【BS時代劇】善人長屋(6)「雁金貸し」[解][字]…のネタバレ解析まとめ

出典:EPGの番組情報

【BS時代劇】善人長屋(6)「雁金貸し」[解][字]

お縫には、悪党の親を嫌って出て行った姉がいる。その姉が、証文のトリックを使う詐欺師に騙されたことをきっかけに、お縫は8年ぶりに姉と再会することになるのだが…。

詳細情報
番組内容
お縫(中田青渚)には、裏稼業持ちの親を嫌って出て行ったきりの姉・お佳代(桜庭ななみ)がいる。そのお佳代が金を騙し取られたという知らせが入り、お縫は渋々ながらも8年ぶりに姉に会いに行くが、案の定追い返されてしまう。一方、お佳代を騙したのはお重(佐藤江梨子)という女の金貸しで、証文のトリックを使うことが分かる。贋作作りを裏稼業とする色男の新九郎(上地雄輔)が、証文の謎を解き明かそうとお重に近づく。
出演者
【出演】中田青渚,溝端淳平,高島礼子,吉田鋼太郎,上地雄輔,溝口琢矢,蕨野友也,佐藤江梨子,桜庭ななみ,加治将樹,柳沢慎吾
原作・脚本
【原作】西條奈加,【脚本】森下直
音楽
【音楽】住友紀人

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

テキストマイニング結果

ワードクラウド

キーワード出現数ベスト20

  1. 証文
  2. 加助
  3. 長屋
  4. 新九郎様
  5. 雁金貸
  6. ガマ
  7. 悪党
  8. 新九郎
  9. 半造
  10. お佳代
  11. お重
  12. お縫
  13. 佳代姉
  14. 儀右衛門
  15. 次吉
  16. 佳代
  17. 今日
  18. 女狐
  19. お俊
  20. お金

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

   ごあんない

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気の配信サービスで見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

全て無料!民放各局の動画視聴ができるTVer(ティーバー)!まずはココから → 民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

他にも、無料お試し期間のある配信サービスがありますので、以下バナーなどからラインナップを調べてみるのもいいかもしれませんね。



♬~

(加助)あっ お縫さん?

アハッ!
(お縫)あっ 加助さん!

どうして こんな所に?

今朝 深川の八幡様で迷子を拾ってね。

その子の家が この先で
今 送り届けたところさ。 そうなんだ。

まだ4つの女の子でね。

こないだ お店奉公に出された
お姉ちゃん会いたさに

一人で てくてく 深川まで…!

いじらしいじゃねえか。

姉妹ってのは 仲良しで いいもんだ。

気が合わない姉妹だっているよ。

へ?

加助さん!

ちょちょちょ…。

この長屋に
左官の次吉さんって人が住んでるの。

ちょっと のぞいて
姉さんがいるかどうか聞いてもらえない?

姉さん?

8年前に次吉さんちに嫁いだ

私の姉さんよ。

お縫さんのお姉さん!

そりゃあ 気合い入れて挨拶しねえとな。

駄目 駄目 駄目!

もし 姉さんがいなかったら
次吉さんに お届け物があるの。

でも もし 姉さんがいたら…

このまま帰る。

ん? いなかったら訪ねて
いたら訪ねない?

何で?
お願い!

<世間様から
善人長屋と呼ばれちゃいますが

うちの店子は そろいもそろって

裏稼業持ちの悪党ばかり>

<差配の一家は
盗品を売りさばく系図買い屋>

<そんな悪党どもが
一人の善人に
かき回されて

人助けを
するはめになる

不思議な物語でございます>

お久しぶりです 次吉義兄さん。
足の具合は いかがですか?

なかなか 痛みが引かなくてね。

お縫ちゃん こんなとこまで
わざわざ すまなかったな。

よしてくださいよ 義兄さん。

これ お父っつぁんから預かってきた
お金です。

かっちけねえ!

次吉さん その足は どうなさったんで?

アハハッ 去年 普請場で
屋根から落っこっちまってね。

そりゃ大変だ…。 ん?

去年って… 何で もっと早く
千鳥屋さんに知らせなかったんでやすか?

お佳代のやつが
実家にだけは知らせてくれるなと。

そりゃ また どうして?
加助さん。

(次吉)いや あっしも
なぜかは分からねえんで。

この2両は 俺の膏薬代に
金貸しから借りた金で…。

ああ 畜生! やっぱ 合点がいかねえや!

次吉義兄さん 何かあったんですか?

よけりゃ お話しくださいやし。

及ばずながら 力になりやす!

アハハハ…。

お佳代が金を借りた相手ってのが
お侍の後家で

お重っていう金貸しで

何事も用心深え お佳代だが
この人なら信用できると

3両 借りたそうだ。

年季貸しで 額は3両。
利息は2分。

利息分は あらかじめ引いてあります。

証文は 同じものを
2枚作っておきました。

お確かめの上 お名前を。

さすが。
お武家ゆかりの証文は風流ですね。

どうぞ。

では 証文を 1枚 お持ちください。
はい。

1年後 必ず3両を お返しに上がります。

それから とつきがたった。

なんとか 3両 工面ができて
期限まで まだ ふたつきあったが

お佳代は 早速 お重のところに
3両 返しに行ったんだ。

(お重)まあまあ お佳代さん。

期限まで まだ ふたつきもあるのに。

性分なもので。
お重さん。

お借りした お金です。
どうぞ お確かめを。

3両?

そちらの証文を見せてもらえますか?

お佳代さん お貸ししたのは

3両じゃなく 5両のはず。
は?

ここに 5両と書いてあります。

けど… 借りたのは 確かに3両でした。

5両です。
あと2両 足りません。

3両が… 5両に化けた?

証文を すり替えられたとか…?

それはねえ。
用心深え お佳代は

証文と金を渡してから 突っ返されるまで
一度も目を離さなかったそうだ。

[ 心の声 ] 私の勘が騒いでる。

これは きっと
とんでもない悪党の手口…。

次吉義兄さん
その証文 見せてもらえませんか?

ああ。 んっ!

(次吉)これだ。

はあ~ 本当に風流な証文だ。

この証文 少しお借りしてもいいですか?

そりゃあ 構わねえけど。

姉さんには ないしょでお願いします。

どうして 姉さんには ないしょなんだい?

いいのよ もう。
お預かりします。

≪(お佳代)ただいま。

お久しぶりです お佳代姉さん…。

こちらが! お初にお目にかかりやす。

あっしは 善人長屋の加助と申し…。
(お佳代)お縫。

何しに ここに来た?

お佳代。

お縫ちゃん
こいつを届けに来てくれたんだよ。

余計なことをするな! 出てけ!

こんな汚いお金
私が受け取るとでも思ったかい!

悪党長屋に さっさと お帰り!

大丈夫かい お縫さん!

お佳代姉さん あんまりだ!

何だって こんな ひどい仕打ちを。

悪く思わないで。

姉さんは 千鳥屋の稼業を…

質屋を嫌ってるから。

けど 悪党長屋は言い過ぎだ。

千七長屋は善人長屋で通ってる
気持ちのいい人たちばっかりだってのに。

加助さん。

姉さんが言ったことは お父っつぁんや
おっ母さんには黙っててね。

何でだい?

聞いたら 悲しむから…。

これが お佳代姉さんから預かった
証文です。

でね お父っつぁんと
おっ母さんの気持ちは

ありがたく頂戴するけど

2両は 自分で なんとかするって。

でも その… 本当に ありがとうって。

これは…

帰りに転んじまって。

(お俊)あ… お縫 来て。

(儀右衛門)どんな手妻だ… 畜生め。

♬~

痕が残らないといいけど…。

♬~

<お佳代姉さんは お父っつぁんが
裏で系図買いをしていることを

14歳になるまで知らずに育った>

<そのことに気付いた時 親ばかりか

懐いていた長屋のみんなまで
裏稼業持ちの悪党だと分かった>

お姉ちゃん どうしたの?

来るな!

♬~

私は悪党じゃない…。

悪党なんかじゃない!

<私が大好きだった姉さんは
すっかり変わってしまった。

身内だけでなく 長屋のみんなに
冷たく当たるようになった>

(儀右衛門)いいかげんにしねえか!
(たたく音)

俺のことは いくら腐しても構わねえ。

けどな お縫やお俊 それに店子のみんなを
おとしめるような物言いはするな!

こんな家に生まれなきゃよかった。

<それから間もなく

姉さんは 町内のご隠居が持ち込んだ
縁談に飛びついた>

♬~

お縫も早く 嫁に出な。

こんな薄汚い家…

いつまでも長居するもんじゃない。

<お佳代姉さんと違って
私は物心付いた時には もう

親と長屋の正体に気付いていた。

姉さんの場合は

みんなに裏切られたような気持ちに
なったのかもしれない。

けど…>

けど… けどね…

いくら何でも 嫁入りの日に
あんな捨て台詞 ひどすぎる!

今日だって
私に当たるのは お門違いよ!

お縫坊 大根が ヒリヒリ痛えってさ。

痛いのは私よ!

あの人 正しいのは自分だけって顔して
正義の大鎌を いつも振り回してる。

ええ そう。 正しいことはご立派で
悪党は立派じゃない。

けど 姉さんは 優しさ知らずよ。

たとえ どんだけ正しくても

優しさなら 長屋のみんなの方が

何倍も 何倍も 何倍も 何倍も
上なんだから!

うん。

8年ぶりだってのに あんなの…。

ちちんぷいぷい 御代の御宝。

ほら 痛くねえ。

子供扱いしないで。
ヘヘッ。

ほら 食え。

♬~

(儀右衛門)確かに
金5両となっておりやすね。

(半造)へい。
(2人)う~ん…。

(新九郎)待たせたな。
あっ これは これは。

(新九郎)あいびき相手が
なかなか離してくれんでの。

遅れて すまなかった。
ハハハハハ。

新九郎様にお話ししたら
二つ返事で受けてくださいました。

ああ~!

新九郎様 半造さんも

この度は 身内のことで ご足労かけて
面目ないことです。

あっ いえ。
どうぞ どうぞ どうぞ。 半造さんも。

差配殿の身内は 我らが身内だ。
(半造)そのとおりで。

新九郎様 これが 例の証文で。

お俊から あらましは聞いた。

「蛇の道は蛇」だ。
この証文に からくりがあるなら

よろず贋作承る この梶 新九郎が
必ず暴いてみせるよ。

(半造)さすが 新九郎様。
心強いお言葉で。

お縫は?
早く寝ちまいました。

今日は疲れたみたいで。
で 新九郎様 いかがでございましょうか?

あ~…。

紙は美濃の紙だろう。

そこそこの紙屋なら そろえのある
一枚30文ほどのもの。

はあ~ さすがの さすがだ。

で 3両が5両に化けた
その からくりは?

いや そこまでは まだ分からん。

差配殿 これを預かってもよいか?
よろしくお願いいたしやす。

で 半造さん 金貸しの方は どうだ?

へい。 金貸しの名は 沢渡 重。

お納戸組の お武家の側女だったが

5年前に
亭主を病で亡くしておりやしてね。

後家か。
そのあとは

亭主の上役の妾になったんだが
この男 還暦過ぎで

女盛りにゃ ちっと物足りねえようで。

間男がいるのかい。

長もちはしねえが 噂は絶えねえようで。

3年前から お上黙認の金貸し
いわゆる 後家貸しを始めやした。

でも 金を貸すのは なぜか冬のみで。
冬のみ…?

しかも 年季貸し一本。

貸した金を 客が返すのも 1年後の冬。

それを 雁の冬渡りになぞらえて

雁金貸しのお重って
風流な名で通っておりやす。

雁金貸しのお重。

証文の額が勝手に化けたってのは
お佳代坊だけじゃねえようで。

けど 化ける額は
ぎりぎりに おさえてやがるようで。

だから こんな大騒ぎ
なっておりやせん。

なるほど。 一つ一つは小口だが
合わせれば大金が稼げる。

狡猾な女だぜ。

女じゃない。 女狐さ。

けど せんだって
とうとう死人が出たようで。

えっ?
(半造)病の亭主の薬代にと

お重に金を借りた 若女房でやす。

借金から1年後 返済に行った目の前で

証文の額が ドロン 増えちまった。

その時
何かが プツンと切れたんでしょう。

若女房は その足で 大川に身投げを…。

(半造)雁金貸しのお重は 人殺しでやす。

♬~

(猫の鳴き声)

ハッ 何だ お前か。

おいで。

(鳴き声)

お前は死んじゃ嫌よ。

いつまでも 私と一緒にね。
よいしょ。

(鳴き声)
ん~。

(次吉)お佳代。

あの長屋の手は 死んでも借りないよ。

そうじゃなくて。
お縫ちゃんに わびを入れろ。

たった一人の妹に
今日の仕打ちは ありゃねえぜ。

♬~

こんな汚いお金
私が受け取るとでも思ったかい!

悪党長屋に さっさと お帰り!

♬~

(鶏の鳴き声)
ささ! さ! さ! さ! ささささ!

ガマだよ? ガマの油だよ?

本当に よしてよ! 蛙は苦手で!
嫌~!

(戸が開く音)
新九郎様!

おお お縫 どうした?
助けてください!

おはようございやす。
おう。

さあ お縫さん 額の傷に ガマの油を。

嫌!

すまんが加助 ガマの油は後にして
墨を買ってきてくれぬか?

へい! 合点で!

その前に ガマの油。

ガマの油は後にして
墨を買ってきてくれぬか?

へい。

もう一度 お重の証文を よく見てごらん。
はい。

(新九郎)何か気付いたことはないか?

ありません。

これは お重の証文と同じ類いの紙だ。

模様は春だが よく見てごらん。

とっても きれいな紙。

さて ここからが お立ち会い。

まずは ここに 「参」と書いてみる。

この周りを 水でぬらして…。

それから これだ。

すごい… まるで気付かなかった。

模様の下に 違う字を書いておいて
模様を 糊で貼り付けた。

そのとおり。
しかし からくりの残り半分が分からぬ。

お佳代姉さんが見ている前で

どうやって 一瞬で糊を剥がせたのか…
ですね。

(新九郎)そうだ。
こんなもの 使えるはずもない。

手がかりは 冬にしか金を貸さぬ
やり口かもしれぬ…。

雁金貸しか…。

かなり 腫れは引いておるようだが

念のため ガマの油は塗ってもらえ。

ガマは嫌!

(雨音)

ああっ! あっ!

ああっ!

どうされた?

これを。
あ…。

下駄か。

おつかまりなされ。

♬~

足を。

♬~

5年前に夫を亡くし

この先 どうやって生きていこうかと
心細く…。

後家貸しを営んでおりますのも
女が一人で生きていくためのすべ…。

あっ。
どうぞ 蔑まないでくださいましね。

蔑むものか。

嘘。 蔑んでおられます。

今日 初めて会ったお人と このような…。

きっと 蔑んでおられます。

かわいい人だ。

いいえ 憎まれております。

誰に?
みんなに。

そのせいで 死んだ人も…。

あれっぽっちのお金で
まさか死ぬなんて…。

このごろは そのことばかり考えて…
心の底が しんとなる。

特に 夜は しんと…。

そのような夜は

また雨が降ってくれるとよいな。
え?

さすれば また あなたに会える。

お名を。

梶 新九郎。
あなたの名は?

沢渡 重…。

新九郎様! フフフッ!

(新九郎)
これは お重の家から拝借してきた紙だ。

そして これは この紙を使って
俺が書いた証文。

額は お佳代殿の時と同じ
3両としてある。

差配殿 確かめてくれ。
あ へい。

いえ あっ いや…
特に細工は何もねえようですが。

それでは 種明かしをしよう。

差配殿 そちらを よろしく。
ああ~。

返済の折 雁金貸しのお重は
ここに座った。

お俊 お佳代殿の代わりを頼む。

この手拭いを 小判に見立てて

返済してくれ。
承知いたしました。

ご一同 片ときも目を離してはならんぞ。

へい。
はい。

では 頼む。

お借りしました お金です。
どうぞ お確かめを。 うん。

3両!?

そちらの証文を
いま一度 見せてくれぬか?

♬~

やはり お貸ししたのは
3両ではなく5両のはず。

えっ?

ここに 5両と書いてある。

あっ!
えっ!?

化けた!
こいつぁ 一体…。

新九郎様 一体 どうやったんで?

仕掛けは お重の家から拝借してきた

この糊だ。
糊?

この糊を 昨夜 帰って調べたところ

蝋が混ぜてあった。
蝋?

いよいよ 種明かしをしよう。

証文を 火鉢越しに受け取り

さりげなく 証文を火鉢に近づける。

さすれば 火鉢の熱で
蝋が溶け 模様が剥がれ

膝の上に滑り落ちる。

(新九郎)
火鉢を使う冬にしか使えぬ からくりだ。

雁金貸しと呼ばれる ゆえんだな。

なんてこった…
なんて女狐の悪知恵だ!

恩に着ます 新九郎様!

お父っつぁん どうしてやる?

女狐を囲っている 上役のおじいさんに

この悪行と 男出入りの一切合財を
投げ文してやればいい。

体面大事のお侍なら きっと女狐を見限る。

いや うまくいけば成敗だ。
お俊 怖えよ…。

お俊。 お重を
あまり追い詰めるのは かわいそうだ。

かわいそうだって?

あの… こう言っちゃなんですが

紙と糊を くすねといて どの口が…。

確かにの。 ただ お重は

心根は ただ寂しいだけの女に思えた。

内心は 己の悪事に おびえておるような。

抱けば分かる。

(お俊)お言葉ですが 新九郎様

うちの娘に ひどいことをした女狐です。

ぎゃふんと言わせてやらないと
こっちの腹が おさまりませんよ!

まあまあ お俊。 落ち着け。

え~…。 ん~…。

あっ!

♬~

そいつはいいや。

身投げした若女房の供養にもなりやす。

まあ そうだね…。
で いつ やるんだい?

雨の降る夜は… 戸締まりも緩かろう。

きっと いらっしゃらない…。

(雷鳴)

≪(雷鳴)

♬~

恨めしや… 雁金貸し…。

嫌~っ!

大川の水は… 冷たいね…。

ひっ! ごめんなさい!

あの証文は 私が細工をいたしました!

もう二度と いたしません!

お許しを! お許しを~!

あ~…。

♬~

南無阿弥陀仏! 南無阿弥陀仏!

南無阿弥陀仏!

(泣き声)

♬~

<その夜 雁金貸しのお重は
本所松倉町から姿を消した>

恐ろしや~!

お縫さん。

加助さん どうしたの?
また迷子でも拾った?

いや ちっと やぼ用で…。

お縫さんこそ どうして ここに?

うん 何となく…。

お花長屋は この近くだ。

姉さんのところに寄ってくかい?

ハハ… 怖いこと言わないでよ。

こいつは 俺が返しに行ってくる。

駄目だよ。 お前さんが行ったら
必ず こじれちまう。

女狐の夜逃げは
私らが裏で何かやったって

お佳代なら 察しがつくはずだ。

そんなところに のこのこ顔出したら
飛んで火に入る何とかになっちまう。

(儀右衛門)けどよ…。
あの子の身内嫌いは筋金入りだ。

これは 私が返してくるよ。

よせ よせ!
そんなことしたら

お互いに 剣突食らわせ合って
それこそ 正真正銘 金輪際

取り返しのつかねえことになっちまうよ。

分かった! 私が返してくる!

(2人)えっ?

あ… でも やっぱり…。

よし じゃあ これは お縫に頼もう。

そうだね。
あっ あっ お願いします。

う~ん…。

ん?

(儀右衛門)いらっしゃいませ。

あっ! お佳代。
お佳代。

(儀右衛門)何だ お前 来たのか。

達者だったかい?

お縫…。

(儀右衛門)あっ!

お縫 お縫!
お前さん!

けどよ… せっかく ああやって お佳代が。

欲張っちゃいけないよ。

今は これで…。

十分だ。

(泣き声)

そうだな。

♬~

あの… 私…

消えた雁金貸しの家を見て思ったの。

善人だろうが 悪人だろうが

私には 力になってくれる
お父っつぁんや おっ母さん

長屋のみんながいる。

でも お佳代姉さんは この8年

誰の力も借りずに頑張ってきたんだって。
すごいなって。

私が今日
8年ぶりに千鳥屋に行ったのは

あんたの長屋の加助さんのせいだ。
加助さん?

とんでもない おせっかい焼きだよ。

あんたと私の仲を取り持ちたいって

毎日毎日 うちの長屋に顔出して…

ごはん作ったり 掃除したり

もう しつこいったら ありゃしない。

こんちは! 加助でやす!

追っ払っても 追っ払っても 来るんだよ。

あの人 あんたたちの裏の顔を
知らないんだね。

そのせいで うちの長屋も大変なの。

うちの人とも
すっかり仲良くなっちまって。

せめて居心地悪くしてやろうと
意地悪 重ねるうちに

何だか私の方が
情け知らずの悪党に思えてきて…

腹立たしいったら ありゃしない。

分かる! 善人って始末に負えないわ。

そしたら 後家貸しが消えた。

いいんだ。 借金は3両。

その3両は
ちゃんと返してるんだから。

そうね。

傷… よくなったみたいだね。

けがさせちまって 悪かった。

狙って投げたわけじゃないんだ。

ごめん。

姉さん…。

もういいの そんなこと。

よかないよ。

あんたたちに助けてほしいと
こっちが頼んだわけじゃない。

系図買い屋の親を許したわけでも
悪党長屋に恐れ入ったわけでもない。

今日だって
千鳥屋の敷居は またいでない。

あんたが勝手に持っていった証文を
取り返しに行っただけだ。

分かってるわ そんなこと。

姉さんは いつだって
悪党嫌いの正しい人だもんね。

ああ そうさ。

証文を お返し。 お縫。

はい お佳代姉さん。

<その時見た 姉さんの背中は

久しぶりに見る
私の優しい お佳代姉さんだった>

お多津…。
お前の亭主の加助だよ~!

堅気じゃないって…?

この世には 知らなくていいことが
たくさんある。

寂しかったな。

長屋の連中 皆殺しだ。

この命 張ってみる。
度胸がいいのも大概にしろ!

加助さんなら そのからくり錠…
開けられる?