【土曜ドラマ】今ここにある危機とぼくの好感度について [終](5)[解][字]…のネタバレ解析まとめ

出典:EPGの番組情報

【土曜ドラマ】今ここにある危機とぼくの好感度について [終](5)[解][字]

名門国立大学を舞台に、思いがけず広報課で働くことになった青年が、大学が直面するさまざまな問題処理に振り回されながらも自分の生き方を見つけてゆくブラックコメディー

番組内容
謎の虫刺されが命にも関わると知らされた真(松坂桃李)の元に、みのり(鈴木杏)が励ましの電話をかけてくる。勇気を得た真は、被害の原因が帝都大の施設から流出した蚊だということを三芳総長(松重豊)に報告し、理事たちによる隠ぺいの事実を暴こうとする。だが須田理事(國村隼)を始めとする次世代博覧会の関係者たちは、予定地周辺で謎の蚊による健康被害が起きている事実を認めようとしない。そこで真はある奇策に出る。
出演者
【出演】松坂桃李,鈴木杏,渡辺いっけい,高橋和也,池田成志,嶋田久作,温水洋一,斉木しげる,安藤玉恵,岩井勇気,坂東龍汰,吉川愛,若林拓也,岡本杏理,坂西良太,國村隼,尾関伸次,円地晶子ほか
原作・脚本
【作】渡辺あや
音楽
【音楽】清水靖晃

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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キーワード出現数ベスト20

  1. 総長
  2. サハライエカ
  3. 報告
  4. 本当
  5. 大丈夫
  6. 理事
  7. カニ
  8. 次世代博
  9. 神崎
  10. 中止
  11. 帝都大
  12. 流出
  13. エビ
  14. エビデンス
  15. 間違
  16. 原因
  17. 治療
  18. 自分
  19. 須田理事
  20. 対応

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

   ごあんない

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それは ずっと
待ち望んでいたはずの着信であった。

しかし だからこそ ためらわれた。

自分が どんなみっともない弱音を
吐いてしまうか分からない。

(真)あ~ ダメだ。 ダメダメ。
ダメダメ ダメダメ。

もしもし みのりちゃん?

(みのり)神崎君!? 大丈夫?

ねえ 例の虫に刺されたでしょ?

テレビも見てたし
今 コウスケ君からも電話もらって

すっごく心配になってきて
思わず電話しちゃったよ。

ねえ 大丈夫なの?

う…。

俺… 俺さ…

死んじゃうかも…。

(みのり)え!? 何? どういうこと?

もう どうしたらいいのか
分かんないよ 俺…。

(子供の笑い声)

♬~

(テレビ電話の着信音)

もしもし。
(みのり)ごめん。 寝てたよね?

ううん 大丈夫。
神崎君さ…。 うん。

カニ… 好き?

はい? カニってあの食べるカニ?

あ~… 好きだよ?

じゃあ エビは?
ああ エビも好き。 大好き。

え 何? そっちの名物なの?

何なら 今週末にでも行こっかな…。

(みのり)大丈夫かも じゃあ!
え 何が?

(みのり)
あのね 50年前のスペインの記録にね

サハライエカによる蚊アレルギーの
症例報告があったんだけど

ここに こう書いてあるんだよ。

「症状が重症化した患者には
特筆すべき共通点があった。

それは エビやカニなどの

甲殻類アレルギーを
持っていたことである」って!

えっ! ちょっ… え 待って!

俺 持ってない!
じゃあ 俺はセーフってこと!?

うん。 もしかしたら そんなに
心配しなくてもいいかもしれない。

ただ この報告が そのまま
今回に当てはまるかは

今後の経過を
ちゃんと見てみないとなんだけど。

(真の泣き声)
え?

ちょ… 神崎君 泣いてるの?
ちょっと ねえ 早いよ!

いや~ ごめん ごめん ごめん。 ごめん。
あ~ そうだよね。 分かってる。

あの… 今後の経過を見ないとだよね。

うん。

いや でも正直 私もちょっと安心した。

こんな遅くまで調べててくれたの?

あ… まあ ほら 研究者だからさ。

気になることは徹底的に調べないと
気が済まないだけだよ。

それだけだから。
ごめんね 起こしちゃって。 じゃあ。

待って。
え?

片づけるまで待ってるよ。
(みのり)はぁ?

いや 俺のために調べてくれたのに
申し訳なくて俺だけ寝れないよ。

はい…。

♬~

終わった。
うん。 お疲れさま。

うん。 じゃあ。

うん じゃあ… また。

またね。

また!

♬~

翌朝。

あ! おにいさん おにいさん。
どう? 椿餅!

職場の好感度 稼げるよ!

ありがとう。
でも もう僕 そういうのやめたんです。

彼は 余計な菓子も買わず…。

課長 昨日は 早退 失礼いたしました。

(石田課長)お どうだった? 検査の結果。
それについては すみません。

先に 総長と
お話しする必要がありますので。

ああ?
行ってまいります。

無駄な愚痴もこぼさず
まっすぐに総長室へ向かった。

そして 洗いざらいをぶちまけた。

というわけで 今回の蚊は

やはり
うちの研究センターから流出した

サハライエカのボウフラが原因で生まれた
雑種だと思われます。

それによる被害は 人によっては
死に至るほど危険なものですが

にもかかわらず そのような事実を

鬼頭 布川 斎藤の3人の理事たちは
隠蔽しようとしていました。

のみならず 斎藤理事が
僕と鬼頭理事に受けさせた検査が

蚊アレルギーとは
何の関係のないものだったということも

これで はっきりしました。

(三芳総長)何たる…。

速やかに市に報告して
国際展示場の蚊の徹底駆除

それから 被害者への対応を
相談しましょう。

総長?

お前の言うとおりだ。

次世代博への影響を思うと
非常に悩ましいが

人命がかかっている以上
選択の余地はない。

しかし…。
何ですか?

正直 お前の話一つで
理事たちが口を割るとは思えん。

また エビデンスがないだの邪推だのと
シラを切ろうとするのは目に見えている。

しかし ここで逃すと最後だ。

次は より巧妙な隠蔽工作を
仕掛けてくる。

(安藤秘書)それこそ 蚊と一緒ですよ。

バチ~ンって
やるなら一瞬でやらないと。

おっしゃるとおりです。
なので僕 考えました。

(安藤秘書)何ですか?

これに 足立准教授から
普通の蚊をもらってきて入れます。

10匹ほど。
えっ。

理事たちが いつものように
「いやいやいや 知りませんよ。

エビデンスは?」
とかって言いだしてきたら

僕がおもむろに これをサッと取り出し

「分かりました! 皆さんがそこまで
無害だとおっしゃるなら

これを 今ここで放しても
問題ないってことですね!?」。

そして パカッ!

中から 蚊がパア~!

理事たちは
うわ~っと 我先に逃げ出します。

なるほど! 逃げるってことは
危険だって分かってる証拠ですもんね!

待て。 お前がか?
はい?

お前が そのパカをやるのか?
大丈夫なのか?

何でですか?

好感度だよ お前の大事な。
そんなことしたら だだ下がりだぞ?

ハッ… 好感度なんてね
そんなものはどうでもいいんです。

そんなものより
もっと大事なものを知ったんで 僕は。

総長 今日の午後イチに
理事を集めてください。

わ 分かった。 いや… だが!
このパカは最終手段にしよう。

あくまで俺が 理事たちの説得に努める。
いいな?

ありがとうございます!
では 僕は勤務に戻ります!

その時 総長と秘書は
同じ疑問を抱いて彼を見送った。

一体あいつは 何を知ったというのだ?

ラヴ!

それは愛であった。

彼は昨晩 気付いたのである。

思えば彼は いまだかつて

彼女に いいところを
見せたことがなかった。

みのりちゃん ごめん!

このとおり! このとおりだから!

いつも いつも…。

俺さ カメラが怖いんだ。

彼女の前で…。

(澤田教授)よっ。

神崎君!?

彼はこの上なく みっともなかった。

…にもかかわらず
そんな自分を見捨てることなく

いつも遠くから見守り
最後は必ず こうして助けてくれる。

それを愛と呼ばずして何と呼ぼう。

カツ丼で。
(店主)はいよ。

そして 愛を知った男には

もはや恐るるべきものなど
何もない気がした。

自分が まるで
生まれ変わったような気がした。

とはいえ もちろん
そんなのは ただの気のせいである。

(斎藤理事)いや それは失礼しました。

ちょっと検査を
指示 間違っちゃったのかもしれませんね。

間違えた?
(斎藤理事)いや~ つまり

まあ そこまで精密な検査が必要だとは
思わなかったのかもしれませんね。

(水田理事)かもしれませんて
何で そんな他人の事ふうなんですか?

まあ そういうわけじゃないですけども
そのように聞こえたんなら謝ります。

いずれにせよ 神崎がアレルギー症状を
起こしていることは間違いありません。

そして その原因であるサハライエカが

実は うちの研究センターから
流出したものであり

そして その事実を
あなた方が 私に隠していたことも。

(布川理事)ですから総長 我々も
その報告を受けておりませんで…。

とぼけるのも
いいかげんにしてください!

(水田理事)ちなみに総長は
その報告を どこから受けたんです?

内部告発があったからです。

え どこの誰から?

今 焦点はそこではありません。

大学としては 市に 一刻も早く
蚊の徹底駆除を依頼することであり

状況を 市民に報告する必要があると
考えております。

(須田理事)反対いたします。

なぜです?

(須田理事)
エビデンスがそろっておりません。

今 分かっているのは
国際展示場に蚊がいるということ

そして 彼が
蚊アレルギーであるということだけです。

それらの因果関係については 失礼ながら
総長の推測の域を出ておりません。

そのエビデンスがそろうのを
待ってる間に

被害が とんでもなく拡大する
可能性については どうお考えですか?

もし 公表したら
世間をいたずらに混乱させ

大学 ひいては 研究施設に対する信頼を
失墜させてしまいます。

そして何より じ…。

次世代博に甚大なるダメージを
与える危険性があります。

ここは慎重であるべきです。

その慎重な議論のために

事実を つまびらかにする必要があると
言っておるのです!

堀田研究室から
サハライエカの流出があったことを

認めてくださいと言っているのです!

しかし!

我々は
そういう報告を受けておりませんので。

♬~

そうですか。

では サハライエカについて
分かったことをご報告いたします。

え~ 症状が重症化し 死に至った患者に
多く見られることとして

エビやカニなどの甲殻類が大好きで
よく食べること。

(鬼頭理事)え!?

50代以上の男性 高学歴
飲酒の習慣があり

週に1回以上
職場の同僚と 昼食を共にとること。

(山東理事)ええ?
我々 もれなく該当するじゃないですか。

いやいや いやいや
ご心配には及びません。

今回の蚊が サハライエカでないなら

これも 我々とは
全く 何の関係もないことですから。

いや しかし
ほかの条件は分かりますけど

週1回以上 昼飯を
同僚と食べるってのは一体…?

あの…。
え 何? それ。

あの こちらが その 国際展示場から
捕獲してまいりました蚊でございます…。

いやっ!
はあ? 何で そんなもの持ってんの!?

早く しまいなさい!
し 失礼しました…。

あ~ 神崎!?
は はい…。

そのシャーレの中には
何匹入ってたんだ?

は? え えっと… 10匹です。

今 何匹いる? え?
今 何匹?

あっ! 7匹しかいません!

(理事たち)えええ!?

じゃあ 3匹が
ここ 飛んでるってことだな!?

わ~! やばい! 逃げろ!

逃げろ!

何やってんの!?

早く…。

あ~ 開いた 開いた!

逃げろ 逃げろ…!

ハハハ…。

はい。

あぁ 鬼頭さんを すぐ医務室に。

それから すぐに
市長に アポイントを取ってください。

至急 報告したいことがあると。

分かりました。

神崎! 水田! 鬼頭理事を頼んだぞ。
気の毒なことをした。

はい! ちゃんと説明差し上げときます!

大丈夫ですか?
蚊について報告されるのは結構ですが!

くれぐれも 次世代博の中止だけは
避けていただきますように。

それは… お約束できません。

それは 初めて
真実が明るみに出ようとした

すばらしい瞬間だった。

あっ 大丈夫ですか!
あ はい! お願いします。

お願いします。 大丈夫ですか。

カフス… あそこにカフス。 え?
あそこにカフスが…。

だけど やっぱり そこまでだった。

あっ もしもし
帝都大の須田でございます。

あの 実はですね 今 うちの総長が
そちらに向かってる件なんですが…。

総長は すぐに市長のところへ行って
洗いざらい事情を話した。

市長は 蚊の徹底駆除は
すぐにやるけれども

次世代博に差し障ることは
絶対に避けたい。

サハライエカが流出したことは
決して公表しないでほしいって

強く くぎを刺してきたんだって。

(市長)経済波及効果30億
準備に4年かかってるんですよ。

万が一 騒ぎが大きくなって
中止になったりしたら

そりゃ とんでもないダメージですから。

帝都大さん
補償していただけますかってねぇ

そういうわけには いきませんでしょう?

一方で
堀田研究室にあるはずの手がかりも…。

(堀田教授)
まあ うちも疑われるのはごめんだし

証拠として提出したいのは
やまやまだけどさ

もう いないものはね
どうしようもないよね。

え サハライエカを
処分しちゃったってことですか?

(堀田教授)そう。
実験が終わったからね。

まあ もうひとつきも前かな。

とっくに消されてた。

(コウスケ)じゃあ結局 また真実は
闇に葬り去られるってことすか?

うん。 まあ そうね。

はぁ…。

ユウナちゃんは そのあとはどうなの?

退院して もうピンピンしてます。

カニとエビも大好きだって言ってました。

そっか。

何か それだけでも よかったよね…。

よくないすよ。

何も よくないすよ。

だって刺された人の中には
いますよね 絶対。

カニとエビのアレルギーの人。

その人たちは
ゆっくり死んでいくんですよね。

原因が あの時刺された蚊だってことも
知らずに。

やめようよ コウスケ君。

若いからって そうやって
本当のことを ズケズケ言うの。

だって 大学も俺らも その人たちを
見殺しにするってことですよね。

たかが イベントのために。

たかがとかじゃなくてさ
そこには たくさんの人たちの

お金とか未来とかが
かかってるわけでさ…。

でも そのためには 何人かは
犠牲になってもいいってことなんすか?

クソじゃないすか? そんな社会。

そんなん 超クソなんじゃないすかね!?

そうだよ! クソだよ!

今 気付いたの?

世の中ってのはね そういうもんなの!
負け組は負けるしかないし

少数派は
多数派の犠牲になるしかないんだよ!

だから… だから好感度なの!

君ら バカにしてるけどさ
このクソ社会に出てみろよ!

俺みたいな何の取り柄もないやつは
片っ端から忖度しまくって

こびへつらいまくって 好感度上げるしか
生き残る方法なんかないんだから!

愛なんかね… 愛なんか…。

な~んの役にも立ちゃしないんだから…。

アイ…?

ごめん。 何でもない。

ところで さっきから
何回も鳴ってますけど。

ん?

うん。 いいんだ。

愛については忘れることにした。

(室田教授)
そりゃ金も大事かもしんないですよ。

でも 研究や教育にとって
もっと大事なのは

喜びであり楽しさなんですよ!

現場の人間が金とか次のポストのことしか
考えられないような

そんなクソつまんないところに

真のイノベーションなんか
起こるわけないじゃないですか!

♬~

やはり 愛など
自分には ふさわしくないのだと。

この難しい世界で
愛なんぞ信じ貫くには

自分が あまりにも弱い男であるのだと
改めて悟ったのだった。

♬~

よいしょ。

うんうん…。

岡野さん これ お願いします。
はい…。

え?

(澤田教授)うんうん うんうん…。

それ 一人一個です!

(澤田教授)あら。
何かご用ですか?

ん? それ 俺 ここで言っていいの?
はい?

いや 例の蚊のことでさ
超面白いことが分かってさ…。

はい 分かりました はいはいはい はい…。
何 何…。

途中でしょうが! はいはいはい。
どら焼き食べてる途中でしょうが!

あ~… はいはい はいはい
はい すいません はい はい…。

ええっ!? どういうことですか?

だから 治療できる可能性があるんだよ。

え ちょっ… えっ この毒アリで?

(足立准教授)うん。
アフリカのこの一帯でね

数年に一度 必ず
サハライエカ被害が増えるんだが

その場合は 決まって
こいつの毒で治療しているらしい。

え? え じゃあ
重症化するおそれの人たちも

大丈夫になるってことですか!?

このアリの毒が集められたらね。

その毒アリ どこにいるんですか!?

僕 もう どこでも取りに行きますんで
教えてください!

君は ここをどこだと思ってるんだ。

え…。

♬~

これですか!?
そうだ。

すごい… すごいですね!

僕 正直 今 生まれて初めて
昆虫研究を心から尊敬しましたよ!

バカめ。 安心するのはまだ早い。

計画の説明はこれからだ。
は? 計画?

堀田研究室のサハライエカを
盗みに行くぞ。

はあ? 何のために?

そ… それはだな…

アリ毒療法が出来たとして

被害者たちが
それを受けられるようになるためには

やはり 市と帝都大が
市民に対して事実を公表し

詳しく説明する必要がある。

公表のためのエビデンスとして 今た…
今た?

何 読んでんですか?
い… のぞくなよ!

ちょっと待って それ誰のメール?
うるさいな 関係ないだろ お前には。

いや ちょちょちょ… 誰? 誰?
痛い 痛い 痛い…。

みのりちゃん!?

いや ハハハハハ…
みのりから相談があってさ。

あいつが信頼してるのは
やっぱ俺だけだから? うん。

まあ しょうがないかな。 ね。
言うとおりにしてやるしか。 うん。

いや… 違いますから!

彼女は 本当は
僕に ずっと連絡してきたんだけど

僕がその… ちょっと取れなかったから!

お前は そう思いたいだけだな。
分かるよ 神崎。

いやいや マジっすから!
履歴だって ちゃんとあり…

消した…。

まあ 一口に蚊つっても
生息地域が違えば

それぞれ遺伝子が少しずつ違って
個性がある。

だから 博覧会場の蚊の遺伝子と

堀田研究室のサハライエカの蚊の遺伝子が
合致すれば

その問題の蚊は ほぼ間違いなく

堀田研究室のサハライエカの
子孫だということが言えるわけだな。

まあ 無理だと思いますけどね。

もう サハライエカは処分しちゃったって
堀田教授は言ってたし。

は! いるに決まってるだろ。 な? な?

まあ 行ってみなきゃ分からない。

でも 僕なら あんな希少種を
ちょっと自分の立場が危ないくらいで

そう やすやすと
処分するようなことはしないね。

何? 猪がいたって?

(シュウジ)はい。
かなりでかくて 超凶暴だったんすよ!

農学系の農場から
逃げちゃったんだと思うんすけど

街とか出ちゃったら やばいっすよね。

どっちに行った?
あの…

あの研究棟の方に逃げていきました。

よし 行こう!
はい!

(メッセージを送信する音)

♬~

じゃあ エツシくんは右から
神崎君は左から。

ラベルを読んでね。

サハライエカ 学名は
キューレックス・サハラエンシスだから。

分かりました!

♬~

あ これかも。

え?
え?

うわ~…。

ラベルはないが
間違いなく イエカの仲間だ。

多分 これだ。
いやでも そんなやばいものを

こんな入ってすぐの所に
置かないんじゃないですかね?

もっと奥の方とか…。
それは無生物の発想だ。

生物は違う。

まぶしい…。

やばいものこそ
一番管理しやすい所に置くんだ。

まぶしいですよ…。

(コウスケ)何だ 猪じゃなくて豚か。

しかも でかくないよね 全然。

(ユウナ)いや~ ごめんなさいね。

散歩してたら逃げ出しちゃって。
すいません。

気を付けてくださいよ。
すいません。

まあ 何もなかったからいいようなものの。
あ~ すいませんね。

ごめんなさいね 本当に。
よ~し 片づけるぞ…。

もしもし もしもし。 出たぞ 結果。

教えてやってもいいけど その前に

みのりが信用してるのは…。
(豚の鳴き声)

何だい? みのりが一番信用してるのは
俺だってことを認めろ。

あ そう。 じゃあ もう教えな~い!

どうした?

何か 俺に話があったんじゃないのか。

すみません。

あの…。
ん?

先生の本当の本音を聞かせてください。

何だ。

もし… 例の蚊が

本当に うちの研究室が原因で
生まれたって証拠があるとしたら

先生はそれを… 入手したいですか?

うん?

だって もし それが
手に入ってしまったら

その瞬間に 帝都大の責任は
決定的になるってことで

手に入らなかったら
次世代博がぶち壊しになることも

先生は 責任を取る必要もありません。

まあ そうだな。

それでも先生は…
証拠を手に入れたいと思いますか?

うん… 思う。

どうしてですか?

♬~

「必ずや名を正さんか」。

はい?

「論語」に こんな話があるんだよ。

ある時 弟子が孔子に尋ねた。

「もし先生が政治をなさるとしたら
まず 何をなさいますか?」。

すると 孔子が答えて言うんだ。

「必ずや名を正す」。

これには いろんな解釈があるんだけど

俺のは あの~… 彼女のに近いんだよ。

え?
ほら 何つったかな お前の例の元カノ…。

あ… 木嶋みのり…?

そうそう そうそうそう。

お前が かつて
聞かせてくれた録音があったろ。

(録音・みのりの声)
「私だって こんなことして

それでどうなるのとも思うよ。
だけど やらないよりマシだから」。

例えば 病気が重くて死にかけてるんなら
まず それを認めるしかないじゃん。

どんなに嫌でも 病名を知らなきゃ
治療だって始まらないじゃん。

問題には 正しい名を付けなければ
それを克服することはできない。

蚊の流出が真実なら
どんなにつらくても

それを 証拠不十分と
言いかえてはならないんだよ。

私は学者だ。

誇りを持って 孔子の教えに従うまでだ。

♬~

ありがとう。

♬~

ま いつもどおり マスコミとの親交を
深めるための会でございますから

どうぞ リラックスして
臨んでいただければと思います。

では 何かご質問などは…。

あ 総長 どうぞ。

実は… 皆さんには 事前に
お伝えしないでおこうと思ったのですが

やはり お伝えしておきます。

本学の稀少生物研究センターから
サハライエカの流出があったこと

そしてそれが 先般 国際展示場付近での
虫刺され被害の原因であったことを

本日公表の上 謝罪しようと思っています。

エビデンスは ここにそろっています。

健康被害については
ある特殊なアリの毒を使って

治療できる可能性があることを
本学の足立准教授が明示しており

本学も 責任を持って臨床研究を進め

附属病院と共に 患者の治療に
対応することを報告いたします。

いや… いや 総長。
待ってください!

断じて! 断じて反対いたします!

まことに申し訳ありませんが
これは総長の権限として断行いたします。

いや…
何としても考え直していただきます!

次世代博については 最悪の場合

中止を
覚悟しなければならないかもしれません。

しかし 人命には代えられないとの
判断からです。

これは 次世代博にとどまるような
話じゃありませんよ!

帝都大の信用が 地に落ちますよ!

そんなことになったら
文科省からの交付金が

大幅に削減されてしまうかもしれない。

しかも 場合によったら
第三者委員会の調査費用や

被害者への賠償が
とてつもないことになる。

間違いなく帝都大は
存続の危機に陥りますよ!

はい。

しかし 大学は営利団体ではない。

真理探究の場であり教育機関です。

その名に恥じない選択を
しなければならないと私は思っています。

そんなのは きれい事だ!

総長 どうか現実を見てください!

教育も研究も
金がないと どうしようもない。

この熾烈な競争を
勝ち残っていくことはできないんですよ。

そんなことは 我々はもう 嫌というほど
思い知らされてきたじゃないですか。

はい。

現実を見てください。 どうか。

見ています。

は?
私は 現実を見ています。

帝都大学は過ちを犯した。

故に しかるべき責任を
取らなければならない。

これが本当の現実です。

確かに 競争は熾烈です。

しかし だからこそ
我々が このまま生き残っていけるとは

私には どうしても思えないのです。

なぜなら我々は…。

腐っているからです。

♬~

皆さん もうお気付きでしょう。

我々は組織として 腐敗しきっています。

不都合な事実を隠蔽し
虚偽で その場をしのぎ

それを黙認し合う。

何より深刻なのは
そんなことを繰り返すうちに

我々は お互いを信じ合うことも

敬い合うことも
できなくなってることです。

お互いに
信頼も敬意も枯れ果てたような組織に

熾烈な競争を
生き残っていく力などありません。

もし本当に それを望むなら
我々は生まれ変わるしかない。

どんなに深い傷を負うとしても
まことの現実に立ち向かう力

そして それを乗り越える力

そういう本当の力を
一から培っていかなければならない。

たった今から。

恐らく 長く厳しい闘いになる。

これは その第一歩です。

♬~

(三木谷)あの~ 記者さんたちが
だいぶお待ちかねなんで…。

そろそろ ご登場願えればと…。

行きます。

申し訳ないが
私は欠席させていただきます。

そうですか。

ど… どうでしょう。

とりあえず今日のところは
中止とさせていただきましょうか…。

あ… まあ そうですね。
そうしましょうか。

ですね ですね。 中止で!
(石田課長)承知いたしました!

では本日は 急遽中止の旨
アナウンスしてまいります!

待ってください!
え?

中止にはできません。
え?

申し訳ありません。
中止には できません!

何を言ってんだ 君は!
(石田課長)何言ってんだ お前!?

え? おい… こら 神崎!

え~ 皆様…。
(石田課長)神崎!

♬~

え~ 皆様 お待たせして
大変申し訳ございませんでした。

それでは 帝都大定例マスコミ懇談会を
始めさせていただきます。

本日は まず 本学の…

三芳総長から皆様に
重大な発表をさせていただきます。

♬~

ちゃんと撮れてる?

それ 撮り逃したら後悔すんで。

え 何 何 これって
そんな すごいことなんすか?

ハハ…。 まあまあまあ。
マジすか。

それでは 三芳総長 お願いいたします。

♬~

ありがとう。

お願いいたします。

皆様 お忙しい中 ありがとうございます。

いつもなら 皆さんと

楽しく親交を深める場である
この懇談会ですが

本日は 私より大事なご報告があります。

(シャッター音と動画を撮影する音)

なお 今後の対応につきましては

早急なる治療の研究 および
健康被害に遭われた方への適切な対応と

再発防止に努めることが 私の
最重要事項であると認識しております。

ハハハ…。

ハハハハ…。

あ~…。

1週間後。
え!?

神崎 真は恋人に振られた。

原因は 彼の号泣動画が
トレンドにあがったことであった。

(玲香)悪いけど 玲香
こんなの恥ずかしくて もう無理だから。

本当 ごめん。
うん… 全然 玲香ちゃん悪くないよ。

ね。 本当ごめん…。

その後 次世代科学技術博覧会は

蚊の徹底駆除が どうにか間に合い
無事 開催されることとなった。

(拍手)

なお 帝都大学稀少生物研究センターの
堀田教授は

都合により 本日ご欠席となります。

帝都大学は 予定していた研究の出展を
全て取りやめた。

帝都大当局は 関係各所への謝罪と説明に
連日明け暮れた。

サハライエカ流出による
健康被害への対応も 困難を極め

示談金や慰謝料は いかほどに及ぶやら
まだ見当もつかない。

それでも ひっきりなしに鳴っていた
非難の電話が

日に1本あるかないかに減った頃

総長選考会議で
三芳総長の留任が決まった。

でね ほかの理事たちも
全員解任かと思ったら…。

え 違うんですか?

須田理事だけは残るんですって。
総長が引き止めて。

え!? 何で!?

いや~ すまん。 忙しくってさ。

須田理事を慰留されたんですか?

ああ。
何でまた…。

そりゃそうだよ。
あの人しか いないじゃないか。

我が帝都大学は いわば
大手術をしたようなもんなんだよ。

これからが 生きるか死ぬかの
長い勝負なんだよ。

本気で大学のことを考えてる人じゃないと
こんな難しい局面は務まらないし

俺も頼めない。

須田理事は それで
オッケーされたんですか?

うん。 した。

あ もしもし。
はい どうもお世話になっております…。

そんな総長の意向は よく分からないが

須田理事は もっと分からない。

彼の予言どおり 今や帝都大は

過去最大規模の損失を抱えて
お先真っ暗

どう考えても
この先は苦労しかないというのに

一体 何が楽しくて残るのだろう。

(テレビ)「先日 帝都大学が
外来生物の流出を公表しましたよね。

あれだって 文科省は今後 よく考えて
対応すべきだと私は思いますよ。

誰かの失敗を我々がたたけば たたくほど
隠蔽は増えていく。

厳しく罰しさえすれば
状況が改善するわけでは決してない。

問題は そう単純なものではないんです」。

(テレビ・若林)「ありがとうございました。
では 次のコーナー どうぞ!」。

相変わらず世界は複雑で

彼には まだまだ
分からないことだらけである。

それでも どういうわけか このごろは

ちょっとだけ
簡単に見えるようになった気もしている。

もしかしたら それは…

ラヴ!

愛のせいかもしれない。

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