松本清張ドラマ「けものみち」(1)料亭・芳扇閣の仲居・成沢民子(名取裕子)は、半身不随になった元暴力団の夫・寛次…

出典:EPGの番組情報

松本清張ドラマ「けものみち」(1)[字][再]

1982年放送松本清張原作ドラマのデジタルリマスター版。全3回。民子(名取裕子)の流転の人生を通して、政財界の裏にうごめく「けもの」のような人間たちを描く。

詳細情報
番組内容
料亭・芳扇閣の仲居・成沢民子(名取裕子)は、半身不随になった元暴力団の夫・寛次(石橋蓮司)との生活に疲れ果てていた。民子は料亭の客でホテル支配人・小滝(山崎努)と親密になり、彼の指図で自宅に放火し夫を殺害する。この事件を不審に思った久恒刑事(伊東四朗)は、聞き込みに奔走。民子は小滝に言われるままに久恒の追及を逃れ、政財界の黒幕として君臨する鬼頭浩太(西村晃)の世話係として、屋敷に住み込み始める。
出演者
【出演】名取裕子,伊東四朗,加賀まりこ,石橋蓮司,永井智雄,高森和子,林昭夫,西村晃,山崎努
原作・脚本
【原作】松本清張,【脚本】ジェームス三木

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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♬~

(雨音)

(成沢寛次)民子 こっちだ。

(成沢民子)どうしたのよ?

銭が要るんだよ。
2~3万 都合してくれ。

冗談じゃないわよ。
できる訳ないでしょ。

東京に居られなくなったから
しばらく 姿 消すからな。

あんた 何やったの?
言ってる暇ねえんだよ。

いくらでもいいから都合してこい。
無理だってば!

俺の言う事 聞けねえのかよ。
えっ この野郎!

寛次か?

うわあっ! あ~っ!

うわあ! あ~っ!

あ~っ! あんた~っ!

あんた~っ! あんた~っ!

♬~(テーマ音楽)

♬~

(女将)もしもし はい 私です。
お酒を? とんでもございません。

すぐ お持ちします。

(仲居)白妙? そうです。
あそこのマージャン すごかったのよ。

何十万ってお金が
動いてたみたい。 へえ。

一体 どんな人達なのかしらね?

≪ごめんください。

あ。
(小滝章二郎)君か。

お酒 お持ちしました。
ありがとう。

おつまみは こんなもんで
よろしいでしょうか?

結構だ。 こんな時間に
気ままな事は言えない。

どうぞ。

君も 眠いんじゃないのか?
いえ 住み込みですから。

民子さんと言ったかな?
覚えててくだすったんですか?

何となく興味があるんでね。
その若さで 美人の君が

どうして こんな所に
勤めてるのか…。

ここは 長くいるの?
1年足らずです。

収入は どれぐらい?
参考のために聞いてるんだ。

実は 僕も
同じような商売なんでね。

同じような商売?

どうだ 君も どうだ。 飲まんか?
いえ 仕事中ですから。

忙しいの?
今は ここだけですけど。

そうだろうな。
午前3時まで起きていて

いろいろ注文する やっかいな客は
他にはいないだろう。

にもかかわらず 君は機嫌よく…
いや 機嫌がいいはずはないが

それを顔に出さない。
実に感じがいい。

ああ ママさんかい? しばらく
民子さん 借りてもいいかな?

ああ 目がさえて
眠れそうにないんでね。

かまわんだろ。
どうもありがとう。

私 前から お客さんの事が
好きだったんです。

一目 見た時から…。

僕もだよ。

でも ママさんのいい人だと
ばっかり…。

それは誤解だな。

誰にも… 誰にも言わないで!

「住み込み」だと言ったね。
家族は いないのか?

いません。

結婚した事は あるんだろ?

ママに聞いたよ。

離婚したの?

どうして
身元調査をなさるんです?

あんまりにも 君の体がね。
君の事は何もかも知りたくなった。

本当に 係累がないのか?
そうです。

主人は おととし亡くなりました。

こんちは!

ただいま。

(せき)お帰りなさい。

変わった事ない?
別に。

これ お給料と支払い分。
どうも。

(電車の通過音)

あんた 遅くなって
ごめんなさい。

(寛次)色つやがいいな。 え?

うまい物ばっかり
食ってるからだろ。

そんな事ないわよ。
仲居の食べ物は 哀れなもんよ。

ウソつけ。 旅館の仲居は
板前と できあってたら

いくらでも うまい物
食えるじゃないか。

バカ言わないでよ。

亭主が寝たきりなのをいい事に
勝手な真似ばっかりしやがって。

俺には
ちゃんと見えるんだからな。

電波が 脳に映るんだから!
また 始まった…。

お前の手には いろんな男の脂が
染み込んでるんだ。

いくら ごまかしたって
だめだ!

おせきさんが やきもち焼くわよ。
何!

たまに 帰って来たんだから
いいかげんに 機嫌よくしてよ。

私だって やりきれないわ。
やりきれないのは こっちだよ。

女房が淫売した金で
養ってもらってんだから。

ひどい事 言うのね。
淫売でもしなきゃ

俺に おせきをつけるだけの金が
できる訳ねえじゃねえか!

何べん言ったら分かるのよ。
あそこは 客筋がいいから

お給料の何倍も
チップが もらえるのよ!

何もしないで
チップが もらえるのか?

ここへ入れ。
何 言ってんのよ。 昼間っから。

昨日の客は どんな客だった?
若い子か 年寄りか?

太ってんのか やせてんのか?
どんな抱かれ方したんだ?

初めから しまいまで やってみろ。
いいかげんにしてよ!

民子 これを見ろ!

なんて格好してんのよ。

俺は これほど
お前の事を思ってんだぞ。

こうやって
お前の物を身につけてると

お前と俺が1つになったような
気がするんだよ。

お前が 他の男に抱かれてんのが
想像できるんだよ。 民子 民子…。

嫌!
お前は 俺の女房だろ!

おせきさんが 来るわよ!

来たっていいよ!
見せてやりゃいい。

やめてよ! よしてよ 嫌らしい!

俺から逃げんのか 民子!
よしなさいってば!

民子! 俺が動けないと思って!

どこに逃げたって
ちゃんと分かるんだから!

俺には電波が脳に映るんだからな。
民子… 民子… 民子!

(電車の通過音)

お呼びですか?
小滝さんが お待ちかねよ。

小滝さん?
この間 白妙に見えた
お客様ですよ。

あんたと
話したいんだって。

あの… あの方は どういう…。

ホテルの支配人よ。 あんたも
いい人に 見込まれたものね。

≪ごめんください。
どうぞ。

君は ウソをついたね。
ご主人が いるそうじゃないか。

申し訳ありません。

そんなに
恐縮しなくたっていい。

こういう所に勤めてれば 誰だって
本当の事は言わないもんだ。

お調べになったんですか?

君の事は 何もかも知りたいって
言ったろう?

でも… どうして?

君を幸せにしたいからだ。

何だか 小説の台詞みたいですね。

まじめな話だ。 君には
それだけの値打ちがあるんだ。

いいかね。
僕は 無駄な事は言いたくない。

君は 僕に 何もかも知られた。

僕から見れば 君の事は
すべて知った上での交渉だ。

どうだろう 君の将来を
僕に預けてみる気はないかね?

「預ける」というのは?

今は はっきり言えない。
僕を 信じてもらうしかない。

そんな… 私は ごく つまらない
平凡な女ですから…。

こういう言い方は
どうかな?

「行き先の分からない列車に
乗ってみる気はないかね?」。

しばらくは自分が どこに行くのか
見当もつかないだろう。

だが ある地点を過ぎると
君にも 行き先が分かってくる。

すると 今度は 君が その列車を
運転する番かもしれない。

自分の希望どおりの方向にね。

もちろん 金もできるし
面白いように人を裁く事もできる。

とても そんな事は無理です。
まあ 聞きなさい。

君は 自信がないかもしれんが

人間の実力なんて
ほとんど 差がないんだよ。

今 世間で トップレディーなどと
言われてる 女実業家にしたって

それだけの環境と条件を
与えられただけだ。

長屋の女将さんだって
同じ立場を与えられれば

同じ力を発揮するかもしれん。

どうだろう?
…よく考えてみなさい。

この機会を逃したら
君は 永久に チャンスがないんだよ。

♬~

ひとつ
何も聞かずに 割り切って

自分が道具になる覚悟を
してみないか?

あらゆる意味で
自分が 道具になりきるんだ。

♬~

どうすれば その列車の
切符が買えるんですか?

いい質問だ。

列車には 1人で
乗ってもらわなきゃならん。

君の係累は
すべて 断ち切ってほしい。

それは 今までに
何度も考えた事です。

でも面倒が起こるに決まってます。
主人が承知しま…。

それは やってもらうしかない。

幸福行きの列車に乗るには
それが 最低の条件なんだ。

君の手に余るようだったら
いつでも 僕を利用しなさい。

♬~

[ 回想 ]
君の手に余るようだったら
いつでも 僕を利用しなさい。

♬~

(踏切の音)

(電車の通過音)

(燃え上がる炎の音)

♬~

(ビンの割れる音)

着替えなさい。

1時40分か…。

もしもし…
ああ 酒を 2本ばかり頼む。

それから 何か食べる物 ああ…

ここに 民子さんも居るから
2人分だよ… はい。

飲みなさい。

2~3杯 続けて。

何も心配する事はないんだよ。

君は ここで 2時間ばかり 僕と
酒を飲んだんだ。 分かったな?

ああっ! ああ…。

落ち着きなさい。
平気な顔をしてなきゃ だめだ!

口紅がとれてる。
直して。

こっちを向いてごらん。

それでいい。
とっても きれいだ。

♬「初雪に降り込められて 向島」

♬「二人がなかに 置炬燵
酒の機嫌の爪弾きは」

≪(仲居)ごめんください。

♬「好いた同士の 差し向かい
嘘が浮き世か 浮き世が実か」

♬「まこと比べの 胸と胸」

お客さん 帰ったの?
ええ。

あんた 疲れたでしょう?

もてる人は いいわね。

(男)ありがとうございました。

はい はい そうです。
いますよ。 民ちゃ~ん!

もしもし。
☎(男)成沢民子さんですか?

そうです。
☎成沢寛次さんの奥さんですね?

はい。
☎昨夜 お宅が 火事で焼けました。

えっ!
☎大変な事故も起こってます。

大至急 帰ってください!
分かりました。 すぐ帰ります。

火事?

たった今 電話がありまして
すぐ帰るようにって。

こんな忙しい時に
申し訳ありませんけど…。

あんた 大丈夫?
唇が真っ青よ。

♬~

奥さん! こっち こっち。

電話をかけたのは私です。 もっと
早く連絡したかったんですけど。

おせきさんが はっきりした事を
言わないもんだから…。

主人は どこに?
警察です。 えっ?

奥さん
びっくりしちゃいけませんよ。

ご主人は 亡くなったんですよ。

火事と分かった時には
火の手が回っていて

助け出す事が
できなかったんですよ。

あのとおり 不自由な体だし

とうとう…。

♬~

(久恒刑事)
いや どうも ご苦労さんです。

奥さん 警察の方ですよ。

ご主人 えらい事になりましたね。

お留守中で
びっくりしたでしょう。

じいさんが 発見してなかったら
大火事でしょうね。

消防の人も あと5分遅かったら
総なめだったって言ってますよ。

お宅では 夜中でも ずっと 七輪に
火を残しておくんですか?

はい 主人は
ずっと寝たきりでしたから

おせきさんが…
手伝いの人なんですけど

あの いつも 七輪に タドンを
おこしてってくれるんです。

そうですか。 どうやら
そのタドンの火が原因らしいですな。

ああっ! はあっ!

(泣き声)

(警察官)火災保険には
入ってないんですね。
はい。

生命保険は?
入ってません。

そいつは 気の毒だなあ。

おせきさんとかいう
手伝いの人がいるね?

あの人は 通いですか?
そうです。

いつから 来てもらってるの?
かれこれ 1年になります。

すると あんたは
旅館に住み込んでる訳だから

昼間は ご主人と おせきさんの
2人っきりという事になるね。

はい。 おせきさんが 何か
恨みを持つような あれはないの?

はっきり言って 男女関係とか…。

それは無いと思います。

おせきさんは 無口ですけど
親切な いい人ですから…。

親身になって
病人の世話してくれてました。

あの人がいたから 私は
安心して 働く事ができたんです。

うん…。
七輪の件なんですがね。 うん。

どうも おせきさんの言う事が
あやふやなんですよ。

障子のそばに
置いた覚えはないとか

あるいは 置いたかもしれんとか。

あの女は
少し ここが遅れてるからね。

やはり 失火でしょうか?

そうだなあ 断定はできんが
放火とは考えにくいな。

いや どうも 悲しみの最中
申し訳ありませんでした。

また 来てもらう事が
あるかもしれませんが 今日は…。

(読経)

(久恒)やあ。

葬式 済んだの?
はい。

うん。 消防署の方は
どうなった?

これから行くつもりです。
その方がいいな。

なるべく 早く手続きをして
始末書でも何でも書いた方がいい。

要するに 心証を良くする事だよ。
罰金 取られるんでしょうか?

ああ 取られるだろうね。
失火だから。

大した金額じゃないから
黙って払いなさい。

値切ったり 弁解したりすると
かえって 面倒な事になる。

分かりました。
何かあったら 僕に電話しなさい。

久恒と言えば 分かるはずだ。
ありがとうございます。

ところで… あんたの ご主人は
桜一家の構成員だったな?

傷害で1回 「ヤク」の密売で
2回の逮捕歴がある。

最後は 仲間に「ドス」で刺されて
脊椎を損傷し

ああいう体になった。

申し訳ありません。 別に
隠すつもりはなかったんですけど。

こういう事を言っちゃ 何だが

あんた
ホッとしてるんじゃないの?

働きのない 寝たきりの亭主から
解放されたんだからね。

でも あんな死に方されると
やっぱり かわいそうで…

もう少し よくしてやれば
よかったと思ってます。

そりゃ そうでしょう。
夫婦だからね。

しかし 不思議だな。

あんたほどの人が
どうして 暴力団員なんかと。

私が バカだったんです。
甘い言葉で言い寄られて つい…。

二十歳そこそこの
世間知らずでしたから。

あんた これから どうすんの?
消防署へ。

いや そうじゃなくて
住む所とか 働く所とか。

当分 芳扇閣で
辛抱するしかないと思ってます。

しかし なんだな…。

休みの日にも
帰る所がないってのは

寂しいもんだろうね? ねえ。

あんたも 大変だったわねえ。

すみません。
1人もんだって ウソついていて。

ハハハ…
私が知らないと思ってたの?

とっくの昔に 感づいてましたよ。

警察でも 嫌みを言われました。

勤め先には 家庭の事情を隠し
近所には 勤め先を隠す。

そんなのは普通じゃない。
いざという時 皆が迷惑するって。

でも… これで
さっぱりしたじゃないの。

何もかも
焼けてしまったって事は

これから
大きな運が回ってくるって事よ。

そうでしょ? 小滝さんから
言づてが ありましたよ。

「後始末が済んだら
ホテルへ来るように」って。

♬~

小滝さん!

コーヒーでも飲むかね?
いえ 何もいりません。

ゆっくりしていいんだよ。
君の部屋は 用意してあるんだ。

それから 芳扇閣の方は
心配せんでいい。

ママに ちゃんと
話はつけてある。

私 ちっとも知りませんでした。

小滝さんが ニューロイヤルホテルの
支配人さんだなんて。

そう 僕は 君に
正体を見せてしまった。

だから おかしな真似は
できない訳だ。

私は 旅館の仲居なんですよ。
その事は 忘れなさい。

は?
過去は すべて忘れるんだ。

誰にも しゃべる必要はない。

君は 今日から
まったく別の女として

白紙から スタートするんだよ。

小滝さんは 私を
どうなさるつもりですか?

それは 今に分かる。
何だか とっても不安なんです。

どうして? 行き先は
僕に任せると言ったはずだよ。

でも 芳扇閣でお会いした
小滝さんと

ここにいる小滝さんとでは
違う人のような気がして…。

違うと思ってもらった方がいい。

芳扇閣で起きた事は
何もかも忘れてほしい。

何もかもだよ。
そんな!

これは 君のためなんだ。
もちろん 僕のためでもあるがね。

(ノック)
はい。

≪(秘書)警察の方が ご面会です。
警察?

支配人の小滝さんですね?
そうですが。

警視庁の久恒と申します。

いつも お世話になっています。
いやいや。

ちょっと お邪魔して
いいでしょうか? どうぞどうぞ。

あっ では…。
どうぞ。

≪どういう
ご用件でしょうか?

≪(久恒)少し お尋ねしたい事が
ありましてね。

これは 支配人さんのプライベートな
問題なので 大変 恐縮なんですが。

≪分かりました。 何でも
お尋ねくだすって 結構です。

そうですか。
じゃ ちょっと 失礼して。

では 伺います。
支配人さんは 2月2日の夜

千駄ヶ谷の芳扇閣という所に
おいでになりましたか?

割烹旅館の芳扇閣ですね?
はい そうです。

2月2日…
確かに行っております。

夜ですか?
ええ。

12時ごろ行って 2時半ごろまで
飲んでいたと思います。

お1人で?
あの時は 1人でした。

ほう…。

あの家は 静かで落ち着いてますし
夜中まで営業してるんで

便利なんです。 それに
女将を よく知ってますんでね。

ご承知のとおり ここは
外人の客が多うございまして

中には 「純日本式の旅館に
泊まりたい」と言う

観光客もある訳です。

そういう時に
芳扇閣を紹介すると喜ばれます。

いわば
同業者の つきあいですな。

なるほど。 では その日 使った
部屋の名前を

覚えてらっしゃいますか?
さあ そこまでは ちょっと…。

庭に面した
二間続きの いい部屋でしたが。

では 係の女の名前は どうです?
覚えておられますか?

民子さんという人です。

私が酒を飲む時には
いつも 相手をしてくれます。

ずっと 一緒でしたか?

つまり 部屋に入られてから
お帰りになるまで。

そうですね。 酒を運んだり
手洗いに立ったりはしましたが。

その程度でしたか?
はい。

民子さんに何かあったんですか?

実は 家が火事で
丸焼けになりましてね。

体の不自由な亭主が
焼死体で発見されました。

つまり 成沢民子が
支配人さんと酒を飲んでいる

その時刻に 火が出たんです。

ははあ…。 出火の経路としては
消防署の調べで

七輪の火が 障子に燃え移った
という事なんですがね。

どうも 付き添いの女が
「置いた」と言う七輪の位置が

違ってるんですよ。

という事は
付き添いの女が帰ったあとで

誰かが動かしたと
考えられなくもない。

一方 聞き込みの結果 その時間に
成沢民子に よく似た女を

タクシーの運転手が
「現場 近くまで送った」と

そう言ってるんですがね。

妙な話になりましたな。
私が 民子さんと

芳扇閣で 酒を飲んでいたのは
曲げられない事実なんですよ。

ああ そりゃそうでしょうな。

支配人さんは 立派な方ですし
社会的な地位もおありになる。

たとえ 運転手が 民子の顔を見て
「この人だ」と言っても

裁判官は あなたの証言の方に
信用を置くでしょうな。

あなた
何が言いたいんですか? はい?

民子さんが放火した。

そのアリバイ工作を 私がしたとでも
おっしゃりたいんですか?

いやいや
そういう訳じゃないんですよ。

どうか
お気を悪くなさらないでください。

どうも 我々の商売っていうのは
因果なものでござんしてね。

何も 手がかりがないとなると

そこらに浮かんでるワラでも
つかみたくなる訳でして。

残念ながら 私は ワラじゃない。

したがって 自分の証言を
変える訳にはいきません。

そりゃそうです。
いや どうも 失礼しました。

いや どうも お邪魔しました。
はい。

では また。

あ~ 久恒さん。
はい。

つかぬ事を伺いますが
刑事さんというのは

2人1組で 行動するもんじゃ
ありませんか?

ああ そりゃそうです。 普通は
そういう事になってますがね。

たまには 例外もありまして。
ご苦労さまです。

相当 しつこい刑事だな。

私 帰ります。
どこへ?

とにかく ここにいれば
小滝さんに ご迷惑が…。

それは 百も承知だ。
君は僕の言うとおりにすればいい。

そういう約束じゃなかったのか。
座りなさい。

君は 何もかも断ち切って

新しい列車に乗り込むために
ここへ来たはずだ。

「すべてを忘れる」と
言ったばかりじゃないか。

では 私を抱いてくだすった
あの夜の事も?

そうだ 忘れるんだ。
ひどい!

私は 小滝さんが 同じ列車に
乗ってくださるんだとばっかり…。

自殺行為だよ。

君と一緒にいる所を
あの刑事に見られたら

君のアリバイは 崩れてしまうんだよ。

じゃ… じゃ 私は 何のために…。

心配するな。 列車は別々でも
行き着く先は 一緒だよ。

あわてちゃいかん。 おいしい物は
後で ゆっくり食べよう。

今は道具になってくれ。

意思も感情も殺して
ただの道具になりきるんだ。

≪はい。
小滝です。

例の女性です。
(秦野重武)うん。

こちらは 弁護士の秦野先生。
(秦野)かけたまえ。

失礼します。
(秦野)こりゃ 何だ?

(宝石屋)スタールビーでございます。
手前ども自慢の品でございまして。

いくらだ?
さようでございますな。

そのぐらいのものになりますと
どこの宝石屋でも

100万以上いたしますが
お勉強させて頂きます。

いくらかと聞いてるんだよ。

85万で いかがでしょう?
高いな。

先生は いつも
そうおっしゃいますが

私ども 特別 原価に近いお値段を
申し上げてる訳でして。

こんな物を欲しがるバカが
大勢いるから いかんのだよ。

なあ 小滝君。 そうは思わんか?

しかし もらっとけば
何かの役に立つだろう。

60万で どうだ?

先生! そら
殺生でございますよ。

そのかわり いつものとおり
現金払いだ。 三浦。

はい。 払ってやれ。
はい。

いや 参りました。
先生には 歯が立ちませんよ。

髪形を変えた方がいいな。
和服に映るように…。

そう アップがいい。
私も そう思います。

(ノック)
≪僕だ。

よく似合うじゃないか。
ほったらかしにしてすまなかった。

何か 欲しい物
あるかね? 別に何も。

そう。 君は 今から
ここを出発する事になる。

あとは 秦野先生の
言うとおりにするんだ。

小滝さん。
うん?

私は 平気で夫を殺すような
悪い女です。

今日からの運命が
どう変わろうと かまいません。

小滝さんの言うとおり
道具になる覚悟もできてます。

でも 私が こうなったのは
小滝さんが好きだったからです。

それだけは覚えててほしいんです。
よ~く 分かった。

小滝さん!
5~6年の辛抱だよ。

いや 2~3年かもしれない。
その時 君は道具でなくなる。

大きな自由と 大きな力を
持つ事になるんだ。

つまり 私は 秦野先生の
おもちゃに なるんですね?

そうじゃない。 あの人は
道を教えてくれるだけだ。

「道」?

「けものみち」という言葉を
知ってるかね?

いいえ。

山を歩くと
人間が作ったものじゃない

奇妙な道に出くわす事がある。

カモシカとかイノシシが 同じ所を通るんで
自然に出来た小道だ。

それを「けものみち」と言うんだよ。

面白い事に 人間の社会にも
けものみちが あるんだな。

特殊な人間どもが 動物的
本能的に切り開いた 秘密の道だ。

もちろん 普通の人には見えない。

この けものみちは
裏側から 権力につながっている。

金もうけにも つながっている。

そして 民子さん。

あんたは その けものみちを
歩きだしているんだよ。

♬~

分かるかね? 歩きだした以上
もう引き返す事はできない。

♬~

オリンピックまでに
東京は ガラリと変わる。

国立競技場が出来 武道館が出来
高速道路が出来

外国と同じような広い道路が
縦横無尽に張りめぐらされる。

街が変われば 人も変わる。
どんどん 変わっていく。

♬~

(山倉米子)いらっしゃいませ。
やあ。

だいぶ 暖かくなりましたな。
ほんとに…。

庭の方へ回った方がいいでしょ?
お願いいたします。

少し お待ちくださいませ。

こっちへ。

どなたのお屋敷ですか?

昔は ある華族の持ち物だった。

無造作な庭に見えるだろう?
これで なかなか凝ってるんだよ。

こっちを見なさい。
鯉が たくさんいる。

どうしたんだ?

私 誰かに
見られているような気がします。

フッフッフッ… 勘がいいね。

お待たせしました。
どうぞ こちらへ。

じゃ 私は これで。

ただいま
お茶を おいれしますのに。

いやいや 忙しいんですよ。

これから
興業クラブへ回らなくちゃならん。

さようでございますか。
ご苦労さまでございます。

ああ こちらね
米子さんといって

実質上 この家を
取りしきってる人なんだ。

何でも言われたとおりにしなさい。

はい。
じゃ。

突然で 申し訳ないんですが

だんな様に お目にかかる前に
おふろに入って頂きます。

「おふろ」?

お願いいたします。

お上がりになりましたら
これに お召し替えください。

お洋服は
そのままにしておいてください。

こちらで お預かりいたします。

ごめんください。

お連れしました。

どうぞ おそばへ。

♬~

(鬼頭洪太)名前は?

はい 成沢民子と申します。

どこの生まれ?
富山県でございます。

越中女か。
はい。

富山のどこだ?
伏木という所です。

高岡から 海岸に入った所だな?
はい。

年は? 26になります。

嫁に行った事が
あるのか? はい。

こっちへ来い。

手を出せ。

♬~

[ 回想 ] 今は 道具になってくれ。
意思も感情も持たない

ただの道具になりきるんだ。

あんたは けものみちを
歩きだしているんだよ。

歩きだした以上
もう引き返す事はできないんだ。

≪(米子)お済みですか?

だんな様 あなたが
お気に召したそうです。

ず~っと ここに
いてくださいますね?

あの… だんな様は
どういうお方ですか?

それは 今は申し上げられません。
おいおいと 分かるはずです。

私は 何をすればいいんですか?
だんな様の お相手です。

昼間は 大勢 お客様が
お見えになりますから

あなたは 呼ばれない限り

この部屋で
休んでくださって結構です。

夜になると
だんな様 退屈なさいますから

気を紛らわしてあげてください。

ご病気のようですが…。

脳軟化症です。 1年ほど前から
床についておられます。

奥様はおいでにならないんですか。
ずっと前に亡くなられました。

ご家族はありません。

今までは どなたが
お相手してらしたんですか?

さあ 誰でしょうね?

あなたは 選ばれたんですよ
だんな様に…。

何事もなく つとめあげれば

一生 ぜいたくに暮らせるほどの
ものは 頂けるはずです。

今夜から だんな様に
付き添ってくださる民子さんです。

秘書の黒谷さん 書生の村川君
笠松君 お手伝いの みずえさん。

それから この家には
通いの女 2人と

庭番のおじさん
運転手さんがいます。

(テレビの国会中継)

消せ。
はい。

寝かせろ。
はい。

とれ。
はい。

押すんだ… 押せ。

≪(米子)だんな様。
何だ?

≪(米子)高速路面公団の
副総裁様が 玄関にお見えです。

追い返せ。
≪(米子)5分でいいから

お目にかかりたいと
申しておられますが。

会いたくない!
≪(米子)かしこまりました。

♬~

明かりを暗く。
はい。

帯を解け… 着物を脱ぐんだ。

♬~

入れ。

♬~

[ 回想 ]
心配するな。 列車は別々でも
行き着く先は 一緒だよ。

あわてちゃいかん。 おいしい物は
後で ゆっくり食べよう。

今は 道具になってくれ。

意思も感情も殺して
ただの道具になりきるんだ。

わしは
自分が満足しようとは思わん。

お前が喜べば
それで いいんだ。

♬~

お前は上物だ。 打てば響く。
わしの思ったとおりだ。

♬~

(松本清張)
山崎さん どうですか? この前の
「ザ 商社」と比べて 今度は?

「商社」の時には
わりと エネルギッシュな

エネルギーが 前に出てくるような
役だったですけど

今度は わりと
正体不明な感じの男なんで

ちょっと 感じが違うと思います。
そうですか。

名取さん 今度は もう
ずっと出っぱなしのヒロインで…。

はい。 あの 原作を読んだ時にね

女優なら誰でも やってみたいって
思う役だなって…。

自分でも 是非 「やりたい」と
思ったんですけど

実際に やらせて頂いて

本当に 大変でした。 はい。

あの 大人っぽい役は
今度が初めてですか?

そうなんです。 今まで
学生とか先生とかの役が

多かったんですけれども
今回 初めて「女」っていう感じを

出せたかどうか…。
ああ そうですか。

<「けものみち」は 昭和39年の

東京オリンピックの2年ほど前の
出来事を描いております>

現代から見ると 多少 その

風俗的に違う所が
あるかもしれないけれども

私としてはね 女性の一生を

大体 7か月ぐらいに圧縮して
書いてみたんで。

ある女性が ふとした事から
政界のフィクサー 黒幕の所に入って

その黒幕と政界という
ドロドロした一面

その一面と
その中に入った女性との

からみ合いといいますか
そこに起こる いろいろな事件。

その女性にとっては

一生が… 7か月という生活に
圧縮されているという話を

作ってみたんです。

あの… 「商社」の時はですね
英語で悩まされましたけど

今度は小唄を歌うシーンが
ありましてね

それで 本当に これも
付け焼き刃で…。 ああ そう。

英語も特訓でしたね あれは。
特訓です もう。

特訓にしては
うまいもんだと思ったね。

今日は 先生のお庭で
ロケさせて頂いてるんですが

もちろん こういうのは
初めてですか?

初めてですよ。
先ほど 台詞にね

「元は華族の持ち物」だとか
出てましたけど

まあ そんなもんじゃないけども

とにかく テレビという 一つの
化け物みたいなものが

何でも小さな このミニチュアから

自由自在に大きなものを
ごまかして撮るというか

その辺は 非常に
変幻自在な所がありますからね。

心は どこだ?

♬~

お前も裸になれ。 あ~っ!

私を捨てないでね。
捨てるもんか。

そろそろ 自分の楽しみを持って
いいころだ。

ふざけないでよ!

「けものみち」の情報は
莫大な金になる。

♬~

♬~