【正月時代劇】ライジング若冲「天才かく覚醒せり」[解][字]…のネタバレ解析まとめ

出典:EPGの番組情報

【正月時代劇】ライジング若冲「天才かく覚醒せり」[解][字]

中村七之助×永山瑛太W主演!男たちの愛がめくるめく美の世界を生んだ!?展覧会長蛇の列、史上最強の傑作絵画誕生の背景にあった運命の出会い!京都の男たち愛と涙の物語

番組内容
岩次郎(中川大志)が奉公する店に美しき僧侶・大典(永山瑛太)が現れ、謎めいた絵に心を捕まれる。描いたのは青物問屋の源左衛門(中村七之助)。いい年をして絵にはまっているという。彼は路上で謎の仙人(石橋蓮司)と出会い「若冲(じゃくちゅう)」という名を譲ってもらう。そして大典と運命的な出会いを果たす。生き物の世界を超絶技巧で描いた「動植綵絵(どうしょくさいえ)」誕生背景にあった男同士の友情とは?
出演者
【出演】中村七之助,永山瑛太,中川大志,大東駿介,門脇麦,渡辺大,市川猿弥,木村祐一,加藤虎ノ介,永島敏行,石橋蓮司
原作・脚本
【作】源孝志
音楽
【音楽】阿部海太郎

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇

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キーワード出現数ベスト20

  1. 若冲
  2. 大典
  3. 売茶翁
  4. 絵師
  5. 相国寺
  6. 大雅
  7. 伊藤若冲
  8. 動植綵絵
  9. 勘兵衛
  10. 人間
  11. 岩次郎
  12. 桝屋源左衛門
  13. 与兵衛
  14. 作品
  15. 写生
  16. 神気
  17. 青物問屋
  18. 先生
  19. 足元
  20. 茶碗

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

   ごあんない

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(岩次郎)
<徳川はんの世になってから 早150年…>

<将軍お膝元の江戸は
ごっついご城下やいう話やけど

この京が
日本の都いうことには変わりなく

まあまあ ええ感じで栄えてます。

おんなじ上方でも
商人が算盤でしのぎを削る大坂と違うて

天皇さんを頂く京は
茶碗の中みたいに穏やかや。

けど ただの茶碗と違いまっせ?

職人や絵師が鑿や筆でしのぎを削る

なんともキラキラしい茶碗のような
小天地や。

かく言う わしも その茶碗の中で
一旗揚げようとする一人>

<わしらが作り出す美の一つ一つが

キラキラしい茶碗の模様を作ってる。

いうたら 京の町は
群雄割拠の芸術の都や>

♬~

♬~

♬~

(鳴き声)

≪(与兵衛)お~い 岩次郎!
へ~い!

(与兵衛)ええかげん 下りて来。
店番頼むわ。

今すぐに。

ん?

いやいやいや。

旦那さんと寄り合いに顔出してくるよって
夕方には戻るし あとのこと頼むで。

へえ それはよろしおすけど…。
(勘兵衛)けど 何や?

出かけはるのは もうちょっと
待たはった方がええかと。 何でや?

もうすぐ大典さんが
お見えになるはずです。 ホンマか?

与兵衛どん 悪いけど先に行っといて。
へえ。

そや あれとあれ見せなあかんなあ。
あれとあれ見せなあかんわ。

大典様~。

(大典)これはこれは 一嘯先生。
さっ ささささ…。

絵の腕は上がりましたか?

わしを雅号で呼んでくれはるんは
大典さんだけですわ。

今は 一嘯をやめて

僊斎と号してます。
忙しないな。

つい この前まで 雪汀と
名乗ってへんかったか?

僊斎に変えてから わしの絵も
ちょくちょく売れるようになりましてん。

ほう 見たいな。
喜んで!

見事や…。 これは写生いうやつやな?

腕上げたな岩次郎さん。

(勘兵衛)こいつは絵師にする約束で
預かりましたよって

ええかげん 腕上げてもらわんと。

ようおいでやした。
何か目の保養になるものはありますか?

面白いものがいくつか。

う~ん… 落款も銘もないが

筆つきからすると如拙の作ですね。

ただし 絵がまだ拙い。
恐らく 20代の頃に描いたもの。

ご明察や! いや~ さすが五山随一の才を
うたわれるだけのことはある。

骨董屋になった方がよろしいかな?
(勘兵衛)ハッハッハッ。

何ですか? この地味なんか派手なんか
分からん絵は。

絵師の大岡春卜はんから
譲ってもろたんやけどな…。

大岡春卜なら狩野派の大物。
間違いなかろう。

いやいや そのお弟子さんの描いたもんで。

蕪の畑に 鶏が2羽。

(勘兵衛)
蕪の葉っぱは虫食いだらけの穴だらけ。

けったいな絵やけど…。

寒い寒い冬の蕪畑に
ポツンと立ってる気ぃにさせられる。

(勘兵衛)
これも写生いうやつか?

ちゃいます。
多分 想像で描いた絵空事ですわ。

想像で これを…。

鶏は こんな首の曲げ方せえしません!

体全体が妙な折れ方してて不自然やし

枯れた葉っぱも嘘。

茎の右と左で枯れ方が違う。

それに 畑の土 何ですか? これは。

中国の山水画の雲か! みたいな。

こんな現実と空想が
ごちゃ混ぜになった絵

知らんわ。
誰の作です?

春卜先生のお弟子さんで 桝屋源左衛門。

桝屋いうたら 錦市場の…。
うん 青物問屋の四代目や。

それでか…
こんな高い絵の具 ぎょうさん使うて。

一度 お会いしてみたいものです。
え?

それは無理な話ですな。
何故?

失踪中ですわ。
ええ~。

丹波の山へ隠遁して 絵師になる言うて
家出たきり かれこれ2年。

行方知れずいうことですか?

もう死んでるいう噂もある。

尾張屋さん。
(勘兵衛)へえ。

この絵 拙僧に譲ってはいただけまいか?

(悲鳴)

♬~

桝屋源左衛門が弟 宗次郎と申します。

(山師)ほう 今度は弟が出てきよったか…
おい もう3日目やで。

ええかげん話つけようやないか。

ただいま市場の株仲間の皆様方にも
おはかりしたところ

やはり 兄から直接話を聞かんことには
決め難いと…。

(笑い声)

し… 死んだ人間に
どないして話聞くっちゅうねん?

今 店の者らを丹波に送り 手分けして
兄を捜しておるところでございます。

でかいな もう。
おおきに。

(勘兵衛)そうか 弟はんが店をな。

(与兵衛)
変わった兄貴持つと難儀なことで。

その源左衛門はん そないに変人なんか?

むしろ 評判のええお人ですねん。

真面目で酒も博打もやらん。

俳句や義太夫みたいな道楽もなし。
着物の趣味も地味。

大店の主にしたら
今どき珍しい堅物いう評判です。

(勘兵衛)女道楽は どうや?
(与兵衛)ところが大の女嫌いで

縁談話から逃げまくって
三十路も半ばやいうのに

まだ独り身らしいですわ。
何や おもろない男やな。

ええ年になってから始めた絵に
すっかり はまってしもて…

根が真面目な男ほど はまると始末が悪い。

要するに 金持ちの趣味が高じた
いうことですやん。

金に困ってへんから純粋に打ち込めるとも
言えるで。

わしは絵で食えるようになりたいし

どうせやったら
京で一番の絵師になりたい!

うん お前は それでええ。 ハハハハッ。
(太兵衛)ただいま戻りました。

(与兵衛)遅かったやないか 太兵衛どん。

薬味のミョウガもネギもあらへんがな。
はよ刻んでんか。

五条の市場まで行ってまして。
(与兵衛)錦市場で買うたらええやん。

錦はおろか この界隈の八百屋は
ぜ~んぶ閉まってます。

何でや?
(太兵衛)何日か前から 青物問屋の前に

山師どもが居座って
えらい騒ぎになってるらしいんですわ。

青物問屋て 桝屋のことかいな?
(太兵衛)へえ。

見てきます!

すんまへん すんまへん。
(山師)仏の顔も三度まで!

わしらの我慢にも限度があるで。

桝屋源左衛門は もう死んどる!
(どよめき)

わしらは死ぬ間際に

この店を頼む言われて
この証文 渡されたんやで?

よう見とけ!
何ですか? あの証文。

桝屋の問屋株の譲り状やて。

手前どもの商いが これ以上 滞りますと

市場の者はもちろん ぎょうさんの町衆に
迷惑がかかりますゆえ…。

そやから…
早う話つけよ言うてるんやないの。

証文どおり株を譲るか

さもなければ いっぺん金で買い戻すか
どっちや!

どないすんじゃ こら!
完全に ゆすられとる。

どないするんじゃ!
何や こら!

あの世に逝った桝屋源左衛門
出せるもんなら…。

兄貴!
あっ 出してみんかい!

いよっ! 日本一!
(どよめき)

(宗次郎)小助どん!
(小助)ああ… えらい お待たせしました!

何や お前ら?
うちの番頭どす。

誰や お前は!

(源左衛門)お初にお目にかかります。

私が その 死んだはずの

桝屋源左衛門にございます。

(どよめき)
え?

兄さ~ん!
ええ~!

(宗次郎の泣き声)

何や知らんけど
えらい苦労かけたみたいやな。

いよっ 四代目!
(笑い声)

お前が 桝屋源左衛門っちゅう証拠が
ど… どこにある!

(騒ぐ声)

あの~。

もう 御用はお済みどすやろか?

♬~

改心しよったか。

おいでやす!
ああ こんにちは。

どうどすか? 大原で捕れた鶉の雛ですわ。

やわらこうて うまおまっせ。

これで 焼き鳥 何本分になるんやろ?

そうどすなあ…
1羽から3本分の身ぃ取れるとして

まっ ざっと100本。
ん。

ほな 100本分もらうわ。
ええ?

籠ごともらいます。 ええ!?
釣りは要らんさかい。

はあ!
おおきに。

おおきに!

≪焼き鳥にならんで済んだなあ。

ほら お逃げ。

おいおいおい…。

ほら お食べ。

♬~

<ふ… 筆が速い!>

<速いが 雑やで。 写生は正確さこそ命>

<その顔が あんたの正体やな>

兄さん。

あ… 堪忍。 つい絵心が動いた。

無理してへんか?
何のことや。

私は 兄さんほど上手に商いができん。

学問も足らんし 人徳もない。

何 言うんや。 私は ええ弟を持った。

<何や このええ感じの兄弟愛は>

そやけどな 私に この絵は描けへん。

この才を
青物問屋に縛りつけとくんは 罪や。

<あの絵 見てみたい>

どうも私の中には 風神さんと
雷神さんがいてはるみたいでな。

年中 雷 光らせて
激しい風を吹かさはる。

その胸の内の嵐を
筆を使うて吐き出さんことには

苦しゅうて苦しゅうてかなん。

死んでしまうんやないかて
思う時もある。

これは何やろな?

私の中にある煩悩やろか?

≪願いみたいなもんやろか?

<見たい! あの絵が>

そやったら それが分かるまで
とことん描いたらええ。

家業は私がやりますよって
絵に生きておくれやす。

(鐘の音)

♬~

桝屋源左衛門…。

何か 変なもんが見えとるな。

♬~

どく らく か。

♬~

平安錦街居士… もっさい名前。

(戸が開く音)
うわっ!

ど… どちらさんですやろ?

て… 手前は星聚館と申す

駆け出しの絵師にございます。

せい… しゅ?
あっ この前

あっちのお庭で鶉描いたはりましたやろ?
あ… ああ はい 確かに。

興をそそられましたもので
つい筆が動きました。

あっ あっ。

これは私ですか?

唐の文人画みたいや。

あの時 描いてはった手控えの鶉
拝見しとうございます。

手控え… いうより
絵のつもりで描いたもんどすけど。

いやいやいや…。

<アホなこと言うな。

あれが手控えやのうて何やねん>

見事な筆の速さ。 是非にも拝見したく。

よろしおす。

おおきに。

これどすけど。

<ひえぇぇぇ!

あんな短い間に これ描いたいうんか>

まあ 手慰みみたいなもんどすわ。

おおきに…。

あの 青春館さん。
星聚館です。

よかったら お茶でも…。
失礼します。

<負けた…>

♬~

鶴なあ…。

そういうたら 実物見たことないわ。

鷺と比べてもしゃあないか…。

(鈴の音)

何やろ?

♬~

茶道具か… 野点でもしはんのやろか。

(売茶翁)物陰の御仁。

え?

通仙亭 ただいま開店しました。 どうぞ。

はあ…。

茶店… なんですか?

さよう。
煎茶を一杯いくらで出すゆえ 茶店やな。

いつも ここにお店を出したはるので?

決まっておらん。 その日の気分次第や。

それでお商売にならはるんでしょうか?

それが不思議と繁盛しとるんよ。

あんたみたいに物珍しさで立ち寄る
一見さんもおれば

わざわざ わしの居場所を探して来よる
常連客もおってな。

わざわざ来はる客を持つのは
一流の店です。

(売茶翁)商人さんかね?
はい。 錦市場で青物を扱うております。

高遊外と申す。

人は勝手に売茶翁などと呼んどるがな。

ばいさおう?
茶を売るジジイという意味よ。

何とお呼びすればええ?
先頃 隠居を決めまして

今は一介の絵描きなれば

平安錦街居士と名乗っております。

分かりやすい号やな。

あっ! あんた ひょっとして
錦の桝屋の四代目?

へえ おっしゃるとおりで…。
ほう~ あんたがなあ…。

何で 私のことを?

我が友が あんたの噂をしとったよって…。

(売茶翁)ここにある十二の茶道具は

いろいろなことに気付かせてくれる
師匠みたいなもんでな。

自分では 十二先生と呼んどるが
それぞれに名前は付いとる。

さっ どうぞ。
頂戴いたします。

例えば この水差しの名は 若冲先生。
じゃくちゅう?

「大盈ハ冲シキガ若キモ

其ノ用ハ窮マラズ」という
老子の一説じゃ。

大きな器は一見空っぽで無駄に思えるが。

何に使うても役立つ万能さがある。
人も また同じ。

若冲… 「冲シキガ若シ」。
ええ名前やろ?

その名前
譲ってもらうことはできませんやろか?

若冲を? はい。
あんたに? はい!

えぇぇ~。

是非に!

(小声で)
先生 あんなこと言うとりますが

ん? えっ? マジっすか。

あの…。
じゃくちゅう!

呼んだら答えなさい。
はい。

若冲~!

…はい。

ええ響きじゃ。

今日から そう名乗るとよかろう。
あ… ありがとうございます!

ところで 若冲殿。
はい。

さっき橋の上から川原の白鷺を見つめて
どんよりしておったな?

鷺と比べてもしゃあないか…。

鶴の絵を描こうとして

実物見たことないのに
改めて気付きまして。

ありゃ渡り鳥じゃから
今の季節 日本におらんし

季節になっても
人の多い京や大坂には飛んでこんな。

どないしたらよろしいですやろ?
何のために京に住んどんのか?

鶴を見たいなら寺へ行け 寺へ。
寺?

宋 元 明代の渡来物
本朝なら雪舟に狩野一門

最高のお手本が 襖絵や掛け軸になって
掃いて捨てるほどある。

模写しまくって
その中から まことの姿を導き出すべし。

なるほど!

紹介状を書いて進ぜよう。

若冲さん あんた 本姓はあるかね?

はい 伊藤を名乗っております。

伊藤若冲。
はい。

(売茶翁)
これを持って相国寺に行かれよ。

あそこは絵の宝庫や。

いとう じゃくちゅう…。

失礼いたします。

(鐘の音)

もし。

ご住職にお会いしたいのですが。

添え状はお持ちか?
はい。 ここに…。

どうぞ。

あ… 売茶翁の字ですね。
はい。

あの…。

あなたが?
はい?

若冲と名乗られたか?

売茶翁にお願いして
水差しの名を譲っていただきました。

「大盈ハ冲シキガ若キモ
其ノ用ハ窮マラズ」。 そのとおり。

あの水差しに その名を付けたのは私です。
では…。

この塔頭の住職 大典顕常と申す。

あなたが ご住職?

これは 昔描いた私の絵ですが…。

こんなに冷徹で厳しいて不安定やのに

不思議なぬくもりを感じさせる絵は
見たことがない。

つまり 得体が知れへん。

書も絵も作者の人格や心の内を
表さずにはおかへんが

この絵から それを推し量るのは難しい。

訳が分からん。

それは 私の技量が足らんだけです。
ハハッ。

技だけあって心がない絵は
何千枚と見てきた。

しかし この絵の奥には

描こうとしている正体不明のものがある。

混沌として まるで宇宙の正体のような…。

いや そんな大層なもんと違います。

私の心の中に吹く風 降る雨

雲を割って射す陽
稲妻の光みたいなもんを

絵に込めようと思うんですけど

なかなか うまいこといかしません。

それこそ 禅の境地です!
我々は 何十年もの修行の果てに

一瞬でもかいま見たいと思う ひらめきが
あなたの中にはある。

あなたには 描いてもらいたいものが
たくさんある。

この世の森羅万象 そして 仏。

御仏を… この私が?

それを見た時
私の悟りも開けるやもしれません。

そのためなら 何でもお手伝いします。

あっ… これは失礼を。

御坊は 見た目によらず 力が強うおすな。

申し訳ない。 つい力が入り申した。

こんな 強う手ぇ握られたんは

生まれて初めてです。

そうそう 鶴でしたね?
はい。

相国寺をはじめ 京の五山には
名作と呼ばれる鶴が何百羽もいる。

仲介の労をとりますゆえ。
心行くまで模写されよ。

♬~

♬~

どないしはりました?

これ以上 模写続けても
無駄やと思います。

ハハッ えろう きっぱり言いますね。

もう千枚近う模写した思いますけど

鶴も虎も描いた作者が見たもので

私が見ているのは実物やない。

私に言わせれば 若冲さんの模写の方が

細かい虎の毛並みといい
より本物の虎に近い気がしますがね。

よう出来てても
私の描いた虎は生きていません。

死んでます。
絵の中の虎に魂がないんです。

私の模写は よう出来た偽物です。

一滴ずつ滴る雫も
いつの間にか大きな盥を満たす。

千枚描いて ようやく単純なことに
気付くこともある。

私は つくづく 頭の悪い男なんですなあ。
作麼生!

ならば 伊藤若冲は 何を描くべきか?

あ~ おった おった。
毎回毎回

気まぐれに店広げる場所が
よう分かりますねえ。

長年の勘で。 おっ あら大雅やな。
たいが?

池 大雅。
あんたとは また違う種類の天才です。

絵師ですか?
絵も天才やが 書も天才。

7歳の時 萬福寺で書を揮毫し

長老たちをうならせた神童です。

はあ~。

おお そろっとんな。 ハッハッハッ。

(大雅)おお~! 大典兄貴!

酒臭っ! 茶やのうて酒飲んどるな?

久しぶりやんか~! ハハッ!
離せ。

会いたかったで~。
頬ずりすな!

ひどいやないの もう~。

若冲は 大雅が初めてやったな?
はい。

ほう~。

あんたが噂の伊藤若冲か。

う… 噂て そんな。
私みたいな無名の者を…。

この都に絵師は
掃いて捨てるほどおるけど

天下の売茶翁と大典禅師が認める絵師は
数えるほどや。

あんたとわしは そのうちの2人。

相変わらず自信満々やな。

ハハハッ まっ 金がないさけな。

自信ぐらいは売るほど持っとかんと。
ほら。

ああ すんまへん。

えらい日に焼けてはりますね?

ああ 山焼けですわ。
江戸からの戻りがてら ちょっと富士山に。

まさか… 登ったんですか?
ええ。

ほんで そのまま甲斐から信濃を
ぐる~っと回って 立山にも。 はあ~。

こんな上等な般若湯 どこで手に入れた?

やましい酒とちゃいまっせ。
祇園で絵ぇ描いた謝礼や。

また酒と交換したんか。

絵の代金をもらわへんのですか?
そらまあ もらう時は もらいます。

そやけど 「お~い 提灯に なんぞ
絵ぇ描いてくれ」いう そば屋からは

かけそば一杯。

「お扇子に絵ぇ描いてくれはります?」いう
芸妓はんからは酒を5合。

そんなんやから お前ほどの才が
いつまでも貧乏なんや。

ヘッヘッヘッヘッ。
貧乏すぎて絵師のくせに

筆も持っとらん。
筆は質屋に入っとります。 ヘヘッ。

筆もなしに どうやって描くんですか?
これで。

♬~

知りませんか?
指墨いう唐の技法です。

初めて見ました。

ほい 一丁上がりや。

(大雅)この前 登った立山の風景です。

はあ~ いやもう 雪が積もって
これ大変でしたわ。

そこまでして探さんと
理想の画題に巡り会えませんか?

あ~ 何て答えたらええか…。

常に心を開き感じ取っていれば
見えてくるということ。

無理やり探そうとすると 大概 道に迷う。

高遊外先生~! ヘヘッ。

その見本みたいなやつが来よった。

あ…。

これこれは 平安錦街居士さん。

今は 若冲と名乗っております。
じゃくちゅう?

星聚館さん どしたな?
あ~ それは古い。

今は 鴨水漁史ですわ。
また雅号変えたんか?

それはなんぞや?
あっ ここをのぞいてみてください。

(大雅)おお~ こら
ごっつい奥行きのある絵やで。

のぞき眼鏡いいますねん。

中の絵は西洋の遠近法で描いてます。

こうやって絵を変えたら…。

(大雅)おお 四条の南座や。
ヘッヘッヘッ。

今 開発中の新商品ですわ。

ああ~ 確かに… 本物の風景みたいや。
でっしゃろ?

う~ん 奥行きのある浮世絵… どすな。

そやな。 浮世絵っぽい。

人が気にしてることを…。

わしは 何を描くべきか?

野に出て 虚心坦懐に写生でもしたら

描くべきものが
見つかるかもしれまへんな。

おもろい! ほな これから3人で
写生に行きまへんか?

写生? わしの土俵で勝負する気ですか?

何の勝負やねんな。 おのおの
心惹かれるもんを見つけて描くの。

自分の描くべきものを やね?
(大雅)そのとおりや。

行くのはええが 酒は置いてけ。

あの3人 今は無名やが

遠からず 天下を三分する
絵師になる逸物やと思うが

どうや?
同感です。

(売茶翁)
呼びもせんのに よう集まりよった。

<魂が… 見えた>

♬~

(鶏の鳴き声)

養鶏でも始めるつもりか?
かしわ肉は苦手や。

これは食う鶏とは違う。 鑑賞用やがな。

身近な動物の中で
鶏が群を抜いて美しいと私は思う。

うん… 古来中国では
鶏は5つの徳を持つ鳥やといわれてきた。

画題としては気高さがあってええな。
あんたも そう思うか?

もう10日も こうして眺めてるけど
一向に飽きん。 10日も?

もう さんざん見尽くした
と思うた時

神気が見える。

神気とは 霊のようなものか?

そんな不確かなもんと違うて
躍動する魂の力みたいなもんや。

物言わん動物と人間が
通じ合えると思うか?

う~ん…
犬や猫 馬や牛とはできるかもしれんが

鳥や蛙 魚や虫と心を通わせるんは
なかなかに難しい。

何でやと思う?
ハハッ。

相手が何を考えているかが分からない。

鳥や虫 カエルや蛇には表情がないからや。

そやから喜怒哀楽がないと
人間が勝手に思うてる。

しかし 生き物である以上 欲も愛もある。

それを外界に 気として放っとる。

それが あんたの言う 神気か。

それを感じることができたら
絵に命を与えられる。

♬~

不思議やな。
あかんか?

あんたにしか見えんと思うてた鶏の神気が
こうして絵になると 私にも見える。

草花や木 虫の中にも神気が見える。

そやから今は この世のどんな生き物でも
自在に描ける気ぃがする。

神気を感じて 注意深く描けば

死んだものにも命を与えることができる。

誤解せんといてほしい。

傲慢な物言いやな。
ハハハハッ。

大言壮語などせん あんたがそう言うなら
ホンマのことやろ。

おかしいか?
いや… 私は すごい人間を友に持った。

それが うれしい。

大典さん。

私は もう
絵のことだけ考えて生きていきたい。

そやから きっぱりと世俗を捨てて
禅僧になりたい。

喝!

こんにちは。

若冲さんやないの。 何やえらい珍しい。

昼餉の最中やったら出直します。

何を言うてますのや。
よかったら食べていきよし。 なっ。

(玉瀾)何をお出しするつもりどす?

あんたの茶碗の中のごはんで
うちの米はおしまい。

気ぃ遣わんといて。 昼は食べへんよって。

そうですか。

伊藤若冲と申します。

大雅の妻の玉瀾です。

何もあらしませんけど
井戸だけは ええ水が出ますさかい

お白湯でもどうどす?
頂戴いたします。

これは 絵や道具を干してるんですか?

いやいや
ここが わしとカミさんの仕事場。

えっ!
奥の3畳間で寝起きして

この6畳間で飯食うたり 客泊めたり。

ほんで残ってんのが庭だけ。

はあ… 玉瀾さんも 絵を?

へえ。 修業中どすけど。

この白砂にね 日の光がはね返って

これ ええ具合に
手元を明るうしてくれるんですわ。

はあ~ なるほど…。

見事な絵や。
おおきに。

え?
それ カミさんの描いた絵。

ええっ! てっきり 大雅さんのもんやと。

(玉瀾)似てますか? うちの人の絵に。

夫婦いうのは 絵も似るもんなんですか?

私がうちの人のこと好きやから
似るんやと思います。

これは 野暮なこと聞きました。

それはそうと なんぞ話があって
来たんと違いますの?

実は… 大典さんに叱られまして。

はあ~ そら 珍しな。
仲のええ あんたらが。

出家したい言うたら 「甘い!」て。

はあ~。

そりゃ あんたに対する
大典の嫉妬やな。

嫉妬?

若冲の才に嫉妬しとるんやない。
生き方に嫉妬しとる。

大典は五山の星や。

(売茶翁)あのくらい優れた男やと
宗派の期待を一身に背負わなあかん。

あれだけの詩文の才を持ちながら
自由な文人生活など許されん。

二足の草鞋を履く余裕など皆無。

ひたすら 禅を極め
僧として生きる道を選ばざるをえん。

おぬしを深く知れば知るほど

芸術家としての欲が
むくむくと頭をもたげてきよったのよ。

何者にも囚われず
詩のためだけに生きてみたいとな。

(無聞)お前の気持ちは よう分かった。

これは わしが預かっておく。

禅師…。

よう考えるのや。 もう一度。

(売茶翁)
大典の心に火ぃつけたのは あんたや。

気付きませんでした。
そら 今更消すのも野暮な話やな。

消せるもんか。

ところで 両先生。
(2人)はい。

記念に
わしの肖像画を描いてはくれんか?

何の記念ですの?
茶店をやめる 引退記念。

え…。
(2人)そんな!

♬~

わしが80年
生き長らえることができたのも

お前たちのおかげや。

しかし もう老いてしもうて
お前たちを担ぐ力もない。

あとは ひっそりと世の片隅で
死を待つのみ。

わしが死んで お前たちが俗物の手に渡り
辱められたら

お前たちは わしを恨むやろう?

そやから こうして荼毘に付してやるのよ。

輪廻転生 人間にでも花にでもおなり。

さらばじゃ。

わしは また旅に出ます。
そうか… 今度は どこへ行く?

山陰路を宍道湖まで。

たまには玉瀾の絵も見てやってください。
随分と腕を上げとる。

ああ 分かった。
道中 気ぃ付けて。

うん。

岩次郎。

どうした 鴨水漁史先生。

今は攘雲です。

ならば じょううん先生
そう しょげるな。

高遊外先生も隠居しはるし
京を離れよう思てます。

どこへ行く?
さあ… 大坂か 奈良か 大津か。

そんな 岩次郎さんまで
おらんようになったら 寂しい。

高遊外先生は わしを高みに導いてくれる
ただ一人の師匠やった。

師匠もなしに
明日から どないせえいうんです。

それは私も おんなじや。
違う!

わしとは全っ然違う!

あんたには まだ
大典さんがいてはるやないの!

わしは それが羨ましい。

私は若冲さんの師やない。 ただの友や。

師でも友でも どっちゃでもええねん!

自分が美しいと思うものに
たどりつく道は険しい。

孤独でつらい。

闇夜に提灯なしで歩くようなもんですわ。

大典さんは 若冲さんの足元を
煌々と照らしてくれる光や。

わしも
足元を照らしてくれる人を見つけます。

それまで勝負はお預けや。
し… 勝負?

わしは いつか あんたに勝ちたい!

それまで せいぜい

筆を洗て待っといてんか!

岩次郎さん…。

大典さん
私は あんたの重荷になってないか?

重荷? 重荷どころか助けになってる。

私は あんたに助けられはしたが
助けた覚えはない。

確かに私は いっとき

あんたの足元を照らす
光やったのかもしれん。

けど今は あんたの方が私の光なんや。
アホなこと言わんといてくれ。

ただし 足元を照らす光やない。

私が歩く道のずっと先にある
道標になる光や。

それを目指して
暗い道を懸命に歩いていかな

あんたに置いていかれる。

あんた… そんなふうに思うてたんか?

私は相国寺に暇乞いをした。

どこの寺の僧でもない
一介の雲水になるつもりや。

そんな…。
ハハハハハハハハハハッ!

金なく名もなくや! ハハハッ。

ああ 貧なる哉! 自由なる哉!
ハッハッハッ。

私は旅に出る。 詩を詠むためだけに。

…そうか。

ほな 行ったらええ。

けど 必ず帰ってきてくれ。

私は ここで あんたとの約束を

果たしながら待ってる。

あなたには 描いてもらいたいものが
たくさんある。

この世の森羅万象 そして 仏。

今でも見たいと思うてる。

伊藤若冲が描いた宇宙の姿。

描くよ。

御仏が中心にいる美しい世界を。

どんな絵になるやら 想像もつかんわ。

釈迦三尊像が三幅

草や花や木 虫や鳥や魚

この世にあふれる森羅万象の絵が 三十幅。

そんな大作…
残りの人生かけて描くつもりか?

あんたが帰ってくるまでに描き上げる。

命を削ることになるぞ。

今の私にやったら できる。

全三十三幅 あんたに見せるまでは

死んだりせえへん。

そやから あんたは

自分のやりたいことを思いっきりやり。

あんたは もう随分先で
輝く光になってしもうたが…

再会する時には また
あんたの足元を照らす光になりたい。

当たり前や。

一生 私のそばで 足元を照らしてほしい。

私がここで賛と共に見送る。

先に行け。

若冲さん。

あんたは 私の…。

(風の音)

♬~

これが 噂に聞く「動植綵絵」かね。

まだ半分ほどしか出来ておりませんが

先生に見ていただきとうて。

(売茶翁)なんと…。

(売茶翁)こういう絵は

仏のためにこそ描かれるべきや。

一切妥協しない美しさいうのは

人間の手には 余るものや。

(せきこみ)

あんたの絵の腕は もはや神の領域や。

先生…

まだまだ至らん私に教えてください。

もう わしの教えることなどない。

ただ 感じ入るばかりや。

♬~

♬~

フフッ。

いかがされました?

いや… このような刻限に
御住持様に呼び出されるとは

よい話ではなかろう。
ちと気が重い。

こちらです。

若冲さん。

どういう趣向だ?

何を企んでいる。

♬~

おお…。

無聞禅師様…。

もったいなくも若冲殿は

「動植綵絵」三十幅と 釈迦三尊像三幅を
相国寺にご寄進になられた。

実に前代未聞 未曽有の快挙。

永く我が寺の宝となさん。

これひとえに汝の功なり。

おぬし 禅師に何を言うた?

今しばらくの間 遊行を許す。

禅師 お待ちを…。
喝~っ!

お前の顔を見とると小言言いたなるよって
わしは退散する。

心行くまで堪能せい。

おのれ若冲 謀ったな。

まずは とくとご覧あれ。

うん。

♬~

どうや? 大典さん。

伊藤若冲 ここに名を遂げん。 事終われり。

御仏に捧げた全三十三幅。

圧倒されて言葉もない。

御仏に捧げたのは 三十一幅や。

あとの二幅は

我が導師 大典顕常に捧げる。

何やて?

最後の二篇 「老松白鳳図」と「芦雁図」は
一対になってる。

空から降りてくる雁を
鳳凰が迎え入れてる。

互いに呼び交わし 求め合う姿や。

なるほど… そう見えるな。

雁は黒衣を着たあんたで 鳳凰は…

私や。

死ぬまで 私のそばにいてほしい。

友としてか?

そうや。 生涯の友として。

死が 2人を分かつまで。

うん…。

気持ちええなあ…。
気に入ったか?

貸し切りやなんて
金のない雲水にしたら随分奮発したな。

ハハッ まあ 心の洗濯や。

♬~

何や 岩次郎のこと思い出すな…。

あっ そや。
ん?

「上方萬番付」いう 年に一回出る本でな。

京 大坂の腕のええ料理人や職人
人気の歌舞伎役者なんかを番付にしてる。

歌舞伎… 私には縁のないもんや。
そうでもないで。

上方人気絵師番付。
絵師の番付もあるんか?

三番人気 池 大雅。
おお~。

二番人気 伊藤若冲。

う~ん…。

で?
気になるやろ?

私や大雅より上 言われるとなあ…。
一番人気…。

やった! やった!

ついにやったで~!
(芦雪)何ですか? 先生。

ついに わしが
「上方萬番付」絵師番付の

一番や!
(一同)え!?

ホンマですか!

ホンマや!
(一同)おお~!

先生 おめでとうございます!
(一同)おめでとうございます!

伊藤若冲にぃ…

あっ 勝ったでぇ!

♬~

♬~

♬~

♬~

伊藤若冲畢生の大作「動植綵絵」は

まさに圧巻であった。

当の本人も 「1, 000年後に
理解されればいい」と言うたが

それを見た当時の人々も
圧倒されたに違いない。

あっ 失礼…。

私は若冲の理解者の一人 売茶翁と申す
しがない路上茶人。

これは若冲が描いてくれた
私だが

若冲が人間を描くのは
大変珍しいことじゃった。

これ 軽い自慢である。
その礼というては何だが

若冲のその後の人生を
皆さんにお伝えしよう。

若冲が絵に専念し始めたのは
四十というから 遅咲きも遅咲きだが

その後 八十五歳で世を去る間際まで
絵を描き続けた体力と精神力は

驚異的と言うしかあるまい。

大作「動植綵絵」は
京都を代表する臨済禅の寺

相国寺に奉納するために描かれた。

つまり 若冲は 仏に捧げるために描いた
と言うておるが

それだけではないだろう?
というのは わしの見立て。

若冲の最大の理解者である大典顕常は

後に相国寺第113世住持になるほどの
若き名僧。

名プロデューサーと言っていい大典が

若冲の才能を世に知らしめるために
描くことを勧めた… と

2人をよく知る私などは思うのだが。

着手から およそ10年
若冲は「動植綵絵」全三十幅と

釈迦三尊像 三幅を完成させ
相国寺に寄進した。

その構図の大胆さ 描写の精密さ
色彩表現のこまやかさ

二百数十年後の今でも
見る人を引き付けてやまない。

しかし明治に入り
廃仏毀釈の煽りを受けて

経済的に困窮した相国寺は
泣く泣く寺の宝であった

この「動植綵絵」を皇室に献上。

その御下賜金で窮地を救われ

廃寺になるのを危うく免れたという。

若冲がこの世に送り出した大作が
100年後に相国寺を救うことになるとは

芸術の力も捨てたものではない。

今この絵は 皇居の三の丸尚蔵館で
静かな余生を送っておる。

これは 昔描いた私の絵ですが…。

劇中冒頭 若冲と大典が出会う
きっかけになった作品として登場する

「蕪に双鶏図」。

実はこれ ごく最近発見された
珍しい若冲初期の作品。

美術界を大いに沸かせた大発見だが

それをすぐさまドラマに使うなど
NHKも目端の利くことよ。

若冲30代半ば頃の作と見られる この絵。

このころから鶏の美しさに
魅せられていることが分かるが

後年のように美しい花ではなく
枯れた蕪の葉と一緒に描いているのが

なんとも ほほ笑ましい。

死ぬまで 私のそばにいてほしい。

死が 2人を分かつまで。

「動植綵絵」を相国寺に寄進した時
若冲は五十歳 大典は四十七歳。

その後 若冲は
相国寺に生前墓を建立した。

墓石には 大典の碑文が刻まれている。

若冲の人柄や才能
「動植綵絵」三十幅の快挙を

熱くたたえている。

これは友への賛辞か

はたまた
恋文か…。

いやいやいや
いらぬ詮索は
やめておこう。

諸氏のご想像に
お任せする。

その相国寺にある美術館には

いつでも見られる
若冲の作品があるのをご存じか?

これは相国寺の塔頭でもある
金閣寺の書院に描かれた障壁画。

この大仕事に
まだ無名に近い若冲を抜擢したのも

大典だっただろう。

当時 格式の高い寺の襖を飾るのは

豪華な花鳥画や山水画が
一般的じゃったが

若冲は 野生の山葡萄や実芭蕉

つまり バナナの木を
生き生きと描いてみせた。

描いた若冲も若冲なら
任せた大典も大典。

う~ん いいコンビじゃ。

ええ川風やな。
ホンマに。

大仕事を終え 舟旅で

更なる友情を深めた2人の
その後はというと…。

この舟旅で 2人の合作

まあ 今風に言えば
コラボレーション作品を作った。

極彩色の「動植綵絵」を完成させた後

若冲が挑戦したのは
白と黒の美 版画巻じゃった。

全長11メートルの
昼の気ままな淀川下り。

京都・伏見を出発し
大坂・天満橋へ向かう道中

目の前に広がる のんびりした光景を

若冲が描いた絵に大典が漢詩を合わせた。

巻末には 若冲と大典2人の落款が

仲よく並んでいる。

人間 長く生きていれば
つらい目にも遭う。

1788年
天明の大火が京の都を焼き尽くした。

実家が裕福な青物問屋だった若冲も

自宅や画材 多くの作品を失ってしまう。

その後 若冲が描いたのは こんな絵だ。

7人の布袋様が
ニコニコ
ほほ笑みながら

歩み寄ってくる。

今は苦しく悲しいが
幸せは ついそこまで来ている。

そのメッセージは自分を励ますものか

はたまた 罹災した
京の民衆に向けたものだったのか…。

その後も精力的に創作し続けた若冲。

しかし 最後の作品となるのが…。

この荒々しい水墨画「鷲図」じゃ。

落款には 数え年で
「若冲八十五歳」とある。

不思議な波頭の上に 雪に覆われた岩壁。

爪を立て
落ちないように佇む鷲が 向こう側へ

今にも飛び立とうとしておる。

1800年 八十五歳の若冲は
あの世へと飛び立った。

その5か月後 亡き若冲の誕生日の日。

生涯の盟友 大典顕常も
若冲のあとを追って飛び立った。

若冲の死から今年で221年。

彼が生まれ育った錦市場は

今なお にぎわいを
見せている。

錦市場有数の青物問屋の主人から

天才絵師へと覚醒していった伊藤若冲。

多くの人でにぎわう この雑踏が

案外 あの男の息吹を
一番感じられる場所かもしれん。

閉店後 延々と続くシャッターには

若冲に思いを寄せる
NPOや美術館の協力の下

若冲の作品が印刷されておる。

さながら
入場無料のナイトミュージアムよ。

一度 足を運んでみては いかがかな?