慶次郎縁側日記(5)「片付け上手」[字]…のネタバレ解析まとめ
出典:EPGの番組情報
慶次郎縁側日記(5)「片付け上手」[字]
酒問屋の別荘の寮番・慶次郎は、元南町奉行所の定町廻り同心。娘を失う不幸な事件が元で隠居した「仏の慶次郎」が、江戸庶民の悩みや揉め事をひもとく、一話完結の日記帳。
番組内容
師走のすす払いを前に、慶次郎(高橋英樹)は部屋を片付けようとして進まず、佐七(石橋蓮司)に掃除の邪魔だと追い出される。町で、慶次郎は盗癖のある娘・おはる(加賀美早紀)を見つける。調べると、おはるの盗みは、半人前とばかにされた「仕返し」だと分かる。そして慶次郎は、おはるの思わぬ才能を見つける。おはるは片付け上手だった。立派な才能だと褒められて、少しだけ、おはるは自信がわいてくる。
出演者
【出演】高橋英樹,安達祐実,比留間由哲,遠藤憲一,梅沢昌代,岡本綾,加賀美早紀,中村育二,奥田瑛二,石橋蓮司,かたせ梨乃
原作・脚本
【原作】北原亞以子,【脚本】山本むつみ
音楽
【音楽】川崎真弘ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
ドラマ – 時代劇
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(皐月)<嫁いで まだ ふたつき
森口家の 不束な嫁
皐月でございます。
私の愛しい旦那様 晃之助様は
森口の家を継いだ
養子でございます>
<舅殿の森口慶次郎様は
故あって 根岸の里で
別荘の寮番をされておりますが
かつては
南町奉行所の定町廻り同心で
「仏の慶次郎」と慕われる
お方でございます>
♬~
(慶次郎)よいしょ よいしょ。
<義父上様が 大切にしておられる
書物や書画などを
八丁堀の家から 根岸の寮に
お運びになったのは
師走初めの事でした。
暮れの煤払いを前に
身の回りを片づけようという
お心づもりのようでしたが…>
あ~っ!
ああ 痛っ。 痛…。
はあ…。
あ~あ…。
(ため息)
(佐七)旦那! いつになったら
片づけるんですかい。
今 やってるじゃねえか!
こういうのはね
右の端から左の端に物を動かした
っていうんだよ。
片づけのうちには入らねえよ。
棚に入れようと思ってるのが
どうにも 納まらねえんだよ。
もういいから 外でも歩いてきな。
旦那が いなくなりゃ
掃除の邪魔が一つ減るってもんだ。
煤払いが近いのにさ
ちっとも片づきゃしねえ!
さあ 行った 行った。
ああ 佐七の奴
どうして ああ 口うるせえかね。
≪(物音)
あの娘 盗みか…?
おや 森口の旦那 随分と
お久しいじゃ ござんせんか。
おお 俺も この年だからな
今じゃ 隠居して
根岸の里の侘び住まいさ。
そりゃ 風流ですねえ。
ところで 長屋の差配どうしてる?
今 ちょっと のぞいてみたんだが
留守のようだったが…。
仁右衛門さんですか?
お内儀さんと
観音様に
お参り行ったようですよ。
そうかい。 ところで 頼まれて
若え娘を 捜してるんだ。
今 そこに入ってった娘が
どうも それらしいんだが…。
おはるちゃんですか?
そうかい。
やっぱり 今のが おはるか。
≪池袋村の親御さんにでも
頼まれたんですか?
≪池袋…。
ああ そう… そうなんだよ。
呼んだって 素直に出てくるような
子じゃ ありませんがねえ。
おはるちゃん。 お客さんだよ!
ほ~ら これだ。
逆に 戸締まりしちまった。
ハハハハハハ。
♬~
煙草盆か。
って事は お前 差配の家から
煙管を拝借してきたな。
出しな。
俺が そこで拾ったと言って
仁右衛門に返してやるよ。
心配するな。
俺は もう 定町廻りじゃねえんだ。
分からねえ子だなあ。
その煙草盆も 大方 どっかから
盗んだもんだろうが
そんな事してちゃ
いずれ 番屋に引っ張られるぜ。
(おはる)いいよ。
私を番屋に突き出したりすりゃ
そいつが 笑われるだけさ。
どうしてだい?
半人前のおはるに 物を取られた
大まぬけだって言われらぁ。
誰も番屋には
突き出しゃしねえと
たかぁ くくってるようだが
そうは いかねえよ。
これだけの物を
盗んだとあっちゃ
半人前じゃねえ 一人前だ。
だったら それでもいいや。
なに?
おはるは 一人前だって
世間の奴らに
思い知らせてやれる。
フッ お前なあ 盗みが一人前で
自慢になるかよ。
とにかく これは
俺が返しておくから。
(仁右衛門)あ…!
これは 森口の旦那。
おう 久しぶりだな。 今
お前の家に行くとこだったんだ。
この子が
これを拾ったってんでな。
ああ 助かった。
いやいや 煙管は
私の たった一つの道楽でしてね。
拾ったねえ…。
おはる!
煙草盆も返してもらうよ。
何の話さ。
昨日 預けたろ。
何するんだよ!
離さないか!
全く 煙草なんか
のむんじゃないよ!
半人前のくせに。
余計なお世話だ!
(仁右衛門)なに…!
てめえなんかに
半人前呼ばわりされたかねえや!
私はね 折れ釘や ゆで卵売って
暮らしてんだよ!
てめえんとこで
世話になってるわけじゃねえ!
(泣き声)
馬鹿野郎! 馬鹿野郎!
(泣き声)
(晃之助)うまい。 皐月。
はい。
腕を上げたな。
はい!
(しづ)ようございましたね。
おかげさまで。
そういえば 義父上は
お見えにならなかったか?
義父上様? いいえ。
何か あったのですか?
辰吉が 浅草辺りで
義父上を見かけたそうだから
こっちにも 足を伸ばされたかと
思ってな。
いいえ こちらには…。
ご遠慮なされているのでしょうか。
え…?
私が こちらに参って ふたつき。
義父上様は まだ 1度しか
お見えになっておりません。
皐月…。
きっと 頼りにならぬ嫁だと
思っておいでなのですね。
いや そんな事はない。 ないぞ!
義父上は 皐月を
いたく 気に入っておられる。
さようでございましょうか。
皐月は 義父上様のお役に
立ちとうございます。
煙草盆だの 煙管だの 何だって
そんな物ばかり 盗むのかねえ。
(お登世)そのおはるって娘さん
煙草は?
いや のまねえんだよ。
どうにもなあ… 若え娘の気持ち
ってのは よく分からねえ。
親御さん どうしてるんですか?
池袋村に 居るらしいよ。
若い娘が 長屋で 一人住まい…
何か 訳があるんでしょうね。
ああ…。 それにしても おはるの
泣きっぷりには 往生したぜ。
災難でしたね。
家をほうり出されるは
妙な娘に出くわすは。
それもこれも 佐七の奴が
「掃除の邪魔…」なんぞと
言いやがるから。
お寒い中 大変でしたこと。
俺はね どうも 佐七に
頭が上がらねえんだよ。
いやいや 嫌いじゃねえんだよ。
そうじゃねえんだが…
怖い。
怖い?
ああ。 いや 男って奴は
どんなに 威張っていても
てめえの女房を どこかで
恐れてるもんなんだが…
どうも そんなふうなんだ。
という事は 佐七さんが
旦那のお内儀さん?
(笑い声)
≪(おすみ)失礼します。
あいよ!
女将さん 伊勢屋さんが
お見えです。 あら もう…。
旦那 ちょいと ようござんすか?
ああ。
おすみ。 元気だったかい?
はい。
女将さんの代わりに
ついでくんな。 はい。
すまねえな。
馬鹿野郎…。
馬鹿野郎!
(三千代)
また 父上様のやりっぱなし。
(三千代)こんなに散らかして
佐七さんに 叱られますよ。
三千代…。
♬~
≪(仁右衛門)
ごめんくださりませ。
さあ 遠慮せずに入ってくんな。
はあ。
それで おはるは
どうして番屋に?
はい。
家内が娘のために買ってあった
銀足の簪を盗まれまして。
またやったのか?
聖天町の源八親分に
留守の間の見張りを
お願いしてあったんですが
小娘だと思って
油断したんでしょうね。
ちょっと目を離したすきに
盗みに入られまして…。
で 顔を潰された親分が怒って
自身番に。
そうか…。
長屋から 縄付きは
出したくはなし… かと言って
お解き放ちも願えず…
それで つい
「この娘は 森口の旦那の
関わり合いの者だから」と
申しまして。
急いで
俺を迎えにきたってわけか。
はい。 八丁堀の若旦那にも
知らせをやりました。
晃之助に? ならば すぐに
どうこうという事はあるまい。
あっ あいにく
佐七が出かけてるんだがね
まあ 茶ぐれえは俺が…。
いや 旦那 そんな…。
あれ? 茶筒は どこだっけな…。
湯飲み 湯飲み…
湯飲みは どこだ?
待たせたな。
あっ ああ!
ああ 旦那!
いやいや もう 私がいたします。
あ~あ。
≪(佐七)
旦那! 何やってるんですか!
店子の世話をするのも
差配のつとめでございますから
食べるにも困っている
おはるの事が気がかりで
近くの居酒屋で働けるように
してやったんですが…。
つとまらなかったのかい。
半月と もちません。
注文は覚えられない
勘定は できない
愛想はないと きてますから
あの子が居ちゃ 客が減る一方だと
居酒屋の主に言われまして。
そうか…。
でも まあ
あのとおりの半人前ですから
しかたございませんが。
それ以来 おはるの奴
うちに盗みに入っては
長屋の者に見つかって
取り戻されるという
繰り返しでして。
ふ~ん。
大番屋送りにでもなったら
大ごとでございます。
そうだなあ。 まあ 盗みと言っても
所詮 半人前の仕事だ。
北の同心も おはるを
ひっくくりは しねえだろうが
今のうちに
何とかしてやらねえとな。
よろしくお願い致します。
番屋に行ってくる。
ことによると 明日は
池袋の親元を訪ねる事に
なるかもしれねえ。
旦那に分かるのかなあ。
俺も ガキのころ
奉公先から暇を出された時
半人前の役立たずと言われた。
旦那に 半人前の気持ちが
分かるのかな。
佐七…。
それじゃ 気を付けて。
義父上。
ご苦労だな。
この娘 北の大石様から
こっちに預かりやした。
だから言わねえこっちゃねえ。
いくら 半人前の盗みでも
度重なりゃ 大番屋送りにも
なるんだぜ。 うるせえ!
おはる。
おはるは しばらく 俺が
面倒をみるよ。
明日 池袋の親を訪ねる間
預かってくれねえか。
おはるをですか?
義父上 うちで預かりましょう。
お前が?
皐月が 面倒をみますよ。
あの娘 皐月の手に負えるかねえ。
なに 皐月なら
何とかなりますよ。
そうか… じゃあ おはるを連れて
先に帰っててくれ。
俺は 山口屋に寄って
今夜は 八丁堀に泊まるからと
断りを入れてくる。
お帰りなさいませ。
お帰りなさいませ。
この子が おはるだ。
よろしく頼む。
はい。 精いっぱい
お世話させて頂きます。
おはるさん。 自分のうちだと
思って くつろいで下さいね。
誰が こんなうちの
世話になるかよ!
(しづ)まあ!
(晃之助)おはる。
おはる!
離せ! おとなしくしろ!
離せ!
≪お待ちなさい!
≪(おはる)離せよ!
食べなさい!
やなこった。
きちんと食べてくれなくては
困ります。
夜中に おなかがすいても
知りませんよ。
てやんでい! 誰が お前んとこの
もんなんか 食うかよ!
なんという お言葉!
16にも 17にもなった娘が
使う言葉じゃありません!
そっちこそ 16にもなった娘に
子供に言うような
小言を言うんじゃねえ!
小言が嫌なら 四の五の言わずに
食べなさい!
いやはや 驚きました。
ああいうところを見ては
恐ろしくて 夫婦喧嘩など
できませぬな。
ああ 強い。
(笑い声)
≪(せきばらい)
ご隠居様も 旦那様も
笑い事では ございませんよ!
ああ すまぬ。
恐ろしいのは
おはるでございます。
あんな乱暴な口を利いて。
そうだな。 あれでは
皐月の身が持たんかもしれんな。
さ~て どうしたものか。
任せてやってもらえませんか?
うん?
張り切っているのですよ 皐月は。
義父上のお役に立てるのが
うれしくて。
義父上に頼られる嫁になりたい
そう言っておりましたから。
≪おはるさん! そうか…。
≪ああ もう うるせえ うるせえ!
≪(柝の音)
≪火の用心…。
≪(物音)
うわっ!
だから 夕飯を食べなさいと
言ったでしょ!
わあ!
おなかがすくから
眠れないのですよ!
うるせえ!
そんなんじゃねえよ!
いいから いらっしゃい。
≪おはるさん!
食べなさい。
ほら。
いらねえよ。
いいから 食べなさい!
(おなかが鳴る音)
♬~
(悲鳴)
おはるさん!
離せ!
この娘は 全く もう!
おしづ 手出しは無用です。
おはるさんは
私が お預かりしたのです。
私が何とか…。
義父上様 これを。
おお… 弁当か? すまぬな。
では 行ってくる。
(一同)行ってらっしゃいませ。
♬~
<おはるさんの里は
池袋村の貧しいお百姓でした>
<八丁堀から池袋村まで
およそ3里。
舅殿の早足で
いっときほど かかりました>
和助さん こちらかい?
(和助)あの…
ど… どちらさんでしょうか?
長屋の差配とは
懇意しておりましてな。
おはるさんが 親御さんの事を
案じているようだから
池袋に行くなら
様子を見てきてほしいと
頼まれたんですよ。
さようでごぜえますか。
あの半人前が そんな事を?
実は 少々 相談したき…。
(すすり泣き)
雑巾 縫うのにも
1日かかる娘でございましたよ。
そんな のろまが わしらを
案じてくれるようになるとは…。
親父さん…。
お寺の和尚さんも
この子は いくら教えても
字は覚えねえと見放したんですよ。
そんなだから ちっちゃいころから
近所の子供らに
いじめられましてね…。
おまけに わしが
後添いをもらったもんで
母親にも 妹や弟にも
半人前 半人前と 馬鹿にされて
とうとう 江戸へ行くって言って
出てっちまったけんど…。
あんな のろまが 江戸へ行って
どうなるものかと
案じておりやした。
何かあったって
文の一つも書けねえだから…。
(おすえ)おや お客さんかね。
おはるさん 待ちなさい!
待ちなさい!
(辰吉)ああ…。 お前か 大丈夫か。
おい おい…!
また 何かやったのか! お前。
離せ!
あっ 辰吉さん。
離せ… 離せ!
おとなしくしろ。 すみません。
♬~
あっ!
おはるさん 待ちなさい!
<何が気に入らないのでしょうか。
止めても 止めても
おはるさんは
島抜けを試みるのです>
(けたたましい笑い声)
勘弁しておくんなせえまし。
あの半人前がと思ったら
どうにも おかしくてよ。
ハハハハハハ。
そんなふうに言っちゃ
おはるさんが気の毒だぜ。
いえねえ 私だって
継子いじめだなんて
言われたかねえですから
あの子によかれと思って
名主様に頼み込んで
奉公させた事もあったんですよ。
けどね みつきと たたずに
暇 出されましたさ。
何をさせても のろまだし
気は利かねえしってね。 ハハハ…。
あの半人前が
一人前にやってるだなんて
そりゃ 何かの間違いでしょうよ。
(けたたましい笑い声)
お嬢様?
ちょっと目を離したすきに
おはるさんが…。
まあ!
あの子の足では
そう遠くへは行けませんよ。
さあ お急ぎになって…。
≪(吉次)ごめんくだせえやし。
はい。
あの どちらさまでしょう…。
あっ 大根河岸の…。
おはるさん!
(吉次)やっぱり こちらのお宅から
抜け出したんだな。
おはるさん 一体 どこに
行ってたんですか。
どれだけ案じた事か…。
吉次さんでしたね。
ありがとうございました。
いや なに… 道に迷ったらしく
うろうろしてやがったんで
声をかけたら
言う事が あやふやだ。
言葉の端々からすると
どうも こちらのお屋敷から
逃げてきたようでしたんでね。
義父からの
大切な預かり人なんです。
何とお礼を言えばいいか…。
へえ… 仏の旦那が また
酔狂を始めたんですかい。
酔狂?
ああ いや…
じゃ あっしは これで。
♬~
相変わらず
まっつぐなお嬢さんだぜ。
回想 旦那に
半人前の気持ちが分かるのかな。
(お登世)生さぬ仲とはいえ
おっかさんにまで
半人前呼ばわりされて
おはるさん さぞ
つらい思いしたんでしょうね。
仕返しだよ。
仕返し?
おはるの盗みさ。 見下した奴らを
見返してやりたかったんだ。
佐七に言われたよ。
「半人前の気持ちが
旦那に分かるか」ってね。
そう…。
佐七の言うとおりだ。
俺も おはるの事を
半人前と言った。
それが あの子を どんなに
傷つけるか 考えもしねえで…。
俺は また しくじっちまった。
一人前にしてやらなきゃなあ。
おはるには 居場所がねえんだ
親元にも どこにも。
ここで 江戸でやっていけるよう
一人前にしてやらなきゃな…。
そうなさいまし。 及ばずながら
私も お力になりますよ。
なに? 皐月が熱を出した?
はい。
おはるとの追いかけっこで
すっかり
まいってしまったようで。
具合どうなんだ?
大した事はございません。
隣の玄庵先生に
診て頂きましたが
疲れたのだろうという事でした。
おしづが 様子を見ています。
どうしたんだ これは!?
義父上が 書物やら書画やらを
持っていかれたので
押し入れの空いたところに 荷物を
入れようとしたそうなんです。
ところが 皐月が踏み台に上ると
おはるが逃げるの繰り返しで…。
まあ 私が少し片づけましたが。
こりゃ 片づけたとは言わねえぜ。
右の端から左の端に
物を動かしただけじゃねえか。
よろしいでは ありませんか。
床は とれますよ。
≪お待ちなさい!
(おはる)離せよ!
いけません!
離せよ! 逃げるんじゃねえんだ!
気持ちが悪いんだよ
やりっぱなしはさ。
♬~
おはるさん…。
ついでに 片づけといてやるよ。
あれ?
ん? どうした?
私の膳が 片づいてる。
膳?
(晃之助)食べ終わったところに
義父上が戻られたので
後で片づけようと
ほっておいたのですが…。
(晃之助)しづかい?
(しづ)いいえ。
ん? すると…。
おはる。 お前 それ…。
ああ 旦那が 帰ってきたから
茶の葉を
入れ替えるかと思ってさ。
じゃあ ここを片づけたのも?
あっ!
そういえば おはるの家
やけに きれいに片づいていたな。
何だよ。
偉えなあ! え?
よく そう 次から次へと
片づけられるもんだぜ。
こんな事 誰にだって できるよ。
いや そうじゃねえ。
この 若い旦那が片づけたって
俺の部屋 見てみな。
俺は 今夜 荷物のすき間に
寝るはめになったぜ。
義父上こそ 部屋の中に懐紙だの
紙入れだの ほうりっぱなしで。
そんな事だから 片づかんのです。
何言ってやがる。
お前に説教される覚えは ねえや。
(笑い声)
どれ 飯にするか。
おお うまそうだな。
しかし だらしがないですな
我々は。
全くだ。
ちっとは おはるに習わなきゃな。
そんなに無理して
褒めなくたっていいよ。
無理してるもんか。
心底 感心してるのさ。
こんな事 できたって
字も読めないし
勘定だって できないし。
そんなものな 根気よく習ってりゃ
いつか覚える。
だがな 片づけの才ってなあ
持って生まれたもんだ。
俺たちには それがねえ。
なあ 晃之助。
片づけに関しちゃ 俺たちは
半人前以下だな。
(晃之助)さようですな。
ハハハハハハ。
旦那…。
ん?
ごめん…。
(泣き声)
俺の矢立か… 皐月 やられたな。
ごめんよ。
(泣き声)
おはる。 お前は 半人前じゃねえ。
半人前なんかじゃねえよ。
♬~
≪よろしゅうございますか?
ああ お入り。
どうした? 寝てなくていいのか?
申し訳ございません。
私が いたりませんでした。
矢立の事かい?
それも ありますけど…。
それも?
私… おはるさんを
逃がしてはいけないと
そればかり思っておりました。
義父上様から
お預かりしたのだからと…。
一日一緒にいながら
おはるさんの事
少しも分かろうとしませんでした。
私は 自分の事ばかり。
気にするな。
皐月は よくやってくれたよ。
無理をしないで 早く おやすみ。
世話をかけて すまなかった。
義父上様…。
やはり…
私には 遠慮していらっしゃる。
≪(水の音)
おはるさん!
あれ? 寝てなくていいのかい。
熱があるんだろ?
それ… 私に?
朝昼晩と 飯を食わせて
もらったから そのお礼にさ。
うまかったよ
お内儀さんの作る飯。
何だよ。
おはるさん おはるさん。
水が こぼれるよ。
ありがとう おはるさん。
ありがとう。
♬~
おはるを預かりたい?
はい。
おはるを仕込むつもりかね。
いいえ。
一緒に学んでいきたいんです。
私も 覚えなければならない事が
まだまだ 沢山ありますから。
いや 気持ちは ありがたいがね
おはるは こっちで
佐七と面倒をみるよ。
晃之助と2人で
森口の家を築いていく事が
今の皐月には
何より大切な仕事だよ。
定町廻りのお役目は 苦労が多い。
晃之助も お前が頼りだ。
頼んだよ 皐月。
はい。
そうか 義父上は
聞き入れて下さらなかったか。
はい。
旦那様のお世話が 第一だと。
すまぬな。
え?
俺が半人前なので
皐月は俺の世話で 手いっぱいだと
思っておられるのだ。
何をおっしゃいます。
私の方こそ 半人前の嫁です。
いいや。 皐月は よくやっている。
俺が いかんのだ。
いいえ 私が…。
(しづ)失礼致します。
お二人とも
よくやっておいでですよ。
え?
欲張ってはなりません。
お若いのですから まだまだなのは
当たり前でございますよ。
おしづ…。
お嬢さ… ご新造様。
大人になられましたね。
♬~
何だよ!
ああ そうか…。
おお どうだい? おはるは。
覚えは悪いが やる事は丁寧だ。
あの子なら じっくり仕込めば
どこに奉公に出しても
つとまるようになる。
そうか…。 ハハハハハ。
≪(物が落ちる音)
旦那の掃除より よほどましだ。
この際だから
言っておきますがね
飯の支度も 風呂炊きも
当てにしちゃいないが
せめて 自分の部屋ぐらいは…。
ご自分で片づけなさい。
そのとおり!
<おはるさんのおかげで
暮れの煤払いが 随分楽だったと
後に 佐七さんから伺いました。
義父上様が おはるさんの
奉公先を決めてこられたのは
年が改まった ひとつきほど
たったころの事でございました>
男と男の約束だからな。
頼むよ 蝮の親分。
お見事。
<どうぞ お楽しみに>
♬~