刑事殺し 警視庁捜査一課の現職刑事が自宅で射殺された。凶器は被害者自身の銃で、犯人が持ち去った。係長の大垣は怨恨の線で…

出典:EPGの番組情報

[字]昼の特選ドラマ劇場 刑事殺し

「夫が自宅で射殺された!結婚記念日に届いたバラ!奪われたネガに隠された女の秘密!?」▽テレビ朝日系列で2007年に放送された第1シリーズ

詳細情報
番組内容
警視庁捜査一課の現職刑事が自宅で射殺された。凶器は被害者自身の銃で、犯人が持ち去った。係長の大垣は怨恨の線で捜査を指示。野津は違和感を覚えながら事件の驚くべき真相を暴く。
出演者
仲村トオル、古谷一行、麻生祐未、山本未來、村田雄浩、六平直政、清水紘治、斎藤洋介、宇梶剛士、徳井優、板尾創路、カンニング竹山 ほか
番組ホームページ
<番組ホームページはこちら!>
www.bs-asahi.co.jp/hiru/

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

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  15. 係長
  16. デカ
  17. ホント
  18. 一緒
  19. 事件
  20. 松川

解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

   ごあんない

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♬~

♬~

(大垣俊史)ん…?

♬~

行こうか。

♬~

♬~

(野津)坂井邦彦。

恐喝 及び
麻薬取締法違反で逮捕する。

(銃声)
(悲鳴)

客 誘導しろ!

(猿橋)銃を捨てろ!
捨てないと撃つぞ。

(坂井)うるせえ!
こいつ ぶっ殺すぞ!

お願い 撃たないで…。

(銃声)
(悲鳴)

猿橋さん!

サル! 何やってんだ 野津!

(銃声)

♬~

警部。
立ちなさい!

おい サル…。

肩だったのか? お前。
すいません。

大丈夫か?
すまん。

行くぞ。
はい。

(熊谷宗一郎)
「警視庁捜査一課11係は

広域重大事件において
多大なる貢献を果たされました」

「よってここに
警視総監賞を授与します」

「平成18年11月1日
警視総監 熊谷宗一郎」

(熊谷)やあ 捜査一課の中でも
君の11係は まさに猛者揃いだな。

ご苦労だった。

はっ。

(鳴海)だから俺らは
アホだっつーの。 なっ?

(笑い)

だってよ 日頃は
デカ辞めたいと思ってんのによ

警視総監賞もらったらさ

いきなり 「おーし!」なんて
気持ちになっちまうんだよな?

そしてまた
馬車馬の如く働くと。

まだ痛むか?
ちょっとな。

まったく お前らしいよ。
(笑い)

笑い事じゃないんだよ サル。
あぁ はい。

ん? ほい。
あ どうも。

お前 どっか甘いところがある。
気をつけろ。

いずれ それが命取りになるよ。
はい。

一課はやがて お前たちが
引っ張っていく事になるんだ。

妙な情で
出世 逃がすような事はすんなよ。

出世は野津に任せますよ。
私は そんな器じゃないんで。

それに ノンキャリアには

昇進試験っていう
壁がありますからね。

バーッカ! 勉強して
乗り越えりゃいいじゃねえか。

そんなもの。 なあ 野津?
そんな暇があったら

俺は ホシを追っかけますよ。
(笑い)

お前ら ホンットにいい奴だ。
でも 欲がなさすぎるよ!

(小出)係長! 賞状を真ん中に
写真 撮りましょう。

いやいや 俺 写真ダメだよ。
勘弁してくれ。

係長が主役なんだから。
なあ?

(小出)係長 逃げちゃうから
早く みんな集まって!

渡辺さん 早く入って!
はい いきますよー。

いい? いい? いくよ
いくよ! はい ポーズ!

(カメラのシャッター音)

♬~

(野津めぐみ)いってきます!

(野津希和子)めぐみ。
車に気をつけてね。 はい!

ただいま。

けっ…。

3日ぶりに 亭主が
我が家に帰ってきたんだよ。

本部に寝泊まりして
いつ現れるかしれない犯人を

張り込み続けた亭主が。

そういう時 女房としてはさ
「ご苦労様でした」とか

「疲れたでしょ」とか
そういう一言がないもんかね?

はい お土産。

(希和子)そんなとこ置かないでよ
洗濯物。

え…。 何 怒ってんだよ?

昨夜の8時は どこにいたの?
8時?

8時は本部にいましたよ。

張り込み続きで
書類が溜まって 溜まっ…。

あぁ~…。 昨日 21日か?

やっと思い出したみたいね。
それで…。

あなたね
自分で言い出したんでしょ?

「21日の8時からなら
少し時間が取れる」って。

「たまには2人だけで
飯を食おう」って

「麹町のレストランで
待ってろよ」って。

都合が悪いなら悪いで
何で言ってこないのよ?

いや… 忘れてた。

いや だってそれ 先週の話だろ?
お前と その約束したの。

あれから
いろいろあったからなぁ。

呆れて物も言えないわ。

でも 遊びほうけて忘れたわけじゃ
ないんで。 仕事だよ 仕事。

おい 聞こうよ…。
仕事で忙しかったんだよ。

(希和子)ええ ええ
そうでしょうとも。

1に仕事 2に仕事 3 4がなくて
5に仕事よ あなたは!

そういう言い方をするなよ。
お前だって これから仕事だろ?

言っときますけどね
私は仕事に加えて

家事に育児に近所付き合い
全部 1人でやってるの!

それでも あなたとの約束を忘れる
なんて 私にはありえないわよ?

別居しましょう。
はあっ!?

少し距離を置いたほうが
いいと思う。 私たち。

いや… 何を大げさな事
言ってんだよ お前…。

今度の事だけで
言ってるんじゃないの。

ずーっと こうじゃない。
結婚してから あなたって。

一度 1人になって
考える必要があると思う。

私たちにとって
夫婦って何なのか。

子供は?
めぐみ どうすんだよ。

うちは これまでも
母子家庭とおんなじよ。

(ため息)

わかった。 お前が どうしても

そうしたいって言うんだったら
仕方ないな。

平気なの? あなた。

平気も何も
お前が言い出したんだぞ?

近いうちに部屋探して ここから
出ていくよ。 それでいいな?

なん…。

(携帯電話)
ああ もう…!

(携帯電話)

はい?

「ハッハ…。 何だよ。
えらく無愛想だな」

ああ 係長ですか?

立川が殺されたぞ。
「えっ?」

立川博昭。 お前が前に挙げた
恐喝の常習犯だ。

ああ…。 あの立川が。

「新宿のグランドアーバンホテルだ。
お前 どうする?」

もちろん行きますよ。
ホトケの顔だけでも拝んできます。

「そうか。 今な
猿橋の班が行ってるから

終わったら 一旦
こっちに戻るように言ってくれ」

わかりました。

そうなんですか。 この男
野津主任が挙げた男ですか。

いつ ムショから
出てきたんだろうな。

半年ほど前です。 一度
国元に帰ったのですが

その後 すぐに東京に
舞い戻ってきたみたいですね。

このホテルには?

昨日から今日いっぱいの予定で
チェックインしてる。

恐らく 新たなターゲットでも
見つけて

交渉場所に使うつもり
だったんじゃないかな。

(小出)あぁ 主任。 死因は絞殺。
鎖骨が折れてます。

死亡推定時刻は?

昨夜の8時から10時
ってとこだそうだ。

主任。 ご苦労様です。

田淵の張り込みどうした?

赤坂と交代してきました。 主任が
こっちにいるっていうんで。

へえ~。 田淵って 1か月前に
パチンコ店 襲った奴ですよね?

まだ押さえらんないんすか?

うるせえな。
やってんだよ 一生懸命!

田淵のほう 片付かなきゃ
このヤマ 無理だろ?

ああ。 これは
そっちに任せるよ。

それにしても 悪党の割に
随分簡単にやられちまったな。

ああ。

(猿橋)じゃ。
じゃ。

あ そうだ! ちょっと。

何だよ。

涼子がさ また来てくれって。
希和子さんにも会いたいからって。

ああ…。 ああ 伝えとくよ。

悪いな。
いやいや。

じゃ。
(鳴海)ご苦労様です。

涼子ってのは
猿橋さんの奥さんですか?

ああ。 すごい美人だぞ。
購買部のマドンナって呼ばれてた。

うちの?
ああ。

だから デカの仕事も
よくわかってるよ。

どれだけ遅く帰ろうと
何日 家を空けようと

黙って待ってるってさ。

そうか。 やっぱ 身内から
嫁もらうと 話 早いやな。

(猿橋涼子)そう。
じゃ また忙しくなるのね。

そう。 遅い日続くよ また。

(涼子)ねえ
いい匂いするんだけど 何か。

ホントに 焼き芋に敏感だよね。
匂いでわかっちゃう。

いつもありがとう。

こんな事ぐらいしか
できないからな。

また買ってきてね。

埒があかんな このままじゃ。

張り込む相手が
違ってんじゃないのか?

田淵には あの女しか
頼る相手はいませんからね。

いずれ 必ず現れますよ。
ふーん。

おう。 容疑者 出たんだって?

ああ 阿部って男だが…。 立川が
出所後に組んだ仲間なんだが

事件後に 姿くらましてる。

どんな男だ?

(猿橋)ただのチンピラだよ。

ああ… ホンボシか?

どうかな?

後で 詳しく
捜査状況聞かせてくれ。

はい。

どうした?
ん?

えらく顔色悪いぞ。
寝不足か?

まあな。

ん?
いいから。

おっ!
大丈夫かよ?

ここんとこ
ろくなもの食ってなくてな。

腹ペコだったんだよ。

(猿橋)お前… 別居したらしいな。

涼子から聞いたよ。

希和子さんが家に来て
打ち明けたらしい。

本気で別れるつもりなのか?

さあ。 言い出したのは
向こうだからな。

あいつがそうしたいって
言うんだったら まあ仕方ないな。

ちゃんと話し合ったのか?

夫婦で向き合って ちゃんと
気持ち 伝え合ったのか?

いや…。

いきがかりで そうなったんなら
すぐに戻れ。

いや そういうわけには
いかないよ。

こっちにも意地があるからな。

お前は意地で別れるのか?

惚れ合って 一緒になったんだろ。

そんな夫婦が 簡単に
別れていいはずないじゃないか!

早まるなよ 野津。

早まるんじゃない。

ああ。

お互いのヤマが片付いたら
また一杯やろうぜ。 なっ?

ああ。

どうだ?
(赤坂)女の様子が変ですね。

仕事にも行かず
ずーっと部屋に篭ってますよ。

主任。

♬~

よし… 行こう。
はい。

あんた! 逃げて!

田淵!

♬~

やめて… やめて!

放して… 放して!

落ち着きなさい。

(携帯電話)

野津だ。

「小出です」

「猿橋さんが殺されました」

「猿橋主任が 自宅で
射殺されました」

「もしもし 野津主任?
聞こえてますか?」

「もしもし?」

♬~

何があった?

何があった!

7時までは 僕と一緒に
阿部のアパートを張り込んでました。

それが…。

ちょっと 家に行ってくる。

はい?
すぐに戻るから 後 頼む。

いや… えっ 主任!?

いつまで待っても戻ってこないし
携帯もつながらないし

おかしいと思って来てみたんです。
そしたら…。

理由は何だ?

猿橋が自宅に戻った理由は何だ?

(小出)すいません わかりません。

わからない…?

(刑事たち)主任!
何で聞かなかった?

こいつが張り込み現場を離れて
自宅に戻るなんて

おかしいと思わなかったのか
お前は!

思いました。 思いましたけど…
すぐ戻るって!

バッカ野郎…。
戻ってきてねえだろ! 小出!

野津! 落ち着け!

小出のせいじゃないんだ。

♬~

主任。

猿橋の拳銃が見当たらない。

捜したが どこにもなかった。

まさか 猿橋は…。

厄介な事になったよ。

現職刑事が
自分の所持拳銃で殺され

その拳銃は
実弾もろとも消えた。

マスコミが喜びそうな話だな。

あ… 田淵を捕ったそうだな。

ええ。 所轄に任せてきました。

そうか。

係長 涼子さんは…。 猿橋の
奥さんは今どこにいるんですか?

お前の家だ。
俺の?

今夜 猿橋の細君は
お前の細君と一緒に

ディナーショーに出かけたらしい。

ちょうど俺が 現場に駆けつけた
時に 2人一緒に戻ってきた。

事件を知ると
パニックになってな。

会わしてください!

(大垣の声)あの猿橋の姿は
とても見せられん。

だから 俺が強引に止めて
後を希和子さんに頼んだ。

しばらくは奥さんを 自宅に
戻さないほうがいいでしょうね。

久しぶりに気晴らしができたって
2人とも喜んでたのよ。

そしたら あんな…。

涼子さん 自分がいなかったせい
だって 自分を責めて…。

私もう どうしていいか
わからなかったわ。

少しは落ち着いたのか?

でも何で こんなひどい事が?

仕事のせい?
だから こんな目に遭うの?

猿橋さんが あなただったらって
思うと 私…。

(すすり泣き)

あ… 念のため言っとくけど

今夜 どさくさ紛れに
家に泊まったりしないでね。

じゃあ 猿橋からは何も?

来客があるというような事も?

(ため息)

落ち着かないのはわかるけど
もう寝ろ。

無理だよ。
努力しろ。

苦しんだんでしょうか?

あの人… 死ぬ時
苦しんだんでしょうか?

たぶん 苦しむ間もなく
亡くなったと思います。

銃弾は 正確に
心臓を撃ち抜いていました。

(号泣)
即死だったと思います。

それが せめてもの救いだと…。

(涼子の号泣)

(志村)「本件は
警察の威信にかけても

早期解決 早期決着を
図らねばならない」

「そのためには
一課全体が1つとなって

捜査に当たる必要がある」

「まあ それぞれに
忙しいとは思うが

各係とも 垣根を取っ払って
一丸となって取り組んでほしい」

(沼田)冗談じゃねえぜ。 こっちは
他のヤマで 手一杯なんだよ。

(渡辺)死亡時刻は午後8時10分。

この時 近所2軒の家で
銃声を聞いてますが

どちらも車のパンクだと
思い込んだようで

改めて外に出て 確認を取るような
事はしなかったそうです。

目撃情報は?

はい。

タレコミが18件ありまして
随時 裏づけを取っておりますが

ほとんどが ガセネタの類でして。

室内から持ち出されたのは
今のところ 拳銃1丁。

物盗りの線は
外していいと思います。

やはり怨恨の線が妥当だろう。

(小出)いやでも猿橋さんは

そんな 人に恨まれるような人では
ありません。

刑事である以上 たとえ善人でも
誰かしらの恨みを買うもんだ。

犯罪者や その家族からの。

他にないか?

このヤマは 動機が重要だ。

考えられる可能性を
ここで出し切ってくれ。

野津。 どうだ?

動機というか… ホシのイメージが
どうもピンと来ませんね。

(志村)というと?

猿橋は 刑事にしては
穏やかな性格の男でしたが

それでもあいつは 修羅場を
くぐり抜けてきた一課のデカです。

その猿橋が こうもあっさり
自宅で殺された事が

まず腑に落ちません。

自宅だからこそ
油断したんじゃねえの?

ったく 間抜けな話だよ。

てめえのチャカで
やられるなんてよ。

現場からは今のところ

手がかりになるものは
何1つ 発見されてません。

まるで
プロの殺し屋の仕事のように

きれいに痕跡が消されてる。

修羅場をくぐり抜けてきたとは
言いましたが

猿橋は ただの現場のデカです。

公安や マル暴ならともかく

殺し屋に狙われるようなヤマは
扱ってません。

それなのに
弾は心臓に 正確に1発。

素人にしては
手口が見事すぎます。

だからつまり
何だと言いたいんだ?

だからつまり…。

わからんという事ですよ。

ホシの顔が
どうしても見えてこない。

面が割れてりゃ苦労はねえや。

オグラ担いで ワッパ掛けに
行きやしょうってな。

この野郎…。 やる気もねえのに
人の揚げ足ばっか取りやがって

黙ってろ!
鳴海!

このヤマはな 俺たちだけで
蹴りをつけてやらあ。

てめえらに助っ人は頼まねえから
おとなしく黙ってろ!

甘いんだよ 11係は。

何だと!?
(刑事たち)鳴海さん!

(鳴海)てめえにはな
猿橋さんの気持ちが…。

やめろ! やめんか!

(志村)まったく…。 たった今

一課全体が1つになれと
言ったばかりだろうが!

何聞いてんだ お前らは!

あの…。 今ちょっと
思い出したんですけど

猿橋さん 過去に誤認逮捕が
一度あるんですけど。

(渡辺)誤認逮捕?

あぁ… あれか 3年前の。
(小出)はい。

江戸川区の小岩で造園業を営む
松川という男が殺された事件です。

(渡辺)誤認逮捕されたのは?

松川の使用人の
清水哲雄という植木職人です。

凶器となった刈り込みバサミの線から
被疑者として浮上したんですが

猿橋さん その清水の奥さんと
松川との間に

肉体関係があった事を
つかみ出して

それで逮捕に踏み切ったんです。

(清水哲雄)だからやってないです。

(小出)それに その清水が
同じ職人仲間に

犯行時刻のアリバイを
偽証させていた事もわかって

猿橋さんは
逮捕に自信を持ってました。

何かあるから嘘つくわけだろ?
(清水)いやだから ホントに…。

だから ホントの事を ちゃんと
言え。 そしたら楽になるから。

(小出)ところが公判を控えて

思わぬところから
真犯人が出たんです。

殺された松川の娘婿の
矢島という男です。

そう。 確か その矢島

ギャンブルで かなりの借金を
抱えていたんだっけな。

(小出)はい。 そこで舅の松川に
返済を頼んだんですが

逆に激しく罵られ
犯行に及んだという事でした。

あったな。
そういえば そんな事件が。

随分 悔やんでましたよ 猿橋さん。
思い込みが強すぎたって。

清水の奥さんと松川との不倫が

決定的な動機だと
考えてましたから。

誤認逮捕か…。

元の職人仲間の話だと
清水は事件後

仕事もせずに
酒浸りの生活だったようです。

まあ 女房と雇い主との関係が
公になったわけですから

そりゃ無理もないんでしょうけど。

ここで働くようになったのは
いつからだ?

(赤坂)
1年半ほど前からのようです。

今は真面目にやってるようですが。

よし 行こう。
(赤坂)はい。

(鈴木)ああ。 いや せやから
それは知ってるけど。

そこをやね…。
すいません。

(鈴木)ああ。 せやから
4トン1台で行けるて。

行って 頼むから。 ああ 5時。
はい 承知つかまつった。

いつも悪いね。 はいどうも!

嫁はんが風邪引いて
寝込んでしもうて。

えーっと… どちらさん?

警視庁捜査一課の野津といいます。
赤坂です。

清水哲雄さんという方が こちらで
働いていると聞いて来たんですが

今は どちらに
いらっしゃいますか?

まさか 3年前の事件

また ほじくり返す気
ちゃいまっしゃろな?

(鈴木)清水はやっと
立ち直ったとこなんですわ。

どっかの間抜けな
刑事さんのせいで

人生メチャクチャにされたけどな。

(鈴木)あいつが あの後
どんなに苦しんだか

あんたら知らんやろ?

公判前に 釈放さえたとはいえ
逮捕された事実は消えへんわ。

世間は白い目で見る。
仕事はなくす。

酒に溺れて 荒れに荒れたよ。

まあ 単に疑われただけやったら

あいつも ああまで荒みは
せえへんかったやろうけど

嫁はんと松川の事があるからな。

おまけに その嫁はんは
自殺しはるし。

自殺…?

(鈴木)散々 世間に
叩かれたからな。

さすがに つらかったんやろう。

清水の留守中に
首くくって死なはったわ。

泣いたな… あいつ。
ほんまに惚れてたからな。

失礼します。

♬~

清水さんとは 以前から
知り合いだったんですか?

自宅の植木を任せてたんよ。

無愛想やけど ええ仕事するし

同じ関西やから 気にいっててん。

けど 「もう二度と 植木バサミは
握られへん」言うから

「ほな うちで働け」って
強引に引っ張ってきたんよ。

「過去は忘れて出直せ」
言うてな。

ようやっと 前向きに
なってきたとこなんよ。

もう そっとしといたってえな。
刑事さん。

(足音)

社長
いつもの蕎麦 買うてきたで。

(清水)あの社長には ほんまに
世話になってるんですよ。

今の俺があんのも
社長のおかげですよ。

さっきの蕎麦ね
社長の大好物なんですよ。

月に何回か 信州に
運ぶ荷があるんやけど

途中の御坂峠に 手打ち蕎麦を
売りにしてる茶屋があってね。

通ったら 絶対
買うて帰ってくるんですよ。

安い土産やけどね。
フフフ…。

奥さん 亡くなられたそうですね。

自殺だったと伺いました。

例の誤認逮捕のせいですか?

恨んでますか? あの時の
猿橋という刑事を。

女房は 松川に
強姦されたそうです。

その後も 関係が続いたんは

「旦那に知られたなかったら
おとなしい 言う事聞け」って

脅されてたからや!

そうやと思うてました。

女房が自分から
そんな事するはずないから。

けど 頭に浮かぶんや。

女房と松川の姿が…。

消しても…
消しても 浮かんでくるんや!

刑事さんに言われるまで
2人の事は知らんかったんですよ。

取り調べ中に突きつけられて
初めて知りました。

あの時から 俺は…。

待って お願い!
違うの… 違うの。

ホントに ホントに違うの。
違うの!

ほんまに もうええから。

♬~

ううぅ… ああぁー!

俺が あいつを殺したんや!

刑事さん 関係ない。

シロだと思いますね 清水は。

あの男には
猿橋を殺す理由がありません。

(赤坂)いやでも 今のところ
アリバイもないですし

まだシロと決めつけるのは
早いんじゃないですかね。

アリバイはどうなってんだ?

猿橋さんが殺された時間は
自宅にいたって言ってます。

翌日 早朝から仕事が入ってたんで
早めに床に就いたって。

じゃあ 確かな事はわからんな。

もうしばらく 周辺洗ってみろ。

慌てて クロシロつける事はない。

はい。
(ドアの開く音)

(鳴海)ただ今 戻りました。
お疲れっす。

どうだった そっちは?

タレコミに関しては
今日で全部 裏が取れましたが

結局 どれも無駄足でした。

鳴海。 飲むなら
帰ってからにしろよ。

末期の水の代わりです。
猿橋さんの。

♬~

(読経)

♬~

(むせび泣き)

なるほど 美人ですね。

猿橋が惚れ抜いただけの事は
あるだろ。

はい。

部長のお出ましですよ。

ご苦労様です。

ケッ。 相変わらず
澄ましやがって。

聞こえるぞ。
(鳴海)別に構いはしませんよ。

俺たちが良くても係長が困る。

そうか。 係長の奥さんは
部長の妹さんでしたね。

でも本当は 若く見えても

係長のほうが
部長より年上なんですよね。

こういうとこにも
差が出ちまうんだな。

キャリアとノンキャリアは。

係長も さぞ
やりにくいでしょうね。

あ…。 んだよ!

(読経)

どうも ご苦労様でした。

(花屋)あのー。 猿橋涼子さんに
お届け物なんですけど。

(花屋)ご主人様からだと思います。
猿橋吾郎さん。

(希和子)えっ? あ…。

主人が 頼んだんですか?

(花屋)はい。
結婚記念日のバラだから

配達の日を間違わないでくれって
念押しされまして。

いつですか?

(花屋)一昨昨日の昼間です。

まあ…。

♬~

猿橋さんて 最後の最後まで
あなたの事 思ってたのね。

ホント 事件の日の
ちょうど昼間でしょ。

これを注文したのって。 ねえ
結婚記念日のバラだなんてね。

何か せつなくなってくるけど。

大丈夫? 顔色悪いけど?

少し 疲れたみたい…。

あぁ そうね。
大変だったもんね。

あの… あ お布団敷こうかね。
ね 少し休みなさいよ。

あ 自分でやります。

あぁ 大丈夫だから。
はい お茶飲んでね。

(めぐみの声)
「塾の帰りに寄りました」

「たこ焼き買ってきたから
置いてくね」

「お母さん やっぱ元気ないよ。
めぐみ」

(ため息)

よし。

(携帯電話)

もしもし。

(小出)「主任 阿部押さえましたよ」
えっ?

いや 阿部ですよ 阿部。
立川殺しの容疑者ですよ。

あぁ… ホントか?

今 所轄です。

(阿部)俺 やってないですよ
ホントに。 ホントに違いますって。

ちょっと 伊藤さん。
俺じゃないですって!

ここ数日
姿をくらましていたのは

借金取りに追われていたため
だとか 言ってますけどね

そんなん 東京追われるほどの
額じゃありませんよ。

自供は時間の問題だと思いますよ。

「これで 猿橋さんの最後の仕事も
一件落着です」

そうだな。
うん… よかった。

ご苦労さん。

♬~

お前の仇は
俺たちが必ずとってやる。

コラ! お前ら!
仲間がやられたんだぞ 1人!

この前 パンクの音に聞こえたって
言ったってな

それは家の中でだろう!
通行人だっていたんじゃねえのか。

♬~

ちょっと待ちなさい!
君 止まりなさい!

話聞くだけだから。

♬~

どうしたの?

ステファニーを捜してください。

いなくなっちゃったのか。
いつ?

この間の金曜日。
うーん…。

他のお仕事もあるんだけどね。
捜してみるよ。

ありがとう!
どういたしまして。

何か出たんですか?
ご苦労様です。

おぉ 戻ってきたか。

清水の事で ちょっと
気になる話があるんだ。

あの運送会社の 古株の運転手から
聞き込んだんですけどね。

会社の近くに 運転手たちが
溜まり場にしてる

飲み屋があるんです。 そこの
女将が 清水にぞっこんらしくて。

それが主任
なかなかの美人で 小金もある。

清水にとっては
悪い話じゃないんですよ。

俺にはね どうしても
やらなあかん事があるんですよ。

それが終わるまでは 誰とも
付き合う気はないんです。

(清水)何か すんません。

決着つけたいんですよ 昔に。

決着?
決着って言ったのか 清水は。

はい。

(赤坂)「それは何だ」って聞いても
清水は答えなかったそうです。

(鳴海)何か においますね。
案外 ホンボシかもな。

やっぱり猿橋さんを
恨んでたんですよ 清水は。

だとしても
もう3年も前の話だ。

今頃になって恨みを晴らすとは
俺には思えんな。

長い年月が 逆に
恨みを深めるっていう事もある。

(志村)よし。
まずは現場の聞き込み。

一度 徹底してやってみろ。
(刑事たち)はい。

♬~

気に食わんようだな。

清水を追うのは不服か。

いや そうじゃありませんけどね。

俺にはどうしても 清水が
やったとは思えないんですよ。

女房に死なれた事にしても

あいつは 猿橋を恨むというよりは
自分を責めてました。

うん…。

悪いのは自分だと
わかっていても

つらさや悔しさを
誰かに向けて爆発させたい。

それが 犯罪者の一面だ。

確かに そうかもしれませんけど
でも今度のヤマは

清水のような素人には
できませんよ。

殺し屋説か。 だったら どうして
ホシは 猿橋の拳銃使ったんだ?

わかりません…。

ずっと その事を
考えてるんですけどね。

どういう状況だったのか
まるで見当がつかない。

(ため息)

お前 家を出たらしいな。

はあ…。

早まるなよ。

夫婦が別れるという事は
そう簡単な事じゃない。

おんなじ事を言われましたよ。
猿橋に ここで。

サルが?

そうか…。

あの時 あいつは
妙に思いつめた顔をしてた。

一体 何があったんですかね
猿橋に。

あなた宛ての変な手紙が
届いてたから

そっち送ろうかと思ったけど
早いほうがいいと思って。

何なの それ?

前にも脅迫めいた手紙とか 電話
とかがあったけど それと同じ?

いや 違うな。

立川の事件は俺じゃなくて
猿橋の担当で

今は 小出が中心になって
やってる。

じゃあ あなたの
担当でもない事件を

あなたに調べ直せって
言ってきてるの?

どこの誰だか
わかんない人が?

妙だな…。

(小出)主任。

立川の貸し金庫から
出てきたものです。

立川の強請りのネタか…。
(小出)ええ。

それが 不動産会社の社長と
その愛人です。

で それが開業医の奥さんと
ホストクラブのナンバー1です。

まあ 隠し撮りにしては
よく撮れてますよね。

裏は取れたのか?

もちろん取りましたよ。
全員 アリバイありです。

だからやっぱり 阿部しか
いないんですよね 容疑者は。

このネガは 初めから
切られてたのか?

えっ?
24枚目がない。

(小出)何も写ってなかったんじゃ
ないすか?

写ってなかったからといって
ネガを切るかな。

見ろ。 こっちは19枚しか写って
ないが ネガは切られてない。

(小出)ああ そうっすね。

いや でも別に
問題ないと思いますよ。

だって何かあれば 猿橋さんが
気づいたはずですから。

これを最初に調べたのは
猿橋か?

はい。 貸し金庫から
盗聴用のテープと一緒に押収して

後は 僕と2人で
この連中の捜査 担当してました。

立川様からお預かりした
フィルムは3本ございました。

どれも 24枚撮りの
カラーフィルムで

現像は 1本目が19枚で
残りが24枚です。

23枚というのは
ありませんでしたか?

ございません。
1本目が19枚。 残りが24枚。

前にこちらに 猿橋という刑事が
伺ったと思うんですが。

その時 写真の枚数が合わない
というような話は?

控えを お見せしましたけど
特に何も。

あぁ… そうですか。
はい。

写真ですか?

なければ
ネガでもいいんですが。

主人のものは 警察の方が
調べたはずですけど。

どこかに 紛れ込んでるって事は
ありませんか?

さあ 気づきませんでした。

(希和子)こんにちは。

あ…。
えぇ~…。

(鈴の音)

何しに来たんだよ?

あなたこそ。
俺は仕事だよ。 決まってんだろ。

ふーん。 私は涼子さんが心配で
時々 様子を見に来てるの!

ふーん。

私の事より…。

別れる気もないのに
別居なんかしちゃって。

そんな事ないわよ。
離婚が前提の別居なんだから。

たぶん無理よ。

一生 別れないわ。

お似合いのカップルだもの
あなたたち。

冗談でしょ。 こんな男と
一生暮らすくらいならね

いっそ1人のほうが
ずっと気が楽よ。

こんな男で悪かったな。
俺のほうこそ

1人になって清々してるよ。
あら そう。

だったら さっさと
離婚の手続きしたら?

おう 望むところだ。
でも手続きは お前がやれよ。

(涼子)やめてください。

ホントの孤独が…
どんなにつらいか…。

繰り返し 1人で迎える夜が

どんなに人を追いつめるか…。

幸せな人ほど 自分の幸せに
気がつかないって言うけど

ホントですね。

(希和子の声)ダメね 私たちって。

ご主人亡くしたばかりの人を
前にして…。

なあ 希和子。 涼子さんは
何で猿橋と結婚したんだろうな。

えっ?

いや 猿橋はさ どちらかといえば
女には縁のないタイプだったし

片や 涼子さんは
あのとおりの美人だろ。

実際 うちの購買部で
働いてた頃

彼女に憧れてた男は何人もいた。

それなのに 何で猿橋さんなんかと
一緒になったのか 不思議なの?

まあ そうだな。
わかってないわね。

涼子さんはね 見抜いたのよ
猿橋さんの人柄を。

若いうちならともかく
遅い結婚だもの。

見てくれなんかに
騙されないわよ。

誠実な人だもん 猿橋さんて。

お葬式の後にね 涼子さんに
花束が届いたのよ。

猿橋さんから。
花束?

結婚記念日のバラよ。

殺された日の昼間に
猿橋さんが注文してたの。

日にち限定の配達で。
私 感激しちゃった。

そういう人なのよ 猿橋さんて。

結婚記念日が お葬式になるなんて
悲しいけどね。

♬~

はい…。 わかりました。
すぐ伝えておきます。 はい。

主任。 地検の畑中検事から
呼び出しですよ。

地検?

(畑中)田淵がな お前に
話があるというんだ。

何の話ですか?
さあ…。

お前にしか
話さないって言うんだ。

おう。 終わったら声かけてくれ。

(ドアの開閉音)

どうした?
俺に話があるらしいな。

(田淵浩二)はい。 俺 当分
シャバに出られねえみてえで。

当たり前だ。

パチンコ店襲って 従業員殺して
逃げたんだぞ お前は。

殺された人間の身になってみろ。
わかってます。

俺も 死刑になっても
しょうがねえと思ってます。

でも どうしても
あいつの事が気になって。

女の事か。

妊娠してやがんですよ。

バカ野郎…。 だったらどうして
真面目にやらなかった!

俺 バカだから…。

(ため息)

話っていうのは その事か?

園枝が 無事出産できるよう
旦那に頼みてえと思って。

その代わり
面白え話 教えますよ。

何だよ 面白い話って?

園枝の事 頼まれてくれますか?

ああ… 心配するな。

女は犯人隠匿罪で送検したが
前科があるわけじゃない。

たぶん すぐに片がつくだろう。

俺からも口添えしておくが

妊娠してる女を 邪険に扱うような
警察官はいないよ。

よろしく頼んます!

で… 何だ? その
面白い話っていうのは。

はい。 この間 新宿で殺された
立川って男をご存じで?

お前… 立川 知ってるのか?

じゃあ 阿部って男は
ご存じで?

何で阿部まで知ってるんだ?

園枝が勤めてたクラブの
常連だったんですよ。

それで一度 立川を交えて
阿部と飲んだ事があるんですよ。

ほんでね この
立川のアニキってのがよ

怖いもんなんか
何にもないんだぜ。

すごーい!

(阿部)何しろ デカの尻尾を
つかんでんすよね。

(園枝)もうヤダ!
何言ってんの もう~。

いっつもこうなの この人。

どういう意味だ? それは。

いや 意味はわかりません。

ただ 立川が ものすげえ顔で
阿部を睨んで

それっきり 阿部が 口を
つぐんじまったもんですからね。

阿部ですか? 阿部なら
さっき釈放しましたよ。

結局 証拠不十分って事で。

また 1から出直しです。

阿部和弘だな。
あんたは?

警視庁捜査一課の野津だ。

助けて… 助けて… 助けて…。

どういうつもりだ お前?
何で逃げた!

俺は 何にも知らねえ!
何にも知らねえ 殺さないでくれ!

立川が握ってた デカの尻尾
っていうのは 何なんだ!

田淵って男 知ってるな?

あいつから ネタは割れてんだ。
素直に全部吐け!

頼む… 助けて… 助けて!

お前 立川を殺したのは

その尻尾をつかまれてた
デカだと思ってんのか?

そのデカの名前は?

(阿部)し… 知りません。

とぼけんなよ。 吐け!

殺さないで… 助けて…。

肝心な事 隠すのが
アニキのやり方だったんですよ。

どこの署のデカだ?
それぐらい聞いてんだろ。

本庁の一課…。

だから… だから俺
怖かったんですよ。

名前も知らない一課のデカが

自分の秘密を守るために
立川を殺したんだ!

だから次は 俺の番かと思って。

俺 怖くて
東京にいられなかったんだ。

すいません! すいません…。

その一課のデカが握られてた
弱みっていうのは何だ?

金か? クスリか?

女です。 女…。

それも…
その相手の女っていうのは

デカのカミさんらしいですよ。

何だと?

アニキは その秘密さえ握ってれば
こっちの身は安全だって。

保険みたいなもんだって。

♬~

確かなのか? その話は。

猿橋は 立川の事件を調べるうちに
それをつかんだんだと思います。

恐らく 立川の持っていた
ネガでしょう。

それで殺されたんだと思います。

やるつもりか?

もしガセだったら
ただじゃ済まん。

俺とお前のクビ いや

11係 そのものが飛ぶ。
それでもやれるか?

他の刑事を巻き込むつもりは
ありません。

捜査は 俺1人でやります。

(笑い)

若いな。

俺にも 今のお前と
同じような時代があった。

欲も計算もなく がむしゃらに
ホシに食らいついてった時代が。

野津。

責任は 俺がもつ。

気の済むまでやれ。

はい!

♬~

(ため息)

(携帯電話)

もしもし。

「あなた? 今夜7時までには
実家にいらしてちょうだいね」

悪いが 今夜は無理だ。

「お仕事なのは わかってるわ。
でも父の米寿のお祝いじゃないの」

「兄も来るのよ」

岩切部長には 君から
よろしく言っといてくれ。

「あなた…!」

鳴海。
ああ 主任。 いらしたんですか。

どうした?
今 鑑識から連絡ありまして

猿橋さんの家から採取した
埃の中から犬の毛が出たそうです。

(鑑識課員)採取した室内の
埃の中から見つかったんです。

って事は 犬が外から
迷い込んだって事ですか?

いえ。 それならもっと
多量の毛が見つかります。

これは 外で犬に接触した人間が
室内に持ち込んだんでしょう。

そういえば…。

(チャイム)

♬~

(希和子)結婚記念日のバラよ。

殺された日の昼間に
猿橋さんが注文してたの。

主任。
おう。

間違いありません。
犬がいなくなったのは

事件の日の夕方だそうです。

という事は 猿橋さんか
犯人のどちらかが

毛を室内に持ち込んだって事に
なりますね。

あれが確かに
その犬のもんだったらな。 はい。

で 犬はどうしてる?
まだ見つかってません。

そうか。 じゃあ
お前は飼い主に協力して

犬を捜してくれ。
はい。 主任は?

ちょっと確かめたい事がある。
ご苦労様です。

(花屋)あっ。 あん時のお客さんや。

よう覚えてますよ。
すっごい印象深かったですもん。

というと?

いや 「結婚記念日のバラやから

配達の日 間違わんといて」って
言われたんですけど

「場合によっては 自分が取りに
来る」ともおっしゃったんです。

「もし来れるんやったら
当日の朝に電話する」って。

どちらになるか
わからなかったという事ですか?

はい。 いやでも
「結婚記念の花ですし

直接 奥さんに手渡されたら
どうですか?」って

言ったんですけど
何か事情あるみたいで…。

事情?

いや はっきり そうおっしゃった
わけじゃないですけどね。

ただ 普通 結婚記念の花
ご注文される方は

照れくさそうにされてても どこか
弾んだ感じがあるんですよ。

(花屋)でも あの方は 何か
ひどく思いつめた感じで。

あの…。

この手紙 花の箱に
一緒に入れてもらえますか?

はい わかりました。

(花屋の声)私ね ひょっとしたら

離婚話でも出てるんかなって
思ったくらい。

でも 亡くなられたそうですね。

まあ こういっちゃ何やけど

自分の死を予感されてたみたいな
具合ですよね…。

♬~

♬~

(足音)

(涼子)まだ
別居を続けるんですか?

さあ…。

希和子さん
寂しがってらっしゃるわ。

ただ野津さんの 本心が
知りたかったんだと思います。

何か 愛情の… 証みたいなものが
欲しくなったのかも。

不安だったんだと思います。

猿橋は あなたを
不安にさせるような事は

しなかったんでしょうね。

あなたとの結婚が決まった時
あいつ すごく喜んでた。

「俺にはもったいない」
「俺には過ぎた女だ」 「俺には…」。

あなたは どうだったんですか?

(涼子)どうして そんな事…。

あなたがさっき言った愛情の証。

あなたは猿橋に対して

どんな愛情の証を
示そうとしたんですか?

男と女は まあ
一筋縄ではいかない。

例えば…。

例えば 不倫です。

人の女房だと承知で
好きになる男もいれば

人妻でありながら
夫以外の男に惹かれる女もいる。

そういう関係になった男と女は

行き着いた先の結果に対して
責任を取るべきだ。

そう思いませんか?

まるで 私が不倫したかのように
おっしゃるんですね。

あなたは今 猿橋以外に
好きな男はいますか?

いいえ。

あなたが猿橋に示そうとした
その愛情の証っていうのは

どういうものだったんですか?

一生 添い遂げる事です。

例え 何があろうと
一生 添い遂げるつもりでした。

あの人と2人
穏やかな家庭を築いて

いつか 心も体も枯れた頃に

「これでよかったね」って笑える
夫婦になりたいって思ってました。

それが私の
あの人への思いです。

♬~

(猿橋の声)「涼子」

「もし 君の手に
この手紙が渡ったとしたら

僕はもう
この世にはいないだろうな」

「君を責めるつもりはないよ」

「君のような人が
僕の妻になってくれた」

「それだけでも
奇跡のようなものだからね」

「短い間だったけど
僕は本当に幸せだった」

「けど その幸せは

多分 幻だったんだろうな」

「同封した写真とネガは
君の自由にしてくれていい」

「事件の結末は
君の手に委ねたいと思う」

「3回目の結婚記念日

君と一緒に祝いたかったよ」

(泣き声)

この犬か。

(鳴海)はい。
猿橋さんの殺された日の翌日

近所の子供が拾って
連れてきたそうです。

事故にでも遭ったんですかね?

いやあ 多分 誰かの足に
噛みついたんでしょうね。

牙に 布きれが
挟まってましたから。

布きれ?

(獣医)ズボンの布でしょう。

濃いグレーの
なかなか上等な生地でしたよ。

それは まだここにありますか?

(獣医)いえ。 とっくに
捨てちゃいましたけど。

ちょっと失礼します。

(鳴海)捨てちゃったのか…。

どうかしたんですか? 主任。

いや…。

あの日の昼間 係長は
濃いグレーのズボンを履いてた。

それが夜になって
猿橋殺しの現場に来た時には

白っぽいグレーのズボンに
変わってた。

あの夜… 猿橋が殺された夜

係長は 現場に来る前に
どこにいたんだ?

渋谷の道玄坂です。 渡辺が
玉川通りを走ってたんで

拾って乗せてきたと…。
道玄坂で何やってたんだ!

(鳴海)渡辺には 買い物してたと
言ったそうですが。

クソッ!

おい 係長は?

さっき出ていきましたけど。
どこに!

何か ずっと机で地図見てました。

御坂峠…。

御坂峠か!

ああ この間の刑事さん。
清水なら 信州からの帰りですよ。

ちょうど 御坂峠の茶屋辺り。

一体 何です?

さっきも 他の刑事さんから
おんなじ電話もらったけど。

《大垣さん…。 何でだ?
何で あんたなんだ?》

もしもし 希和子か?
1つだけ教えてくれ。

猿橋が死んだ夜のディナーショーは
あれは誰が誘ったんだ?

(希和子)ん? 涼子さんよ。

猿橋さんがね 私が1人で
寂しいだろうから

誘ってあげなさいって
言ったんですって。

やさしいでしょう?
ねえ 涼子さん?

涼子さん そこにいるのか?
(希和子)「そうよ」

しばらく
田舎に帰るんですって。

「いろいろお世話になりました」
って あなたにも伝えてって。

そうか。 だったら彼女を
絶対に そこから出すな。

あぁ~ どうして?

自殺の恐れがある。

「それからこれは 俺からだと
言って 涼子さんに伝えてくれ」

「結末は 望んだものとは
違うかもしれない」

でも どんな結末であろうと
必ず生きて 見届けてくれって。

「それが猿橋に対する誠意だって」

それから希和子 これは お前にだ。
聞いてるか?

俺は 一生 お前と
暮らしたいと思ってる。

忘れんなよ。

(不通音)

(パトカーのサイレン)

野津さんから伝言。

「一生 あなたと暮らしたい」って。

好きで結婚したんじゃない。

少しぐらいの行き違いは
乗り越えなきゃ。

どんなに好きでも 一緒になれない
人たち たくさんいるのよ。

私も… そんな中の1人だったの。

猿橋さんと一緒になる前?

とても… 愛した人がいたの。

自分の仕事に誇りを持って
正義のために戦ってた人。

でも ある日 虚しくなったって。

どんなに努力しても報われない
自分の立場に。

そんな時 キャリアの妹さんとの
縁談が来て

断れなかったんですって。

あなたは… それでも
その人を愛したの?

いずれ奥様と別れるって言ってた。

だから… 待ったの 6年。

でも そうやって待ってる私が

彼を苦しめてるって事も
わかってた。

彼にとっての離婚が どんなに
難しいかも わかってたし。

だから猿橋さんと
一緒になったの?

愛してた人の代わり?
そんな結婚だったの?

猿橋となら… 猿橋となら

温かい家庭 作れると思ったの。

とっても… とっても幸せだった。

いつか彼の事も
忘れるって思ってたの。

でも 猿橋が入院した時に…。

わかった。
洗濯行ってくる。

♬~

♬~

♬~

(涼子の声)忘れられなかった…。

彼への思いを どうしても。

これは… その晩に

隠し撮りされたものだと思います。

♬~

(嗚咽)

♬~(清水)
「俺には お前が最後の女~」

何や。 下手ってか?

けどな ええ声や言うてくれる女は
いっぱいおんねんぞ。

でも俺は 誰とも付き合わへん。

お前の墓 建てるまではな。

♬~

♬~

♬~

今日も これもらうわ。

えっと… 1200円…?

あ…。

♬~

♬~

クソッ!

♬~

大垣さん!

どこに向かうつもりだ?
大垣さん!

この先 どこへ
向かうつもりなんだ? あんた。

♬~

あんたの狙いは
清水じゃなくて 俺か?

それで ここまで
おびき寄せたのか?

これが… これが
あんたの蹴りのつけ方か?

その猿橋の銃で俺を殺して

清水の仕業に
見せかけるつもりだったのか!

卑怯だよ…。

あんたは卑怯だ!!
(撃鉄を起こす音)

やはり お前だったな。

立川をやった時

俺に引導を渡すのは誰かと
考えた一瞬があった。

お前だったよ。

猿橋は違う。

あいつは違ったんだ。

自分の女房の事だからな。

(大垣の声)立川事件の捜査が
始まって間もなく

あいつが俺に言ってきた。
「2人だけで話がある」と。

明日の夜 涼子が
家を留守にします。

7時半 私の家に来てください。

その時 俺は… 覚悟を決めた。

猿橋が すべてをつかんだと
わかったからだ。

(大垣の声)こうなった以上
あいつをやるか

俺がやられるか
2つに1つしかないと思った。

だが…。

丸腰になって 頭を下げます。

自首してください。

すべてが明らかになれば

涼子は恐らく
この部屋を出て行くでしょう。

それも 仕方ないと思ってます。

何も気づかず
何も知らなかったら

どんなによかったかと思います。

しかし 知った以上
私が警察官である以上

あなたの罪を
見逃す事はできません。

涼子は国元に帰します。

その涼子に せめて

あなたの警察官としての
最後の潔さを

見せてやってください。

♬~

もし ノーと言ったら?

俺を殺すか?

(銃声)

猿橋…。

♬~

猿橋!

♬~

俺には 2つの選択しかなかった。

俺が死ぬか 猿橋が死ぬか。

野津!

俺に自首はない!

(銃声)

あ…。

どうして わざと外した?

猿橋が…。

笑いやがったんだ。

俺が 選んだ道を…。

あいつ 笑いながら 死んでった…。

いや… そうじゃないのかな…。

涼子を本当に愛したのは
自分だって…。

あいつ 笑ってやがったのかも…。

♬~

♬~

(岩切)やめろ!

大垣はもう
警察の人間じゃない。

やめんか!

♬~

♬~

(大垣の声)
〔いやいや ちょっと待ってくれ〕

〔俺はダメだよ。
写真苦手だよ 勘弁してくれ〕

(鳴海)〔ダメ ダメ ダメ!
係長が主役なんだから〕

(小出)〔いい? いい?
いくよ いくよ! はい ポーズ!〕

♬~

(嗚咽)

♬~

ご馳走様! いってきます。

(希和子・野津)いってらっしゃい。

涼子さんも
苦しんでたのよね。

猿橋さんを殺したのは
大垣さんだって わかってたから。

それで あんな手紙を
うちに寄こしたんだな。

関係ない人が
逮捕されたんだもの

やっぱり
放っておけなかったのよ。

(携帯電話)

はい もしもし?
うん… 現場は?

わかった。

仕事だ。

悪いな。
多分 今夜も遅くなる。

(ため息)

結局 何も変わらないのよね
うちは。

♬~

(チャイム)

はい?

「野津希和子様に お届け物です」
私に? 誰から?

「はい 野津崇様から
お花が届いております」

はーい…。