【BS時代劇】善人長屋(5)「犀の子守歌」[解][字] …のネタバレ解析まとめ
出典:EPGの番組情報
【BS時代劇】善人長屋(5)「犀の子守歌」[解][字]
お縫と加助が助けた男は、文吉の昔の友人・犀香だった。小姓として仕え、心を通わせ合っていた殿様と一目会いたい、という犀香の願いを叶えるために長屋の面々は奔走する。
詳細情報
番組内容
お縫(中田青渚)と加助(溝端淳平)が偶然助けた男は、文吉(溝口琢矢)が昔、陰間茶屋で働かされていた頃の知り合いで、恩人でもある犀香(牧島輝)だった。犀香は病気でもう長くはない様子。過去に小姓として仕え、心を通わせ合っていた殿様と一目会いたい、という犀香の願いを叶えるために長屋の面々は奔走するが、やがて殿様の側には気の強い御台所・お濠の方(臼田あさ美)がおり、容易には殿様に近づけないことが分かる。
出演者
【出演】中田青渚,溝端淳平,高島礼子,吉田鋼太郎,徳井優,美保純,溝口琢矢,蕨野友也,神保悟志,辻本祐樹,今井隆文,柳沢慎吾
原作・脚本
【原作】西條奈加,【脚本】森下直
音楽
【音楽】住友紀人ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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(お縫)お待たせさま。
今年最後の冷や麦よ。
いや~ そろそろ秋だな。
そうですね。
じゃあ 頂きます。
(2人)頂きます。
♬~(笛)
(お俊)まただよ。
ああ~ 気が めいるねえ。
♬~(笛)
加助さん ずっと引きこもっちまって
どうしたんだろ?
お前さん 加助さんに何か言ったの?
加助さん あんたのおせっかいは
やめろと言っても
止まるもんじゃないようだが
長屋のみんなを
危ない目に遭わせたくはない。
(加助)もう二度と 人助けはしやせん。
ええい! もう!
(戸が開く音)
どうしたの 加助さん。
外は日和続きだっていうのに
毎日毎日 笛ばっかり。
それも 本当に悲しそうな音色で。
ああ 笛は死んだ女房から教わったんだ。
娘も あっしの笛が大好きでね。
けどね 笛は もっと にぎやかな方が…。
そうだ! ちょうど八幡様で
お祭りの笛太鼓をやってるから
一緒に見に行きましょうよ。
お縫さん あっしは家を出ねえ!
出ちゃいけねえんだ。
どうしてよ?
万が一 困ってる人を見かけたら
きっと おせっかいを焼いちまう。
俺ぁ 金輪際 人助けはしねえ!
だから こうして 笛で気ぃ紛らわ…。
四の五の言わない!
行くよ!
あっ…。
♬~(笛太鼓)
どう?
ぴ~ひょろ ぴ~ひょろ ぴ~ひょろろ~。
(犀香)お頼み申す。
どうか 殿に お目通りを!
一目だけでも殿に。
苅田掃部介直矩様に… うっ!
犀が来たと お取り次ぎを!
(門番)町人風情が バカを言え! うせろ!
あのままじゃ殺されちゃう。
行こう!
けど…!
(門番)ええい もう勘弁ならん!
うあっ! ううっ…。
加助さん!
♬~
ちょっと どいてくれ! どいてくれ!
お前さん!
(儀右衛門)何でえ?
やっと 外に出たと思ったら
早速 行き倒れを拾ってきたようだ。
困ったもんだ。
うれしそうだね。
旦那 面目ねえ。
性懲りもなく つい…。
どうしたんだい? けがしてるじゃねえか。
(お俊)お縫 お医者は?
診てもらった。
早く中に入れないと。
おい 見ろよ 文吉。
また 善人野郎の人助けだ。
今度は行き倒れかよ。
犀香?
え?
犀香!
おい どうしたい! しっかりしろ!
犀香! 俺だ! 小瓢だ!
おい 犀香! 聞こえるか 犀香! 犀香!
<世間様から
善人長屋と呼ばれちゃいますが
うちの店子は そろいもそろって
裏稼業持ちの悪党ばかり>
<差配の一家は
盗品を売りさばく系図買い屋>
<そんな悪党どもが
一人の善人に
かき回されて
人助けを
するはめになる
不思議な物語でございます>
俺たちの親父は
博打狂いの くそ野郎だった。
おふくろは 女郎に売られた。
兄貴は 体がでかかったから
年をごまかして 人足に出された。
俺は体が小さかったから
陰間茶屋に売られた。
陰間茶屋…。
[ 心の声 ] 陰間茶屋は 男の子が
大人を相手に 春をひさぐ店…。
犀香は その茶屋で
一番人気の色子だったんだ。
歌も踊りも見事でさ。
ほかの色子の面倒見もよかった。
新入りの俺にも優しくて。
小瓢と名を付けられて
初めて店に出された日には
一緒に泣いてくれたんだ。
そうやって みつきばかりがたった頃…
兄貴が助けに来てくれた。
てや~!
犀香。
何だ? 小瓢。
犀香も一緒に逃げよう。
私は…
ここを 自らの牢獄と定めているんだ。
この世で一番大切なお方のために。
今だ 行け!
あっ!
どけ! 文吉 行くぞ!
待ちやがれ!
うう~…。
離せ!
文吉!
行け~!
行くぞ!
(文吉)おかげで 俺は逃げ出せたが
犀香は…。
あのあと どんな仕置きを受けたのか…。
(犀香)うう… はあ…。
茶屋を 自らの牢獄って…?
どういう意味かは分からねえ。
そん時から もう10年…。
医者は 何て言ってんだ?
臓腑が みんな やられてる。
多分 年は… 越せないだろうって…。
犀香みたいな いいやつ殺して
俺みたいな悪党を生かす気なら
俺ぁ 神様を ぶん殴ってやる!
文さん…
そんな罰当たり 言うもんじゃ…。
けど! けど…。
(文吉)畜生…。
(犀香)小瓢…。
犀香!
久しいな 小瓢。
犀香さんの本当の名は
三浦斎之介様といって
元は 下野井筒1万5, 000石
苅田家のお殿様
苅田掃部介様の お小姓だったそうなの。
それで 殿様に会いに行ったのかい。
けどさ 大名のお小姓が
どうして陰間茶屋にいたんだ。
ああ そっちの お小姓かい。
だから何なの? 半造おじさん。
犀香さんとお殿様は
心の底から好き合ってたそうよ。
なのに 生木を裂くように
引き裂かれちまって…。
引き裂かれた?
それが ひっどい話なの。
お小姓で仕えて2年
お殿様に
奥方様が こし入れされたんだけど
跡継ぎが なかなか生まれない。
お殿様が 犀香さんばかり
かわいがってるせいだって
ご家老様たちに
おいとまを出されちまって。
殿…。
それで自分から 陰間茶屋に行ったそうよ。
元服の年を過ぎてから
色子ができなくなった犀香は
今度は旅回りの一座に入って
江戸から離れたそうで。
そこで何年か 踊りや歌を披露して
過ごしたそうなんだけど
今年の春に病にかかって
一座を追い出されて。
しかたなく 江戸に戻ったら
お殿様が どうしておられるか
やっぱり どうしても気になって。
それで 小姓の頃の知り合いを訪ねたら
殿様も今 重い病で もう長くはないだろう
ということを聞かされて…。
一目だけでも殿に。
犀が来たと お取り次ぎを!
儀右衛門の旦那!
無理を承知で お頼み申しやす。
犀香を 10年以上 慕い続けてる殿様に
会わせてやっておくんなせえ!
ほかならぬ文吉さんの頼みだから
そら まあ なんとかしてやりたいが…。
旦那。 そのお大名には
近づかねえ方がようござんす。
何でだい 半造おじさん!
まあ聞けよ 文吉。
その苅田の殿様の奥方
お濠の方様ってのがよ
とんでもねえ 悋気持ちだって噂だ。
すごく やきもち焼きなお方なの?
ああ そうだ。
殿様の世話は 全て奥方が焼いてよ
奥女中すら近寄らせねえ。
何でも なぎなたの使い手でよ
殿様に色目を使った茶坊主を…。
(半造)斬り殺したとか しねえとか。
斬り殺す…。
そんな所に あの病人を連れてくなんぞ
やめた方がいい。
半造おじさんは 恋をしたことがないから
そんな冷たいことが言えるのよ。
お縫… こ… 恋って…。
そうよ 恋よ!
私はまだ 恋が どういうものかは
分かんないけど
でも きっと すごく つらいのに
どうやったって
諦められない思いじゃないかって
犀香さんを見てて思うの。
犀香さんは長くない。
お殿様も長くないなら 今しか…!
そうよ 今しかないの!
これは 命懸けの恋なの!
おい… こ… 恋って…。
(お俊)そうさねえ…。
文ってのは どうかい?
文… その手があったか!
まずは 犀香さんに
殿様宛ての恋文を書いてもらう。
ほんで その恋文を 庄治さんに託して
お殿様のお屋敷に じかに持っていって
渡してもらうってのは どうだ? なっ?
(半造)こいつぁいい。
旦那…。
かっちけねえ!
(頭をぶつける音)
おいおい おいおい…。
ちょっと もう 文さん!
さてと…。
≪(直次)姉上様におかれましては
本日も ご機嫌麗しく。
≪(濠)直次殿も 息災で何より。
いつ以来かのう。
(直次)ふたつき前に お会いして以来。
(濠)そう。
(直次)拙者に折り入って御用とは
何でございましょう? 姉上。
(濠)何。 久方ぶりに直次殿と
お話でもと思ったまでじゃ。
時に 兄上のご容体は いかがで…。
直次殿。 家中には
殿亡きあとの苅田のお家を
そなたが欲しているとの噂がある。
なんと!
我が子 鶴松は まだ9つじゃ。
「火のないところに煙は立たぬ」と申すが。
姉上様は 強きお方でございまするが
ハッ やはり おなごですな。
このような嘘偽りの噂に
心を弱らせておられるとは。
国元より江戸へ
度々 金を送らせておるのは何故じゃ?
はて 何のことやら。
今月も 既に 三たび
国元より荷が着いたと聞く。
その荷は 米 麦 雑穀の類いでござる。
では なぜ それを
ひそかに中屋敷に運んでおる。
(せきばらい)
(濠)直次殿。
表沙汰にできぬ金を食らうのは
毒を食らうのと同じこと。
鶴松の後見には わらわが立つ。
そなたの思うようには決してさせぬ。
跡目争い…。
≪(直次)姉上様も お気を付けなされ。
兄上が床に伏されたのは
姉上様が毒を盛ったとの よからぬ噂も。
≪(濠)お~ 毒を…。
♬~
≪(足音)
(侍女)大事ござりませぬか?
くせ者じゃ。 くまなく探せ。
(侍女)はい!
(戸を閉める音)
♬~
殿は いかがじゃ? 藤江。
相変わらず
お苦しそうなご様子でございます。
♬~
母上。
(濠)鶴松。
心配はいらぬ。
程なく よくなられる。
(せきこみ)
♬~
お殿様が伏せったのは 奥方様が毒を?
あ~…。
跡目を狙う弟が そう言ってやした。
さもありなんでさ。
奥方の まあ恐ろしいの何のって…
アイタタタタッ…。
半造さん どうしやした?
旦那 ちょっと本腰を入れやして
例の お大名のネタを
調べてみたんでやすが
とある盗賊の一党が 苅田のお屋敷を
狙っているとか いねえとか。
それも 一橋門外の上屋敷じゃねえ。
鉄砲洲の中屋敷の方で。
中屋敷…?
ああ。
殿様がいるのは上屋敷。
中屋敷は普通 隠居した殿様の屋敷だ。
苅田家の先代の隠居した殿様は
もう亡くなっておりやす。
その中屋敷に 盗賊が目をつけるほどの
小判があるってのは 何でだろうと…。
半造さん 中屋敷に
今 住まっているのは?
殿様の実弟の 苅田直次でやす。
読めたぜ。
(庄治)えっ?
苅田家は今 お家騒動の真っただ中だ。
殿様の弟は 俵に小判を隠して
国元から中屋敷に運んでいる。
その金は 跡目を自分に すげ替えるために
公儀のお偉いさんたちに配る
裏金だ。
こいつぁ うかつには近づけねえ。
これ以上やりゃ やぶから大蛇が出ちまう。
旦那…。
すまねえな 文吉さん。 分かってくれ。
こいつぁ 無理筋だ。
<その日から しばらく
文さんの姿が消えた>
≪(足音)
文さん! よかった!
よう 犀香! 具合は どうだい?
何だよ 不景気だな。
ほら見ろ! ほら! ほ~れ!
江戸一番でかい うなぎだ!
文さん まさか それを捕まえに?
おうよ。 加助さん さばいてくんな。
これ。
うなぎ~!?
よし ひとつ やってみるか。
頼んだ。
ちっと見ねえ間に また痩せた…。
♬「たった七日の銀い花」
♬「たった七日の金色花」
♬「一年瀬を」
♬「比翼連理の枝となり」
きれいな歌…。 何て歌ですか?
犀の子守歌です。
下野の…。
私が育った 小さな里には
金銀の木犀が たくさん植わっていて…
秋になると よい香りが里に満ち…。
しかし 木犀の花が咲き
香りが満ちるのは
一年に七日だけ…。
それを歌った 昔から伝わる子守歌です。
そうなんだ。
殿も この子守歌を
大層 気に入られて…。
♬「枝となり」
(2人)♬「飛べよ 飛べ 飛べ」
♬「鳥となりて飛んでいけ」
♬~
(直矩)我らの証しじゃ。
(直矩)この歌を聴くと ひととき
我が牢獄を忘れられる…。
牢獄…。
殿は 私を木犀の「犀」の字から
犀と呼ばれました。
それで 私は茶屋で
犀香と名乗ったんだ 小瓢。
いい名だよ 犀香。
(せきこみ)
大丈夫か?
(せきこみ)
だが… 会うことは もう…
かなわぬらしい…。
バカ 何 言ってんだ! 諦めるな!
俺が必ず 殿様に会わせるから!
(犀香)お前は優しいな 小瓢。
ふざけんじゃねえぞ なあ 犀香…。
加助さん!
一生のお願い!
えっ?
♬~
(加助 文吉)せ~の…。
(せきこみ)
(せきこみ)
ここに下ろすぞ。
(せきこみ)
大丈夫ですか?
♬~
♬~(笛)
[ 心の声 ] 文の代わりに せめて
犀の子守歌を お殿様に…。
♬~(笛)
<加助さんは ひとときも休まず
笛を吹き続けてくれた>
♬~(笛)
<けど…>
(門が開く音)
あっ!
(門が開く音)
誰だ?
今の調べは そなたか?
へ… へい。
(せきこみ)
犀香さん。
はあ… はあ… 藤江様…。
そなたは… 斎之介か!
参れ。
(文吉)しっかり。
斎之介を この者らに。
そりゃ どういうわけで。
奥方様の お言いつけじゃ。 さあ。
おい おい おいおい! 何でえ このアマ!
犀香に触るんじゃねえ!
怪しい者じゃござんせん!
犀香さんは渡せません!
あっ あっ!
あっ あっ あっ… な… 何でえ!
≪何を騒いでおる。
(藤江)奥方様じゃ 控えなさい。
あ… 犀香。
[ 心の声 ] この人が…。
お久しゅう… ございます…
奥方様。
連れてまいれ。
(2人)はい。
おい ちょ…!
♬~
お手討ちなら あっしを!
煮て食おうと 焼いて食おうと
好きにしておくんなせえ!
けど 犀香と お縫坊と加助のおっさんは
あっしが無理やり連れてきたんだ!
いいや!
文さんと 犀香さんと お縫さんは
あっしが無理やり連れてきやした!
(文吉)黙ってやがれ! この善人野郎!
違うんです! 本当のところは私です!
私が みんなをお屋敷に。
お手討ちなら どうか私を!
うるせえ! 女だてらに黙ってろい!
だって 本当のことじゃない!
元は あっしだ! あっしが最初に
犀香さんと関わったんだ!
私が お祭りに行こうなんて…。
(濠)静まれ!
(笑い声)
案ずるな。 斎之介は 殿の寝所じゃ。
そなたらの働きで
殿を お慰めすることができたようじゃ。
心より 礼を申す。
あ… よ… よしてくださいまし!
あっしらみてえな町人に頭を。
ど… どうか。
奥方様…。
よかった…。
誰でえ! 悋気持ちの なぎなた使いで
茶坊主を斬り殺したなんぞとは。
ちょっと 文さん…!
殺してはおらぬ。 追い出しただけじゃ。
やあ けど 本当よかった!
昔の男との色恋なんぞ
斬って捨てられるんじゃねえかと
気が気じゃなかったぜ。
文さん! もう なれなれしくし過ぎよ!
構わぬ。
それに あれは 殿と小姓の色恋では…。
お殿様と お小姓の色恋じゃ ねえ?
<この時 奥方様から
すごく切ない においがした。
犀香さんと同じくらい強くて 優しくて
命懸けの…>
奥方様 お殿様と犀香さんのこと
教えてください。
もし そのことで苦しんでおられるなら。
もし そのことが
お家の大事と関わりがあるなら
お助けしたいんです。
失礼します。
えっ? ちょ… お縫さん!
ちょ…!
殿は… 男子として生まれたが…
中身は おなごの心根じゃ。
(濠)今 お家が揺らいでおるのも
それが根っこ。
斎之介が いとまを出され 3年後
やっと 嫡男 鶴松が生まれた。
殿も わらわも 大層喜んだ。
しかし… 子が一人では心もとない。
奥との相性が悪いなら
側室を持つようにと
しゅうとめ様が申された。
殿は…。
嫌じゃ。
鶴松を もうけたではないか。
側室など いらぬ。
しかし… これも お家のためなれば。
嫌じゃ~!
嫌じゃ! 嫌じゃ 嫌じゃ 嫌じゃ…!
もう… 我慢できぬ!
殿…?
(濠)その時 初めて打ち明けられた。
幼い頃より
己の体を牢獄のように思ってきたと。
牢獄…。
その苦しみを忘れられたのは
斎之介と過ごす
ひとときのみであったと…。
犀… 会いたかった。
私も 会いとうございました。
おいとまを出され
切腹するは たやすけれど…。
お前は 私を残して
死ぬような男ではないと信じていた。
殿…。
しかし もうすぐ私は死ぬ。
死ねば この牢獄から
やっと解き放たれる…。
鳥になれる。
私も 病を得ました。
共に 鳥になれまする。
だから 犀香さんは
おいとまを出されたあと
自分で自分に牢獄を課したんですね。
お殿様の とらわれの思いだけでも
一緒に背負いたいから…。
2人の思いは本物じゃの。
奥方様の思いも また。
わらわ…?
奥方様は お殿様のお世話を
全て ご自分でなさった。
悋気持ちを装って ご側室の話を潰し
色目を使った茶坊主を斬り殺した。
何度 言わせる。
坊主は追い出しただけじゃ。
悪い噂を 全て一人で引き受けて
誰にも つらさを打ち明けず
お殿様を守り続けてこられました。
つれえな…。
お家のために お子まで もうけて
けど 亭主の心は
いつまでたっても 昔のお小姓に。
あ… ちょっと はばかりを。
えっ?
はあ?
だってよ… みんな 切ねえじゃねえか。
何がじゃ?
あ いえ お気になさらず。
(濠)わらわに 哀れみをかけるのは
間違いじゃ。
殿と わらわは 今
姉妹のような絆で結ばれておる。
それもまた めおとの形じゃ。
もし わらわが男なら
あやつと刺し違えることも
できようものを。
家督を狙う 弟の直次様のことですか?
そのようなことまで…。
お子があるのに
刺し違えるなんて いけません!
きっと ほかに
何か手だてがあるはずです。
鉄砲洲の中屋敷が手薄になる時ゃ
ございやせんか?
来月2日 先代の殿の法要がある。
それが何か?
小瓢… ありがとう。
これでもう 思い残すことはない。
何 言ってんだ! これで よくなる!
元気になりゃ あの奥方なら きっと
いつだって屋敷に入れてくれるさ。
♬~
そういや お縫坊
さっき 奥方に何て言ったんだ?
私たちの千七長屋は
善人長屋で通っちゃいますが
長屋のみんなは 裏稼業持ちの悪党ばかり。
お力になれるかも。
やぼね 文さん。 女同士のないしょごとよ。
ふん!
<先代のお殿様の法要の日
苅田家の中屋敷から
数千両の小判が消えた>
<盗賊にネタを売ってくれた
半造おじさんは
裏界わいで名をあげた。
お殿様の弟の苅田直次は
裏金の罪を問われ
国元で蟄居となった。
それから程なく 犀香さんは
文さんに見守られて 息を引き取った。
お殿様も 同じ頃 旅立たれた>
(鶴松)母上!
<9歳の鶴松君が家督を継いだのは
木犀が甘やかに香る頃…>
<全ては世間に一切出ない
裏の話でございます>
お縫さんのお姉さん!
こんな汚いお金
受け取るとでも思ったかい!
8年ぶりだってのに…。
お貸ししたのは 5両のはず。
からくりがあるなら 必ず暴いてみせるよ。
抱けば分かる。
うちの娘に ひどいことをした女狐です。
こっちの腹が おさまりませんよ!
怖えよ…。
もういいの そんなこと。