松本清張ドラマ「けものみち」(2)民子(名取裕子)は、政財界の黒幕・鬼頭(西村晃)の愛人として暮らし始める。…

出典:EPGの番組情報

松本清張ドラマ「けものみち」(2)[字][再]

1982年放送松本清張原作ドラマのデジタルリマスター版。全3回。民子(名取裕子)の流転の人生を通して、政財界の裏にうごめく「けもの」のような人間たちを描く。

詳細情報
番組内容
民子(名取裕子)は、政財界の黒幕・鬼頭(西村晃)の愛人として暮らし始める。鬼頭邸には執事の米子(加賀まりこ)や怪しげな男が住んでいた。民子は鬼頭に気に入られ、ただ従うだけでなく、妖しい魅力を放つしたたかな女に成長していく。久恒刑事(伊東四朗)の執ような捜査が続く一方、民子は小滝(山崎努)と逢瀬(おうせ)を重ね、彼への愛に目覚めていく。そんな中、小滝が支配人のホテルを中心に、相次いで殺人事件が起こる
出演者
【出演】名取裕子,伊東四朗,加賀まりこ,永井智雄,高森和子,久米明,原知佐子,林昭夫,西村晃,山崎努
原作・脚本
【原作】松本清張,【脚本】ジェームス三木

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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♬~

(章二郎)
君は 自信がないかもしれんが

人間の実力なんて
ほとんど 差がないんだよ。

今 世間で トップレディーなどと
言われてる女実業家にしたって

それだけの環境と条件を
与えられただけだ。

長屋の女将さんだって
同じ立場を与えられれば

同じ力を発揮するかもしれん。

どうだろう?
…よく考えてみなさい。

この機会を逃したら
君は 永久に チャンスがないんだよ。

(踏切の音)

(電車の通過音)

(燃え上がる炎の音)

<料亭 芳扇閣の仲居 民子が
ホテル支配人 小滝と共謀して

夫を焼死させます>

(民子)小滝さん!
5~6年の辛抱だよ。

いや 2~3年かもしれない。
その時 君は 道具でなくなる。

大きな自由と大きな力を
持つ事になるんだ。

つまり 私は 秦野先生の
おもちゃに なるんですね?

そうじゃない。 あの人は
道を教えてくれるだけだ。 道?

山を歩くと
人間が作ったものじゃない

奇妙な道に出くわす事がある。

カモシカとか イノシシが同じ所を通るんで
自然に出来た小道だ。

それを「けものみち」と言うんだよ。

面白い事に 人間の社会にも
けものみちが あるんだな。

特殊な人間どもが 動物的
本能的に切り開いた 秘密の道だ。

もちろん 普通の人には見えない。

この けものみちは 裏側から
権力に つながっている。

金もうけにも つながっている。

そして 民子さん。

あんたは その けものみちを
歩きだしているんだよ。

♬~

分かるかね? 歩きだした以上
もう引き返す事は できないんだ。

<政界の黒幕 鬼頭洪太の屋敷に 送り込まれます>

(鬼頭)わしは
自分が満足しようとは思わん。

お前が喜べば
それでいいんだ。

お前は 上物だ。 打てば響く。
わしの思ったとおりだ。

♬~(テーマ音楽)

♬~

(久恒)ママさん。
(女将)はい。

もう一度 聞きます。
ニューロイヤルホテルの小滝支配人が

民子と酒を飲んでいたのは
この部屋に間違いありませんね?

(女将)間違いありません。
ところが 同じ時刻に

民子らしい女が 自分の家の近くに
現れてるんですね。

(女将)どうぞ。
ああ どうも。

で こういう事は
考えられませんかね?

民子は ここで
酒を飲んでるふりをして

そこから ひそかに 裏へ出た。

裏口から表へ出て タクシーを拾い
自分の家に帰って 火をつけた。

それから 何食わぬ顔で戻ってきて
やはり そこから入ったと…。

小滝さんが 手助けをしたって
おっしゃるんですか?

そういう事になりますね。
あの2人は できてたんでしょう?

さあ どうでしょうか?

ママさん
本当の事 言ってくれませんかね?

私が その気になれば
この旅館を 風俗営業違反で

調べる事もできるんだ。

ハッハハ…。
何が おかしいんだ?

あんたが ここで 高級売春婦の
あっせんをしてる事も

ちゃんと分かってるんだよ。

冗談じゃありませんよ。
どこに そんな証拠があるんです?

変な事 あなた おっしゃると
名誉棄損で訴えますよ。

うちには 警視庁のお偉方も
時々 お見えになるんですからね。

捜査に協力してくれと
言ってるんですよ。

こうして
協力してるじゃありませんか。

成沢民子は
どこへ雲隠れしたんです?

ママさんのあんたが
知らん訳がないな。

知らないものは 知りませんね。
電話も 便りも ないんですか?

ありませんね。

(係長)はい 現在 東京テレビを中心に
聞き込みを続けております。

目撃者の証言がありしだい
ご報告します。 はっ 了解。

係長 例の 江古田の
火事なんですがね…。

成沢民子の捜索を
続けさせてください。

「成沢民子」?
焼け死んだ男の女房です。

ああ あれは 失火という事で
決着がついたはずだろう。

いや 私の心証では 黒ですね。

関係者の証言もありますし
アリバイは絶対崩せると思うんです。

いつまで そんな事 言ってるんだ。
仕事熱心も いいが

むりやり
犯罪を構成しちゃいかんよ。

物的証拠がなければ
公判維持もできんのだ。

「ホシ」さえ見つかれば 絶対
吐かせる自信があるんですよ!

君の自信は あてにならんよ。
警察は それほど暇じゃないんだ。

命令もされないのに
勝手な行動とるな。

それよりな 坂本君と東京テレビへ
応援に行ってくれ。 「東京テレビ」?

高速路面公団の 岡橋という理事が
行方不明なんだよ。

(秦野)いいかね 岡橋さん。

高速路面公団は はっきり言って
利権の巣窟だ。

政府や保守党の亡者どもが
寄ってたかって

甘い汁を吸おうとしている。
そこにだ…

政治の「いろは」も分からんような
技術屋の香川敬三ごときが

総裁として おさまってたんじゃ
天下国家のためにならん。

速やかに退陣すべきだと
そう言っとるんだよ。

(岡橋)ご意向は 総裁に
お伝えしてあります。

(秦野)じゃ なぜ
返事を ぼかすんだ。

総裁自ら あいさつに来て
しかるべきじゃないのかね。

総裁は 何分
公務多忙でございまして…。

(秦野)黙りなさい!

鬼頭先生を 無視するような態度を
とれば どういう事になるか

フフッ… あんたが 一番
よく知ってるだろう。

24時間以内に 香川総裁を
ここへ 案内しなさい。

それは できません。
(秦野)なぜかね?

総裁は 剛直な方です。

どんな圧力にも
屈服なさらないと思います。

(秦野)だから
世間知らずだと言うんだよ。

頭を もめ。
はい。

総裁を説得する事が
どうしても できんと言うなら

こちらにも 考えがある。

例えば あんたが
経理担当の理事として

政治献金を
どういうふうに操作してるか

公表してもいいんだよ。

あの 私は
不正はいたしておりません。

ハッハッハッハ
そりゃ もちろん そうだろう。

しかし 金の流れが分かれば

迷惑をこうむる政治家が
5人や6人は必ず出てくるはずだ。

あんた… 恨みを買って
理事の座を 追放されるだろうな。

どうか それだけは…。
(鬼頭)秦野君。 そう いじめるな。

フッフッフッ…。

茶室へ連れていって うまいお茶を
振る舞ってやりなさい。

(秦野)はっ。

時間がたてば
考えも 変わるだろう。

♬~

♬~

(ノック)
≪どうぞ。 失礼します。

いやいや どうも。

今日は 2人で来ました。
どうぞ おかけください。

いや 先日は
どうも ご無礼いたしました。

成沢民子の件ですか?

いやいや 今日は
まったく別の用件です。

あ どうも…。

実は 高速路面公団の理事が
行方不明になりましてね。

ああ ニュースで聞きました。
あっ… 君 ちょっと 説明して。

(坂本)はい。
岡橋誠一という理事ですが

今朝 代々木上原の自宅を出て

丸の内の公団本社に
向かったんです。

理事は 運転手に

「ちょっと東京テレビへ寄る」と言って
赤坂へ回り

テレビ局舎に入ったきり
出てきませんでした。

公団では 午後2時から
重要な会議があったんですが

姿を 現していません。
4時になって

警視庁に 捜索願いが出たので
我々が出動し

現在 まだ見つからない状態です。
テレビ局には いないんですか?

(久恒)いや 警備員の話では

表から裏へ
通り抜けただけらしいんですよ。

それから
聞き込み捜査を続けた結果

ガソリンスタンドの従業員がですね
この写真を見て

「ニューロイヤルホテルに
入っていくのを目撃した」と

こう言うんですよね。
存じ上げない方ですな。

ああ フロントでも
「知らない」と言っておりました。

宿泊者名簿にも
名前が見あたりません。

ロビーで 誰かと待ち合わせを
したのかもしれませんな。

いや。 これは
私の勘なんですがね…

岡橋理事は
このホテルに泊まってる誰かを

訪ねたんじゃないかと
思うんです。
ほう。

と言いますのは
路面公団の理事には

東京都側から出たのと

政府側からのと
2派ありましてね

相当 激しい抗争が
続いてたらしいんですな。

そこで 対応に苦慮した岡橋理事は
会議を すっぽかしてまで

誰かと会わねば
ならなかったと。

支配人さんから見て
お客さんの中に

それらしい人物はいませんかね?
例えば 政界筋とか

財界関係者とか。
さあ… 思いあたりませんな。

最悪の場合 そのまま
監禁されているおそれも

あるんですがね。

この奥は 寝室ですか?
そうです。 私が使っております。

ちょっと
拝見していいでしょうか?

どうぞ 誰もいませんよ。 ハハハ…。
ちょっと失礼。

僕が 疑われてるとは
思わなかったな。 ハハハ…。

いやいや 一応 念のためです。
職務上の無礼は勘弁してください。

911号室に 秦野重武という人が
泊まっていますね?

ええ 秦野先生なら
2年前からいますよ。 「2年前」?

弁護士さんです。 ここで
法律事務所を開業しておられます。

時々 国会議員が
来るそうですね?

ええ 商売がら
いろんな方が見えるようです。

映画スターとか
中小企業の社長さんとか

宗教団体の方とか。 ☎
会わせてもらえませんか?


ちょっと 失礼します。

はい もしもし そうです。
少々 お待ちください。

捜査一課からです。

もしもし 坂本です。
はあ… はあ… えっ!

はあ… はあ… 分かりました。
すぐ 現場へ直行します。

おい どうしたんだ?

岡橋理事が
死体で発見されたそうです。

♬~

心は どこだ?

♬~

お前の体は ここにある。

だが 心は 遠くへ飛んでいる。

そんな事ありません。

ごまかさなくてもいい。

わしは 年をとってる
そのうえに この体だ。

お前に 好かれるはずがない。
いいえ。

だんな様は
私を メチャクチャにしてしまわれます。

まるで 操り人形のように
自由自在に。

本当の満足ではあるまい。

若い男が欲しければ
浮気してもいいぞ。

何をおっしゃいます。

どうだ?

週に1度は…
外出させてやってもいい。

えっ…!

この若い肌に 世の中の空気を
たっぷり 吸い込ませてこい。

(パトカーのサイレン)

(ラジオのニュース)「7日午前から失踪し
行方不明だった

総合高速路面公団の
岡橋誠一理事が

死体となって発見されました。
調べによりますと 岡橋さんは

日の出ビルの屋上から
飛び降りたもので

ポケットに 夫人にあてた
簡単な遺書がある事から

投身自殺をはかったものと
思われます」。

民子。 はい。
お前も裸になれ。 嫌ですわ。

いまさら 恥ずかしがる事は
ないだろう。 いけません!

わしの言う事が 聞けんのか。
あ~っ!

だから 「裸になれ」って
言っただろう。 イヒヒヒッ…。

(戸が開く音)

誰!

(黒谷)まだ 入ってたのか。
出てってください!

大きな声 出しますよ。

お前さん あんまり
つけあがんなよ。 何ですって!

もとはと言えば
旅館の仲居だろうが。

裸ぐらい 見せたって
いいじゃないか。 出てって!

ハッハッハ…。

(鬼頭)そうか。
黒谷の奴が そんな事 言ったか。

私が入ってるのを知ってて
のぞきに来たんです。

イヒヒ… アハハッ…。

あれは どういう人ですか?

かわいい男だ。
わしのためなら 命も投げ出す…。

ん… 面白いと思わんか?

わしは さまざまな人間に
エサをやって 飼ってる。

現職の大臣から… 人殺しまでだ。

どうだ 黒谷と浮気してみないか?

まっぴらです!

趣味が合わんか? 合いません。

それじゃ しかたない。

(いびき)

(山倉米子)
ちょっと お話があります。

だんな様の事ですけれど…
だいぶ お疲れのようですわね。

お世話は 「夜だけでいい」って
申し上げたはずですよ。

年が年だけに 体力を消耗すると
どんな事になるか分かりません。

だんな様が
私を離さないんです。 フフフフッ…。

それでは
あなたが 心得ていて

適当に
あしらってあげてください。

あんな体でも
世間には 大事な人なんです。

分かりました。
それから もう一つ。

あなた だんな様に

外出させてほしいって
わがままを言ったそうですね。

それは違います。 「たまには
外へ出て遊んでこい」と

だんな様が
おっしゃったんです。

どこに いらっしゃるの?
それは まだ分かりません。

外出の時は 私が一緒に行きます。
なぜですか?

あなたの身を守るために…。

お断りします。

外出の件は だんな様に
私が許していただいたんです。

私の気ままにさせてください。

♬~

(ノック)
≪どうぞ。

驚いたでしょう。

ああ 僕の目に
狂いはなかったようだな。

どういう意味ですか?
え いや…

君は すっかり 磨きがかかって
一流の女になった。

「馬子にも衣装」ですわ。

まさか 逃げ出してきたんじゃ
ないだろうな?

いいえ 外出の許可を
もらってきたんです。

ついでに 浮気の許可も。
ああ それは よかった。

本当なんです。

あの おじいちゃん
そういう趣味があるんです。

マゾじゃないかしら?
まさか 僕との事は

しゃべらなかったろうね?
もちろんです。

ここへ来ちゃ駄目だ。
せっかく乗った列車から

振り落とされるぞ。

薄情な人。
私が どんな目に遭ってるか…。

居心地が悪いのか?

悪いとは言えないけど
何だか 怖くて…。

だんだん 慣れるよ。

体の不自由な主人から
やっと解放されたと思ったら

また同じような
おじいちゃんでしょう。

私に対する あてつけですか?
偶然だよ。

秦野先生の話じゃ 君は すっかり
気に入られてるそうじゃないか。

そのとおりです。
おじいちゃんは

私の言う事なら
何でも聞いてくれます。

夜も昼も なめるように
かわいがってくれるの。

男としては
とっくに駄目になってるのに

すごいテクニックを持ってるの。

女を喜ばす方法を
知りつくしてるのね。

何しろ 「浮気をしてこい」って
言うくらいだから。

座りなさい。 嫌!
人が来るよ。

小滝さんは 私の事なんて 何とも
思ってらっしゃらないんですね。

そんな事はない。
僕たちは 共犯者だ。

共犯者なら もっと
優しくしてくれるはずです。

私は 小滝さんのためなら
何でもするわ。

でも 時々は 会ってほしいんです。
それだけが 生きがいなんです!

「2~3年の辛抱」って
言ったはずだよ。

「おじいちゃんが 死ぬまで」
っていう意味ですか?

そう あけすけに
言うもんじゃない。 (ノック)

どうぞ 開いてますよ。

おや ここで何をしてるんだ?
外出を 許可されたんだそうです。

ほう なるほど。
コーヒーでも いれましょう。

ハハハハ… 公認の浮気なら
いいじゃないか。

きっと あとで
いじめるつもりなんです。

フフフ… 刺激剤のつもりだろう。

おい あの じいさん
変わってるからな。

すごく変わってます。
寝室に米子さんを呼んで

その前で 私に…。
ハッハッハッハ。

心不全でも
起こさなきゃいいが。

だんな様に もしもの事があったら
私は どうなるんですか?

使い捨てのおもちゃのように
ほうり出されるんですか?

心配するな。 悪いようにはせんよ。

でも あの家には
米子さんがいます。

私の前は 米子さんが 先生の
お世話をしてらしたんでしょう。

そうだ。

私の末路を見るようだわ。
何を言うか。

あの女は 世田谷に
500坪の土地を持ってる。

無論
じいさんから もらったものだ。

その前の女は 千駄ヶ谷に

一流の割烹旅館を
建ててもらってる。

芳扇閣ですか?
ほう よく知ってるね。

今日は これで
引き取ってくれないか。

秦野先生と仕事の話があるんでね。

(街の騒音)

民子さん とうとう見つけたぞ。

何の用ですか?
分かってるだろ。

降りてください。
君 新宿。

(運転手)お客さん
相乗りは困りますよ。 警察だ。

いい服 着てるな。
危なく 見違えるとこだったよ。

ニューロイヤルから出てきたね。

やっぱり
小滝に かくまわれてたんだな。

とんでもない!

(店員)まいど どうも。

ビールくれ。 はい。
つまみは 適当に。

マスターに そう言って。
はいはい。

さあ。

久しぶりだなあ。
こんな所へ連れ込んで

どうするつもりですか?
いきなり 本署に連行するのも

ヤボだからね。
ここなら ゆっくり話ができる。

話す事なんか ないと思います。

なぜ 芳扇閣から姿をくらました。
姿をくらましたなんて

人聞きの悪い事
言わないでください。

現住所は どこだ? 麻布です。
麻布の どこ?

どこだっていいじゃ
ありませんか!

あんたも 飲まないか?
結構です。

いやに よそよそしいんだな。
私 時間がないんです。

話があるなら
さっさとしてください。

あんた 亭主が死んでから
色っぽくなったね。

肌なんか つやつやしてる。
気持ちは 分からんでもない。

亭主は 「生けるしかばね」だった。
まあ 廃人同然だ。

そんな男のために 自分の将来を
犠牲にされちゃ たまらない。

誰だって そう思う。

死んでくれれば
せいせいすると思う。

何が 言いたいんです?

あの火事は 放火らしいんだ。

放火?
おせきさんは やっぱり 七輪を

障子のそばに置いた覚えは
ないという…。

それに スワロータクシーの運転手が

怪しい女を
現場近くで降ろしている。

その女は 黒っぽい服を着て
年は 25~26。

アハハハハハハッ…。
私を 疑ってるんですか?

運転手と対決してみるかね。
アリバイがあるんですよ。

小滝と できてるんだろう?
バカバカしい。

ニューロイヤルから出てきたじゃないか!
それが どうしたって言うんです。

有名なホテルですからね。
ぐるっと一回りして

見物してきただけですよ。

俺を なめちゃいけない。
これでも警視庁では

腕ききの刑事という事に
なってるんだ。

殺人犯も 3人逮捕している。
4人目が 私ですか?

いや 逮捕するかどうかは
俺の考え一つだ。

♬~

犯罪捜査には 2とおりある。

一つは 大きな事件が起きて
上から捜査方針が決められる。

こんなのは われわれが いくら
もみ消そうとしても 駄目だな。

もう一つは 1人の刑事が
こいつは怪しいと にらんだ時だ。

これは 上の方には分からん。
その刑事が 報告しない限りはね。

どうして 報告しないんですか?
正直いって 面倒になってきた。

いったん 失火と決まったものを
ひっくり返すのは

えらい事だからね。

消防署は メンツをなくし
警察も うんざりする。

つまり 誰も喜ばん。

♬~

俺は 自分がやっている事が
時々 バカらしくなる。

善良な人間が
やむにやまれぬ事情で

罪を犯す事があるからね。

一方では 法の網をくぐって
金持ちは どんどん太っていく。

経済犯なんか捕まえてみると

その ぜいたくな暮らしぶりには
実に腹が立つ。

わが身が
情けなくなるぐらいだ。

こいつらには 罪の意識がない。

だから
いくらでも悪い事を重ねる。

こんな奴らが
のさばってるのに

弱い者の1人や2人
牢屋に ぶち込んだところで

一体 何になるんだろうかという
疑問が残るんだ。

刑事さん お金が欲しいんですか?
そうじゃない。

俺は 気持ちの安らぎが
欲しいんだよ。

これまでも 随分と働いたからね。

点数稼いで出世しよう
なんていう考えも

もう とっくに なくなった。

俺より ずっと年下の青二才が

大学出というキャリアだけで
署長や課長のポストに座る。

あの連中に 現場の刑事の苦労が
分かるもんか。

犯人を 検事のもとに送るだけが
能じゃない。

俺も そろそろ
自分の楽しみを持っていいころだ。

何すんのよ!
「魚心あれば水心」
というじゃないか。

小滝にだけ いい思いはさせんぞ。

ふざけないでよ!

お前 小滝に彼女がいる事
知ってるのか?

あいつの事は
洗いざらい調べあげたんだ。

ニューロイヤルの社長の娘と
近々 結婚式を挙げる事もな。

まあ 座れよ。 あっ!
私に手出すと殺されるわよ!

何だと! 嫌な虫けら!

待て! 暗い所へ
ぶち込まれたいのか?

私を捕まえたいなら
逮捕状を持ってらっしゃい!

麻布の鬼頭さんという家に
いつでも いますから!

「鬼頭」…。

(鬼頭)様子は どうだ?
香川総裁だよ。

したたかな奴だな。

今度はもっと 分かりやすい方法で
ゆさぶってみろ。

骨身に こたえるようにな。

…分かった。

民子さん 戻られました。

(鬼頭)来い。

もっと 近くへ。

浮気は どうだった?
そんな事 してません。

なぜだ?
相手がいませんもの。

(鬼頭家の若い者)何だ お前は?
あ…。

何を のぞいてたんだ?
私… 警視庁の者です。

「警視庁」? いいから来るんだ。

(久恒)私 実はですね…。

何をするんだ! 返したまえ!

成沢民子?

25~26の女です。
タクシーの運転手が

ここまで乗せたと
言ってるんですよ。

何かの間違いだろう。

本人は ここで働いているような事
言ってましたがね。

「いない」と言ったら いないんだ。
ある事件の重要参考人なんですよ。

さっさと帰れ!
ここは 非行刑事が

のこのこ来るようなとこじゃない。

そういう言い方は ないだろう!
まだ 分からんのか!

うちの先生が
電話一本かけりゃあ

警視総監だって
ふっ飛んでくるんだ。

お前のクビ すげ替えるぐらい
朝飯前なんだよ。 さ 帰れ ほら!

デカにつけられるとは
普通じゃないな。

私は何も知りません。
重要参考人だと 言ってたぞ。

取りついでくだされば
よかったのに。

不謹慎ですよ。
どうして?

このお屋敷にいる者が
警察の取り調べを受けるなんて。

だんな様の名前に
傷がつくじゃありませんか。

随分 きれいな口をきくのね。

何?

それを言うなら
お互いさまでしょう。

米子さんだって 黒谷さんだって

これまで 何をやってきたか
分かったもんじゃないわ。

お黙りなさい。
いえ 黙りません。

あなたは だんな様に遠ざけられて
欲求不満なんでしょう。

私の落ち度を
意地悪く責めたてて

それで
やっと気晴らししてるのね。

気の毒な人。
お前の亭主は 暴力団員だろう。

それがどうしたの!
おかしな死に方を したそうだな。

あなたに関係ありません。
先生の耳に入れてもいいのか。

どうぞ ご勝手に。
それで だんな様が

私を追い出すかどうか
試してみればいいでしょう。

そのかわり 黒谷さんが
時々 米子さんの部屋にいる事も

先生に言いますよ。
居直るつもりか お前。

出てってください。

私 あなたたちには
絶対 負けませんから。

もしもし。
ああ 君か。 どうしたんだね?

時間を作ってください。
お話があるんです。

☎どこから かけてるんだ?
どこだと思います?

このホテルの中か?
いいえ 芳扇閣です。

「芳扇閣」?
すぐ 来ていただけませんか?

☎今日は 忙しくて無理だよ。
冷たいのね。

☎君こそ わがまま言っちゃ困る。

私は めったに
表へ出してもらえないんですよ。

☎それは辛抱する約束だろう。
私にばっかり辛抱させて

自分は好きな事するつもり?

何の事だ?

☎社長のお嬢さんと
つきあってるんですってね。

結婚するんですってね。
誰が そんな事 言った?

☎ちゃんと情報が入ってるのよ。
誤解だよ 君。

あなたにだけは
裏切られたくないの。

☎裏切ってなんか いない。
だったら すぐ来てちょうだい。

☎人に会わなきゃならないんだ。
私より 大事な人?

君。
☎来てくれなければ 私

二度と おじいちゃんのとこには
戻りません!

(電話が切れた音)
もしもし…。

(シャワーの音)

(男)おい 僕だよ。 戸締まり
ちゃんとしなきゃ いけないな。

映子!

(シャワーの音)

私を捨てないでね。
捨てるもんか。

だって 社長のお嬢さんと。

デマだよ。 社長に娘なんかいない。

本当?
調べてみりゃいい。

だましたら 殺してやるから。
かわいい事 言うね。

じいさんには 黙ってろよ。
浮気は 公認なのよ。

開けっぴろげに話せば
涙 流して喜ぶわ。

僕の名前は 絶対に出さんでくれ。

ここのママから
伝わるんじゃない?

ママは 利口な女だよ。

あの世界から
きれいに足を洗ったんだ。

私も せいぜい頑張るわ。 夜も昼も
おじいちゃんを攻めたてて

クッタクタにしてやるの。 早く死ねば
それだけ早く自由になれるでしょ。

お金も入るし
小滝さんとも…。

小滝さん。
うん?

私たちの乗った列車は
どこへ着くんですか?

小滝さんの目的が知りたいんです。

どうして私を おじいちゃんの所へ
送り込んだのか…。

情報を仕入れるためだよ。
「情報」?

じいさんの所に
どんな人物が出入りしてるか

どんな話をしてるか 今のうちに
しっかり覚えておくんだ。

「けものみち」の情報は
莫大な金になる。

どんな小さな情報でも 金に
換える方法は いくらでもある。

どうも お世話になりました。
うまくいってるの?

おかげさまで。

よかったわね。
はい。

(従業員)お車が まいりました。
2台ね? はい。

これ 少ないけど。
あっ… 悪いわね 民ちゃん。

それじゃ…。
あっ 小滝さん。

ラジオのニュース 聞きました?
いや。

ニューロイヤルで 女の人が
殺されたそうですよ。

(ラジオのニュース)「今日午後8時50分ごろ
ニューロイヤルホテルの従業員が

8階の客室で
ストッキングで絞め殺されている

女性の全裸死体を発見しました。

この女性は 宿泊者カードによれば
横浜市鶴見区の

宝石デザイナー 檜原映子さん
28歳となっており

3日前から ニューロイヤルホテルに
1人で泊まっていたもようです」。

(警官)支配人が帰ってきました。
来たか。

お騒がせして すみません。
あんた どこ行ってたの?

ちょっと 青山の方へ。
青山のどこ? 喫茶店です。

誰と会ったんです?
1人です。

少し疲れてるもんで
頭を休めようと思いまして。

なぜ 黙って出かけたんですか?

こういう時に 支配人の行方が
分からんというのは

困るんですよ。
申し訳ありません。

害者は
檜原映子っていうんですがね

顔見知りですか?
いえ 存じません。

大体 1人で泊まるのに
ダブルベッドっていうのは妙ですな。

これは 一体
何を意味してるんですかね。

連れがあったという事じゃ
ありませんか?

さあ どうですか。

犯人は すぐ捕まりますよ。
指紋がとれてますんでね。

よろしくお願いいたします。

(鬼頭のいびき)

死亡推定時刻は午後7時から8時。

犯人の侵入と逃走は
いずれも 入り口のドアからです。

(捜査課長)
部屋の中 荒らされてない?

はい 物とりの線は
薄いでしょう。

(坂本)
痴情 もしくは えん恨ですな。

害者は はじめから
1人で泊まっていたのかね?

そこが問題だと思います。
従業員の話では

2度ばかり 中年の紳士が
訪ねてきたそうです。

(課長)その男の身元は?
調査中です。

(課長)犯行の前後に
見かけた者は いるのかね?

今のところ いません。

ホテルの廊下は
一般通路と同じですからね。

誰が歩いても
とがめられない訳です。

ほとんど 無防備と
言っていいくらいですよ。

(課長)指紋の方は どうだね?

(坂本)はい ドアのノブから
4種類 とれています。

一つは 害者のもので
一つは 第1発見者の

メイドのものです。
あとは?

鑑識の方で リストを照合中です。

害者の友人から
証言がとれましたよ。

宝石デザイナーというのは ウソです。

今は無職ですが 去年の夏まで
京都の祇園で芸者をしていました。

芸者?
はい。 要するに だんなができて

身受けされたんですよ。
その だんなっていうのは?

はい まだ確認はしていませんが

どうやら 高速路面公団の
偉い人らしいです。

ホテルの明細書を調べましたら
害者は 同じ番号に

2度 電話をしていますね。

それが 高速路面公団の
代表番号なんです。

課長 どうします?
裏をとりますか?

いや そっちの方は
まだ動かんでくれ。

はっ?
(課長)害者の身辺よりも

犯人逮捕に 全力をあげるべきだ。

お邪魔でしたかな?
(鬼頭)いいや かまわん。

香川総裁が 辞表を出しました。

お~。
薬が効いたようですな。

これで路面公団も
すっきりするな。

(秦野)後任の人事は
どうなりますか?

なるようになるさ。

石をどければ
水の流れは 自然とよくなる。

(久恒の妻)父ちゃん!
みそ汁 冷めるわよ。 ああ…。

(久恒の子供)
まだ酔っ払ってんの?

一晩中 ガーガー ガーガーいびきかいて
うるさいったらないんだから。

おい 水1杯くれ。
起きたら どうなのよ。

これだ!

(ラジオのニュース)「総合高速路面公団の
香川敬三総裁が

昨夜 突然 政府筋に
辞表を提出しました。

香川総裁の辞職は
健康上の理由とされていますが

まったく
予想されていなかった…」。

これで
はっきりしたじゃありませんか。

殺された檜原映子は
香川総裁の愛人だったんですよ。

君 軽々しい事 言っちゃいかんよ。

まあ 聞いてください。
高速路面公団の内部には

土建業者からの政治献金を巡って
もみ合いがあった事は

ご存じでしょう?

香川総裁を失脚させようとする
反対勢力がですね

岡橋理事を自殺に追い込み

総裁の愛人を殺したとは
考えられませんか?

話としちゃ面白いがね
暴力団の対立抗争じゃないんだ。

路面公団のエリートたちが
そんな危ない橋を渡るもんか。

いや だから
自分たちの手は汚さんでしょう。

誰かが 殺しを
請け負ったのかもしれませんよ。

そんな事は
捜査本部の首脳が考える。

現場の刑事はな 聞き込みと
証拠調べに 専念すればいいんだ。

そういう言い方は
納得できませんね!

どこが 納得できないんだ。
政治がらみの事件になると

どうも 警察は へっぴり腰に
なるような気がします!

生意気な事 言うな!

係長 指紋の鑑識結果が出ました。

台帳にあったのか?
はい。 梅津 進という殺人犯です。

ただし 犯行は18歳の時で
送検 免れています。

あとは 昭和35年に
覚せい剤の売人を刺して

せき髄損傷の傷を負わせて
逃亡し

そのまま
現在も行方が分かりません。

(久恒)待てよ。 この顔
見た事あるな。

そうだ ひょっとすると…。

♬~

(蛭田代議士)大変
ごぶさたいたしております。

本日は ご迷惑をも顧みず
参上いたしまして

まことに どうも。

かけなさい。

(蛭田)ご紹介いたします。

電気開発理事の 熊谷四郎君です。

やあ。

(熊谷)初めまして。
熊谷でございます。

私 このたび
香川さんの後任として

高速路面公団の総裁に
内定いたしました。

先生のお力添えの たまものと
肝に銘じ

終生 犬馬の労をとらせていただく
決意でございます。

(鬼頭)いや わしは 何もしとらん。
とんでもございません。

先生のご尽力なくしては とても
こうは まいりませんでした。

引き継ぎは すんだのか?

(蛭田)いや 明日
閣議の了承を得たうえで

一両日中に 香川総裁に
会う事になっております。

まずは とるものもとりあえず
鬼頭先生に

お礼と ごあいさつを申し上げたく
飛んでまいりました。

おめでとう。
(熊谷)ありがとうございます。

香川君 どうしてる?

今のところ 自宅に
引きこもっておるようですが

引き継ぎが終わりしだい
郷里の温泉で

静養するやに聞いております。

いずれ 香川君の身の振り方も
考えてやらんといかんな。

ぜひ よろしく
お取りはからいください。

このまま朽ちさせるには
もったいないほどの

有能な人物ですから。

ご苦労さまでございました。
(熊谷)先生を どうぞ お大事に。

かしこまりました。

お元気であらせられるようですが
なにぶん お年ですから

くれぐれも お願い申し上げます。

これは 先生のためというよりは
日本のためですから。

お客様 お帰りになりました。

あいつらの顔を見たか?
はっ?

どいつもこいつも バカ面さげて。

あんなのが
公団の総裁になるなんて。

どうして 総裁が
代わったんですか?

欲と欲との ぶつかり合いだ。

献金を吸いあげるには
便利な総裁が必要なんだ。

何を見てる?
恐ろしい方だわ。

だんな様には
できない事がないんですね。

「こんな じじいが」と…
思ってるんだろ?

とんでもない!

だんな様には 何もかも
見透かされてるような気がします。

心も体も…。

フフフッ そうだな。

人の心を見抜くには そいつが
何を欲しがってるか知る事だ。

だが わしには分からん。
お前が 何を欲しがってるか。

今は 何も欲しくありません。
ほう。

でも 将来はどうなるのか
とっても 不安です。

お前は わしが死んだあとの事を
言ってるのか?

私は このお屋敷から
追い出されるんでしょうね。

そうはさせん。 お前が
欲しいだけのものは 残してやる。

そうはおっしゃっても だんな様の
周りには たくさんの人が…。

誰も 私の立場なんて
考えてくれないと思います。

♬~

私は 先生だけが頼りなんです。

よしよし。

♬~

おじいちゃんの財産って
どれくらいあるのかしら?

さあ 見当もつかんな。
5億円ぐらい?

そんなもんじゃないだろう。
何十億 いや それ以上かもしれん。

私に 5分の1くれるって言うの。
ほう それはすごい。

口約束で 当てにならないって
言ったの。

そしたら 秦野先生を呼んで
公正証書を作ってくれるって。

君も しっかりしてるな。
それだけの犠牲は払ってるもの。

当然だわ。

あとは おじいちゃんが
死ぬのを待つだけ。

あせっちゃいかんよ。
終点は 近いんだ。

何年かかるかしら。
案外 丈夫だから

10年ぐらい
生きるかもしれないわ。

私 おばあちゃんに
なってしまう。

≪(女将)民ちゃん!
はい。

久恒って刑事が来てるの。
あんたを「出せ」って。

ここへ入るところを
見られたのね。

「出てこなきゃ 踏み込む」って
言ってるわ。

よし 僕が話をつける。
待って。 小滝さんは ここにいて。

私が うまくやりますから。
しかし…。

そうよ。 なにも 小滝さんまで
出る事ありませんよ。

お待たせしました。
よう 相変わらず きれいだね。

外へ出ましょ。
どうして? 話があるんでしょ。

ああ。 連れは どうすんだ
おいていくのか?

「連れ」なんか いませんよ。
小滝と一緒なんだろ。

いいかげんにしてくださいよ。

民ちゃん1人で
遊びに来てくれたんですよ。

それは どうかな。
まあ 深くは追及しないがね。

ママ お邪魔しました。

あんたも 大胆だねえ。 フフフ…。

事もあろうに
芳扇閣で あいびきとは。

いやはや 盲点をつかれたというか
「灯台下暗し」というか。

あんたなんか
ちっとも怖くありませんよ。

新宿のおすし屋さんの2階で
私に何をしようとしたか。

いざとなったら 訴えますからね。
いや あれは単なる冗談だ。

そうは言わせません。
勘違いしないでくれ。

俺は あんたを
捕まえようとしてるんじゃない。

江古田の放火殺人事件は終わった。
あれは 失火だった。

俺が そう思えばいいんだ。

前にも言ったとおり
俺は 弱い者の味方だ。

善良な人間が やむにやまれず
犯した罪には 目をつぶりたい。

そのかわり 本当の悪党は許さん!
おのれの欲望を満たすためには

まったく関係ない人間を
平気で殺すような奴は

徹底的にやっつける。

例えば ニューロイヤルホテルで起きた
宝石デザイナー殺しだ。

あの被害者は
某団体の総裁の愛人だった。

別の勢力が 総裁を脅迫するために
殺したんだよ。

政治の道具に使われたんだ。

犯人は ちゃんと分かってる。
指紋を残していったんでね。 んっ。

知ってるだろう 梅津 進。
知りません。

ほう 鬼頭洪太の屋敷に
いるはずだがね。

あんた 鬼頭の家で
働いてるんだろう。

働いてるといっても
お手伝いですから。

だったら 知ってるはずだ。

俺は この男の顔を
あの屋敷で 見てるんだよ。

面白い事 教えようか。
この男には 前科があってね。

昭和35年に 成沢寛次という男を
刃物で刺して

再起不能の重傷を負わせている。

えっ…!
そう つまり あんたのご主人だ。

当時 梅津は
暴力団の若い衆だった。

それっきり こいつは
姿をくらましてる。

おそらく 鬼頭の家で
殺し屋として飼われていたんだ。

犯人と分かってるんだったら
捕まえればいいじゃありませんか。

こいつを 捕まえたって
事件の解決にはならんよ。

問題は 誰が 梅津に
殺しを命令したかだ。

命令の背景には 一体
どんな からくりがあったかだ。

あわてて捕まえたって
巨大なトカゲは しっぽを切るだろう。

そういう事だ。 俺は あんたに
協力してもらいたいんだよ。

「協力」?
どんな情報でもいい。

時々 会って 鬼頭の屋敷の様子を
話してほしいんだ。

つまり スパイをしろと…。
そのかわり

俺は あんたの事件から
完全に手を引く。

小滝との仲も 探ったりはしない。

久恒義夫? 例の刑事ですがね。

民子に つきまとって
離れんのですよ。

どうやら 鬼頭先生の周辺を
かぎ回っているようです。

ほうっておけば いいじゃないか。
そうもいきません。

この間の殺人事件と
鬼頭先生を結びつけて

そのライン上に
ニューロイヤルホテルがあり

「内部に 誰か
犯行の手引きをした者が

いるはずだ」と言うんです。

フッフッフッ…。

久恒君…。 はい。
刑事部長が お呼びだ。

一緒に来たまえ。
はっ。

(刑事部長)君は 警察へ入って
何年ですか?

はっ 24年になります。

まことに残念だが…
本日限り 解職させてもらいます。

「解職」…?

本来ならば 懲戒免職になっても
しかたのないところだが

これまでの働きぶりを勘案して
諭旨免職の扱いにする。

部長の恩情に 感謝しなさい。
ちょ… ちょっと待ってください。

私をクビにするというんですか?
(部長)そのとおり。

そんなバカな!
おい 言葉に気を付けろ。

何で 私が辞めなきゃ
いけないんですか?

理由を聞かせてください。
思いあたる事が あるだろう。

いや まったく ありません。
婦女暴行未遂だよ!

「婦… 婦…」はっ?
君は 4月10日 午後4時ごろ

職権をもって 女性を
すし屋の2階に連れ込み

捜査の手加減をにおわせながら
肉体関係を強要した。

ウソです。 成沢民子の
でっちあげですよ。

すし屋の店員も
証言しているんだぞ。

誤解です!
そればかりじゃない。

君は このすし屋で いつも
タダ飲み タダ食いをしていた。

それは 払おうと思っても
受け取らないんですよ。

霞町の やまと館という質屋から
小遣い銭をもらって

盗品の目こぼしもしている。

いや それは
質屋を顔つなぎするためですよ。

現場の刑事というものはですね

そうやって 話が分かるように
振る舞わなかったら

捜査の協力は
してもらえんのですよ。

大きな犯罪を摘発するためには
小さな犯罪を見逃す。

そういう必要だってあるんだ!
そんな事 常識じゃありませんか!

落ち着くんだ 久恒。

君は 警察の威信を
失墜させたんです。

申し開きも結構だが
これ以上 ボロが出ると

懲戒免職になりますよ。
潔く 身を引いたらどうです。

ワナです。 私は はめられたんだ。

タレ込んだのは誰ですか? 一体。
成沢民子ですね。

あの女を信用しちゃいけませんよ。
あれは 夫殺しの放火犯なんだ。

放火犯ですよ あれは!
夫を殺したんだ!

♬~

☎(交換手)もしもし 小滝支配人は
お辞めになりました。

えっ! ☎もう こちらには
いらっしゃいません。

そんなバカな! もう一遍
ちゃんと確かめてくださいな。

☎1週間前に
退職なさったそうです。

どうして 辞めたんですか?
今 どこにいるんですか?

☎それは
ちょっと 分かりかねます。

(電話の切れる音)

何してるんです?
あなたに関係ありません。

暗闇の中で
こっそり 電話するなんて

ただごとじゃありませんね!

どうぞ。
うん。

生返事ばっかり。

下げてくれ。
召し上がらないんですか?

胸が ムカムカする。

だんな様?
ううっ!

吐くんですか?

寝かせてくれ。
はい。

どうも 変だ。

熱は ないようですけど…。

医者を呼べ。
はっ?

聞こえんのか! 医者を呼ぶんだ!

はい。

うっ!

だんな様
しっかりしてください!

だんな様
しっかりしてください!