金田一耕助ファイル2 獄門島 昭和21年、私立探偵・金田一耕助(上川隆也)は、戦友の死を告げるため流刑の地・獄門島へ…

出典:EPGの番組情報

ザ・ミステリー『金田一耕助ファイル2 獄門島』[字]

瀬戸内海の孤島で起きた悪夢の三姉妹連続殺人!流刑の地に隠された運命の遺言!無惨!座敷牢に閉じ込められた美女の呪詛。
【出演】上川隆也、高島礼子、中村梅雀ほか

詳細情報
番組内容
昭和21年、私立探偵・金田一耕助(上川隆也)は、戦友の死を告げるため流刑の地・獄門島へやって来た。跡取り息子を失い戦友の従姉・早苗(高島礼子)が悲しむなか、従妹で三つ子の月代、雪枝、花子(三倉茉奈・佳奈)はケラケラと悪ふざけしていた。暫く滞在することになった金田一は通夜の日、仙光寺の梅の木に逆さ吊りされた花子の死体を目撃する。さらに雪枝までもが、崖上に置かれた仙光寺の吊り鐘の中で息絶えていた…。
出演者
 金田一耕助…上川隆也
 鬼頭早苗…高島礼子
 等々力警部…中村梅雀
 了然…神山繁
 鬼頭志保…原田貴和子
 村瀬幸庵…寺田農
 荒木真喜平…鶴田忍
 清水巡査…金田明夫
 鬼頭花子/雪枝…三倉茉奈
 鬼頭月代…三倉佳奈
原作・脚本
【原作】
横溝正史「獄門島」(角川文庫・刊)
【脚本】
西岡琢也
監督・演出
【監督】
吉田啓一郎

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

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  1. 和尚
  2. 金田一
  3. 本鬼頭
  4. 早苗
  5. 花子
  6. 分鬼頭
  7. 嘉右衛門
  8. 千万太
  9. 小夜
  10. 駐在
  11. 与三松
  12. 竹蔵
  13. 月代
  14. 村長
  15. 先代
  16. 千万太君
  17. 了沢
  18. 先生
  19. 雪枝
  20. 三人

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『娘道成寺』

(竹蔵)ちょっと アンタ。 アンタ…。

(金田一耕助)もう着きましたか?

(汽笛)

あぁ 釣り鐘も
復員ですか?

(了沢)おかげさまで。
鋳つぶされず戻ってまいりました。

この鐘がいけないんですよ。

僕の悪夢の 大本だ。

ワシは 島で
漁師をしとる者だが

アンタ 島へは
どういった用向きで?

あ… こう見えて 僕も
復員兵なんですよ。

まあ… 命の洗濯といった
ところですか。

ご苦労さまです。
いえいえ。

あ~ 見えてきましたねぇ。
あれが 獄門島ですか?

(了然)はい では降ろそう。

降ろしてください。

あの… すみません。

仙光寺の
了然和尚ではありませんか?

いかにも
ワシが 了然じゃが…。

あ~ あの… 私
金田一耕助と申します。

鬼頭千万太君から
手紙を預かってまいりました。

今 手が離せんので
後で 寺の方へ来てくださらんか?

はあ 承知しました。
それでは その時に

村長の荒木真喜平さんと
お医者の村瀬幸庵先生も一緒に

お願いできますか?
わかった。

私 こちらの
鬼頭千万太さんと

ニューギニアで 共に戦っておりました
金田一と申します。

(鬼頭早苗)千万太さんは?

残念ながら 復員船の中で…
それをお伝えしたくて。

千万太さん
亡くなったんですか…。

あの写真の方は?

亡くなられた 当家の先代
鬼頭嘉右衛門さまです。

(りんの音)

金田一さま わざわざ
ありがとうございました。

千万太君のお父上は?

当代 鬼頭与三松が 真っ先に
ご挨拶すべきところですが

あいにく
病に臥せっておりまして…。

そうですか。
失礼ですが あなたは?

これは失礼しました。
千万太さんの従姉の 早苗です。

あなたが 早苗さんでしたか…。

千万太君から
お話は伺っています。

たしか あなたには
一さんという弟さんが…。

はい。 千万太さんと弟と
私の三人は

歳も近いこともあって
よく三人で遊びました。

先代にとっては 三人の孫
ということになりますか…。

たしか 一さんも出征を…。

ビルマです。

一昨日 ちょうど
金田一さまと同じように

弟の戦友という方が こちらに
お見えになられて…。

それでは 一さんも…。

いえ それが…
弟は 無事だと。

ここ 半月のうちに
戻って来るとのお話でした。

それは 何よりの朗報だ。

でも 今は
複雑な心持ちです。

肝心の 本家の跡取りの
千万太さんが

帰って来ないなんて…。

弟も きっと悲しみます。

(娘たちの笑い声)

これっ お客さまですよ。
そんなところで失礼ですよ。

(鬼頭月代)
花子が悪いのよ!

(鬼頭花子)
雪姉ちゃんよ!

(鬼頭雪枝)
月ちゃん 待って!

申し訳ありません。
お行儀が悪くて。

千万太の妹です。

三つ子なんですよね。

(咳き込む声)

当代 与三松です。
目が覚めたようです。

ちょっと失礼。

お目覚めですか?
今 お薬を…。

すみません…。

仙光寺は この先で
よろしいでしょうか?

(鬼頭志保)アンタ 「本鬼頭」へ
何しに行ったの?

早苗と 何 話したの?

あの… あなたは?

金田一さまですね?

はあ…。

皆さま お待ちかねです。
どうぞ。

こちらです。

ちょうど 今 千万太の
戦死公報が届いた。

そうですか…。

僕のほうは これを…。

千万太の手じゃ。

アンタは しばらく
この島で厄介になりたい。

そういうことじゃな?
はあ。

他ならぬ 本鬼頭の
千万太の紹介じゃ。

断るわけにはいかん
ワシが面倒をみよう。

この寺に
逗留されるがよかろう。

ありがとうございます。

(荒木)和尚 早速 千万太の
弔いをしてやりませんと…。

そのつもりだ。

アンタ 「分鬼頭」へは
もう行ったかな?

「ワケキトウ」…?

(村瀬)鬼頭の分家だよ。

本家が 「本鬼頭」
分家が 「分鬼頭」。

両方とも 親戚筋の網元なんだが
昔っから仲が悪くてな。

亡くなられた 嘉右衛門さまも

分鬼頭には いつも
頭を悩ませておられた。

嘉右衛門さまというのは
あの写真の…?

人みな 食うや食わず

人心の荒廃も 目を覆うばかりの
このご時世で

この島が 今現在
海の幸 山の幸を十分に享受し

平和に暮らせていけるのも これ
みな 嘉右衛門さまのお陰じゃ。

金田一さん…
分鬼頭がまだなら

今夜 千万太の通夜になると
知らせてきてくれんか?

我々は 弔いの支度がある。
後で 本鬼頭で会おう。

わかりました。
ああ ときに和尚さん

あの鐘は もう元のお堂には
戻りましたか?

いやいや…。
担ぎ手が少のうて

まだ途中の 「天狗の鼻」の
ところに置いてある。

分鬼頭へ行く途中に
見えるはずじゃ。

和尚さまは?

いらっしゃる。

金田一さん
我々は 先に本鬼頭へ。

分鬼頭は そっちだ。

あ~ う~ん…。

ここが 「天狗の鼻」ですか…。

えっ ご存じでしたか?

(鬼頭儀兵衛)ああ。
日の高いうちに 和尚からじかに

「千万太が戦死した。 今夜は
通夜になる」と聞いた。

和尚さん。 分鬼頭の方々
ご存じでしたよ。

和尚さんから じきじきに
伺ったと。

お~ そうじゃったな。
うっかり忘れとった。

で… 分鬼頭は
後から?

いえ。 今日は
遠慮すると。

ふん 薄情な奴らじゃ。

(娘たちのふざけあう声)

お一人 足りませんね?
ええ…。

6時すぎから 花ちゃんの姿が
見えないんです。

(呻き声)

病人は 早苗さんの
言うことしか聞かない。

だから 誰も 「離れ」には
近づかない。

ご当主は 何の病を…?

ん? 労咳だ。

労咳…。

きゃっ!

(読経)

(娘たちの笑う声)

何か あったんですか?

花子がおらん。

分鬼頭がまた あの
「ぞろっぺい」を使って…。

ぞろっぺい?

分鬼頭に居候している

男か女かわからぬ
兵隊あがりがおるんじゃ。

ああ その人なら僕も
昼間 会いました。

分鬼頭は その
鵜飼って男を使って

ここの 三姉妹を
何とか かどわかそうと…。

(娘たちの笑う声)

ここの娘も あんな調子だから
手もなく乗せられて…。

竹蔵。
はい。

すまんが了沢と 分鬼頭へ
行ってくれんか?

承知しました。

村長は 村を一回りして
花子を捜してくれ。

はい 早速。
ワシは 寺へ戻っておる。

和尚さん。 僕にも何か

お手伝いできることは
ありませんか?

金田一さん。
はい。

幸庵先生のお宅は
この先ですから。

わかりました。
では 送ってまいります。

(雷鳴)

先生は 無事に?
はあ…。

おかみさんに ドヤされてました。
分鬼頭のほうは?

花子さんはおりません。

鵜飼も もう寝たとかで
追い返されました。

(雷鳴)

了沢! 了沢!

どうかされましたか 和尚?
花子が…。

花子さんが?

(竹蔵)降ろしてやりましょうか?

あ いえ 警察が来るまで
このままにしておいたほうが。

和尚さん…。

今 誰か ワシを…?

駐在さんを呼ばないと…
それと 幸庵先生も。

私が行ってまいりましょう。
本鬼頭へも。

お願いします。

雨だ…。

(雷鳴)

足跡が消えてしまう。

足跡といえば…。

(雷鳴)

兵隊靴ですね…。

コウモリみたいに見える。

和尚さん! これを…。

忍び込む前に
一服したんですねぇ。

英語の字引きで
巻いてあります。

島で英語の字引きを
お持ちなのは?

本鬼頭ぐらいじゃな。

千万太も 一も
学校へ行っとったで。

では 本鬼頭で
タバコをたしなまれるのは?

あそこは 今は
おなごばかりじゃから誰も…。

和尚さん…。

当代が好きで 早苗が 時々 タバコを
巻いてやると聞いたことが…。

当代というと 座敷牢で
病に臥せっていらっしゃる?

まさか 与三松が
こんな所まで…。

与三松…。

(雷鳴)

駐在さんは 海賊の取り締まりに
出かけたとかで 留守でした。

本鬼頭は? 怖がらぬよう うまく
伝えてくれたんじゃろうな?

姉妹は お休みでしたので
早苗さんにお伝えしました。

あの方は気丈な方なので
全く動じることはなく…。

やはり
絞殺でしょうか?

う~ん ノドのところに手ぬぐいで
絞めたような跡がある。

しかし 頭の後ろには
ぶん殴られた跡もあるから

多分 殴られた後で
首を絞められたのだろう。

殺されてから
どれくらいでしょう?

大体 5~6時間ってとこかな。

とすると…。

昨夜の 6時半から7時半の間に

殺された
ということになりますね。

しかし 何のために花子さんは
お寺に来たんでしょう?

ああ
それは これが原因のようだな。

(村瀬)付け文だろ?

分鬼頭の
牝狐の仕業じゃな。

は?
例の ぞろっぺいじゃよ。

分鬼頭の志保が
あの兵隊くずれを操って

こんな手紙を
書かせたのに決まっとる。

ああ あの人たちですか?

あの鵜飼って男が
本鬼頭 乗っ取り作戦の

分鬼頭の飛び道具なんだ。

しかし 月代さん宛ての手紙を
花子さんが持っていたのは

解せませんね。

三つ子で 見分けが
つかんかったんだろうが。

何せ この三つ子は
あの化け物女が…。

化け物女?

先生…。

中を読んでくだされ。

はぁ…。

「今宵 7時 仙光寺境内にて
相待ち候。

寺は無人となるはずにつき
心おきなく つもる話を。

月代さま 御存じより」。

鵜飼が 花子を寺へ呼び出して
殺したに違いない。

(了沢)和尚さま! 和尚さま!

何じゃ 騒々しい。
和尚さま。

泥棒が盗んでいったものが
わかりました。

半分ばかり ご飯が
入っていたんですが…。

一…。

(読経)

花子が死んだ…。

鬼頭千万太:俺が死ねば
妹たちは死ぬ…。

殺される。

金田一…。

どうか妹たちを
助けてやってくれ。

千万太! 日本に帰ろう。

生きて 日本の土を…。

金田一 頼む!

妹たちを
死なせんでくれ!

千万太!

千万太…。

すまん。

《あの時 和尚さんは
いったい 何を見たのだろう?

あの後 和尚さんは
我々を庫裏へ連れて行った。

あの時 和尚さんは 禅堂に
隠れている犯人を逃がすために

そうしたのだとしたら…》

和尚さんは 犯人を知ってる…。

う~ん…。

(清水)おいおい! 吸い殻
吸い殻 どこやった?

吸い殻?
しらばっくれるな!

駐在さん! 待った 待った。
駐在さん 乱暴はいけません。

金田一さん。
はい。

昨日 賽銭箱の横にあった
吸い殻は?

あ~ あの吸い殻ですか?
ちょっと待ってください。

ここに…。

隠してやがったな コラ!
吸い殻の話を駐在さんにしたら

もう 血相を変えて…。
本官は 島の治安を預かる駐在だ。

死体を勝手に降ろしたり
証拠品を隠匿したり

貴様… 何者だ!?

勝手になんて そんな…。

昨日は 駐在さんが 海賊退治で
いらっしゃらないと

うかがったものですから。
言い訳無用!

お取り込み中のところ
ちょっと いいですか?

いいも何も
もう勝手に入って来ておる。

ここは… 分鬼頭の者の出入りは
ご法度なんでしょうか?

いや。 島の平和を愛する者なら
歓迎じゃ。

志保さん。 昨日の
花子殺しの件なら 本官が聞こう。

やっぱり花子さんが死んだって
噂は 本当だったのね。

そらぞらしいことを…。

花子は お前の呼び出し状のせいで
死んだんだぞ!

(鵜飼章三)
これはまた 異なことを…。

正確には 月代さん宛ての
手紙でしたが。

それなら
心当たりがあります。

私が この子に言って
書かせました。

それは また なぜ?

お似合いだからですよ
月代さんと この子は。

私は 二人の幸せを
願えばこそ…。

分鬼頭の幸せを
願えばじゃろ?

その手紙は
直接 月代さんに?

いいえ。 恋ヶ浜の
地蔵のところに…。

ほら 昨日 あなたと会った…。

早苗… 姉妹は もう
落ちついたか?

はい。 部屋に
戻っておりますが

お通夜には
出さないつもりです。

皆さまに ご迷惑を
おかけしますから。

それにしても 早苗さんは
気丈夫じゃ。

花子の亡骸を見ても
涙ひとつ 見せんかった。

早苗さんは戦争中 しっかりと
本鬼頭を守ってくれた。

これで 一さんが帰って来れば
本鬼頭は盤石

この島の平穏は
約束されたようなものだ。

花子は その平穏と引き換えに
死んだと?

早苗さん
そりゃ考えすぎじゃ。

和尚さま。 誰が花ちゃんを
殺したんですか?

う~ん それは…。

どうして花ちゃんが

こんな殺され方をされなきゃ
ならないのか…。

失礼しました。
取り乱しまして。

あの ここだけの話にして
いただきたいんですが…。

何でしょう?

これは早苗さん あなたが
巻いたものでしょうか?

かと思います。

その 与三松さんのために?

体にはよくないんですが 伯父は
タバコだけが楽しみなもので…。

最近は いつ
巻いてあげましたか?

昨日です。

昨日…。 何本ほど?

20本…。

今 何本残ってるか
わかりますか?

ええ。 確かめれば。

静かですね?
お休みですか?

のようです。

吸い殻が 5つ…。

残ったタバコが6本です。

全部で 11本…
ちょっと失礼。

「D」だ…。

どちらも Dの項のページで
巻かれています。

とすると これは
消えた9本のうちの

1本ということになりますね。
この吸い殻 どこで?

証拠物件をくすねてきたもので
あまり言いたくないんですが…。

もしや
花子を殺した犯人が…。

(咳き込む声)

伯父が起きたようです。
すぐにお戻りください!

折角ですから ご挨拶を…。
お戻りください。

ここにも コウモリが…。

そうですか… 幸庵先生
あの女のことを

「化け物女」と
言っとりましたか…。

なぜ
その 小夜という女役者は

それほど
忌み嫌われたんでしょう?

三姉妹の母親
当代 与三松さんの後添え。

義理とはいえ 本鬼頭
第一の後継者

千万太君にとっても
母親でしょう?

あの小夜が 島へ来てから
本鬼頭は ご難続きだった。

まず 与三松さんが病に倒れ
不漁が何年も続いた。

子供を産んだと思ったら
それが 三つ子で…。

そのうち 千万太さん
一さんと 兵隊にとられ

極めつけは
あんなにお元気だった

嘉右衛門さまが
病に倒れられたことだ。

その 当の小夜は奇病にかかり
七転八倒の末 死んで

安堵したのも束の間
肝心の嘉右衛門さまが

あの女の妄念に
引きずられるかのように

お亡くなりになられた。

あの… 駐在さん。
おう?

その 小夜という
女役者は

『道成寺』なんか踊ったり
しませんでしたか?

踊った 踊った!

あの女の 十八番だった。
それに 与三…。

ああ… すみません。

それに 与三松さんが
惚れてしもうてな。

僕は どうも
その 小夜という人の霊に

導かれて この島に
来てしまったような気が…。

金田一さん。
はあ。

実は アンタに ちょっと
見てもらいたいものが

あるんじゃが
ちょ ちょ ちょっと…。

駐在さん。

あれ? 駐在さん。

何を いったい…。

うりゃ~!
うっ!

あはははは… よし!
駐在さん! これは いったい…。

自分の胸に手を当てて
よ~く考えてみることだな。

は?
証拠こそ まだ揃わんが

貴様ほど怪しい人間は他におらん。

まさか… 僕が花子さんを
殺したって言うんですか?

どこに そんな証拠が…。

だから
まだ揃わんと言ってるだろ!

吐くんだったら
さっさと吐くことだな。

一晩 よ~く 考えてみることだ。

あの… 駐在さん。

う~ん… 折角ですから

ご厄介になりますか…。

よいしょ… はぁ~。

(等々力)金田一さん
金田一さん!

あっ いやあ
等々力さん!

ううっ…。 あ~。

ハッハハハ…。

何てザマですか
金田一さん…。

お国のために奉公して
命からがら

戻ってきたと思ったら
ブタ箱ですか? ハハハ…。

いや これには
深い事情がありまして…。

あれ 等々力さんこそ
どうして ここへ?

ああ 私にも
いろいろ事情が…。

まあ 何しろ これじゃ
話にも何もなりゃしない。

すぐ駐在に
開けさせましょう。

金田一さん!
等々力警部! 大変です!

お願いします… さあ早く
お願いします!

早く!
下駄 下駄…。

金田一さん
待ってくださいよ!

和尚さん
今度は 何が…?

寝ても覚めても
『道成寺』ですか…。

この振り袖は?
雪ちゃんの振り袖です。

では 雪枝さん この中に?

わかりません…
でも 雪ちゃんは

花ちゃんの
通夜の後から行方が…。

「むざんやな
冑の下の きりぎりす」。

いつまでも このまま
放ってはおけん。

早く 何とかせんといかん。

(竹蔵)今 道具を取りに
やらせてます。

やぐらを組んで 滑車で
鐘を吊り上げようかと…。

う~ん… 失礼。

金田一さん。
はい。
こんな物が…。

竹蔵さん 少し
手伝ってもらえますか?

竹蔵さん 少し
そっちをあげてください。

150貫の釣り鐘を二人で
持ち上げようってんですか?

いえ 竹蔵さん一人でです。

僕は…。
「お金と力はなかりけり」でしょ?

等々力さん…。
じゃあ お願いします。

はい…。 う~ん!

あ いや
竹蔵さん 棒の先に

ぶら下がるようにして
力をかけてください。

ええ~いっ!
そうです そうです。

もう少し はい… そうです。

そして その枝に
棒をかけちゃってください。

なるほど 一人でも
犯行が可能ってわけか。

雪ちゃんは?

残念ながら…。

外の着物は濡れてるのに
中の着物は濡れてない。

どういうことですかね?

いや… わかりません。

雪ちゃんは 生きたまま
鐘の中に…?

どれどれ…。

首を絞められた跡がある。

仙光寺の木に
逆さ吊りにしたり

釣り鐘に押し込んだり
酷すぎる…。

ハハハ… とんだ
『道成寺』だこと…。

あの女の祟りよ!

本鬼頭を手に入れ損ねた
小夜って女役者の…。

あの女 『道成寺』の鐘入りが
得意だったでしょ?

しかし その小夜って人の
亡霊の仕業だとしたら

自分の娘を次々と殺したりは…。

この島には おかしな連中ばかり
住んでるから

何が起こったって
不思議はないわよ。

鵜飼さん その 兵隊靴を

ちょっと拝見しても
よろしいでしょうか?

すみません…。

コウモリじゃない。

フン… アンタも
相当おかしいわね。

(読経)

等々力さんは
その殺人犯を追って 岡山へ?

ええ 三月前に起こった
巣鴨の女給殺しです。

ホシの復員兵が
岡山の戦友に誘われて

海賊の一味に加わったという
情報を得ましてね。

一昨日の海の大捕り物は
それですか?

ええ しかし
見事に逃げられました。

で 清水巡査から 島で
連続殺人が起きたと聞き

もしや 私が追ってる殺人犯が

島に潜入したかもしれんと
思いましてね。

そうか!

一座に 復員兵の男が
一人加われば

謎が少し解けますね。

東京から逃げて来た
殺人犯を登場させれば

靴跡と タバコと

空になった飯櫃のことは
説明がつくが…。

(読経)

《如意を落とした時
和尚さんが見たのは

果たして その殺人犯
だったのだろうか?》

《見たとしたら
どうして そのことを

黙っているのか?
そして… もう一つ…》

(読経)

早苗さん… 与三松さんは
ただ一人 あなただけには

心を許し 世話をさせていると
聞きました。

あなたの世話は
従順に受けるし 反抗もしない。

なのに あの時あなたは
離れか

または そのすぐ近くで
悲鳴をあげた…。

思い出せません。
もう いいでしょうか?

(清水)素性確かな
名探偵さんなら

最初から
そう言ってくだされば

留置場に放り込むなんざ…。
一世一代の恥だ!

いやあ
気にすることはない。

金田一さんは もともと
悪戯っ子みたいな人だから

きっと 正体を隠して
逆境を楽しんでたかもしれない。

等々力さん 笑ってる場合じゃ
ありませんよ!

駐在さん… 昨日
雪枝さんの死体が

見つかるまでの話を
聞かせていただけませんか。

いや… 私には いまだに
何が何だか…。

金田一さんを留置場へ
放り込んで

本鬼頭に戻ったのは
6時半頃でした。

その時 雪枝はおりました。

それから 和尚や村長と
あれやこれやと話してるうちに

雪枝の姿が見えないと
早苗さんが騒ぎだして

和尚と
酔っ払った幸庵先生を残し

我々は 雪枝を捜しに外へ出ました
それが8時半…。

竹蔵と了沢は 寺へ向かい
私と村長は 分鬼頭へ…。

途中で 「天狗の鼻」の
釣り鐘の横を

通りましたが その時は
特に 異常はなく…。

それは 何時頃でしたか?

さあ? 8時40分ぐらいですか…。

その時 釣り鐘は
しっかり見たんですね?

はい 懐中電灯を
向けまして…。

振り袖は
はみ出てなかった?
はい。

雨は…?

そのあと 分鬼頭の
手前辺りから…。

分鬼頭には
どれぐらい?

10分ぐらい居て それから
本鬼頭へ引き返しました。

引き返した時に
釣り鐘は?

見ていません。
雨が降ってたし…。

この 釣り鐘から
分鬼頭までは…。

2分くらいって
ところですか。

往復4分… 分鬼頭に
10分居たとしても 14分。

すなわち 駐在さんが
再び その釣り鐘の横を

通りかかったのは 8時54分頃
ということになりますね。

金田一さん さっきから時間に
こだわってるようですね?

はあ… 殺された
雪枝さんの着物は

釣り鐘からはみ出していた
この振り袖の部分は

濡れていましたが
鐘の中は乾いていた…。

ということは 犯人は

雨が降る前に 鐘に
死体を押し込んだ…。

ところが 駐在さんが初めて
鐘の横を通りかかった時には

振り袖は
はみ出てなかったんです。

雨は そのあとに降りだした。

(雷鳴)

犯人が 駐在さんたちが
その場を立ち去ってから

再び通りかかるまでの
14分の間に

素早く死体を鐘の中に
押し込んだとしても

雪枝さんの死体は その間も
雨にさらされてたわけですから

鐘の中の着物も
当然濡れるでしょう?

そりゃ 着物の上に何か
掛けておいて

それで鐘の中に突っ込んで
それを そのあとで

その掛けた物を引っこ抜く…。

なぜ そんな
面倒なことを?

いやいや それを言うんだったら
どうして

鐘の中に押し込むんですか?
それに その前だって

仙光寺の木から
逆さ吊りでしょ?

そうなんですよね…。

う~ん
ますます わからん!

おい! こらっ! 待てっ!

こらっ! 待たんか!

(等々力)東京で殺人事件を
起こした凶悪犯が

この島に逃げ込んで
いるものと思われます!

不可解な事件解明と
再発防止のため

凶悪犯逮捕に向けて 皆さんの
ご協力をお願いする次第で…。

与三松さんは
お休みでしたか?

いえ… 騒がしいので
なかなか…。

早苗さん 一つ聞いても
いいでしょうか?

もう 消えて
しまったんですが

花子さんが
亡くなった次の日

僕は あの辺りで
靴跡を見つけたんです。

兵隊靴の跡です。

それが… 何か?

靴跡は…
一つだけでした。

不思議なことに
一つだけ残っていたんです。

歩き回れば いくらでも
付くはずなのに…。

何を おっしゃりたいのか…。

僕は こう思うんです。
一つ残った靴跡は

沢山残っていた靴跡の
消し忘れじゃないかと…。

つまり 誰かが慌てて消したために
一つだけ残ってしまった。

それが 私と どういった…。

そんな話聞くの
今が初めてで…。

それでは もう一つ
初めての話をしましょう。

これは?

千万太君の絶筆です。 復員船で
死ぬ間際に渡されました。

そして彼は
こう言ったんです…。

「俺が帰らないと
三人の妹が殺される」 と。

千万太君の予言どおり 花子さん
雪枝さんの二人が殺された。

僕は何もできず ただ 二人の死を
傍観してるだけでした…。

だから せめて最後に残った
一人の命は救いたいんです。

早苗さん… 知ってることを
話してくれませんか?

包み隠さずに
知ってることを全部…。

それだけが
残された 月代さんを救う

唯一の道だと思うんです。
違いますか?

私は… 何も
お話しすることは…。

月代が どうかしたの?

月代ちゃん…
何を始めるつもり?

これから お祈りするの。

山狩りで悪者が
捕まるように ご祈祷するの…。

月代のお祈りって
とってもよく効くのよ!

アッハハハ… ハハハ… ハハハ…。

月代さんは どこに?

この向こうに
祈祷所があるんです。

亡くなった小夜さんが
お造りになった…。

小夜さんが?

生駒の聖天さんも
河内の聖天さんも

皆々いであい候らい給え。

オンバサラギニアンパヤソワカ
オンバサラギニアンパヤソワカ…。

我こそは 世にも聖なる
月代聖天なり。

あな尊う あな尊う
ありがたや ありがたや。

オンバサラギニアンパヤソワカ
オンバサラギニアンパヤソワカ…。

(竹蔵)本鬼頭の祈祷所は
当代 与三松さまが

小夜さんのために
建てたと聞いています。

その中で 小夜さんが
ご祈祷を…?

はい 「小夜聖天」と言って
一時 大繁盛しました。

病気が治る… 消え物
失せ物が現れると

本鬼頭には
毎日行列ができて大賑わい。

反対に あのころ
お寺や幸庵先生の所へ行く者は

ガタッと減りました…。

(等々力)坊主も医者も
あがったりというわけか。

村長は何度も 「小夜聖天は
邪教だ インチキだ」と

触れ回りましたが
なかなか熱は冷めません。

最終的には 本鬼頭の先代
嘉右衛門さまと 和尚さまが

手を組んで 小夜聖天を
潰しておしまいになりました。

島で 網元とお寺に逆らっちゃ
生きていけません。

で その後 小夜聖天は?

信者が ジリ貧になると
小夜さんは

大津波が来るだとか
火の雨が降るとか言いだして

最後は 座敷牢に閉じこめられ
そこで 死んでいきました。

あの座敷牢は もともと小夜さんの
ために造られたんですか?

先生… 先生!
そろそろ

お帰りになられたら
いかがですか?

これ以上お酒を
すごされますと

私一人では
お送りできませんよ。

和尚はどうした?
村長を呼んでこい!

もう お二人とも
お帰りになられました。

私は… 和尚さまより
先生をお送りするように

言われてますので…。
了沢 一本つけてこい!

先生! これ以上飲まれますと

また おかみさんに
ガミガミと…。

一本だ!
一本飲んだら帰る。

(祈祷する声)

(銃声)

金田一さん!

誰だ? 答えんと撃つぞ!

撃っちゃいけません。

早苗さん!

どうしてここへ?

あっ… 危ない!

駐在さん
お願いします…。

この人は… あなたの
知ってる人なんですね?

あなたの弟の
一さん?

違います!
弟じゃありませんでした。

(等々力)巣鴨の犯人だ!

警部! 彼が撃った弾
当たりましたか?

いや 弾丸の痕はない
拳銃で撃たれたんじゃない。

頭部に大きな傷がある
これが致命傷のようだ。

ああ
ご苦労さまです。

山狩りの大騒ぎを
尻目に 高イビキか…。

あの… 月代さんは?

まだ 「一つ家」で ご祈祷を…。

一つ家?
(鈴の音)

先代 嘉右衛門さまが
小夜聖天のことを

「一つ家の鬼婆みたいだ」と
おっしゃってたので

みんな 祈祷所のことを
一つ家と…。
(鈴の音)

おかしいわ… 月ちゃんの
ご祈祷 長すぎる…。
(鈴の音)

いつもは 20~30分で
飽きてやめてしまうのに…。

(鈴の音)

等々力さん!
はい!

月代さん…。
(鈴の音)

金田一さん!

あの… 等々力さん
マッチを お持ちじゃないですか?

マッチ…。

はい はい… マッチです。

すみません。

ロウソク…。

(鈴の音)

ああ…。

萩の花…。

(鈴の音)

金田一さん 鈴…。

(鈴の音)

(鈴の音)

(猫の鳴き声)

千万太… 僕は
君の力になれなかった…。

「むざんやな
冑の下のきりぎりす」。

むざんやな
冑の下のきりぎりす

今日は 金田一さんに
謝りにまいりました。

昨日の夜
金田一さんの問いかけに

正直にお答えしていれば
月代ちゃんも…。

あの山狩りの男性も 死ぬことは
なかったのかと思うと…。

フランスの 諺に
「夜は すべての猫が

灰色に見える」
というのがあります。

早苗さん あなたは

昨夜の山狩りで
殺された殺人犯を

ずっと 一さんだと
思い込んでらしたんですね?

そのとおりです。

千万太さんの通夜の夜
復員兵らしき人影を見てしまい

てっきり弟だと
思い込んでしまいました。

そして 花ちゃんが
死んだと聞いて

私は 弟が殺したのではないかと
疑ったんです。

それで 一さんに疑いが
かからないように

庭の靴跡を消した…。

昨日の夜
お話しすべきでした。

私が 大きな勘違いを
したばっかりに…。

あなただけではありません。
僕も あなた同様

あの男が 一さんだと
思い込んでました。

昨日殺された男性が
花ちゃんたちを次々に?

いえ もし あの男が
殺したんだとしても

死体を木に吊るしたり

鐘の中に押し込んだりは
しなかったでしょう。

おまけに
月代さんが殺された夜

あの男は山の中を
逃げ回っていたわけですから。

では…
いったい 誰が?

また いちから
考え直しです。

でも 手がかりも
一つ 増えました。

あの男は 死因となった
後頭部の傷から

花子さんを昏倒させたのと
同じ凶器で

殴り殺されたのではないか
ということがわかりました。

まあ… 恐ろしい!

その恐ろしい犯人を
捕まえるためにも

是非 今度こそ 早苗さんに
協力していただきたいんです。

私は… もう
すべてお話しを…。

僕は いまだに

大きくひっかかってることが
一つあるんです。

千万太君は 僕に

「なんとか三人の妹を
救ってくれないか」と 頼んだ…。

期待に添えなかったことが
とても悔しいんですが…。

さっき 早苗さんも

一君が 花子さんを
殺したのではないかと

疑ったと言っていましたね。

そこで お聞きしたいんです。

この島には もともと

何か 取り決めのようなものが
あるんでしょうか?

取り決め?

千万太君が死んだときには

あの三姉妹を葬り去れ
というような…。

もっと言ってしまえば

本鬼頭は あの三姉妹に
継がせてはならぬ

というような決め事が この島には
あるのではありませんか?

早苗さん…。

私は… 存じあげません。

早苗さん あなたは
この おぞましい事件に

終止符を打ちたいとは
思わないんですか?
思います!

思いますけど…。

私は この島で生まれ 育ち…。

死んでいく女です…。

金田一さんのように

好きな時に好きなところへ
行ける人間では…。

最初 金田一さんという
お名前を聞いた時

有名な探偵さんだと…。

金田一さんと出会えたことは
私にとって…。

でも… いずれ 金田一さんとは
お別れしなければならない。

それが 島の人間の

私の 宿命なんです。

早苗さん ちょっと
待ってください。

僕が探偵だと 皆さん
知ってたんですか?

駐在の清水さんは
知らなかったのに…。

あの人…
抜けてますから。

僕の正体を知ってた…。

「一つ家」か…。

みんな 祈祷所のことを
「一つ家」と…

「一つ家に
遊女も寝たり 萩と月」。

「むざんやな
冑の下のきりぎりす」。

「鶯の 身をさかさまに
初音かな」。

了沢さん! あなたにも
一つ聞きたいことが…。

千万太君の通夜の夜 すなわち

花子さんの殺された夜の
ことなんですが…。
何でしょう?

あの夜 僕は 和尚さんから
分鬼頭に千万太君の通夜を

知らせるよう
頼まれたでしょ?

分鬼頭に行くと
千万太君の通夜の話は

もう和尚さんから聞いたと言われ
僕は また 引き返しました。

そして 三又の所で
あなた方に出会った。

ええ 覚えてます。
それが…?

あの時 寺を出た後 三人
ずっと一緒だったんですか?

ええ。 ずっと一緒に
和尚さまと 竹蔵さんと…。

違う…。

いや 寺を出るとすぐに

和尚さまが
経典を入れた袱紗包みを

忘れたと言われ
私が取りに戻りました。

しかし 探しあぐねて
三又の所まで行ってみると

和尚さまは
「思い違いをしてた」と

袱紗包みをお見せになられました。

了沢さんが 寺に探しに行ってる間
和尚さんは 竹蔵さんと

一緒だったんですね?
だと思いますけど…。

わかりました。
ありがとうございました。

竹蔵さん! 竹蔵さん!

どうしました?
そんな息せき切って…。

今 了沢さんから
聞いて来たんですが…。

(竹蔵)あの時のことなら
覚えてます。

了沢さんが 和尚さまの忘れ物を
取りに戻った後 しばらくして…。

和尚さまが
「鼻緒が切れた」と…。

私が すげ替えましょうと
申し上げましたが

「自分でやるから 先に行け」
と言われ それで 先に行き

三又の所で待ってると
しばらくして 和尚さまが…。

それから
了沢さんが来て…。

よくわかりました。

(志保)先代 嘉右衛門は

晩年 雑俳に凝ってたわ。

俳諧ですか…。

和尚さんや村長 それに幸庵先生は
その会には?

あの三人は 先代の覚えが
めでたかったから 勿論 常連よ。

先代の懐刀といった
ところですか?

そうね。 本鬼頭は 分家のうちを
毛嫌いしてたし

小夜に入り込まれて 与三松を
骨抜きにされたでしょ?

頼りの千万太も 一も出征。
おまけに 与三松も

病気で倒れたから 先代は
あの三人のほか なかったのよ。

先代は 和尚さんたちと
小夜さんの追放のために

一致団結したと
聞いていますが…。

フフフフッ それぞれ ほら…
小夜とあったから…。

小夜聖天が繁盛してからは
お寺と医者には

島の者は 寄りつかなくなって
和尚と幸庵は 干上がった。

村長も 与三松と
小夜を争ってたっていうし…。

嘉右衛門だって
どうだか…。

えっ?

みんな本鬼頭のため 島のためって
大義名分振りかざして

小夜を追っ払ったけど
一皮むけば

島で 偉いとされてる男どもの
色と欲に狂っただけの話よ。

そりゃあ 『道成寺』を踊る小夜は
女の私が見たって

ゾクッとするぐらい
きれいだったからね。

特に幕切れに 釣り鐘に登る
小夜の姿は

今でも 目に焼きついて…。

『道成寺』の釣り鐘…。

その 舞台で使われた
釣り鐘は 今…。

さあ 本鬼頭の 蔵の中にでも
眠ってるんじゃないかしら。

その釣り鐘は もちろん
芝居の道具なんですから

鉄なんかじゃなくて その
竹や紙で出来てるんですよね?

そうよ。 あの釣り鐘は 仕掛けで
真ん中から二つに割れるの。

二つに割れる…。

もうちょっとだ。

(竹蔵)なんで こんな物が
こんな所に?

それは ここが… 天狗の鼻の
真下だからです。

皆さん お揃いですか?

村長と お医者の先生だけは
まだのようですね。

和尚さん… お二人は
いらっしゃいますか?

さあ 知らんなあ。

そうですか…。

では 始めることにします。

ワシは 先に失礼する。
旅の支度があるもんでな。

和尚さん いてください。
あなたが 主役なんですから。

和尚さん…。

この屏風を 僕の枕元に
置いてくださったのは

和尚さんですね?
知らんな。

「鶯の 身をさかさまに
初音かな」。

「むざんやな
冑の下のきりぎりす」。

「一つ家に
遊女も寝たり 萩と月」。

なかなかに 癖のある字で
読むのに 骨が折れました。

分鬼頭の儀兵衛さん
そして 志保さん。

この短冊に書かれた句が 誰の手か
おわかりになりますか?

これは先代の嘉右衛門じゃろう。

先代の字です。

私たちも いつも読みにくくて
苦労したわ。

(等々力)金田一さん…
何を始めようというんです?

僕が 千万太君の訃報を知らせに
仙光寺に行った時

和尚さんは 「あとで
本鬼頭で会おう」と言って

僕を 分鬼頭に
使いにやりましたね?

そして 本鬼頭に同道した
了沢さんには

「袱紗包みを忘れた」と言って
取りにやらせ…。

竹蔵さんには 「下駄の鼻緒が
切れた」と言って…。

それが何か?

和尚さんには あの時
どうしても

一人にならなければならない
理由があったんです。

なぜなら 石段の下の
祠の中に

花子さんを
隠してあったからです。

和尚さま…
本当ですか?

(志保)この子の名前でもかたって
呼び出したわけ?

おそらく そうでしょう。

鵜飼さんからの伝言だと
和尚さんから聞いた 花子さんは

喜んで 祠の中に
入ったんでしょうね。

(鵜飼)とんだ生臭坊主だな。

なんじゃと!?
まあまあ…。

金田一さんの話を
聞きましょう。

我々に ウソをついて
一人になった和尚さんは…。

(ノック)

千万太君の通夜の後 花子さんを
捜せと指図して

先に引き上げた和尚さんは 祠から
花子さんの死体を運び…。

境内の木に…。

「鶯の 身をさかさまに
初音かな」。

何て酷いことを…。

あの時 境内に入った我々は
花子さんの死体を見ました。

そのあと 僕は 禅堂のほうに
見入ってる和尚さんに

気がついたんです。

あの時 和尚さんは
寺に忍び込んだ

例の殺人犯を
見てしまったんでしょう。

和尚さんは 殺人犯に
花子さんを木につるす

一部始終を
見られてしまったと思った。

では 山狩りの時
ヤツを殺したのも…?

花子の頭の傷と あの男の
致命傷が同じだったのは?

うっ あっ あ~っ!
あ~っ あ~っ!

(銃声)

村長と 幸庵先生は?

いや まだ…。

逃げたんじゃよ 二人とも…。

そんなら 村長も先生も
事件と関係が?

「一つ家に 遊女も寝たり 萩と月」
から 話しましょうか。

月代殺しですね?

山狩りのあった夜
本鬼頭に残っていたのは

殺された月代さんと…。
私もです。

私も。 でも…。

早苗さんは 途中で
山狩りの様子を見に行って

殺人犯の死に 出くわしています。
ですから あとは

座敷牢の中にいた
与三松さんと…。

幸庵先生です。

私が先生に言われて

お燗をつけに 台所に行ってる間
先生は お一人でした。

(祈祷する声)

「一つ家に
遊女も寝たり 萩と月」。

(等々力)「むざんやな
冑の下のきりぎりす」。

これが いちばんの難問でした。

駐在さんが 最初に鐘を見た時
振り袖は はみ出していなかった。

そのあと 雨が降りだして
雪枝さんが発見された時

はみ出した振り袖は濡れ
しかし 鐘の中は

体も 着物も濡れていなかった。

金田一さんは 駐在さんたちが
天狗の鼻と

分鬼頭を往復した 14分の間に
犯人が 鐘の中に押し込んだと…。

最初は そう思ったんです。
しかし どうしても引っ掛かる。

雪枝さんの死亡推定時刻は
6時から7時の間。

なのに なぜ 8時40分まで
鐘の中に入れなかったのか?

やはり 雪枝さんは 殺されて早々
雨が降る前に

鐘の中に押し込められて
いたんです。

でも 私は あの時 振り袖は
誓って 見ておりませんが…。

もう一つ
鐘があったんですよ。

ほら 小夜聖天が
芝居してた頃の…。

張り子の鐘が 本物より
大きいというのが ミソでした。

あ そういえば あの夜
分鬼頭へ行く途中

「ひと雨来そうだが 釣り鐘は
大丈夫かな」って言いだしたのは

村長だった。 あ それで
懐中電灯で鐘を見た。

振り袖が はみ出してないことを

誰かに
見せたかったんじゃのかな。

で 帰りは どうでした?
あっ!

雨の中 本鬼頭へ戻る途中 村長が
「小便だ」と言って 脇道へ入った。

たしか あれは
天狗の鼻の辺りだった。

その時に
張り子の鐘を…。

何で そんな酷いことを…。

修羅の妄執とは
このことじゃなぁ。

森羅万象…
何もかも運命じゃ。

一が帰って来ると聞いて
喜んだのも つかの間

千万太が死んだとわかった。

その ちょうど同じ日に
寺の釣り鐘が戻った。

何もかも揃いすぎた。

ワシは 恐れおののいた。

嘉右衛門さんの妄執が
すべてを差配してるとしか

思えなかったんじゃ。

先代は 三姉妹を
殺せなどと…。

いや 言われたんじゃ。

いまわの際に ワシと 村長と
先生を枕元に呼んで

その句を託され そのとおり
殺せとの厳命を受けた。

出征した千万太が
戻らぬとわかったら

必ず実行せよと 繰り返し
繰り返し言われた。

本鬼頭の跡を継ぐ人間に

月ちゃんたちは
邪魔だということですか?

あの子たちは
邪魔などいたしません!

誰が跡を継いでも
口出しなんか…。

嘉右衛門さんの考えは違う。

三姉妹が生きていては
本鬼頭のため

ひいては
この島のためにならんと…。

ハハハハハッ…。

金田一さん!
私の言ったとおりでしょう?

本鬼頭のため
島のためって言いながら

この連中は 小夜の影を一刻も早く
消し去りたかったのよ。

誰のタネかわからない
三姉妹の存在自体を

この世から 消し去って…。
黙らっしゃい!

分家の分際で
つまらん口出しをするな!

アンタたちは 小夜の亡霊に
とりつかれてるのよ。

それが わからないの!
警部! 等々力警部!

医者の 村瀬幸庵は

笠岡の路上で 泥酔して倒れている
ところを 保護されたそうです。

村長の 荒木真喜平は
自宅物置で

首をつって死んでいるところを
発見されました。

いざとなったら

すべてを背負ってやる
つもりじゃったのに…。

バカが…。

僕が もっと早く
気がつくべきでした。

千万太君から
託された手紙の宛名が

和尚さんたち三人の
連名となっていたことの意味に。

亡くなった嘉右衛門さんから
三人が 後事を託されたと

にらんだ千万太君は
炯眼でした。

和尚さん…。

最後に あの屏風のことを
伺ってもよろしいでしょうか?

あなたは この計画が
途中で頓挫すればいいと

どこかで お思いでは
ありませんでしたか?

僕が探偵だと知り あの屏風を
置いて 計画に気がつけば

うまく
中止することができると…。

さあ どうかな?

計画を 先延ばしに
したかったんじゃないんですか?

一さんの復員を待って

新しい跡継ぎになる
一さんの意見を 聞こうと思った。

いや ワシは
嘉右衛門さんの執念の

あさましさというよりも
哀れさに泣いて

このことを
決行したんじゃ。

なぜですか?

嘉右衛門さんは とうの昔に
亡くなられているというのに…。

いや それは…。

先代は…。
早苗… よせ!

先代 嘉右衛門と 当代 与三松は

同時期に 病の床につきました。
そして 先に嘉右衛門が死に

嘉右衛門の葬儀の時も 与三松は
あの座敷牢から一歩も出ず

そのあとも
人前に姿を現していません。

早苗… もうよい。 帰れ。

帰ります。

さ… 私もまいります。

(了沢)和尚!

あなたは
どう 罪の償いを?

償いか…。

わかっておる。

(門の開く音)

早苗さんは いったい
何を言おうとしたんでしょう。

嘉右衛門の葬儀の時も 与三松は
あの座敷牢から一歩も出ず

そのあとも
人前に姿を現していません

もしかして…。
あ 金田一さん!

早苗さん!

殺すつもりで…
戻ってまいりました。

脈は ありません…。

亡くなられてます。

私の思いは
果たせませんでしたね。

ここにいたのは
与三松さんではなく

先代の
嘉右衛門さんだったんですね?

先に… 与三松が死にました。

しかし 嘉右衛門は 「自分が死んだ
ことにせよ」と 私に命じ…。

島の人間の
本心が 知りたかったようです。

本鬼頭に対する気持ちを…
自分に対する本音を…。

嘉右衛門さんが 生きていることを
知っていたのは?

最初は 世話を任されていた
私だけで

そのうち 和尚と 村長と
先生が気づいて

嘉右衛門の 生命力の強さに驚嘆し
恐れおののいていたようです。

その時に三姉妹のことを?

私は 知りません。

そんな話…
真に受けるなんて…。

ボケ始め…。

言っていることが だんだん
おかしくなってましたから。

一人の 頭のおかしな
愚かな人間の 繰り言のために

なんで あの子たちが

命を落とさなければ
ならなかったのか…。

千万太さんが…。

一が…
無事に帰って来るまではと

私 懸命に この家を
守ってまいりました。

それが こんな結果に
なるなんて…。

私… この家が嫌いです。

この島が嫌い。

大嫌いです!

三つ子といっても 三人三様。
それぞれに個性があって…。

月代:花子が悪いのよ。
(花子)雪姉ちゃんよ

私 あの子たちの
ケラケラ笑う 笑い声が好きでした。

無邪気で 屈託がなくて
野放図で…。

あの笑い声を
奪い去ってしまうなんて…。

許せない。

金田一さん…
私は 人殺しです。

思いは 果たせませんでしたが
人殺しの心を持ちました。

捕まえてください。

僕らは 遠い国で
人を殺してきました。

でも お咎めなしなんですよ。

(竹蔵)早苗さん! 早苗さん!

(カラスの鳴き声)

どうしました?

弟が…。

たった今 駐在さんの所に
連絡が入ったそうなんですが

こちらの 一さんの無事を
伝えてきた男が

復員詐欺で捕まったらしくて…。

復員詐欺?

では 一さんの復員は?

間もなく…
戦死公報が届くだろうと…。

金田一さん…。

私にはもう… 待つ人も…。

守るべきものも
なくなってしまったようです。

何と言っていいのか…。

私… この獄門島を…。

早苗さん…。

金田一さん…。

月代ちゃんたちが
付け文を交わしていた

恋ヶ浜の地蔵を
ご存じですか?

知っています。

待っていてくれませんか?

新しい世の中に
なったんでしょ?

古いものに縛られず
生きていける世の中に…。

決心がついたら…
まいります。

何だ… 等々力さんですか。

私じゃ ダメですか?

もうじき 船が出るって
教えにきてあげたのに…。

すみません。
金田一さん
この島に残られるんですか?

いえ もちろん行きますよ。
二人一緒に…。

二人一緒? 二人とは…?

等々力さんに
決まってるじゃないですか。

遅いな…。

どなたか
お待ちですか?

いえ…。

金田一さん…。

船が出るぞ~!

金田一さん!
急ぎましょう。

全てが無に帰して
島も再出発だ。

早苗さん
立ち直れますかね?

立ち直れますよ
空が こんなに青いんですから。

海だって…。