合艦隊司令長官。
真珠湾攻撃を機に
日本は
およそ4年にわたり 戦争を続けた。
(子供の泣き声と犬の吠え声)
(富岡)<昭和20年 1945年12月。
終戦から 4か月余り。
東京は いまだ このありさまだ>
10銭。
(カラスの鳴き声)
(ノック)
(須藤)富岡少将 お待ちしておりました。
ああ ご苦労さん。
全てか?
はい。
ご指示のとおり 軍令部だけじゃなく
大倉倉庫からも集めておきました。
(須藤)全て 運び出しますか?
いや 選ばせてくれ。
どの辺りの文書をお探しですか?
ある程度 時期で分けております。
おう… 特に ロンドン軍縮会議に関連する
文書が欲しい。
(須藤)承知しました。
ですが なぜ これを?
この軍縮交渉の結果が
海軍の失敗の始まりなんだ。
この文書には
我々の失敗の… 源がある。
♬~
<昭和9年 日米開戦の7年前。
山本五十六 この時 50歳。
やがて 日本ばかりか世界中に
名前を知られる この男も
まだ このころは
一海軍少将にすぎなかった>
(山本)久しぶりだな 富岡君。
はっ!
軍令部では 航空作戦の研究は
進んでるか? はっ!
じきに 飛行機が戦の主力になる時代が
やって来る。 うまく使ってくれ。
はっ!
軍縮条約さえなければ
海軍は もっと強くなれるんだ。
そのとおり。 このままでは
英米に水をあけられるだけ。
(ノック)
よう。
(堀)山本!
すまんな。 待たせたか?
(堀)いや 俺も 今さっき来たところだ。
座れよ。
ああ。
<この男は 堀 悌吉海軍中将。
山本とは海軍兵学校の同期であり
唯一無二の親友である>
もうすぐ ロンドンで
軍縮条約の予備交渉が始まるな。
ああ。
この時期 海軍は
最重要課題の一つである
ロンドン軍縮条約の
予備交渉を控えていた。
軍縮条約は 軍備が拡大した
第一次世界大戦を反省し
経済不況を乗り越えるため
イギリスやアメリカが中心となり
軍備縮小と国際協調を目的に
作られていた。
世界三大海軍国の一つであった日本も
この条約を批准。
しかし
条約は
不平等だと
破棄を求める空気が海軍内で流れていた。
アメリカは 日本が
太平洋で暴走しないよう 制限をしたい。
イギリスは 植民地経営のために
日本 イギリス アメリカの三国の
平和を維持したいだけのことだ。
ヨーロッパ情勢が
ドイツのために緊迫してきた。
イギリスは 極東にまで
手を回しにくいだろうな。
それに結局は それぞれの事情で
あまり軍艦に金をかけられない
というのも あるだろう。
ああ…。
これは もちろん 日本にも言えることだ。
むしろ 一番 国力の劣る日本にとって
軍縮条約は ありがたいんだ。
国際協調を守ることによって
戦争を避けることは重要だろう。
お得意の非戦論か。
山本。 軍の本来の任務は
可能な限り 戦争を避けることだ。
軍備を調えるのは 他国に戦争を
仕掛けられないようにするためであって
そのために
いかに戦力を調整するかだけだ!
言っていることは分かる。
しかし
不平等な軍縮条約を押しつけられて
海軍の誇りは損なわれっ放しだ。
誇りを守ることは 必要なことだろう。
戦争をしないことこそが誇りだ!
堀! 言葉には気を付けろ。
その言動は危ういぞ。
そんなことは どうでもいい。
堀!
アメリカを仮想敵国として軍備を調え
いざ 本当に戦争になったら どうなる!?
貴様には よく分かるだろう?
アメリカの国力は すごい。
俺は 数年前に この目で それを見てきた。
あの国力が もし
戦争に注がれたと考えたら…。
軍縮条約があれば その途方もなく豊かな
アメリカの戦力も
条約の枠内に収めておけるんだ。
明らかに
こちらに利のあることじゃないか。
軍縮条約は 必要だ!
そうだろう? 山本。
(長谷川)総長 大臣
ロンドンにおける軍縮条約の
海軍首席代表についてですが…。
(伏見宮)うむ。
(大角)誰にした?
加藤とも話し合い…。
山本五十六で
いかがでしょう?
山本?
(加藤)あれは まあ 使える男かと。
アメリカに詳しいですし
英語もできます。
それに 豪雪の
長岡育ちですから辛抱強い。
今回の交渉に向いております。
日本は じきに軍縮条約からは…。
(加藤)こちらの方針が固まっているなら
代表は 山本でもよろしいかと。
うむ。
奥様
お買い物でしたら私だけでも。
私の好きでしていることだから
いいのよ。
こんにちは~。
おっ! これは 山本さんの奥様に
よっちゃん いらっしゃいまし!
ナスとキュウリをもらえるかしら?
毎度。
あ~ 参っちゃうね。 こう景気が悪いと。
そうねえ…。
でも 新聞には
「恐慌を脱した」って書いてありましたよ。
そりゃ どっか 上の世界の話でさ
俺たち庶民からしたら もう何年間も
ず~っと不景気続きですよ。
はい。 おナス。
はい。
議員さんも大臣閣下も
それに財閥だって 頼りにゃならんしね。
やっぱり頼れるのは 海軍さんですよ。
だから 海軍さんには
強くあり続けてもらわねえとね。
主人に伝えておきますよ。
アメリカやイギリスなんぞに
負けねえでくださいよ!
はい 40銭です。
はい。 はい ちょうど。 毎度あり!
ありがとう。
次は 魚屋さんね。
よっちゃん?
あれ 旦那様じゃないですか?
コイやフナどころか ナマズだって
ウナギだって アユだって取れた。 わあ。
秋には サケも取れたよ。
アハハハハッ!
あなた。
お~ 礼子。 よっちゃんと買い物か?
はい。
お帰りなさいませ 旦那様。
ああ。
いらっしゃい 奥様。
いつものアサリ 下さいな。
ありがとうございます。
何です? その荷物は。
これか? お土産だ。
また甘やかして。
いいじゃないか 陸にいる時ぐらい。
お待たせしました!
ありがとう。
また お越しくださいまし。
また。
ありがとうございました!
♬~
こんにちは。
おう。 こんにちは。
頂きます。
(一同)頂きます!
あ~ん はい。
♬~
(賀屋)高橋先生
今日は ご足労ありがとうございます。
(高橋)ああ… 賀屋君。
さあ どうぞ。
ありがとう。
先生。
うん?
ご存じですか?
何だ?
海軍の軍縮条約に関してです。
どうも 海軍は 軍縮からは脱退することで
まとまっているようです。
海軍は アメリカに
けんかを吹っかけるつもりなのか?
そこまでは さすがに。
しかし あくまで
アメリカ イギリスに
肩を並べたいようですね。
海軍が言うままに軍艦造ったら
国家予算は めちゃめちゃになる。
そうなりゃ 日本経済は
にっちもさっちも いかなくなるんだ。
きっと また ムチャな建艦計画を
持ち出してくるでしょうね。
今までだって 海軍は 国家予算の
2割近くを使い続けているんだぞ。
それを更に増やせというのか?
ハッ…
そもそも国防なんてのは 字のごとく
国を守れれば それでいいんだよ。
国家のための軍であって
軍のための国家じゃないんだ。
おっしゃるとおりです。
ハッ。
大体 政党の政治家の弱腰が
軍を調子づかせるばかりなんだよ。
だらしないこと この上ない。
(賀屋)ですが 今の情勢で
おおっぴらに それを口にすれば…。
犬養君のように殺されるか。
フンッ やれるもんなら
やってみろってんだ。
そんなこと おっしゃらないでください。
今 軍に 物申せる政治家は
高橋先生しかいません。
全く…。
≪(礼子)あなた 開けますよ。
ああ。
(襖が開く音)
お茶 置いておきます。
ありがとう。
何だ?
義正のことなんですが…。
義正が どうかしたのか?
(礼子)先生に お聞きしたら 府立一中に
合格するかどうかは五分五分だと。
あいつは きっと合格してくれる。
俺は そう信じてるよ。
あなたは いずれ 義正は海軍へって
思ってらっしゃるんでしょう?
子供の頃 海軍は 俺の憧れだった。
ええ。
軍人になってからも
常に 俺の誇りだった。
俺が海軍に入ってすぐ 日露戦争で…。
今まで いろんな任務をやってきたが
そのおかげで
お前たちを食わせてやれてるし
やりがいのある軍人生活を
送ってこられた。
ええ。
義正にも かなうことなら
同じ道を進んでほしいと思ってるよ。
あの子も あなたのお気持ちには
気が付いていると思います。
それなら それでいい。
あとは あいつが
自分の道を選べばいいんだ。
はい。
お邪魔しました。
予備交渉の代表を私がですか?
ロンドンにいる松平大使と共に
代表として予備交渉に臨んでもらう。
どうした?
失礼ながら 私は適任ではないと思います。
(加藤)そんなことはないよ。
海の上の方が 私には性に合っています。
山本!
はっ!
(加藤)海軍にとって重要な任務だ。
何も言わず うなずいてはくれまいか。
どうかね?
承知いたしました。
では 早速 方針について打ち合わせを。
まあ いろいろと書かれてはいるが
要は 海軍の主張は ただ一つ。
英米との不平等な戦力比率を
撤廃することだ。
強大な艦隊を造るのは
我々の悲願であり 義務だ。
だが このままでは それはかなわない。
それは もちろん分かります。
しかし 英米が
この提案に乗るとは思えないのですが。
それでも 海軍の主張は変わらん!
条約があれば
英米の戦力を制限することができます。
それは重要ではありませんか?
ばかを言うな!
我々 帝国海軍が目指すのは
あくまでも強大な艦隊だ。
陛下の艦隊を造る。
これこそが帝国海軍の本懐ではないか。
そもそも ワシントンで アメリカが
「6割の戦力で我慢せよ」などという
ばかげた条約を押しつけた。
我々は最初から
はねのけるべきだったのだ。
どうして 日本だけが
そのような制限を受けねばならぬのだ。
そうだろう? 山本。
しかし
まともに予備交渉に当たらなければ
我が国が 平和の敵として
非難されることになる。
それは避けたい。
だからこそ 山本には
辛抱強く 我が国の立場を主張し
粘り強く 交渉をしてもらいます。
(伏見宮)うむ。
山本君
期待してるよ。
はい。
(正子)ケン グッ パッ!
グッ… ケン!
(澄子)アハハハ!
ケン パッ ケン パッ
ケン ケン パッ! ケン!
ごゆっくり。
ありがとう。
海軍は 軍縮条約を
破棄するつもりなんだな。
明言はしなかったが そのつもりだ。
(堀)決裂が前提の交渉で
交渉するふりだけは させるのか。
そういうことだ。
(堀)猿知恵だな。
そんな予備交渉に何の意味がある?
変わらんな 貴様は。
戦争は悪だ。 軍人たる者
戦を避けるために全力を尽くすべきだ!
上も アメリカ イギリスと
戦争をしたいわけじゃない。
したくなくても アメリカ イギリスと
決裂して 軍備を拡大すれば
やがては その道に進みかねない!
俺たちは 本物の戦場を この目で見た。
日本海海戦か。
貴様は あの時 消えない傷を負った。
俺は 敵艦と共に沈んでいく
大勢の将兵を見て
戦争とは どれだけ悲惨なものかを
思い知った。
≪(礼子)澄子~ 正子~。
あの悲惨な光景は
二度と繰り返してはいかんのだ!
それに つながるようなことを
貴様は しようとしているのではないか?
分かっているのか!?
山本
命に勝る誇りなんて あるのだろうか?
ある。 俺は軍人だ。
この国のために
死ぬ覚悟は とうにできている。
俺が言っているのは
そういうことじゃない!
それも分かっている。
国と国民の命を
どんなことをしてでも守る。
それもまた 軍人の務めだ。
もう あんな悲惨な光景は繰り返さない。
ならば…。
堀。
俺は 考え方を変えることにした。
考え方?
誇りも 平和も 両立させればいい。
海軍の誇りと 軍縮
この2つをどちらも守るんだ。
どうやって?
上も納得する条件で
軍縮を維持すればいい。
つまり
アメリカとイギリスに譲歩させるんだ。
アメリカと戦争になれば
日本は必ず負ける。
それは分かっている。
貴様の健闘に
望みを懸けるしかないということか。
ああ… 任せてくれ。
<山本代表団一行は
9月20日に横浜を出港。
アメリカを経由し
10月16日 ロンドンに入った>
♬~
(松平)No, I think it will be fine.
(加藤)大使…。
(松平)うん?
山本代表 到着しました。
おっ そうか。
He’s here.
Oh.
松平さん ご無沙汰してます。
ハハハ…。
ロンドンへ ようこそ。
山本さん 同じ代表とはいっても
私は海軍のことは素人だ。
私のことは気にせず
思うとおり やってくれ。
はい。 お任せください。
岡君。
(岡)はっ!
よろしく。
よろしくお願いします。
こちら
イギリス外務省のクレーギー局長だ。
How do you do?
Nice to meet you.
I’m Isoroku Yamamoto.
It’s lovely to meet you.
う~ん…。
海軍案は 思った以上に強硬だね。
ええ。
海軍は これで
アメリカ イギリスと合意できると
本気で そう思っているのかい?
はあ…
もし 交渉不成立ということになれば
アメリカ イギリスとの緊張度は
当然 増すことになるよね。
ええ。
それでも構わない?
(松平)アッハハハ… で?
山本さんは どうするつもりだい?
どこを目指して交渉するつもりだ?
条件を見直して
条約を締結することを目指します。
その見直しを海軍は認めるかい?
そこまで海軍は愚かではありません。
今から 我々が
ここで粘り強く交渉を続ければ
軍縮条約を破棄することの危うさに
気が付いてくれると信じています。
フフッ… なるほど。 一理あるな。
私たちの役割は だからこそ重大です。
よろしくお願いします。
もちろん。 全力を尽くすよ。
(記者たちの声)
(岩下)どうかなさいましたか?
武者震いだよ。
<昭和9年 1934年10月23日。
イギリス首相官邸にて
日本とイギリスの交渉が始まった。
イギリス側は 首相 外相など
重要閣僚が出席していた。
その顔ぶれから イギリスの
この交渉に対する意気込みが
にじんでいた>
軍縮条約における
主力艦比率5対5対3は
我が国として 断固 拒否するものである。
それに代わり 三国の海軍戦力の
最大限総トン数を定め
その制限の中で それぞれが
自由に戦力を整備することを提案したい。
(通訳する声)
(マクドナルド)The United Kingdom will not
accept those conditions.
(溝田)「イギリスとしては
その条件は とても受け入れ難い」。
日本としては 不公平な戦力比率こそ
到底受け入れ難い。
これは 国家の威信の問題である。
(通訳する声)
我々が求めているのは
あくまで 各国間の平等である。
(通訳する声)
(英語で)
(笑い声)
(マクドナルド)We’ll have the equal portions
tonight….
<日本の主張は強硬だったが
イギリスは柔軟に相対し
交渉を進めようとしていた。
しかし…>
<アメリカとの交渉は
初めから厳しいものだった>
(溝田)「日本側の求める平等とは
どういう意味か?
同じ艦隊を造るということか?」。
あくまで 我々が意図するところは
防備に関すること。
それは 建艦競争には つながりません。
日本の領域は東洋を飛び出し
南太平洋にまで及んでいる。
広く安全を確保する必要があります。
(松平)予想どおり
日本と英米の主張には隔たりがあるね。
ええ。
しかし まだ交渉は始まったばかりです。
うん。 まっ しっかりやらんとな。
(ノック)
≪岡です。
入りなさい。
何だ?
山本代表 少しよろしいでしょうか?
もちろん。
いよいよ 予備交渉が始まりました。
ああ。
今回の予備交渉における我々の目的は
不平等を正すことです。
そうだ。
(岡)海軍の方針は 協調よりも 軍備拡大を
重視することに決したのです。
条約にとらわれず
自由に戦力を整備すること。
これが海軍の意志です。
俺は海軍軍人だ。
海軍の意志に従うのは当然だよ。
その点だけ確認したかったのです。
くれぐれも お願い申し上げます。
分かった。
(岡)では 失礼いたします。
まるで お目付け役だね。 ハハハハ。
いや~ しかし これは難しいお役目だね。
(ため息)
松平さん。
何だい?
時間をかけて粘り強くやっていきますよ。
軍縮会議は武器を使わない戦争ですから。
ああ… フッ。
全体としては総トン数主義ですが
一部は艦種別にすればいいのではないかと
考えています。
攻撃的兵力の制限のために
一部は艦種別にするべきです。
<予備交渉は最初から
日本 イギリス アメリカ
それぞれの主張に
大きな隔たりがあった。
交渉は回を重ねたが 平行線をたどった>
(記者たちの声)
はあ… なかなか溝が埋まらないね。
そうですね。
はあ… このままじゃ 早々に
交渉打ち切りということに
なってしまうな。
いや ほかに
まだ やりようはあると思います。
ああ…。
ところで山本さん。
はい。
君は 英語ができるのに
どうして通訳を入れるんだい?
それは簡単なことです。
通訳を使えば 2倍 時間がかかる。
相手を観察し
次の手を考える時間を稼げる。
なるほど… アハハッ
抜け目のない男だな 君は。
いやいや それほどでも。
ハハハハハ!
<山本五十六の粘り強い交渉は
連日詳細に報じられた。
報道とともに
その知名度は日に日に増していった>
「山本代表語る」!
(一同)おお…!
「技術問題を討議をしても
我が根本原則の主張を
廃棄したわけではない」。
お~ ホホホホ!
カ~ッ 立派だね~!
立派 立派! 山本提督!
提督!
アメリカ イギリスには
負けねえでくれよ! そうだ そうだ!
ほかに 山本さんの記事ないのかい?
ほかにないのかい?
(鐘の音)
我々としては 不平等の是正に
理解を示していただきたい。
♬~
それは興味深い。
是非 聞かせていただきたい。
Why don’t we take a short break?
That’s a good idea.
はあ…。
山本さん ちょっと。
今のイギリスの案だけど あれは
歩み寄りと捉えていいんじゃないか?
はい。 以前から感じていましたが
アメリカとイギリスの思惑は
必ずしも一致しておりません。
ああ… ヨーロッパ情勢に
不安を抱えてるイギリスは
日本と協調したいんだろうな。
ええ…。
そこをうまく利用しましょう。
イギリスとの交渉をまとめて
そこにアメリカを巻き込む。
それができれば… 日英米 三国の
安定した関係を構築できるかもしれない。
それは大きいよ。
ええ。
平和と誇りを両立できる道です。
うん。
…で 山本さんは
あのイギリス側の提案をどう見る?
どうした?
簡単に言えば 建艦競争を防ぐために
お互いの建艦計画を
オープンにするというのが
イギリスの新しい提案です。
ということは 牽制し合って
競争がなくなるということかな?
しかし 計画が曖昧すぎて
現実的ではありません。
それと… 質的制限についても
提案してきましたが…。
質的?
兵器の性能に
制限をかけるということか?
これも日本には受け入れ難い。
戦力に劣る日本は 兵器の性能と
将兵の練度を向上させるしかありません。
正直 これは 私も首をかしげるような
案なので ましてや…。
本国が認めるわけはない。
ええ…。
(松平)はあ~ そうか…。
う~ん。
(チャットフィールド)Two pairs.
Full house.
Okay.
Okay.
(カードを切る音)
イギリスは やはり 協調に本気です。
譲歩する姿勢を
こちらも見せる時かもしれません。
(松平)譲歩? どういうことだい?
イギリスが乗るような私案を 我々からも
提示するというのは どうでしょう?
私案?
本国の許可を取ってからの話ですが。
なるほど… やってみる価値はあるな。
私案の作成
是非 協力願います。
もちろん。
(須藤)これは何でしょう?
これは 山本さんが
私案をイギリスに提示していいか
本国に尋ねている電報だよ。
つまり… イギリスに
歩み寄ろうとしていたと?
ああ。
♬~
(鐘の音)
♬~
出来た…。
松平さん 出来ました。
おっ ご苦労さま。
本国に これを代表団の私案として
伺いを立てます。
うん…。
うん。 異存はないよ。
岡君 光延君 すぐに本国に電報を。
(光延)はっ! 大至急 行ってきます。
待て!
山本代表 僭越ながら申し上げます。
うん?
この私案には
具体的な最大限戦力の数字まで
盛り込まれています。
ああ。
このような私案は
提示すべきではないと考えます。
このままでは交渉は決裂する。
その前に
打てる手を打っておいただけだよ。
しかし… これは独断にすぎます。
本国を無視して 代表団が 具体的な数字を
出すなど あまりに出過ぎております。
具体的な案がなければ
向こうは検討すらしてくれない。
もし… そこに向こうが食いついたら?
めでたいことじゃないか。
軍縮条約の交渉は継続する。
今… 何とおっしゃいました?
軍縮条約体制を継続するなら
それは いいことだ。
それは海軍の方針とは違います!
海軍の方針は
列強と肩を並べられる戦力を作ることだ。
軍縮条約を続けながらでも
それは実現できる。
そうは思いません!
東洋の一等国の地位を守るためにも
日本は
軍縮条約のくびきを外すべきなんです!
平和と誇り。
それを両立させるための最善だと
俺は信じる。
なるほど…。
妙に 粘り強いと思ったら
そこまで考えていたのですね。
軍縮条約など不要。
そこに議論の余地はありません。
俺は そうは思わない。
東京は これをよしとは しないはずです。
岡君。
はい。
我が国の中にあって
海軍は賢明な姿勢を保ってる。
上は 常に
正しい選択をしてくれるに違いない。
今 この場合 交渉を続け
英米との関係を保つ方が
賢い選択なんだよ。
賢明な海軍上層部は
不平等な条約からの脱却を望むに
決まっています。
それは分からんぞ?
光延君 すぐに電報を。
はっ。
(岩下)岡!
♬~
(鐘の音)
(光延)山本代表!
捜しました。
何だ?
本国からです。
「数字による具体案を提示することは
慎重なる考慮を要するものあるに…」。
海軍は却下した。
♬~
Admiral Yamamoto,
if you’re going to submit that
proposal, today is the day.
(溝田)「山本提督 そちらが
案を提出するなら 今日が期限です」。
We’ve been waiting for
your proposal,
including specified total tonnage
as you promised.
If you are prepared to submit it,
I urge you to do so here today.
(溝田)「我々は あなたの言う
具体的な総トン数を盛り込んだ案を
今日まで待ちました。
ご提出の準備があるなら 是非とも
今日 ここで 出していただきたい」。
私の案は
本国の認可を得られませんでした。
(通訳する声)
今日 ここで提案できることは
何もありません。
(通訳する声)
♬~
<山本の私案は提示されず
英米との交渉は
予定どおり 決裂した>
山本五十六中将は 英米に対して
比率均等を獲得した!
軍備の充実こそ
日本のあるべき姿である!
我々 日本国民は 今こそ 一致団結し
海軍当局を絶対的に支持すべきである!
ワシントン・ロンドン条約 破棄実現!
万歳! 万歳!
万歳! 万歳!
これでまた 海軍は軍艦を造りたがるな。
国家予算は ますます圧迫されていく。
困りましたね。
そうだな…。
これが 世論だ。
(賀屋)何だか 空恐ろしくなりますね。
覚悟を決めて 陸軍とも海軍とも
やり合わねばならんな。
はい!
<12月19日。
軍縮会議予備交渉の休会が宣言された>
<翌年の本交渉に
日本は代表団を派遣したが
結局 軍縮条約体制からは脱退。
軍縮の時代は終わり
制限のない
軍備拡大の時代を再び迎えたのだった>
「一 帝国海軍は本8日未明
ハワイ方面のアメリカ艦隊ならびに
航空兵力に対し
決死の大空襲を敢行せり。
二 帝国海軍は本8日未明 上海において
イギリス砲艦 ペトレル号を撃沈せり。
アメリカ砲艦 ウェーク号は…」。
(爆撃音)
♬~
(一同)万歳! 万歳! 万歳! 万歳!
♬~
失礼します!
失礼します! 失礼します!
<昭和10年 1935年2月12日。
長い旅を終え 山本五十六は
帝都 東京に降り立った。
出迎えたのは 熱狂した国民だった。
アメリカ イギリス相手に 戦力比率の
撤廃を勝ち取った山本五十六は
国民の英雄となっていた>
(一同)万歳! 万歳! 万歳!
万歳! 万歳! 万歳! 万歳!
万歳! 万歳! 万歳! 万歳!
万歳! 万歳! 万歳! 万歳! 万歳!
<山本五十六が
ロンドンで交渉を続けていた裏で
堀中将は予備役に編入され
軍の中枢から追われていた>
≪(戸が開く音)
≪(堀)ごめんくださ~い。
上がってきてくれ!
今 俺しかいないんだ。
おう。
おう 久しぶり。 上がれ 上がれ。
ああ。
食え。
ああ。
頂こうか。
そうだ。
うん?
イギリス土産だ。
お~! すまんな。
ありがとう。
早速…。
へえ… うん?
お~ 酒か!
ああ。
はあ…。
俺な… 駅まで行ったんだ。
そうか。 ありがとう。
フフッ。
大人気だったじゃないか。
これで 山本五十六も 国民の英雄だ。
ばかばかしい。
なあ 堀…。
うん?
何で 日本人は こうなんだろうな。
そうだな。
すまん。
何を謝る?
俺は 誇りと平和を両立できなかった。
上には 何を言っても無駄だったよ。
そうだな。
♬~
変わらんな…。
ああ… 変わらんな。
まあ よかったじゃないか。
貴様は軍人としては成功した。
だがな 山本…
貴様の世界は 海軍だけじゃない。
この日本全体が 貴様の世界のはずだ。
俺は最近 こう思うんだ。
本当に この国を思うなら
軍人といえども
軍という組織にとらわれず
もっと広い視野で行動しなきゃいけない。
そうじゃないか?
今のまま 狭い視野でいたら
きっと近い将来 この国に災いをなす。
今は そう思えてならないよ。
堀…。
おう!
俺は海軍を辞めようかと思う。
♬~
間違ってるよ 山本。
この国は いずれ 絶対に勝てない戦争に
向かっていくだろう。
そうなった時 貴様以外の誰が 海軍の中で
その流れに あらがえるのだ?
流れに あらがう?
貴様は それができる
数少ない海軍軍人の一人だ。
辞めることは 俺が許さん。
♬~
<この後 山本五十六は
海軍次官や連合艦隊司令長官などの
要職を歴任し
海軍の中枢を歩み続けた>
山本次官。
ああ… 富岡君。
航空作戦の研究は進んでいるか?
もちろんです。
うん。
それに…。
何だ?
悲願の大型戦艦の建造計画も
着々と進んでおります。
大型戦艦が出来れば
連合艦隊は 更に強大なものになります。
これも 山本次官の
ロンドンでのご活躍のたまものです。
そうだな。
はい。
それじゃ。
♬~
今 考えると
恐らく 山本さんは
ずっと悔やみ続けていたんだ。
ロンドン軍縮交渉は
海軍にとっての満州事変…
分岐点だったのかもしれない。
ええ…。
陸軍だけでなく 我々海軍も。
ああ。
もし 万が一 この交渉で
イギリス それに アメリカとも
新しい関係を築けていれば…。
この予備交渉は
大きなチャンスだったのかもしれない。
先ほど… 富岡少将は
失敗の源と おっしゃいました。
ああ… 我々は失敗した。
海軍の誇りだった艦隊を沈められ
守るべき大勢の国民を死なせ
国中を焼け野原にした。
(須藤)ええ。
多くの日本人が
強い日本と自分自身を
いっしょくたにして
大局的に物事を見ることが
できなくなった。
我々は 大きな流れに身を任せて
とうとう こんなところまで来てしまった。
その失敗を遡ると ロンドンに行き着く。
私には そう思えてならんのだ。
(須藤)富岡少将…。
今更 「少将」もないだろう。
はっ!
失敗の記憶をとどめるために
富岡さんは 軍縮会議の記録を残そうと
お考えなんですね。
富岡さん?
分からない…。
それが 私にも分からないんだ。
この記録を未来に残し
つまびらかにしたいのか
それとも ずっと隠していたいのか…。
ただ これを… 放置することはできない。
♬~